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【経営者・CFO必見】グロース市場とは?市場区分の再編による変化を徹底解説!

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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IPOを目指すために知っておきたいポイント

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2022年4月4日、東京証券取引所は市場区分をプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つの新しい市場区分へ再編しました。
※旧市場区分は市場第一部・市場第二部・マザース・JASDAQ(スタンダード / グロース)の4区分。

今回の市場区分の見直しに至った背景としては、
東証一部上場企業数が増加の一途を辿った結果、日本の最上位市場としての質の低下が起きていること
市場区分が多く、明確な線引きもないまま各市場に多数の上場企業が存在すること
の2点が挙げられます。

市場区分数が少なくなったことで一見シンプルになったように思われますが、新しく再編成されたプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の違いを理解していない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、創業から期間が経っていない新興企業を対象としたグロース市場に焦点を当てて、

グロース市場とは一体どんな区分なのか
具体的な上場基準は何か
グロース市場に上場するメリットとデメリットは何か

について解説いたしました!今後IPOを目指している経営者様は勿論のこと財務・経理担当者で直接的に経営に関わらない方々でも、記事を読み終わった後にはグロース市場に関してご理解いただけるかと思います!

また、IPOを目指す上で考えておきたい新規上場することのメリットとデメリットについては、以下の記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
【経営者必読】IPOのメリット・デメリットとは?企業・株主・従業員の観点で解説


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前提:市場区分の再編成の背景

再編後区分の上場企業数

再編成が行われた現在、各市場区分には以下表のとおりの上場企業が存在しています。このように市場区分が再編された背景には、旧市場区分にどのような課題があったのでしょうか。

プライム市場スタンダード市場グロース市場
1,841社1,477社459社

参考:日経ESG『東証プライム上場企業に注がれる厳しい目上場も補助金もESGが条件に』

背景①:上場企業の持続的な企業成長への寄与度の薄さ

従来の市場区分では新規上場基準よりも上場廃止基準が大幅に低かったため、新規上場時の企業価値の水準を維持する意識が薄れる傾向にありました。

また、市場第二部やマザーズといった他の市場区分から東証一部に鞍替えする方が新規で東証一部に上場するよりも基準が緩和されているため、東証第一部に上場後も継続して企業価値の向上に努める仕組みになっていない点も課題でした。

今回の市場区分の再編成に伴って、既に上場を果たしている企業の市場区分変更は以下のスケジュールで実施し、明確な上場基準を持って既存の上場企業の整理を実施しました。

時期内容
2021年9月1日~12月30日上場会社の選択期間
2022年1月11日上場会社の新市場区分の選択結果公表
2022年4月4日一斉移行日

参照:日本取引所グループ>新市場区分のコンセプト・上場基準

現在、東証一部・二部に上場していた企業が再編後に選んだ市場はプライム市場が多く、グロース市場が最も少ない結果になっているものの、新しく整備された上場基準に満たない企業も存在しているため今後変動が発生するでしょう。

背景②:市場区分の不明瞭さ

東証一部・二部のような高い実績を誇る企業向けの市場は、実績のある企業に対して上場機会を提供することで投資家に対して安心した投資機会を提供する目的があります。一方、マザーズのような新興企業向けの市場は、高い成長性を有する企業に上場機会を与えて産業育成を図っていくことを目的としています。つまり、各市場によって目的が異なるため市場区分を分ける必要があります。

しかし、従来型の市場区分では東証二部やJASDAQスタンダードに老舗企業が含まれるなど市場区分が曖昧になっている問題があり、目的別に企業を区分配置できていないという課題がありました。

JASDAQのスタンダード市場とグロース市場を含むと5つの市場区分になっており区分分けと各区分の上場基準が複雑化していたため、今回の市場区分の再編成により投資家側・上場企業側双方にとって理解のしやすい市場配置となりました。

グロース市場とは

先述の通り、これまでの東京証券取引所は、東証一部・東証二部・東証マザーズ・JASDAQ(スタンダード / グロース)の5つの市場区分から構成され、JASDAQは老舗企業が中心のJASDAQスタンダードと新興企業が中心のJASDAQグロースに分類されていました。

2022年4月より再編された市場区分はプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3区分になっていますが、ここでのグロース市場はどういった市場区分なのでしょうか。本項では、グロース市場の区分内容について解説していきます。

グロース市場の位置づけ

東京証券取引所の公式サイトでは、グロース市場を以下の市場と定義しています。

【グロース市場のコンセプト】
高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場

引用:日本取引所グループ>新市場区分のコンセプト・上場基準>グロース

簡単に言えば、グロース市場は従来の市場区分の東証マザーズとJASDAQグロースを集約した市場という位置付けで、新興企業が多く投資家にとってはハイリスクかつハイリターンな投資です。

従来の精度とは異なりグロース市場では、新たに本市場に上場する企業に対して事業計画と進捗の開示など求めることになりますので、投資家側は投資判断に利用可能な情報が増加し、よりリスク許容度の高い個人投資家や機関投資家が新興市場に参画しやすくなるでしょう。

新市場区分の上場基準

先述の通り、グロース市場は市場再編前の東証マザーズ・JASDAQグロースの新興企業からの移行を想定しているため、プライム市場やスタンダード市場と比較して株主数や流通株式数などの要件が緩和されていることが特徴でしょう。

項目内訳プライム市場スタンダード市場グロース市場
流動性株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数2万単位以上2千単位以上1千単位以上
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
売買代金時価総額250億円以上
ガバナンス流通株式比率35%以上25%以上25%以上
経営成績収益基盤・最近2年間の利益合計が25億円以上
または
・売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上
最近1年間の利益が1億円以上
財政状態純資産50億円以上純資産額が正であること

参照:日本取引所グループ>新市場区分のコンセプト・上場基準

グロース市場の上場維持基準

新市場には明確な上場維持基準が設けられており、上場維持基準を下回った上で今後改善されない場合は上場廃止となります。

項目内訳上場基準上場維持基準
流動性株主数150人以上150人以上
流通株式数1千単位以上1千単位以上
流通株式時価総額5億円以上5億円以上
売買高月平均10単位以上
ガバナンス流通株式比率25%以上25%以上
事業計画時価総額

参照:日本取引所グループ>新市場区分のコンセプト・上場基準

今回再編が行われる前は、新規上場基準よりも上場廃止基準が大幅に低かったという問題がありました。しかし、再編後は上場当初の基準を最低限維持することが求められている点が再編前の精度とは異なるポイントです。

その他再編前の精度と異なる点として、以下2点が挙げられます。
旧区分のJASDAQ市場では流通株式比率が求められなかった要素なので、上場に向けて努力を求められる企業の動画が予想される点
JASDAQ市場と比較すると、上表の流動性の面で上場廃止基準はやや厳格化されている点

プライム市場・スタンダード市場との違い

グロース市場は、プライム市場・スタンダード市場とどのような点で違いが生まれるのでしょうか。3つの違いを解説していきます。

企業としての成長可能性を重視している

まず大きな違いとして、企業の成長可能性に重点を置いているというポイントです。

そして、成長可能性に着目するのは、旧市場だったときに新規上場時の企業価値の水準を維持する意識が薄れてしまっていたことに由来していると考えられます。グロース市場の企業が成長することで、旧市場における東証1部や2部にいたような企業にも成長の意識がより芽生えることが期待できます。結果的に、日本の上場企業とそれが運営するビジネスを拡大・発展させることにつながるでしょう。

経営成績・財政状態が上場時に求められない

先にも述べたように、グロース市場に上場する際には、スタンダード市場とプライム市場には設けられている経営成績・財政状態が求められることはありません。コンセプトにもあるとおり、大きく急拡大する企業が上場する市場であり、そのような成長を遂げようとしているベンチャー企業が上場できる状態を作るために、経営成績や財政の状態については基準に入ってないのだと考えられます。

リスクの高さ

成長を重視するグロース市場であるからこそではありますが、相対的にリスクが高いことも、スタンダード市場やプライム市場と違いだといえます。

グロース市場に上場するような主にベンチャー企業は、既存のビジネスが安定的に伸びるというよりもむしろ、新しくニーズやマーケットを作っていくようなビジネスを展開していることが多いです。大きな成長を遂げるポテンシャルはある一方で、規制や市場の変化、顧客ニーズの変化などによってビジネスが左右して業績が悪化することは、当然リスクとしてついて回ります。

グロース市場に上場するメリットとは

メリット①:新興企業としての認知度拡大

市場区分の再編後は、プライム・スタンダード・グロースの各市場区分のコンセプトが明確に定まっている状態であるため、「グロース市場に上場している」点だけで今後成長が見込まれ東証も評価している新興企業と認識され、リスク許容度の高い投資家からの資金調達がしやすくなると考えられます。

また、上場維持基準も新規上場時と同等の水準なので、新興企業であってもグロース市場にいるだけで一定の企業価値を維持している企業であると投資家から評価されるようになるでしょう。

メリット②:内部管理体制の厚さを周知

先述で挙げた、グロース市場に上場している・上場維持している点は新興企業として資金を集めやすくなるだけでなく、内部管理体制を整えている企業としての評価も得られることでしょう。

上場時は勿論のこと、上場維持にも厳格な基準を満たしていることが要件になりますので、上場後も企業価値向上、並びに不正等の取り締まりの強化にも努めていくことが予想されますのでコーポレートガバナンスの観点でもメリットはあるでしょう。

グロース市場に上場するデメリットとは

デメリット①:リスク嫌いの投資家からのマイナス評価

先述のメリットの裏返しになりますが、グロース市場は新興企業中心の市場であるとして投資家からの評価を受けることになりますので、ハイリスク・ハイリターンを好まないリスクを嫌気する投資家から投資実行を避けられる可能性があります。

今回の再編により、グロース市場に上場した企業は事業計画とその事業計画の進捗状況の開示を求められるようになりますので、投資家に対して成長可能性と足元の対策の安定性を示すことが必要でしょう。

デメリット②:上場基準の維持に骨が折れる

旧区分とは異なり、上場維持には新規上場する際と同等の維持基準が求められるため、会社が急成長して忙しい最中であっても上場基準維持をするための業務に奔走しなければならないでしょう。

投資家への説明責任に加え、上場維持に必要な基準の達成が求められる点は今回の再編ならではのデメリットと言えるでしょう。

グロース市場に新規上場する方法とは

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申請方法

グロース市場の上場申請から上場承認までの主な流れは以下の通りです。

1.上場申請エントリー
2.事前確認・スケジュール調整…担当者、日本証券取引所自主規制法人の審査担当者、主幹事証券会社の間で行われる
3.上場申請、申請書類受理、ヒアリング…申請書類を提出し、上場申請の手続きをした後、審査担当者から上場申請理由や、会社の沿革、事業内容などのヒアリングを受けます
4.質問事項送付~回答、ヒアリング(やり取りは3回程度):不明な点があれば、審査担当者から、質問事項を提示。質問に対する回答書をもとに再度ヒアリングを受けます
5.各種面談:審査担当者が審査項目に適合しているか確認をしていきます
6.社長説明会:代表が事業内容や事業計画などを東証に対して実施します
7.上場承認

また、上場審査と上場にはコストも発生する点も見逃せないでしょう。グロース市場の場合には上場審査料が200万円。新規上場料100万円。その他年間上場料として、上場時価総額に応じた年間上場料がかかります。

上場時価総額グロース市場
50億円以下48万円
50億円超250億円以下120万円
250億円超500億円以下192万円
500億円超2,500億円以下264万円
2,500億円超5,000億円以下336万円
5,000億円超408万円

参考:日本取引所グループ>株式・ETF・REIT等>上場制度(内国株)>上場料金>上場に係る料金

審査内容

グロース市場の上場審査では、株主数などの形式要件とは別に実質審査基準が設定されており、リスク情報などの開示も併せて求められている点がグロース市場の審査内容の特徴です。

以下、実質審査基準と各項目のポイントを引用しておりますので参考にしてください。

項目内容
企業内容、
リスク情報等の開示の適切性
・経営に重大な影響を与える事実などの会社情報を管理し、適時・適切に開示できる状況にあること。また、未然防止体制が適切に整備・運用されていること
・企業内容の開示に係る書類が、法令に準じて作成されていること。かつ、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項や、リスク要因として考慮されるべき事項、事業計画、成長可能性に関する事項について、投資者の投資判断上有用な事項、主な事業活動の前提となる事項などは、わかりやすく記載されていること
関連当事者やその他、特定の者と取引や株式所有割合の調整などで企業グループの実態の開示を歪めていないこと
・親会社がある場合、申請会社の経営に重要な影響を与える親会社に関する事実や、情報を申請会社が適切に把握できて、投資者に適時・適切に開示できる状況にあること
企業経営の健全性・特定の者との間での取引行為などにおいて、不当な利益の供与や享受をしていないこと
・親族関係や、他の会社などの役員などとの兼職の状況が、役員としての公正・忠実な業務の執行や、有効な監査の実施を損なうような状況でないこと
・親会社からの独立性を有する状態であること
企業のコーポレート・ガバナンス
及び内部管理体制の有効性
・役員の適切な職務の執行を確保する体制が、適切に整備・運用されていること
・内部管理体制が適切に整備・運用されている状況であること
・経営活動の安定、適切な内部管理体制維持のために必要な人員が確保されていること
・実態に即した会計処理基準が採用されており、会計組織が適切に整備・運用されていること
・法令順守の体制が適切に整備・運営されていること
事業計画の合理性・事業計画がビジネスモデル、事業規模、リスク要因などを踏まえ適切に策定されていること
・事業計画を遂行するための事業基盤が整備されていること、または、整備される合理的な見込みがあること
その他公益又は投資者保護の観点
から当取引所が必要と認める事項
・株主の権利内容やその行使の状況が公益または、投資者保護の観点で適当と認められること
・経営活動や業績に重大な影響を与える紛争などを抱えていないこと
・反社会的勢力による経済活動への関与を防止するための社内体制を整備していること

参照:日本取引所グループ>2022 新規上場ガイドブック(グロース市場編)>3.上場審査の内容

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、2022年4月の市場再編によって新しく誕生した新市場のグロース市場について解説しました。

旧区分のJASDAQ市場や東証マザーズ市場で株式上場した新興企業が集まった市場区分になりますので、他の市場区分と比較してハイリスク・ハイリターンの投資価値のある市場である点が特徴となります。

また、他の市場区分とも重複しますが、今回の市場再編に寄って新規上場するだけでなく上場後の維持にも険しい基準が設けられることになりましたので、新規上場を検討する際は上場によって得られるメリットだけでなく想定されるリスクも踏まえたうえで意思決定する必要があるでしょう。

SOICOでは、ストックオプションや株式報酬制度の設計・導入に関するコンサルティングを中心に提供しておりますが、今回の記事のようなコラムにてIPOと取り扱った記事を多数展開しておりますので、グロース市場以外に関する知識を学びたい方は参考にしてみてください。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。