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TCFDコンソーシアム|組織構成と設立背景・活動指針・活動内容について丁寧に解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, TCFD)に関する企業の効果的な情報開示や適切な取り組みについて議論を行う目的でTCFDコンソーシアムは設立されました。

TCFDコンソーシアムは、経済産業省・金融庁・環境省もオブザーバーとして参加しており、ワーキンググループを形成して組織的に活動しています。

TCFDコンソーシアムの活動内容として、国内だけでなく国外のTCFDに関する情報の収集と発信、また活動の普及と啓発やTCFD提言に基づいた情報開示の推進に関わる事業などがあります。

本記事では、TCFDコンソーシアムについて
・TCFDコンソーシアム設立の背景
・TCFDコンソーシアムの構成
・TCFDコンソーシアムの活動指針
・TCFDコンソーシアムの活動内容
について詳しく解説していきます。

TCFDコンソーシアム

TCFDコンソーシアムは、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, TCFD)が2017年6月に好評したTCFD提言に対応するために、企業や金融機関などで構成された組織のことをいいます。

TCFDコンソーシアム設立の背景

気候変動は世界中の企業や金融機関に影響を与え、長期的なビジネスリスクにつながる可能性があります。2015年に採択されたパリ協定により、世界的に気候変動の対策に取り組んで行かなければならないという動きが強まったことで、企業や金融機関も気候変動に対するリスクを評価し、適切な対策を行う必要性が高まりました。これによって、金融業界を中心に、気候変動が投資先の事業活動に与える影響を評価する動きが広がっています。

このような背景の中、G20財務大臣及び中央銀行総裁の意向を元に、金融安定理事会(FSB)は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を設置し、2017年6月に最終報告書(TCFD提言)を公表しました。

TCFD提言は、気候変動によるリスクが金融機関に与える影響を評価するための枠組みを提供し、企業や金融機関が気候変動に対するリスクを開示するためのガイドラインを提示しています。

日本でも、経済産業省が「気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFDガイダンス)」を2018年12月に公表するなど、TCFD提言に沿った取り組みが進んでいます。

こうした状況において、一橋大学大学院・伊藤邦雄特任教授をはじめとする5名が発起人となり、TCFDコンソーシアムの設立が呼びかけられました。TCFDコンソーシアムは、企業による適切な情報開示や開示された情報をもとにした金融機関等の適切な投資判断につなげるための取組について議論を行うことを目標としています。そして、2019年5月27日に設立総会が開催され、TCFDコンソーシアムが正式に発足しました。

TCFDコンソーシアムの構成

TCFDコンソーシアムは、総会、企画委員会、ラウンドテーブル、ワーキング・グループ(情報開示・情報活用)によって構成されています。

総会

総会は年1回程度開催され、会員企業が参加し、情報開示ワーキング・グループや情報活用ワーキング・グループで議論したことを共有したり、規約改定等の重要事項の決定を行います。また、企画委員の選任や、1年間の活動報告も行われます。

運営の基本的事項について審議を行い決定が行われる場合は、会員企業がそれぞれ1票議決権をもち、会員企業の過半数の賛成により決定が行われます。この時、会員企業は議決権を委任することもできます。

企画委員会

企画委員会は、コンソーシアムの活動方針について企画委員が議論する場であり、コンソーシアムの活動方針の策定や具体的な取り組みの検討を行います。

企画委員会は、総会によって選ばれた企画委員によって構成されており、企画委員会での議事は、出席している企画委員の過半数の賛成によって決定されます。

ラウンドテーブル

ラウンドテーブルでは、事務局からTCFDに関する情報提供が行われたり、投資家と事業会社が参加して開示された情報の活用方法について意見交換が行われます。

情報開示ワーキンググループ

ワーキング・グループは全ての会員企業を対象として開催されます。情報開示ワーキング・グループはどのような情報を開示すれば効果的であるかの議論を行います。議論の結果はTCFDガイダンスを策定し公表を行っています。2020年7月には「TCFDガイダンス2.0」を、2022年10月には「TCFDガイダンス3.0」が公開されています。

また、情報開示ワーキンググループは1~2ヶ月に1回の頻度で開催されています。情報開示ワーキンググループで議論されるテーマの例には、開示媒体、シナリオ分析、業種別の開示に向けた議論などがあります。

情報活用ワーキンググループ

情報活用ワーキンググループでは、開示された情報を活用する方法について、金融機関等と企業が話し合いを行い、評価のあり方に関して議論が行われます。

情報活用ワーキンググループからは、2021年10月に「グリーン投資ガイダンス2.0」が公開されました。情報活用ワーキンググループで議論されるテーマ例には気候変動を考慮した金融商品と着眼点等があります。

TCFDコンソーシアムの活動指針

TCFDコンソーシアムは次のような活動指針を掲げています。
1. 私達は、気候変動問題は世界共通の課題であると認識し、その解決のためにはイノベーションを起こすとともに、その成果を社会の隅々にまで普及していくことが不可欠だと考えます。

2.私達は、気候変動対策におけるビジネスの役割の大きさを認識し、気候変動に伴うリスクを適切に管理するとともに、積極的にイノベーションに取り組み、それを開示していきます。また、その情報を活用し、イノベーションに取り組む企業に資金を供給し、「環境と成長の好循環」を実現していきます。

3.私達は、効果的な情報開示の在り方や開示された情報の活用の仕方について、本コンソーシアムにおいて積極的な対話を行い、相互の理解を深め、国際的にも発信していきます。
参照:気候変動に関連した情報開示の動向(TCFD)経済産業省

TCFDコンソーシアムの活動内容

TCFDコンソーシアムは、TCFD 提言に基づく効率的で効果的な開示を促進し、その情報が適切に評価され資金供給が促されるような「環境と成長の好循環」に貢献していくという目的を定めています。この目的を達成するために以下の4つの活動を行っています。

1. TCFD 提言に基づく情報開示の推進に係る事業
2. 1により開示された情報の活用に係る事業
3. 国内外の TCFD に関する情報の収集・発信、普及・啓発
4. その他コンソーシアムの目的を達成するために必要な事業
参照:TCFDコンソーシアム規約

TCFDガイダンス3.0

TCFDコンソーシアムは、企業と投資家等との議論を行った知見を踏まえ、経済産業省が公表したTCFDガイダンスの改訂を行っており、2022年10月にその最新版であるTCFDガイダンス3.0を発表しました。

TCFDガイダンス3.0は、気候変動に対する企業の取り組みを開示し、投資家がより正確な評価を行うことを支援するための有用な枠組みとなっています。

TCFDガイダンスでは、以下の内容が解説されています。
1章:ガイダンスの策定と改訂に至った背景や趣旨、TCFD提言とガイダンスの関係の説明
2章:TCFD提言に沿った開示に向けた解説
3章:TCFD開示を通じた企業価値の向上に向けて

TCFDガイダンス3.0では、第4章「補論」が新たに追加され、最新の動向や重要な情報に関する解説が行われています。最新の動向として、以下の話題が取り入れられています。

1.各種関連ガイダンス
2.気候関連情報に関する日本の主な開示制度
3.他のフレームワーク、スタンダード等におけるTCFD提言への対応
4.IFRSサステナビリティ開示基準
5.トランジションに関する議論の動向
6.TCFDからの刊行物

また、TCFDガイダンス3.0では、事業会社が報告するべき情報がより明確化され、リスクの重要度に応じて情報の開示レベルが変更されました。そして、TCFDガイダンスの改訂に合わせて、事業会社が実施した取り組みや成果についての報告事例が示され、理解を深めるための解説が追加されました。最新動向を盛り込んだ事例集については、2023年1月31日に公表されています。
「TCFDガイダンス3.0」(事例集)

さらに、国土交通省により不動産分野における気候変動に関する情報開示についてのガイダンスも策定されています。このガイダンスでは、不動産業界固有の実情を踏まえた上で、不動産企業がTCFD提言に対応した情報開示を行うことができるように解説が行われています。
「不動産分野TCFD対応ガイダンス」(概要)
「不動産分野TCFD対応ガイダンス」(本文)

グリーン投資ガイダンス2.0

TCFDコンソーシアムでは、グリーンファイナンスの促進に向けて2019年10月に策定した「グリーン投資の促進に向けた気候関連情報活用ガイダンス2.0(グリーン投資ガイダンス2.0)」の普及を行う目的で、現在グリーン投資ガイダンスを活用もしくは今後活用を予定している投資家の方々を「GIG Supporters」とし、グリーン投資ガイダンスの活用事例の募集を開始しました。

募集したグリーン投資ガイダンスの活用事例は、会社名とともにTCFDコンソーシアムのホームページに公開されます。

グリーン投資ガイダンス2.0は、投資家が企業の開示情報を理解する上での視点を示し、企業がそれを理解することでより詳細な情報開示に繋がることが期待されています
「グリーン投資ガイダンス2.0」(概要)

グリーン投資ガイダンスの活用事例

GIG Supportersにおけるグリーン投資ガイダンスの活用事例としてホームページに紹介されているものをいくつかご紹介します。

GIG Supporters グリーン投資ガイダンスの活用例
株式会社日本政策投資銀行 融資先企業の評価や対話(エンゲージメント)において、「グリーン投資ガイダンス」を参考に、気候変動への対応やTCFDに沿った情報開示について確認し、中長期的な企業価値向上に資する取り組みを促している。調査研究部門では、ガイダンスを用いて企業・投資家・研究者等を対象とする積極的な講演活動や意見交換を行い、理解や活用に向けた普及啓発に努めている。
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ TCFD提言に沿った企業の開示情報は、企業評価における重要な情報の一つであり、気候変動によってもたらされる企業のリスクと機会の把握・評価や、企業とのエンゲージメントにあたっては、「グリーン投資ガイダンス」の視点も参考とする方針。
株式会社三井住友フィナンシャルグループ 三井住友フィナンシャルグループはTCFD提言に賛同を表明し、グローバル金融機関で初めて、気候変動による財務的影響を試算・開示しているが、「グリーン投資ガイダンス」を活用し、自社の取組を踏まえた気候変動シナリオ分析のノウハウ及びその重要性をお客さまと共有している。また本ガイダンスを参考に、低炭素社会への移行に向けたお客さまの取組を支援すべく、TCFD提言に沿った対応について確認しつつ対話を行っている。
株式会社みずほフィナンシャルグループ 「グリーン投資ガイダンス」の視点を参考としつつTCFD提言に沿った開示情報を活用し、気候変動に関してお客さまが直面するリスクと機会への理解を深め、お客さまとの建設的な対話(エンゲージメント) を通じて、必要な事業構造転換や脱炭素社会への移行を支援していく。また、ESG/SDGs関連の各種調査分析/レポート発信業務等において、本ガイダンスの視点を参考として有効に活用している。

参照:GIG Supporters グリーン投資ガイダンスの活用事例紹介

グリーン投資ガイダンスに関する政府及び経済・金融関係者の発言

グリーン投資ガイダンスに関して、政府関係者や金融関係者のコメントがホームページにて公開されています。

公開されているコメントを見ると、グリーン投資ガイダンスは世界中の様々な方から賞賛されていることがわかります。

以下、ホームページに記載されている安倍元総理大臣によるコメントを引用します。

「今回、我が国は、「グリーン投資ガイダンス」を世界で初めて作成した。金融機関や投資家が、環境投資を評価する指針となるものであり、これを世界に広く展開することで、非連続なイノベーションへの資金の流れを一層加速していきたい。」
出典:GIG Supporters グリーン投資ガイダンスに関する政府及び経済・金融関係者の発言

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、TCFDコンソーシアムに関して「TCFDコンソーシアム設立の背景」「TCFDコンソーシアムの構成」「TCFDコンソーシアムの活動指針」「TCFDコンソーシアムの活動内容」を中心に解説しました。

ESG、SDGsなど環境や持続可能な開発目標と投資や金融に関連する部署・担当者に新しく任命された方の理解の一助になれば幸いです。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。