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新株予約権無償割当とは?特徴・決定事項・効力の発生・開示手順・株主割当増資との違いについて解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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企業が資金調達を行う方法の1つに新株予約権の発行があります。新株予約権は、行使することで事前に決められた金額・条件で発行主となる株式会社の株式を受け取ることができる権利のことを言いますが、一般的に上場する企業の株価は上昇する可能性が高いので投資家は新株予約権を手に入れるための申し込みをします。

新株を発行すると、1株あたりの株価が希薄化するので既存の株主にはあまり好まれるものではありません。そこで、この問題を解決する手法として新株予約権無償割当というものがあります。株式が希薄化してしまうことによる既存株主への不利益を避けるものとして、注目されています。

本記事では、財務戦略として新株予約権の発行を検討している、または、過去に新株予約権を発行しており、さらなる新株発行を考えている方に向けて新株予約権無償割当について解説していきます。

新株予約権とは

 

新株予約権とは、発行した企業に対して一定期間内に権利を行使することで、その企業の株式について一定の価格を支払うことで交付を受けられる権利のことをいいます。

新株予約権を付与した企業は、権利所有者が新株予約権を行使した時に、権利を行使した時の株価に関係なく、行使価額で新規に株式を発行するか、自己株式を交付する必要があります

新株予約権にはその発行方法や使い方によって複数の種類があり、その中でも代表的なものとして、

・ ストックオプション
・社外向け発行
・無償割当
・有利発行

があります。

本記事ではこれらのうち、新株予約権の無償割当について詳しく解説していきます。

新株予約権については以下の記事で詳しく解説を行っておりますので、合わせてご覧ください。
新株予約権とは?種類・メリット・デメリットについて解説

新株予約権無償割当とは

新株予約権無償割当とは、会社法第277条に定められている「公募増資」「第三者割当増資」と並ぶ企業の増資方法であり、既存の株主に対して、株式の保有数に応じて無償で新株予約権を割当てることで増資を行うものです。

新株予約権無償割当は、「ライツ・オファリング」「ライツイシュー」とも呼ばれます。

新株予約権を発行する企業は、無償割当により権利を取得した株主や、市場で新株予約権を買い付けた人が権利を行使した際に新株を発行することで増資を行うことができます。

公募増資や第三者割当増資では、特定の投資家のみに新株が配分されるため、株式価値の希薄化が生じることで、既存株主が損をする場合があります。一方、新株予約権無償割当は、株式の数に応じた新株予約権が割り当てられ、さらに、株主が自分の意思で増資に応じるかどうかを決めることができるため、既存の株主に不利益が生じにくいというメリットがあります。

企業の増資に応じるケース

新株予約権無償割当では増資に応じる株主は、新株予約権を行使し、お金を払込むことで株式を取得できます。既存の株主が新株の増加による1株あたりの価額の低下による不利益を避けることができる旨を株主総会などで丁寧に説明することが求められます。

企業の増資に応じないケース

新株予約権無償割当による増資に応じない株主は、新株予約権自体を市場で売却することができるという特徴があります。増資に応じない場合に、他の株主が新株予約権を行使し新しく株式を取得すると、持ち株比率が低下してしまうと言う点には注意が必要になります

新株予約権無償割当が消滅するケース

新株予約権無償割当の権利を取得した者が、市場での上場期間内に新株予約権証券の売却を行なわなかった場合、もしくは、新株予約権無償割当の権利行使期間中に権利行使を行なわなかった場合は与えられた権利は消滅します。

新株予約権無償割当の売買について

新株予約権の取引所での売買は、新株予約権の割当の効力発生日以降の日から新株予約権の行使期間が終了する前の日であり、取引所が定める日まで行うことができます。そのため、銘柄によって取引所で売買ができる期間は異なります。

新株予約権無償割当に関する事項の決定

会社法279条において、新株予約権無償割当を行う場合はその都度、以下の事項を定めなければならないと規定されています。

1. 株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法
2. 前号の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、当該新株予約権付社債についての社債の種類及び各社債の金額の合計額又はその算定方法
3. 当該新株予約権無償割当がその効力を生ずる日
4. 株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該新株予約権無償割当を受ける株主の有する株式の種類

また、上記の事項を決定する際は、定款に別段の定めが無い限りは、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)において決議しなければなりません

新株予約権無償割当の効力の発生等

新株予約権無償割当を行う場合は会社は、新株予約権の内容や割り当てる新株予約権の数を株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)において決議する必要があります。

新株予約権の割当てを受けた株主は、株主総会において決議された、新株予約権が効力を生ずる日をもって新株予約権者となります

そして、株式会社は株主総会において決議された日後、遅滞なく株主及びその登録株式質権者に対し、当該株主が割当てを受けた新株予約権の内容及び数の通知をしなければならないと会社法279条に定められています。

ここで、新株予約権無償割当を受けた株主への通知がされた日から2週間を経過する前に会社法第236条に基づいて定められた新株予約権を行使することができる期間が到来する場合は、新株予約権を行使することができる期間は、通知が行われた日から2週間が経過する日まで延長されます。

株主割当増資との違い

企業が増資を行う方法で、新株予約権無償割当と似たものに株主割当増資があります。

株主割当増資とは、自社を除く既存の株主のみに新株を引き受ける権利を与え、株主から出資をすることで増資するという方法です。

一方で、新株予約権無償割当は、新株を発行する際に既存の株主に対し、持ち株数に応じて新株の割り当てを受ける権利を与えることをいいます。割り当てられる新株の数は、株主平等の原則に基づき、既存株主の持ち株数に応じて決められます。新株の発行価額は市場価額とは関係なく決められ、多くは時価よりも低い価額で発行されるため、既存株主の経済的利益を害することなく資金調達を行うことができます

株主割当増資は、株主は新株を引き受ける権利が与えられるだけで、割り当てられた株式を引き受けなければならないわけではなく、権利を行使し払込を行えば新株を得ることができ、期日までに払込みを行わなければ、株主は権利を放棄することができるという点で、新株予約権無償割当と似ています。

新株予約権無償割当は、取締役会設置会社では取締役会のみで発行できること、新株予約権の行使条件にアレンジを加えることができるという点で株主割当増資とは異なります。

取締役会設置会社における株主割当増資は、取締役会のみで発行するためには定款の定めが必要になります。一方、新株予約権無償割当は、原則として取締役会で決議することができます

また、新株予約権無償割当では、割り当てる新株予約権の内容をその都度決める必要があります。新株予約権の内容には新株予約権の行使条件も含まれるため、新株予約権無償割当では、新株予約権の行使条件をその都度変更することができます。

新株予約権無償割当の内容の開示手順

上場会社の業務執行を決定する機関が、新株予約権無償割当を行うことについての決定をした場合は、直ちにその内容を開示しなければならないと上場規程第402条で定められています。

開示基準を確認する

投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして、開示が義務ではなくなる基準のことを軽微基準といいますが、新株予約権無償割当の場合には、軽微基準が無いため、新株予約権無償割当を行うことを決定した場合には、直ちに開示を行う必要があります

開示のための注意事項を確認する

開示を行う際はまず、「適時開示に関する実務要領」の確認を行います。

買収防衛策の導入・発動に伴う新株予約権無償割当の場合は東京証券取引所に事前相談を行わなければなりません

公表予定日の3週間前までに東証の上場会社担当者まで開示資料をメールで送付を行います。スキームの概要・特徴点、または、発行条件の合理性に関する上場会社としての考え方などの補足資料がある場合には合わせて送付する必要があります。

新株予約権無償割当により発行する新株予約権証券を上場しようとする場合には、遅くとも公表予定日の10日前までに、必ず東証の上場会社担当者に開示資料(案)をメールで送付する必要があります

特にノンコミットメント型ライツ・オファリングの場合などは、上場の可否についての検討に時間を要するため、できる限り早めに相談を行わなければいけません。

開示書類を作成する

注意事項の確認が終わったら、開示書類の作成を行います。

記載要領と開示様式例は東京証券取引所のホームページからダウンロードすることができます。
(記載要領)株式無償割当て又は新株予約権無償割当て
(開示様式例)株式の無償割当てに関するお知らせ
(開示様式例)コミットメント型ライツ・オファリングに関するお知らせ

まとめ

いかがだったでしょうか。

ここまで、既存の株主への損失を避けることを目的とした新株予約権無償割当について解説してきました。企業の財務戦略に関わるので、少々テクニカルで難しかったかもしれませんが他の記事も参照していただきながら新株予約権に関する知識を深めることを推奨します。

新株予約権とは?種類・メリット・デメリットについて解説
新株予約権付社債とは?会社と投資家双方のメリットと注意点を詳しく解説
新株予約権の登記事項とは?登記が必要な理由と必要な書類を詳しく解説
新株予約権原簿に記載する内容 | 原簿の役割や管理方法も詳しく解説

本記事が上場を目指しているスタートアップ・ベンチャー企業の経営者の方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。