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人的資本経営コンソーシアム|組織の概要・設立同期・発起人が属する企業について紹介

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

コーポレートガバナンス・コードの基本のキ
~概要と基本原則を解説~

コーポレートガバナンス・コードの「基本的な概要」と「基本原則」にフォーカスして紹介

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人材を資本として考える人的資本経営が注目される中で、政府と企業が協力して設立した「人的資本経営コンソーシアム」にも多くの関心が寄せられています。

この記事では、人的資本経営コンソーシアムの概要や設立動機、参画した企業の事例も紹介しながら詳しく解説していきます。

人的資本経営とは

人的資本経営は、企業が従業員や人材を資本と同様に重要な資産として見なし、彼らのスキル、経験、モチベーションなどを向上させるために投資を行い、その価値を最大化しようとする経営手法です。

このアプローチは、中長期的な企業価値向上や成長に寄与し、組織の成功を支える重要な要素とされています。「人的資本」という言葉には一貫した定義が存在せず、その意味や範囲は発信する機関や企業などによって微妙に異なることがあります。

人的資本経営・人的資本投資については、こちらの記事もご参照ください。
人的資本経営とは?注目される背景・重要な3つの視点と5つの要素について解説
人的資本投資とは?重要性を増す背景・メリット・取り組みのポイントについて解説

人的資本経営コンソーシアムの概略

自社の中長期的な成長に資する人材戦略を経営陣が主導し、戦略を実践に落とし込むと同時に、方針を対話や報告書等でステークホルダーに伝えることは、持続的な企業価値の向上に欠かせない要素です。

人的資本経営コンソーシアムの設立は、一橋大学CFO教育研究センター長である伊藤邦雄氏をはじめとする計7名の発起人により要請され、2022年8月25日に設立総会が開催されました。

人的資本経営コンソーシアム内には、総会を統括する企画委員会、実践分科会、そして開示分科会が設けられており、それぞれの委員会や分科会を通じて、先進的な人的資本経営の取り組み事例の共有、企業間の協力に向けた議論、効果的な情報開示の検討が行われています。

人的資本経営コンソーシアムには、オブザーバーとして経済産業省及び金融庁が参加しています。人的資本経営コンソーシアムの活動を通じて、人への投資に積極的な日本企業に世界中から投資資金が集まり、次なる成長に繋がることに期待が高まります。

人的資本経営コンソーシアムの設立動機

人的資本経営コンソーシアムに、経済産業省及び金融庁がオブザーバーとして参加した背景について解説していきます。

経済産業省

経済産業省は以前から、日本企業の成長において「人材」が重要な要素であることに着目してきました。2014年には「伊藤レポート」を公表し、日本企業の停滞状態とその改善に向けて必要な取り組みがまとめられています。機関投資家との関係においても、企業価値向上に向けた人的資本の非財務情報の活用が重要です

このような背景から、経営環境の変化に即した人材戦略の構築を奨励し、中長期的な企業価値の向上を図るため、経営陣・取締役・投資家それぞれの役割や、投資家との対話の在り方、関係者の行動変容を促す方法などについて検討するため、2020年1月から研究会を開催しました。
また、2020年には、「人材版伊藤レポート(第1弾)」を公表し、その内容をブラッシュアップした「人材版伊藤レポート2.0」という報告書によりアップデートされています。

経済産業省が、人的資本経営コンソーシアムにオブザーバーとして参加し、公式HP上での入会受付や活動内容の情報発信などの活動を行っています。

金融庁

金融庁は2022年11月に、企業が人的資本に関する情報を公開するための改正案の概要をまとめました。これにより、今後企業は財務情報に加え、自社のサステナビリティ活動に関する取り組みを開示することが求められるようになります。

自社のサステナビリティ活動に関する取り組みの開示は、2023年3月31日以降に終了する事業年度の有価証券報告書より適用されます。

経済産業省と同様に、金融庁も人的資本経営コンソーシアムにオブザーバーとして参加し、人的資本経営の推進に取り組んでいます。

人的資本経営コンソーシアムに関する議論

人的資本経営コンソーシアムでは、人的資本経営に関する様々な議論が行われ、分科会が頻繁に開催されています。

議事の内容は非公開とされており具体的な内容を確認することは難しいですが、人的資本の情報開示に関わる議論を推進する旨を2022年7月25日に経済産業省が人的資本経営コンソーシアムの設立背景とともに情報を開示しています。

人的資本経営コンソーシアム発起人が属する企業

人的資本経営コンソーシアムには、建設業・金融業・サービス業など多岐にわたる業界の法人が参加しており、人的資本経営の実践と情報開示に関する先進的な取り組みを行い、その内容を共有しています。

人的資本経営コンソーシアムへの参加には、以下の3つの条件を満たす必要があります。
・国内に事業所を有し、現に事業活動を行っている法人であること
・相当数の従業員を対象に人的資本に関する取り組みを行っていること
・有価証券報告書や統合報告書等で人的資本情報の開示を行っていること

したがって、会員とは人的資本経営を実践している法人と見なされます。

人的資本経営コンソーシアムは、発起人代表である伊藤邦雄氏を含むCEOやCFOの6名と共に、計7名の発起人によって設立されました。

次に、この発起人が経営を担っている6つの企業を紹介します。
・株式会社リクルート
・キリンホールディングス株式会社
・SOMPO ホールディングス株式会社
・日立製作所株式会社
・ソニーグループ株式会社
・アセットマネジメントOne株式会社

株式会社リクルート

リクルートは創業以来、一貫して「個の尊重」と「価値の源泉は人」という価値観を基に事業展開してきました。

人的資本経営というテーマにおいて期待されているのは、人的資本の価値を最大限引き出す工夫を経営の進化に掛け合わせることで、日本社会の持続的成長を加速させることであると提言しています。

リクルートは人的資本経営コンソーシアムを通じて、今以上の多様性や新たな日本企業の在り方を模索するとも公表しています。

キリンホールディングス株式会社

キリングループは、自然と人に焦点を当てた製品づくりを通じて、「食と健康」の新たな喜びを広め、心豊かな社会を実現することを使命とする企業です。

代表取締役社長磯崎功典氏は、新規事業を推進するには、これまでの人財戦略だけでは通用せず、新たな人財戦略や組織能力の大転換が要求されると提言しています。

想像力やイノベーション、多様性などを重視した人的資本経営を進め、人材力を高めることで、企業が持続的に成長することを目指しています。

産・官・学が集まる本コンソーシアムを通じて、人的資本を企業価値向上にどう結び付けるか、定量化・構造化・あるいは企業独自の指標をどう設定するかなどの多くの課題について知恵を絞り、日本全体の「人的資本経営」が一層進むことを期待し、力を尽くすと公表しています。

SOMPO ホールディングス株式会社​​

SOMPOホールディングスは、「目指す人材集団実現のための主なグループ共通人事施策」として、人的資本の向上に向けた具体的な取り組みを公表しています。

社員が使命感や「やりがい」を感じながら働くための研修プログラムやジョブ型人事制度を導入し、自律的なキャリア形成の促進を図っています。

また、「社員の幸福度」を「顧客や取引先の幸福度」と同等に重視し、エンゲージメントの向上に取り組んでいます。

日立製作所株式会社

日立製作所は、経営戦略に基づく人材戦略を展開し、従来のビジネスモデルからの変革を進めています。

海外市場の拡大に伴い、国籍や性別の多様性を尊重した集団に変革し、従来の同質な日本人男性中心の組織から脱却を目指しています。

2021年度に経営層における日本人以外の比率および女性比率の10%を達成し、2030年年度までに30%を目標とし、そのマイルストーンとして同比率を2024年までに15%達成を目指しています。

ソニーグループ株式会社

創立以来、常に最先端の技術開発に取り組み、世の中に新しい価値を提供し続けてきたソニーにとって、「人」は最も重要な経営資源であると提言しています。

ソニーグループ株式会社は、海外に事業を展開するグローバル企業として、人的資本経営に注力しています。

具体的には、社員の保有スキルなどの人材データに基づくコンテンツ推薦や、必要な時に必要な学びが届くアプローチ、学習状況の可視化を通じ、社員各自がキャリア形成と自己成長を意識する環境づくりを行っている他、プラットフォームを用いた海外グループ会社とのコンテンツ連携にも取り組んでいます。

また、多国籍での人材獲得や、女性が活躍できる職場環境の整備にも取り組んでいます。

アセットマネジメントOne株式会社

アセットマネジメントOne株式会社の取締役社長である菅野暁氏は、人的資本経営コンソーシアム設立総会で基調講演を行い、人権や多様性への配慮など基礎的な取り組みや、企業と投資家との対話の重要性を強調しました。

また、企業・学術界・官公庁と連携し、生産性向上と賃金上昇の好循環を生み出すために、コンソーシアムの活動に積極的に参画する意向を示しています。

企業価値に資する人的資本コンソーシアム

慶應義塾大学 SFC 研究所と株式会社パーソルは、ESG(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)、コーポレートファイナンスなどを専門とする慶應義塾大学総合政策学部教授の保田隆明氏と、人的資本経営やジョブ型雇用を専門とする株式会社パーソル総合研究所の上席主任研究員である佐々木聡氏を共同座長として、参加企業12社(2023年6月1日現在)と共同で、日本企業における人的資本経営の実現を通じた企業価値向上を目指す産学連携の研究組織「企業価値に資する人的資本経営コンソーシアム」を発足させました。

企業価値に資する人的資本経営コンソーシアムの具体的な取り組みは、ESGが企業経営に与える影響と、それを投資家がどのように評価するかを中心に、事例分析と実証分析を通じて明らかにしていくことです。

近年、実務現場から引き合いの強い人的資本経営について重点的に研究することで、企業において大きな経営上の課題となっているESGへの取り組みについての最適解を提示すると公言しています。

参画企業例
・株式会社学研ホールディングス
・サッポロホールディングス株式会社
・株式会社商工組合中央金庫
・株式会社電通
・ナブテスコ株式会社
・日興アセットマネジメント株式会社
・株式会社ポーラ
・松井証券株式会社
・ラザード・ジャパン・アセット・マネージメント株式会社
・株式会社ワールド

ジョブ型雇用については、こちらの記事もご参照ください。
ジョブ型人事制度とは?ジョブ型が注目される背景と導入パターン・事例を徹底解説

まとめ

ここまで、人的資本経営コンソーシアムの概要や設立動機、参画した企業の事例について解説してきました。

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・ガバナンス・人的資本に関する担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。