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【新株予約権とは?】種類・メリット・デメリットについて解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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新株予約権は、事前に決められた金額・条件で株式会社の権利を得ることができます。

ストックオプションなどのインセンティブプランを検討している経営者の方の中には、新株予約権と他のプランの内容を検討した上で何が良いかを考えたい人もいらっしゃると思います。

本記事では、新株予約権の種類・メリット・デメリットについて解説していきます。

新株予約権とは

新株予約権とは、発行した企業に対して一定期間内に権利を行使することで、その企業の株式について一定の価格を支払うことで交付を受けられる権利のことをいいます。

新株予約権を付与した企業は、権利所有者が新株予約権を行使した時に、権利を行使した時の株価に関係なく、行使価額で新規に株式を発行するか、自己株式を交付する必要があります。

新株予約権の目的

新株予約権の目的は企業の資金調達だけでなく、その発行方法や使い方によって従業員のモチベーションを上げることや他社との業務提携、敵対的買収の回避などさまざまな目的のために発行されます。新株予約権の目的は、発行方法や新株予約権の種類を概観していく中で説明していきます。

新株予約権の発行

新株予約権の発行方法には、次の2つがあります。

・公正発行
・有利発行

それぞれについて説明していきます。

公正発行

公正発行は、株主全員に対して新株予約権を発行する方法になります。公正発行に該当するものは次の方法があります。

・社外向けの発行
・無償割当
・有償ストックオプション

有償ストックオプションについてはこちらの記事もご参照ください。
【有償ストックオプションとは?】メリット・デメリットや発行価額と行使価額の違いを簡単に解説!

有利発行

有利発行は、ある特定の株主に対してだけ新株予約権を発行する方法になります。有利発行は、その発行に関係する恩恵を受けない株主に対して不利益(議決権など)を与えうるので、発行について株主総会特別決議で承認を得るという手続きを踏む必要があります。

今までは、無償ストックオプションは有利発行とみなされており、有利発行をする全ての企業で株主総会特別決議の承認を得てきました。

最近は、無償ストックオプションだとしても、従業員や役員に対するインセンティブの目的とされ、この有利発行を公正発行だと考える企業が増えています。

無償ストックオプションについてはこちらの記事もご参照ください。
【無償ストックオプションとは?】税制適格の要件やデメリットを解説!

新株予約権の行使

新株予約権の行使には、その行使に関係する「内容」「数」「行使する日」を明らかにした上で、新株予約権を行使する日までに金銭や金銭以外の方法での払込、給付を行わなければなりません

新株予約権を行使した新株予約権者(新株予約権を所有する者)は、権利行使日を以てその企業の株主になります。

また、新株予約権を行使することで交付される金額のことを行使価額といい、新株予約権を行使することが可能な期間を行使期間といいます。

新株予約権の種類

新株予約権は、その発行方法や使い方によって複数の種類が存在します。本記事では、広く利用されている次の4種類について説明していきます。

・ストックオプション
・社外向け発行
・無償割当
・有利発行

ストックオプション

会社の役員・従業員などに向けて発行された新株予約権は、ストックオプションと呼ばれています。ストックオプションの権利を行使する条件は、ストックオプションを発行した会社に所属していることが一般的です。また、会社に在籍する期間の長さに応じて段階的にストックオプションの権利行使の数を引き上げる条件(ベスティング条項)などもあります。

注意すべきこととして、必ずしもこのような条件を定める必要がないことがあります。権利行使に関する条件の付与については、会社側の都合で定めることができます。

ストックオプション・ベスティング条項に関する詳しい解説はこちらの記事もご参照ください。
ストックオプション制度とは?仕組み・種類・メリット/デメリットを完全体系化!新株予約権との違いも解説!
ベスティング条項とは?なぜ人材の離脱防止と 従業員のモチベーション向上につながるのか

社外向け発行

ストックオプションは会社内の役員・従業員といった内部向けの新株予約権でしたが、社外に向けた新株予約権の発行のことを社外向け発行といいます。

新株予約権の社外向け発行には、株主割当と第三者割当の2つの種類があります。株主割当は、これまでの株主の持ち株に合わせ、それらに比例して新株予約権を発行します。また、第三者割当は既存株主だけでなく新たな層に向けて発行される新株予約権になります。

日本国内への海外企業の進出が加速し、敵対的買収も増えてきました。敵対的買収への防衛策としての意味あいで、新株予約権の発行をする企業も現れるようになりました

無償割当

無償割当とは、既存の株主に向けてそれぞれが保有する株式の数に応じて無償で割り当てることを指します。無償割当の方法は、非上場型新株予約権の無償割当と上場型新株予約権の無償割当(ライツ・オファリング)の2つの種類があります。

非上場型新株予約権の無償割当は、企業が上場していないので新株予約権は市場で取引することができません。また、上場型新株予約権の無償割当では、上場した企業が新株予約権を発行することができるので、一定期間の間、市場で取引することができます。後者では、新株予約権者はこの権利を第三者に売却することができます。

有利発行

有利発行は、公正な価格に対して特定の対象者に有利な価格で新株予約権を発行することを指します。第三者割当で有利発行することは、新規に株主を集めるときに行われます。

有利発行をする場合は、株主総会での特別決議と取締役による有利発行をする理由を説明する必要があります。この背景には、有利発行が既存の株主に対して株主総会での議決権の低下や株価の減少といったデメリットを与えてしまう可能性が非常に高いことが挙げられます。

新株予約権のメリット

新株予約権を利用することで次のようなメリットが挙げられます。

・借入無しで資金調達をすることができる
・従業員のモチベーションが上がる
・敵対的買収への防衛手段となる

それぞれについて説明していきます。

借入無しで資金調達をすることができる

新株予約権を発行するメリットの1つに、借入をすることなく資金調達ができることがあります。銀行から借入や社債の発行には、利息が生じるので利益は損なわれてしまいます。

新株予約権の発行は、債務も利息も発生しないので将来の利益を守りながら資金調達をすることができます。財務状況のバランスを検討した上で、新株予約権の発行をするのも良いでしょう。

従業員のモチベーションが上がる

社内向けに発行する新株予約権であるストックオプションを従業員に与えることで、モチベーションを高めることがメリットとして期待できます

ストックオプションは権利を行使するための期間を定めることができるので、付与されてすぐに利益を得る人は多くありません。ストックオプションの権利行使が数年間あることで、従業員は企業の利益を上げるために意欲的に働くことが考えられます。

これは、ストックオプションの価値が企業価値に影響を受けていることが背景にあります。

敵対的買収への防衛手段となる

経営者として注意せねばならない事象の中に敵対的買収がありますが、新株予約権の発行はこれに対抗する防衛手段になり得ます

新株予約権を発行し、これを敵対する企業以外に与えることで敵対的買収を避けることができます。日本において、新株予約権の発行は買収に対抗する手段として考える経営者が多いことも特徴であり、これはメリットとして捉えられています。

新株予約権のデメリット

新株予約権を利用することで次のようなデメリットが挙げられます。

・株式が希薄化する
・新株予約権の税務について

それぞれについて説明していきます。

株式が希薄化する

新株交付権の行使による株式の発行は、すでに発行された株式の価値を薄めてしまいます。株価は大きく変わらず、株式の全体の個数が増えることで1株あたりの価値は低下してしまいます。企業・事業に共感して、応援していただく意味合いで株式を発行し、株主を増やすことは大切ですが、注意する必要があります。

株価が下落する可能性がある

新株交付権が権利行使されると、発行された株式を売却する者も現れてしまう可能性があります。株式の売却の結果として、株価が大きく下がってしまい、将来的に株主離れを起こしてしまうかもしれません。また、ストックオプションのケースだと株価の減少に加えて、新株予約権の行使によって得た利益に満足してしまい、企業を退職してしまう可能性もゼロではありません。

ストックオプションに関係する副次的な効果もデメリットになりうるので、発行の前にじっくりと検討する必要があります。

新株予約権の税務について

新株予約権は、その発行の在り方や発行される対象によって会計処理や税務上の扱いが変わってきます。この中でも無償ストックオプションの「税制適格」及び「税制不適格」かで税務における扱いが変わってくることは一般的な従業員にとって、あまりなじみのあるものではありません。

おおよその概要は知るべきですが、税務に関する実務的な作業や手続きなどについても理解することで自身の事業を補助していく上では重要なことになります。

社外向けに発行するか、社内の取締役や従業員などを対象に発行(ストックオプション)するかで、会計処理の方法が大きく変わってきます。特に、無償ストックオプションについては、税制適格か税制非適格かで税務上の取扱いも変わってきますので、ポイントをよく押さえておきましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

本記事では、新株予約権の利用について検討しているベンチャー企業・スタートアップ企業の経営者や自社の従業員のためのインセンティブ制度の設計を考えている人事部や組織戦略について模索している役員・経営陣に向けて新株予約権の種類・メリット・デメリットについて説明してきました。

本記事が上場を目指しているスタートアップ・ベンチャー企業の経営者の方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。