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コーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則|特徴・制定の背景・適用範囲と拘束力について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

コーポレートガバナンス・コードの基本のキ
~概要と基本原則を解説~

コーポレートガバナンス・コードの「基本的な概要」と「基本原則」にフォーカスして紹介

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ニュースを見ると「粉飾決算」や「食品偽装の隠蔽」など企業の不祥事の責任などをメディアが大きく取り上げることがあります。

不祥事に対して、記者会見の場で「今後はガバナンスを強化することで再発を防いでいく」と述べる企業の社長もいます。

社内のガバナンスを強化する手段の1つとして、コーポレートガバナンス・コードの遵守があります。コーポレートガバナンス・コードによって社内体制を強化することで、企業は経営の透明性を高めることができ、株主やステークホルダーに正確な情報を伝え、中長期的に企業価値を向上させることにつながっていきます。

本記事では、コーポレートガバナンス・コードの特徴やその内容などについて解説していきます。

コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンス・コードは、企業が顧客、株主、社員、地域社会などの利害関係者を考慮し、透明性を保ちつつ、公正・迅速に確定的な意思決定を行うための基本的な原則やガイドラインをまとめたものです。

コーポレートガバナンス・コードの策定により、基本的な原則が適切に実施されることで、各企業の持続的な成長と企業価値向上に向けた対応が各企業が主体となって取り組み、結果的には経済全体の発展に寄与すると考えられます。

また、コーポレートガバナンス・コードは、「Corporate Governance」の頭文字を取ってCGコードと略される場合もあります。

コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスとは、企業における不正や不祥事を防ぐため、企業経営において監視をする仕組みのことを指し、「Corporate Governance」の日本語訳である「企業統治」にあたります。

企業は経営者ではなく株主のためにあるものであるという考え方に立ち、ステークホルダーに不利益を被らせることがないよう、企業価値を維持・向上し、利益を最大化していく必要があります。そこで、コーポレートガバナンスを明記し、原則をまとめたものが、コーポレートガバナンス・コードになります。

なお、コーポレートガバナンスについては、別の記事で詳細にご紹介しているので、そちらも併せてご覧ください。
コーポレートガバナンス(企業統治)とは?目的・強化方法・歴史的背景について解説!

コーポレートガバナンス・コード制定の背景

コーポレートガバナンスの考え方は1980年代にアメリカで誕生しました。経営者は株主の利益を最大化するために企業の運営を行うものであるという考え方のもと、アメリカで1980年代に経営者が株主の利益を最大化するために企業経営を監視する仕組みが生まれました。この監視の仕組みのことをコーポレートガバナンスと言うようになりました。

1990年代に、日本で「粉飾決算・偽装表示・違法労働」を中心とした企業の不祥事や経営悪化が多数発生したことをきっかけに、日本でコーポレートガバナンスが注目されるようになりました。 

取締役を監査役が監視する日本企業の従来型の仕組みに加えて「委員会設置会社」というアメリカ型の統治体制が新たに導入されました。

そして、企業統治の強化、監督・意思決定の透明化が進められる流れでコーポレートガバナンスを実現するための原則(コード)がまとめられるようになります。このコーポレートガバナンス・コードの制定については、2014年当時の日本政府の閣議決定された「日本再興戦略」が発端となります。

日本再興戦略は、日本企業の稼ぐ力を伸ばしていくために決定されたものであり、具体的な施策の1つとして、コーポレートガバナンス・コードの策定が掲げられています。東京証券取引所と金融庁が原案を作成し、2015年6月に施行されています。

コーポレートガバナンス・コードの特徴

コーポレートガバナンス・コードの特徴が金融庁より挙げられているので、それぞれの内容をご紹介します。
・守りではなく攻めのガバナンス
・コンプライ・オア・エクスプレイン
・プリンシプルベース・アプローチ

守りではなく攻めのガバナンス

1つ目は、守りのガバナンスではなく、攻めの姿勢のガバナンスであることです。普通、コーポレートガバナンスはリスク回避や不正防止など、企業を守るための手段の1つとして考えられますが、コーポレートガバナンス・コードにおいては、企業の成長と価値の向上を目指しているため、攻めの姿勢の手段として考えられています。

コンプライ・オア・エクスプレイン

2つ目は、コンプライ・オア・エクスプレインです。日本語に訳すと、「遵守をするか説明するか」であり、定められた原則について、必ずしも遵守する必要はないが、その場合は理由を説明するという内容です。これは、コーポレートガバナンス・コードの最も重要な特徴であり、それぞれの企業において、最適なガバナンスを実施することが可能になります。

プリンシプルベース・アプローチ

3つ目は、プリンシプルベース・アプローチです。これは、抽象的な原則に基づいて各企業が最適なガバナンスに取り組む考えであり、それぞれの場合に応じて柔軟に原則自体を解釈できるというものになります。つまり、プリンシプルベース・アプローチの考え方は、できること・できないことを明確にかつ詳細に定めたルールベース・アプローチの反対に当たります。

コーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則

コーポレートガバナンス・コードは、5つの原則に基づいて構成されています。ここでは、その5つの基本原則を紹介します。
・株主の権利・平等性の確保
・株主以外のステークホルダーとの適切な協働
・適切な情報開示と透明性の確保
・取締役会等の責務
・株主との対話

株主の権利・平等性の確保

1つ目は、株主の権利・平等性を確保することです。企業にとって、最も重要な存在である株主の権利を確保しつつ、その権利を適切に行使できる環境としていくことが必要となります。結果として、株主と企業の間で信頼関係ができ、互いに協働しあうことが期待されます。加えて、少数の株主や外国人株主においても、権利の平等性に十分に配慮していく必要があります。
株主の権利の平等性に配慮する具体的な施策としては、以下の2つが挙げられます。
・資本政策の基本的な方針を説明すること
・株主の判断の役に立つ情報を正確に提供すること

資本政策については、こちらの記事もご参照ください。
IPOに向けた成功する資本政策|上場後の資金調達の仕組みも解説
資本政策とは?必要性や考慮すべき点、失敗事例まで徹底解説!

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

2つ目は、株主以外のステークホルダーと適切に協働していくことです。企業が持続的に成長し、企業価値を向上させていくためには、従業員や顧客、取引先など株主以外のステークホルダーとの協働が必須となります。

なお、ステークホルダーとの協働に関する具体的な施策は、次の3つの原則があります。
・中長期的な企業の価値を向上させるための基盤となる経営理念の策定
・不正などの内部通報の体制の整備
・女性や外国人などの活躍の機会の平等性の確保のような社内での多様性の推進

適切な情報開示と透明性の確保

3つ目は、適切な情報の開示とその透明性の確保です。上場企業に対しては、多くの情報を開示していくことが求められていますが、正確な情報であり、公正かつ透明性のある情報を開示することが必須となります。

これは、株主を含めたステークホルダーとのコミュニケーションを充実させ利益を守ることができるだけでなく、企業の社会的な信頼性を確保していくにあたり重要となってきます。

取締役会等の責務

4つ目は、取締役会等の責務です。取締役会等の責務とは、経営陣に対して独立した客観的な立場から実効性の高い監督を実施することを指します。

取締役会は、会社の意思決定だけでなく、各取締役を監督する役割もあります。これら役割を持つ、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社の3社のうち1社が、取締役会の責務に当たる業務を行います。

指名委員会等設置会社については、こちらの記事もご参照ください。
指名委員会等設置会社とは?組織の概要・設置の目的・メリット・デメリットについて解説

株主との対話

最後は、株主との対話です。株主と建設的な対話を推進していくことは、企業の経営体制の整備や経営基盤の強化に対して非常に効果的な方法です

コーポレートガバナンス・コードにおいて、株主総会だけに限らず株主との対話の場を設けることで、持続的な成長と企業価値の向上につながるとされています。株主との対話において、今後の企業方針や施策等についてわかりやすく説明し、懸念点等があった場合は適切に対応していくことが求められます。

コーポレートガバナンス・コードの適用範囲と拘束力

コーポレートガバナンス・コードは東京証券取引所と金融庁が合同で作成したガイドラインであることから、コーポレートガバナンス・コードが適用される企業は、原則として東証上場企業のみとなっていますが、その適用対象範囲と法的拘束力の有無について解説します。
・適用範囲
・法的拘束力

適用範囲

コーポレートガバナンス・コードは、基本原則・原則・補充原則の3つの段階で構成されており、企業規模によって遵守の範囲が異なってきます。

プライム市場・スタンダード市場に属する上場企業については全ての原則を、グロース市場に属する上場企業については基本原則の遵守が必要となってきます。なお、各原則の具体的な内容は下記の通りです。

項目 内容 対象
基本原則 企業統治に関する基本的な考えや理念を示したもの プライム市場・スタンダード市場・グロース市場
原則 基本原則の内容を具体化したもの プライム市場・スタンダード市場
補充原則 原則の実現に向けて、より具体的な行動指標を示したもの プライム市場・スタンダード市場

法的拘束力

東京証券取引所のガイドラインに当たるコーポレートガバナンス・コードには法的拘束力は発生せず、違反が認められた場合においても、制裁金などの罰則は生じません。しかし、コーポレートガバナンス・コードの特徴で紹介した通り、コンプライ・オア・エクスプレインの原則により、遵守できなかった場合はその理由を東京証券取引所に説明する必要が生じます。

万が一、十分な説明を果たすことができない場合は、東京証券取引所の上場規則の違反に該当し、東京証券取引所の判断により、理由の説明義務に違反した企業として公表され、社会的評価が下落してしまう場合があります。

コーポレートガバナンス・コードの改訂の歴史

コーポレートガバナンス・コードは、環境の変化に対応するため、過去に2度改訂されています。ここではそれぞれの改訂におけるポイントをご紹介します。
・2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂
・2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂

2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂

まずは、2018年におけるコーポレートガバナンス・コードの改訂です。2018年の改訂では、企業と投資家との対話を深めるにあたり、企業経営の透明性や合理性を向上させる向上させるために下記のポイントについて改定されました。
・CEOの選任・解任に関する補充についての原則の新設
・適切な人数を有する独立社外取締役選任の必要性について原則で公表
・適切な経験・能力・専門知識を有する者が監査役とする原則の新設
・経営戦略や経営計画の策定・公表について、各企業の資本コストを正確に把握する内容について原則で公表

2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂

2021年におけるコーポレートガバナンス・コードの改訂については、下記のポイントが改定されています。
・取締役会の機能発揮
・企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保
・サステナビリティをめぐる課題への取り組み
・その他事項

2021年に改定されたコーポレートガバナンス・コードについては、次の記事もご参照ください。
【2021年改訂】コーポレートガバナンス・コードの実務対応と開示事例

まとめ

本記事では、コーポレートガバナンス・コードの特徴や基本原則などについてご紹介しました。コーポレートガバナンス・コードの遵守については、法的拘束力はありませんが、社会的な信頼や経営基盤の強化、企業の持続的成長に関して非常に重要となってきます。そのため、コーポレートガバナンス・コードの内容をよく理解し、適切に対応していくようにしましょう。

本記事が経営者・役員・企業のガバナンスに関係する担当者の方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。