COLUMN

コラム

【経営者・CFO必読】上場ゴールとは?上場ゴールに陥らないためのポイントを詳しく解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

監査法人から選ばれるために

IPOを目指すために知っておきたいポイント

今すぐダウンロード

企業によっては上場した後、企業の成長が伸び悩んだ結果、数年も経たないうちに、業績の下方修正を行い株価が落ち込んでしまうケースがあります。このような企業は上場ゴールと揶揄されています。

企業のさらなる成長のために上場を行ったにも関わらず、上場することがゴールになってしまい、企業の成長が止まってしまうのは避けたいですよね。

そこで、本記事では

・上場ゴールとは
・上場後に企業が成長できない要因
・上場ゴールに陥らないためのポイント

について解説して行きます。

上場ゴールとは

上場ゴールとは、継続的に企業価値を向上させていくことではなく、創業者やベンチャーキャピタルが上場によって利益を得ることを目的として上場を行うことをいいます。

新しく株式を上場し、創業者やベンチャーキャピタルなどの株主が保有株式を売却することで利益を得ること自体は一般的なIPOを行うメリットの一つであり、この行為自体には問題はありません。

しかし、一部では創業者やベンチャーキャピタルが自身の短期的な利益のために株式を公開した後に、業績予想の下方修正や配当の見送りなどを行い、株価が初値から下がり続けいつまで経っても株価が初値を上回らず上場後に株主になった人が損をしてしまうというケースがあります。このように、株式上場を、資金調達や知名度向上といった企業の成長を目的として行うのではなく、上場によって得られる利益そのものを目的として行うことを上場ゴールと揶揄されています

しかし、上場後に勢いを失ってしまった企業を批判することは生産的ではありません。

そのため、上場後に成長が伸び悩んでしまう要因を知って、上場ゴールに陥らないためのポイントを抑えておくことが大切になります

上場後に企業が成長できない要因

世間で上場ゴールと言われている株式の銘柄の全てが、故意に上場をゴールにしている訳ではありません。一般的には新規公開株(IPO株)は初値が公募価格を上回る場合が多く、新規公開株への人気が集中することによって、企業の実力以上の株価がついてしまうことがあります。そのため、故意に株価を初値から下げようとしている訳ではなく、上場後の企業の成長が株価に追いつかず株価が下がってしまう場合もあります。

このように、悪質な上場ゴールによる投資家の被害は問題ですが、上場ゴールという言葉が一人歩きし、成長可能性のある企業を上場ゴールと非難してしまうことは避けなければなりません。日本のスタートアップ企業にとって、一定規模まで成長した上でなければ上場をすることが難しい海外とは違って、早いタイミングでも上場という選択をすることは企業の成長戦略の選択肢を増やすことができるという大きなメリットです。

しかし現状では4社に1社が上場後3年でマイナス成長に陥っており、上場をうまく成長につなげることができていないというところに問題があります

ここで、スタートアップ企業が上場後に成長できない要因として以下が挙げられます。

成長投資

企業が特に成長しやすい上場前後の時期に成長投資を絞ってしまうことで、本来成長できたかもしれない可能性を潰してしまっていることが大きな原因として挙げられます。

上場前

企業は、上場を行った際の資金調達額を十分に確保することが求められます。そのためには、上場を行う時の時価総額をできる限り高くしておく必要があります。そのため、マーケティング投資や将来に向けた新規事業投資は短期的には利益を生みにくく、減益の要因になってしまう恐れがあるために、上場前にはこれらの投資を避けてしまいます

上場時

上場時には、企業の財政状況や業績、機関投資家などの意見を総合的に判断し、主幹事証券会社との話し合いの下で株式の公開価格が決められます。主幹事証券会社は、投資家に購入を検討したいと思わせる価格にするために公開価格をできる限り安く値付けをしようとします。このように公開価格が過少に値付けされることにより、資金調達を十分に行うことができず、上場後の成長投資を十分行うことができないことがあります

上場後

上場後は投資家から四半期毎の増益を期待されていることから、増益を維持することを優先してしまう傾向にあります。そのため、マーケティング投資や新規事業投資を増益を維持できる程度にとどめてしまい、企業の成長のための積極的な投資を行わないことが企業の成長を止めてしまっています

人材採用が難しい

成長途中である未上場のスタートアップ企業では、事業の権限や責任を移譲してもらいやすいため、自身が成長する機会を得られやすい一方で上場後の企業では、業務の枠組みが出来上がってしまっているため、事業の権限や責任の自由度が高くない場合が多く、自己成長の機会が限られてしまいます。そのため、事業を引っ張ってくれるような、ベンチャーマインドを持った優秀な人材を採用することが難しく、その結果事業の拡大が進みにくくなってしまいます

さらに、IPOを行う前に会社の中心にいた人材がIPOを行った後にストックオプションを行使した後に、新しいベンチャーを作ったり、別のベンチャー企業に移ったりして離脱してしまう可能性が高いことも上場後の企業の成長を阻む原因としてあります。

上場後の経営ノウハウが不足していること

上場後の企業の経営は、資本市場とのコミュニケーションやガバナンスなど、上場前とは異なる経営を行っていく必要があります。しかし、実際に経営を行っていく以外にそのような経営のノウハウを得る機会はないため、上場企業の経営経験がない経営者は、上場後の経営を探り探り行っていかなければなりません。そのため、手探りの経営になってしまい、企業がなかなか成長できないという事態につながっています。

資本市場とのコミュニケーション

ベンチャー企業が多く上場する東京証券取引所のグロース市場では、四半期の業績など短期的な目線で判断を行う個人投資家が多く、そのような個人投資家のための経営アクションをとってしまうために、企業価値向上のための長期的な目線でのアクションを取りにくくなっています

上場ゴールの罠に陥らないためには

上場ゴールの罠に陥らないためのポイントについて解説をしていきます。

持続的な企業価値向上の動機付けを促す市場

東京証券取引所は2022年4月4日に市場の再編を行いました。以前までは東証二部、マザーズ、JASDAQの市場の位置付けが重複しているために、上場後にのさらなる企業価値向上を目指すべき企業への、継続的な企業価値の向上を促す仕組みになっていないことが課題としてありました。

そのため東京証券取引所は、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目的に、市場区分の再編を行いました。新しい市場区分では、これまで曖昧だった上場基準やコンセプト、上場維持基準が設定され、上場ゴールと揶揄される原因であった、新規上場基準よりも上場廃止基準のハードルが大幅に低いという課題解決に取り組みが勧められました

そのため、多くの企業が、ガバナンス改善や流動性向上のための売出、事業ポートフォリオの見直しなど、上場維持基準を満たすために積極的に動くという結果につながりました

エクイティストーリーを具体的に描き、企業を導く経営者

上場する本来の目的は成長可能性のある事業の成長を実現するために、資金調達を行うことになります。そのため、上場ゴールに陥らないためには経営者が事業に向き合い、事業をしっかりと構想し、エクイティストーリー(投資家に事業戦略や成長シナリオなどを資金使途とともに説明することによって企業の投資価値を示すもの)を具体的に描いていくことが必要になります

グロース市場に上場するためには、投資家に合理的な投資判断を促す観点から「事業計画及び成長可能性に関する事項」を継続的に開示することが求められます。さらに事業計画及び成長可能性に関する事項は少なくとも1事業年度に対し1回以上の頻度で最新の内容を開示することが求められます。

また、企業の成長可能性に関しては、主幹事証券会社が判断し、それをもとに取引所による審査が行われます。この主幹事証券会社による引受審査や取引所の上場審査基準は非常に厳しく、事業計画の前提条件を詳細に確認されるため、根拠の薄い事業計画では審査で落とされてしまいます。

そのため、経営者自らがしっかりと事業に向き合い、エクイティストーリーを詳細に描くことが重要になります

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事では、上場ゴールとは何か、上場ゴールに陥る要因、上場ゴールに陥らないためのポイントについて解説しました。

故意に株価を初値から下げようとしている訳ではなく、新規公開株が人気であることから株価に企業の実力以上の価値がついてしまい、結果として上場後に企業の成長が株価に追いつかずに株価が下がってしまうことも起こり得ます。

このような上場ゴールに陥らないために、上場を目指す企業は持続的な企業価値の向上の動機を促す市場への参加が望まれます

現在スタートアップ・ベンチャー企業を経営していてIPOを目指されている方、IPOに向けた準備を始めようとされている方にとって参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。