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買収防衛策21種類を紹介|敵対的買収から会社を守るための方法

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

基本的に企業買収は、買い手側と売り手側の同意があってはじめて成立するものです。しかし、売り手側の同意がなかったとしても、一定の条件を満たすことで企業買収が成り立ってしまう場合(敵対的買収)があります。

そこで本記事では、敵対的買収から企業の利益を守る買収防衛策についてご紹介します。買収防衛策の必要性、そして買収防衛策の種類について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

買収防衛策とは

買収防衛策とは、相手企業による買収を困難にし、阻止するための対策のことです。

企業買収は、
・友好的買収:企業両者間の同意が得られている企業買収
・敵対的買収:買収される側の同意を得ずに行われる企業買収
の2つに分けられます。

敵対的買収においては、金融商品取引法の規制により、買収側企業は買収対象企業の株式を一定割合以上取得する際に「株式公開買付け(※)」を行う必要があります。
※株式公開買付けとは、通常の証券取引所を経由せずに、買付期間・買付価格・買付予定株数を公表し、多数の株主から直接株式の買付けを行うことです。

しかし、敵対的買収に対して、被買収企業は何も対策ができないわけではありません。「買収防衛策」を講じることで、買収を阻止または困難にすることが可能です。具体的な買収防衛策については、後述の「買収を予防するための買収防衛策」で詳しく解説します。

買収防衛策の実施における問題点

一見不当な買収を防ぐ手段として、買収防衛策は非常に魅力的な手法ではありますが、実施にあたっていくつかデメリットを孕んでいます。

現に買収防衛策を実施する際、株式や会社の利益に多大な影響を及ぼすため、事前に株主や社員への影響を考慮する必要があります。

例えば、買収防衛策が経営者や企業の視点のみで実施されていないかどうかを確認することは重要です。

買収防衛策の実施は株主総会での決議が必要なため、企業の株主の同意が得られた状態で実施されることが大半です。しかし、一部の買収防衛策は、企業の経営陣の独断で行えるケースがあるため、株主や社員の利益が考慮されずに実施される危険があります。

また、買収防衛策の実施は、市場に閉塞感を生む可能性も否定できません。

一般的に、株式分割は、発行株式数が増加し、株式の流動性を高める効果がありますが、必ずしも株価が上昇するとは限りません。一方、買収防衛策は、株式の流動性を低下させる可能性があり、株価が下落する要因となることもあります。しかし、買収防衛策が株価に与える影響は、企業の状況や市場環境によって異なり、一概に株主の不利益につながるとは言えません。

買収防衛策の必要性

買収防衛策を実施する場合、経営者は事前に企業全体や株主の利益に繋がるかを考慮する必要があります。株式会社である以上、株主や企業全体の利益が優先されるべきであり、経営陣の保身のためではなく、企業価値の向上や長期的な成長戦略の遂行など、正当な目的のために実施されるべきです。

敵対的買収が行われることで、買収される側の企業の成長に繋がるケースもありますが、被買収側の持つ知的財産などが譲り渡されることで、企業価値が低下する可能性も否定できません。

以上より、企業にとって買収防衛策を取ることが株主や従業員にとって価値ある選択になるか事前に検討することが必要です。

買収を予防するための買収防衛策

買収防衛策には、いくつかの種類があります。ここでは、買収を予防するための買収防衛策を11種類ご紹介します。

11種類の買収防衛策は、以下の通りです。
・ポイズンピル
・ゴールデンパラシュート
・ティンパラシュート
・黄金株
・マネジメントバイアウト
・全部取得条項付株式
・絶対的多数条項
・チェンジオブコントロール条項
・プットオプション
・ゴーイングプライベート(非公開化)
・事前警告型防衛策

ポイズンピル

ポイズンピルとは、企業が既存の株主に対し、事前に新株を市場価格よりも安く購入できる権利を既存の株主に付与する策のことです。

株式が大量に発行されることで、敵対的買収を仕掛けた買収企業の持株比率が下がります。その場合買収実行が難しくなるため、敵対的買収を阻止することが可能になります。

しかし、発行株式数が増加するため、1株当たりの株価は減少して企業価値を損なう恐れもあります。

ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュートとは、買収コストを高騰させることで、敵対的買収者の買収意欲を削ぐ買収防衛策のことです。

例えば、予め買収される側の企業取締役の退職金を高額にしておきます。退職金を引き上げることで買収後の支払金額が大きくなり、買収側の買収意欲を低下させることが可能です。

しかし、買収意欲の減退に伴う株式価値の減少により、既存株主の利益に影響が出る恐れがあります。

ティンパラシュート

ティンパラシュートとは、ゴールデンパラシュートのように事前に買収コストを高騰させておくことで、買収者の買収意欲を下げる買収防衛策のことです。

一見同じ防衛策ではありますが、両者の違いは退職金の引き上げを経営陣向けに行うか、従業員向けに行うかという対象者の違いにあります。

企業買収に伴い、事前に解雇される可能性のある従業員に対して、高額な退職金の支払いや就職の斡旋などを取り決めておくことで、買収後の支払いが多額になるという策です。

但し、デメリットもゴールデンパラシュートと同様、実質の買収金額が高騰することで株価が下がってしまう可能性があります。

黄金株

黄金株とは、株主総会で企業買収などの重要議案を否決できる特別な株式のことです。正式には「拒否権付種類株式」と呼ばれています。

黄金株を保有する株主は、企業買収などの重要議案に対して拒否権を行使できるため、敵対的買収を防ぐ効果があります。

安定株主などの買収を防ぐ意向を持つ株主に黄金株を預けることで、敵対的買収に対する提案を拒否してもらうことが目的です。

マネジメントバイアウト

マネジメントバイアウトという買収防衛策は、自社の経営陣が自社の株式を購入して非上場化することで、企業の経営権を買収しようとしている企業に取得させないようにする手法です。

敵対的買収の1つの方法である「株式公開買付け」を阻止するためには、株式を非上場化して株式の取引を行えないようにする必要があります。そうすることで、買収する側の企業に自社の株式が流れないようにすることが可能です。

全部取得条項付株式

全部取得条項付株式とは、種類株式の一種で、株主総会決議により会社側が発行する株式すべてを取得できる株式のことです。

株主総会特別決議により株式を取得することが可能であるため、買収防衛策として機能します。全部取得条項付株式を発行するには、定款変更が必要であり株主総会特別決議を通ることが必要です。

無議決権優先株式を全部取得条項付株式として買い上げ、その対価として普通株式を交付することで株式数を増加させます。発行株式数、ひいては株主が増えたことで買収コストを上昇させることができ、買収防衛策になります。

絶対的多数条項

絶対的多数条項とは、株主総会での議決要件を厳しくしておくことで、買収する側の企業が支配権を確立しておくことを難しくする買収防衛策です。スーパーマジョリティ条項とも呼ばれています。

一般的に、取締役などの解任は定款に基づく賛成を得る必要があります。通常、定足数を満たした過半数の賛成が必要です。

しかし絶対的多数条項では、当該賛成の割合が90%以上という高い割合です。このように、要件を厳しくすることで取得する株式割合を高め、敵対的買収を仕掛けてきた企業の買収意欲を下げる方法となります。

チェンジオブコントロール条項

チェンジオブコントロール条項とは、企業買収などを理由に契約の当事者の支配権に変更が生じた際、もう一方の当事者が契約内容に制限をかけたり、契約そのものを解除できたりする契約規定のことです。

チェンジオブコントロール条項を実施することで、事業を行うための大切な契約が解除されてしまうため、敵対的買収を仕掛けてきた企業の買収意欲を削ぐことが可能です。

しかし、チェンジオブコントロール条項は、敵対的買収だけでなく友好的買収にも適用される場合があるため、注意が必要です。

プットオプション

プットオプションとは、特定の状況が生じた際に、株式の買取りや弁済の請求を行うことができる権利のことです。敵対的買収を仕掛けられた際、プットオプションを保有しておくことで株式の買取りや一括弁済の請求を行うことが可能です。

プットオプションを保有する株主は、買収価格よりも有利な価格で株式を売却できるため、買収意欲を削ぐ効果があります。

ゴーイングプライベート(非公開化)

ゴーイングプライベート(非公開化)とは、マネジメント・バイアウト(MBO)やレバレッジド・バイアウト(LBO)などの手法を用いて上場を廃止する、つまり株式の非公開化を行うことで敵対的買収を防ぐ手法です

株式を非公開化することで譲渡制限付株式に変更され、株式取得がさらに難しくなります。ただし、株式を非公開化すると、既存の株主は株式を自由に売買できなくなる可能性があります。

事前警告型防衛策

事前警告型防衛策とは、株主の利益が明らかに損なわれるという一定の状況が生じた場合に行う対応策を事前に公表しておく手法のことです。

対応策を事前に公表しておくことで、敵対的買収を仕掛けようとする企業に対して対応策を事前に公表することで、敵対的買収者を牽制し、買収意欲を削ぐ効果があります。

買収を仕掛けられてからの買収防衛策

いくつかある買収防衛策のうち、買収を仕掛けられてから取ることが可能な防衛策を10種類ご紹介します。
・ホワイトナイト
・パックマンディフェンス
・クラウンジュエル
・ジューイッシュデンティスト
・スタッガードボード
・資産ロックアップ
・第三者割当増資
・株式交換
・増配
・新株予約権
以下にて、順々に解説していきます。

ホワイトナイト

ホワイトナイトという買収防衛策は、敵対的買収を仕掛けられた際に、自社と友好的な関係にある第三者に買収をしてもらう手法です。白馬の騎士になぞらえて、ホワイトナイトと呼ばれています。

友好的関係にある第三者を見つけ出すことが可能かどうかがポイントとなります。ホワイトナイトを実施することで、結果的には他社の傘下に入るという要素を考慮に入れておく必要があるでしょう。

パックマンディフェンス

パックマンディフェンスとは、敵対的買収を仕掛けてきた企業を逆に買収してしまうという買収防衛策です。

会社法では、買収を仕掛けてきた企業の4分の1以上の株式を取得すれば買収を阻止することが可能です。そのため、買収防衛策として4分の1以上の株式取得を目指します。

パックマンディフェンスを実行するには多額の資金が必要になるため、中小企業では実施することが苦難な買収防衛策と言えます。

クラウンジュエル

クラウンジュエルという買収防衛策の特徴は、買収される側の貴重な資産をホワイトナイト(友好的な関係にある第三者)に売却するという手法です。

敵対的買収を仕掛けてきた企業が狙っている貴重資産や収益性の高い事業を、友好的関係にある第三者に売却したり、金融機関からの負債を引き受けたりします。結果的に買収先に引き渡さないことで、買収された後の自社の企業価値を低下させ、買収者の買収意欲を下げることが目的です。

但し、被買収側にとっては貴重な資産を譲渡することになるため、企業価値が損なわれてしまい自社の株主に大きな影響を与えてしまうことがデメリットです。

ジューイッシュデンティスト

ジューイッシュデンティストとは、メディアを通して自社のマイナスイメージを植え付けることで、敵対的買収を仕掛けてきた企業の買収意欲を低下させる手法です。

自社のマイナスイメージが世間に知れ渡ると、自社に対する社会的信用が低下します。そうなると、敵対的買収を仕掛けたとしても事業運営に支障をきたす可能性があります。

たとえ買収したとしても、信用回復などにかかる時間や資金は計り知れないので、敵対的買収を仕掛けてきた企業の買収意欲は低下することでしょう。

スタッガードボード

スタッガードボードとは、企業の取締役などの任期を揃えずにしておくことで、任期満了によりすべての取締役が同時に入れ替わることを防ぎ、経営権を掌握されるまでの時間を稼ぐという手法です。スタッガードは、「交互の、ジグザグ状」という意味があります。

スタッガードボードを実施することで、敵対的買収後に行われる経営権掌握までの時間がかかります。

また、買収側が投下した資金の回収までの時間もかかるため、敵対的買収を仕掛けてきた企業の買収意欲を低下させることが目的です。

資産ロックアップ

資産ロックアップとは、敵対的買収が成功した後に買収された資産を売却できないように制限を設けておく手法です。

敵対的買収を実行する企業の中には、土地などの重要な資産を売却して現金化することを目的に買収する場合があります。

重要な資産や事業を市場価格以下で取得できる権利を友好的な第三者に付与することで、敵対的買収を仕掛けてきた企業の買収意欲を下げることが目的です。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、企業が発行する株式を新株発行する形で友好的な関係にある第三者に引き受けてもらうという手法のことです。増資をするにあたり、特定の第三者に対して新株を発行します。

敵対的買収が仕掛けられた際、新株または新株予約権を第三者に割当することで株式の希薄化が起こり、敵対的買収を仕掛けてきた企業の買収意欲を低下させます。

株式交換

株式交換とは、企業が発行しているすべての株式を、第三者株式会社に取得させることで、完全な親子会社関係を構築し、敵対的買収を防ぐ手法です。

株式交換を行うことで、親会社以外が株式を持つことはできなくなるため、最終的に買収防衛策として機能します。友好的な第三者と株主総会の特別決議を経て、株式交換または合併を行うことで、敵対的買収を防ぐことが可能です。

増配

増配とは、業績改善や株主重視策として定期的に支払われる配当金を増額することです。企業は利益の中から、株主への還元として定期的に配当金を出します。

増配によって株主からの支持を強めることができれば、既存の株式の魅力は高まります。そうなると、敵対的買収を防ぐことにつながる可能性があります。

また株価を上昇させ、株式取得に必要な買収金額を引き上げることで買収を実施しづらくします。

新株予約権

新株予約権とは、予約券を取得した企業がその権利を行使することで、買収される側の企業の株式の交付が受けられる権利のことです。新株予約権を利用すれば、事前に定められた価格で新株が発行されます。

敵対的買収を仕掛けた企業のみ行使できない差別的行使条件を付した新株予約権を用いることで、敵対的買収を仕掛けた企業の議決権を希薄化します。

まとめ

本記事では、敵対的買収から企業の利益を守る買収防衛策の種類について詳しく解説してきました。

友好的関係にない企業からの敵対的買収は、どの企業にも起こり得る危険です。望まない企業からの敵対的買収から自社を守るためにも、事前に買収防衛策について検討しておくことは重要です。

上記で解説した通り、買収前と後とで様々な種類がある買収防衛策について、自社に合った施策を見定めておきましょう。

この記事が、皆様のお役に立てれば幸いです。最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。