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プリンシプルベース・アプローチ|ルール・ベース・アプローチとの比較・背景・意義について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

コーポレートガバナンス・コードの基本のキ
~概要と基本原則を解説~

コーポレートガバナンス・コードの「基本的な概要」と「基本原則」にフォーカスして紹介

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昨今では環境の変化が著しく、経済や技術の発展は急激に進んでおります。こうした状況において、金融サービスにおいても、急激な高度化が進んできていることから、その都度明確にルールを規定し、周知することが難しい状況となってきています。

そのため金融庁では、忠実にルールに則る考え方から、原理原則に則った考え方で対応していく方針を採用しております。

本記事では、原理原則に則った考え方であるプリンシプル・ベース・アプローチについて解説していきます。

プリンシプル・ベース・アプローチとは

プリンシプル・ベース・アプローチとは、規制対象の金融機関が尊重すべき重要ないくつかの原則や規範を示したうえで、それに沿った行政対応を行っていくことを指します。プリンシプルは準則、原則を意味し、何を実践する必要があるか詳細に示しませんが、提示された原則に則って金融機関が自主的に取り組んでいくことを示しています。

そのため、原則は明らかにする一方で、詳細な規定やルールは定めないことが特徴です。プリンシプル・ベース・アプローチは、金融機関における経営の独自性や自由を確保することができるという大きなメリットがある方法になります。

プリンシプル・ベース・アプローチとルール・ベース・アプローチ

プリンシプル・ベース・アプローチと対極に位置する考え方が、ルール・ベース・アプローチとなります。これはその名の通り、法律などで決められたある程度の詳細なルールや規則に則り、それらを個別事例に適用していくということを指します。

ルール・ベース・アプローチでは、行政による恣意的なものを排除できる、または規制される側においても予見できる可能性が向上することがメリットとして挙げることができます。一方で、ルール上で禁止されていないことについては、問題ないとして解釈されてしまう危険性もあります。そのため、変化が大きい金融の世界においては、限界が生じるという点も挙げることができます。

プリンシプル・ベースの背景

日本の金融や証券において、2008年4月にプリンシプル・ベースの考え方が導入されました。当時の金融庁において、金融規制の質向上(ベター・レギュレーション)という目標を掲げ、そのための大きな指針として、ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組合せに対する考え方を示しました。

そこで軸となるプリンシプルを決めるにあたり、金融機関と議論を重ね、2008年4月18日に金融サービス業におけるプリンシプルをとりまとめて公表するに至りました。

プリンシプル・ベース・アプローチが効果的な分野

監督すべき対象の金融機関が、経営管理やガバナンスの改善、また財務の健全を維持するにあたってリスクに対する対応や管理する体制の構築、法令順守に対する体制の整備などを進めていく場合、プリンシプル・ベースによる監督が非常に有効となります。

資本市場におけるプリンシプル・ベースの意義

市場は常に変化しており、設計されたルールと実態が合っていないケースが生じることが多々あります。また、ルールを詳細に設けて行動を制限してしまうことで市場の革新性が失われる可能性があることから、法律のように厳格な規則は好ましくありません。

不公平な取引手法を使用してはならない、不当な価格で取引してはならない、株主を平等に扱う必要があるなど、地域や国家間、また時代を超えても妥当感のある原則が求められます。

したがって、前もってルールを詳細に定めずに大枠の規則を置くプリンシプル・ベースの意義は非常に重要となります。

イギリスの金融サービス機構の動向

海外居住者に対する ストックオプションの付与の注意点

プリンシプル・ベース・アプローチによる監督する方法について、イギリスの金融サービス機構(FSA)は、近年非常に重要とみなしています。FSAの規則においてどの範囲がプリンシプルに当たるのかについては明確ではありませんが、規則の大分類における「高次元の基準」に該当する箇所が最もプリンシプルに近いと考えられます。

「高次元の基準」は、現在以下の11項目とされています。

基本原則 概要
①誠実性 事業を誠実に遂行する
②技量や注意深さ 十分な技量・注意深さをもって事業を遂行する
③経営と統制 適当なリスクを管理システム下において、自社の業務に対して責任と実効性を持ち、組織および統制するための常識的な注意を払う
④適切な財務管理 適当な財務における経営資源を維持する
⑤市場行為 市場行為に関する適切な基準を遵守する
⑥顧客利益 顧客の利益に対して注意を払い、顧客に公正な対応をする
⑦顧客とのコミュニケーション 顧客のニーズに正当な注意を払い、明瞭で公正な形で誤解を生まない方法で顧客に情報を伝える
⑧利益相反 自社と顧客、および顧客と顧客の間における利益相反を公正に管理する
⑨顧客との信頼関係 金融機関の判断を基準とする顧客に対して、裁量的判断の適合性を確保するための常識的な注意を払う
⑩顧客資産 顧客資産に対して適当な保護を前もって用意する
⑪規制当局との連絡 規制当局と透明度が高く協力的な形で互いに対応すること。かつ、自身に関してFSAが金融機関からの通知を常識的に期待するであろう事項について、FSAに適切に情報を開示すること

参照:FSAの「事業の基本原則」(「プリンシプルベース」の監督・規制手法における「もう一つのプリンシプル」みずほ総研)

日本の金融庁のプリンシプル

日本の金融庁が2008年に取りまとめたプリンシプルについても紹介します。このプリンシプルは14項目からなり、行政と業界における共有認識として普及させていき、日本市場の透明性と信頼の向上につなげるために、対話や議論の土台としたいということを、金融庁は発表しています。具体的な内容については、以下の通りです。

金融サービス業におけるプリンシプル
①創意工夫をこらした自主的な取組みにより、利用者利便の向上や社会において期待されている役割を果たす。
②市場に参加するにあたっては、市場全体の機能を向上させ、透明性・公正性を確保するよう行動する。
③利用者の合理的な期待に応えるよう必要な注意を払い、誠実かつ職業的な注意深さをもって業務を行う。
④利用者の経済合理的な判断を可能とする情報やアドバイスをタイムリーに、かつ明確・公平に提供するよう注意を払う。
⑤利用者等からの相談や問い合わせに対し真摯に対応し、必要な情報の提供、アドバイス等を行うとともに金融知識の普及に努める。
⑥自身・グループと利用者の間、また、利用者とその他の利用者の間等の利益相反による弊害を防止する。
⑦利用者の資産について、その責任に応じて適切な管理を行う。
⑧財務の健全性、業務の適切性等を確保するため、必要な人員配置を含め、適切な経営管理態勢を構築し、実効的なガバナンス機能を発揮する。
⑨市場規律の発揮と経営の透明性を高めることの重要性に鑑み、適切な情報開示を行う。
⑩反社会的勢力との関係を遮断するなど金融犯罪等に利用されない態勢を構築する。
⑪自身のリスク特性を踏まえた健全な財務基盤を維持する。
⑫業務の規模・特性、リスクプロファイルに見合った適切なリスク管理を行う。
⑬市場で果たしている役割等に応じ、大規模災害その他不測の事態における対応策を確立する。
⑭当局の合理的な要請に対し誠実かつ正確な情報を提供する。また、当局との双方向の対話を含め意思疎通の円滑を図る。

出典:金融サービス業におけるプリンシプル(金融庁)

プリンシプル・ベース・アプローチが採用されている事例

実際にプリンシプル・ベース・アプローチが採用されている事例を2点ご紹介します。
・コーポレートガバナンス・コード
・顧客本位の業務運営に関する原則

コーポレートガバナンス・コード

コーポレートガバナンス・コードは、企業が顧客、株主、社員、地域社会などの利害関係者を考慮し、透明性を保ちつつ、公正・迅速に確定的な意思決定を行うための基本的な原則やガイドラインをまとめたものです。

この考え方は、1980年代にアメリカで誕生し日本でもコーポレートガバナンスが注目されるようになったことで、東京証券取引所と金融庁が原案を作成し、2015年6月に策定されています。

なお、コーポレートガバナンス・コードについては、別の記事で詳細にご紹介しているので、そちらも併せてご覧ください。
【2021年改訂】コーポレートガバナンス・コードの実務対応と開示事例
コーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則|特徴・制定の背景・適用範囲と拘束力について解説
コーポレートガバナンス(企業統治)とは?目的・強化方法・歴史的背景について解説!

コーポレートガバナンス・コードの説明において、各原則の適用の仕方は、それぞれの会社が自らの置かれた状況に応じて工夫すべきであると記載されており、ルールベースではなく、実効的なコーポレートガバナンスを実現することができるよう、いわゆる「プリンシプル・ベース・アプローチ」を採用していると、明記されていることが特徴です。

顧客本位の業務運営に関する原則

顧客本位の業務運営に関する原則とは、金融事業者が顧客本位の業務運営における効率性を高めるために有用と考えられる原則を定めたものです。

従来は金融商品を理解しやすい内容とするために法改正が行われていましたが、結果的に法律で決められた内容を守ればよいという姿勢を助長する形となっていました。そのため、事業者が自ら業務の運営方針を目指していくことができる仕組みとするため、顧客本位の業務運営に関する原則が策定されるに至りました。

そこで、ルール・ベース・アプローチではなく、プリンシプル・ベース・アプローチを採用することで、事業者側が原則を十分に理解し、とるべき行動を自らが判断し実践していく必要があります。

顧客本位の業務運営に関する原則は、以下の7点について定められています。

原則 概要
【顧客本位の業務運営に関する方針の策定・公表等】 原則1. 金融事業者は、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表するとともに、当該方針に係る取組状況を定期的に公表すべきである。当該方針は、より良い業務運営を実現するため、定期的に見直されるべきである。
【顧客の最善の利益の追求】 原則2. 金融事業者は、高度の専門性と職業倫理を保持し、顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。金融事業者は、こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきである。
【利益相反の適切な管理】 原則3.金融事業者は、取引における顧客との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。金融事業者は、そのための具体的な対応方針をあらかじめ策定すべきである。
【手数料等の明確化】 原則4.金融事業者は、名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細を、当該手数料等がどのようなサービスの対価に関するものかを含め、顧客が理解できるよう情報提供すべきである。
【重要な情報の分かりやすい提供】 原則5.金融事業者は、顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、上記「原則4」に示された事項のほか、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきである。
【顧客にふさわしいサービスの提供】 原則6.金融事業者は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきである。
【従業員に対する適切な動機づけの枠組み等】 原則7.金融事業者は、顧客の最善の利益を追求するための行動、顧客の公正な取扱い、利益相反の適切な管理等を促進するように設計された報酬・業績評価体系、従業員研修その他の適切な動機づけの枠組みや適切なガバナンス体制を整備すべきである。

出典:「顧客本意の業務運営に関する原則」(改訂版:令和3年1月15日)

まとめ

本記事では、プリンシプル・ベース・アプローチの考え方や具体的な内容について、ご紹介しました。ルールによって詳細に規定されるのではなく、基本的な原理原則に則って、自社の裁量で独自の経営を進めていくことが重要となります。

そのためにも、プリンシプル・ベース・アプローチの考え方やその原理原則を十分に理解しておくようにしましょう。

本記事が、経営者・役員・企業のガバナンスに関係する担当者の方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。