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ESGとは?ESG概要や注目された背景、メリットや課題点まで網羅的に解説!

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

コーポレートガバナンス・コードの基本のキ
~概要と基本原則を解説~

コーポレートガバナンス・コードの「基本的な概要」と「基本原則」にフォーカスして紹介

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現在、SDGsや環境課題などの取り組みといった財務諸表には表れない指標が、企業価値の向上や企業の持続的な成長に重要なものとなってきています。

その中でも、企業経営や投資の考え方として、ESGが注目されており、実際に様々な企業で取り組みが行われています。

本記事では、ESGの考え方や注目されるに至った経緯、投資の種類などをご紹介しますので、自社でESGへの取り組みを検討する際にお役立てください。

ESGとは

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)を合わせた言葉であり、企業として長期的な成長を実現していくために重要となる観点や事業活動を指します。

現在、世界的に環境問題や社会問題が注目されており、投資家に企業の長期的成長の可能性を示すためには、ESGに関する対応について重要であるという観点が浸透しつつあります。

ここでは、それぞれの要素について一つずつ解説していきます。

Environment

まずは、Environment(環境)です。

我々の生きる環境の根源である地球では、これまで人類が経済的発展を進めてきたことで、多くの環境
問題が見られています。今後も発展していくためには、企業においても地球の環境問題に対する取り組みを実施していかなければなりません。

環境問題の具体的な課題の例としては、気候変動や地球温暖化、二酸化炭素の排出や森林破壊などをあげられます。

Social

2つ目は、Social(社会)です。

人類が生活していくためには、多様な人や企業が関わり合い、互いに成長を遂げていくことで豊かな生活を実現していくことができますが、その反面として利益の追求による行動で人々の生活に脅威を与えている場合も数多く存在します。

こうした社会的課題を解決し、豊かな生活・社会を確保していくために、個々の行動を見直していく必要があります。

社会問題の具体的な例としては、企業ごとの男女間での差別的な扱いや、ワークライフバランスなどが挙げられます。

Governance

3つ目は、Governance(ガバナンス)です。ガバナンスとは、企業が健全な経営を行うための自己管理体制を指します。

経営に関する様々な不正な手法が世界中で見られますが、企業自身で確実な管理体制を構築し、しっかりとルールを遵守していくことこそが、持続的な発展に繋がっていくポイントとなります。

ガバナンスに関する具体的な課題の例としては、
・不正な役員報酬
・政治献金
などが挙げられます。

ESGとの類語

ESGと似た意味をもつ言葉として、下記の類語があります。

それぞれの言葉における意味の違いをしっかりと理解して、ESGが指し示す本質的な意味を理解するようにしましょう。
・SDGs
・CSR
・SRI

SDGs

1つ目に混同しやすい言葉として、SDGs(Sustainable Development Goals)が挙げられます。

SDGsとは、持続可能な開発目標として国連サミットにて採択され、「持続可能でより良い世界を実現していくための国際的な目標」を指します。

ESGは投資や企業経営をすすめて行く上で重要とされるポイントであり、つまり「SDGsを達成していくための手法がESGに配慮した経営」ということになります。

CSR

次に、CSR(Corporate Social Responsibility)を挙げることができます。

CSRとは「企業の社会的責任」であり、企業が利益至上主義にならず、果たすべき社会的責任や倫理観を示す言葉です。法令遵守や地域社会への貢献などステークホルダーに対して果たすべき義務を示しています。

ESGは、企業が経営するにあたって環境や社会に対して考慮すべき点を示しており、環境や地域社会に貢献する事業活動が企業成長に繋がると考えるものなので、まとめると、ESGは「投資家の視点から」、CSRは「企業の視点から」捉えたものとなります。

SRI

最後に、SRI(Socially Responsible Investment)という言葉です。

SRIは「社会的責任投資」を指し、社会的価値観または倫理的価値観を基準とした上で投資を選んでいく考え方を指します。

SRIは、1920年代のアメリカにてキリスト教的倫理の観点から「武器・ギャンブル・たばこ・アルコール関連の企業への投資は倫理的ではない」というネガティブ・スクリーニングから始まったとされています。

その後、SRIの考え方は、欧米を中心に世界へと広まっていきます。

1960年代から80年代にかけての米国では、ベトナム戦争で使用された枯葉剤や、ナパーム弾製造に関わる企業が問題視されました。

また南アフリカのアパルトヘイト政策が国連から非難され、その後南アフリカのアパルトヘイトを支持する企業への投資は倫理的な問題とされました。(その結果として、GMなどのアメリカ企業は南アから撤退)

その後、1990年代以降は「環境的側面」「社会的側面」「経済的側面」という3つの観点で企業を評価し、優れた企業に対して率先して投資が行われるようになりました。

ESGの背景

ESGが世界から注目をされるきっかけとなった出来事は、2006年に国連が「国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)」を提唱したことです。

責任投資原則(PRI)の根幹を担う6つの原則は、以下の通りです。

①投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込む
②活動的な所有者となり所有方針と所有習慣にESGの課題を組み入れる
③投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求める
④資産運用業界において本原則が受け入れられ実行に移されるように働きかけを行う
⑤本原則を実行する際の効果を高めるために協働します
⑥本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します

(参照:PRI「責任投資原則 」2021  )

この原則において、投資をする上で重要となる考えとして、財務に関する情報だけでなく、ESGの観点を取り込んだ行動原則が記載されています。

2015年には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が署名し、日本国内の企業においても注目が高まりました。

その後2017年から本格的にESG投資が開始され、株式投資運用において活用されています。

また、2023年10月時点で、PRIに署名した機関が5,300以上にも及んでおり、年々署名が増加しています。

そうした中で、企業が長期的に成長していくために取り組むべき課題として考えられ始め、ESGへの取り組みがない場合は、投資対象から外されてしまうことも考えられることから、よりESGの考え方の浸透が加速したと考えられます。

ESG経営とは

ESG経営とは、上述した通り環境・社会・ガバナンスを重視した経営方法を指します。投資家から選ばれる企業となるためにも、ESGに関する各課題を考慮し、事業活動を実施していくものです。ESG経営において、下記の点について企業側にもメリットがありますので、一つづつ解説していきます。

投資家からの評価の向上と資金調達
ブランド価値の向上
優秀な人材の確保

投資家からの評価の向上と資金調達

まず挙げられるメリットは投資家からの評価です。

上述の通り、ESG経営への取り組みは、近年投資判断の重要な一つの指標となりつつあります。

従来の投資は、主に企業の財務状況(PL、BS、CS)や、今後の事業成長を見越して投資有無を判断しましたが、そこに「ESG経営をしているか」が新たに投資判断基準として加わってきつつあります

ESG経営は社会規範や倫理的な側面だけではなく、資本主義的な側面においても有効だと位置付けられています。

逆にいうと、ESGを意識していない企業は、「中長期的には事業成長せず、利益も出なくなる」と判断されてしまうリスクがあるのです。

ESG経営に力を入れ、投資が集まり資金調達額が増えることで、新規事業や雇用の創出などに積極的に投資でき、それは企業価値の向上に繋がります。

ブランド価値の向上

他にもブランド価値の向上の側面でも、ESG経営への取り組みは重要です。

ESGに関する取り組みが企業のブランドや信頼性を向上させ、顧客の獲得に繋がっていきます。

そして、顧客の購買意欲が向上すれば、企業の収益向上にも繋がっていきます。

例えば、自社で製造販売している商品が環境に配慮したものであれば、多少価格が高かったとしても、作り手(自社)の想いや社会への貢献の文脈で選んでもらえることもあります。

従来のような高級品=ブランドではなく、ESGに配慮した商品=ブランドと捉えられつつあるため、多くの企業にビジネス機会があると言えます。

優秀な人材の確保

優秀な人材を確保できることも、ESG経営のメリットとして挙げられます。

ESGへの取り組みとして、多様な価値観を持った人材を活用していくダイバーシティを推進していくことや、コンプライアンスを徹底していくことが挙げられます。

昨今では、給与だけではなく様々な観点から企業が選ばれている中で、働きやすい職場環境や人材の活用が、優秀な人材を確保していく大きな要因となります。

働きやすい環境が整うことで、従業員の離職率が下がり、採用コストの低下にも繋がります。

さらに、従業員の定着は事業運営の安定に繋がり、それが株主からの評価向上にもなります。

ESG経営の課題

ESG経営は様々なメリットがある一方で課題や注意点もあります。

例えば、ESGの観点を盛り込んだ非財務情報の開示が必要となることです。

様々な評価指数やその手法がある中で、効果的な情報開示を実施していくためには、企業側に負担と労力が生じます。

また、ESG経営は短期的な効果を得られることは難しいことです。成果が得られるまでには時間がかかるため、短期的な視点ではコストアップにつながる可能性があります。直近の成果だけに拘らず、中長期的な視点を持って取り組むようにしましょう。

グリーンウォッシュ

グリーンウォッシュとは、実態が伴わないにも関わらず、企業が事業運営において、環境に配慮しているように見せかけること、つまり見せかけの環境対応のことです。

このグリーンウォッシュが近年問題になりつつあります。

我々の身近な企業でもグリーンウォッシュ問題が起きており、例えば、
・マクドナルドが「環境への配慮」から導入した紙製ストローが、実はリサイクルできないものだった。
・H&Mがリサイクル素材を使用と謳った商品が、根拠が曖昧で消費者を誤導していた。
などのグリーンウォッシュ問題が海外では起こっています。

「ESGだと思っていたものが実はグリーンウォッシュだった」ということが続出してしまえば、投資家からの信頼は失われ、最悪の場合はESG投資市場自体が崩壊してしまう可能性もあります。

このような「見せかけのESG経営」を見破り、投資対象から外していくことも重要です。

ESG経営の導入方法

ESG経営を導入していくにあたり、企業が取り組んでいくべきポイントをご紹介します。

・マテリアリティ(重要課題)の特定
・意思決定者の同意
・指標や目標値の決定
・PDCA
・定期的な公表

マテリアリティ(重要課題)の特定

いきなり全ての課題に取り組むのではなく、まずは自社の企業価値に大きく影響するような重要視すべきESG課題を特定することです。

この課題は「マテリアリティ」と呼ばれますが、数多くあるESG課題の中で、自社にとって大きく関わりがあり、企業価値に影響を与え得る項目を抽出していきます。

そして、重要度が高い順にまとめていき、マテリアリティを特定していきますが、その際に以下の情報を活用すると良いでしょう。

・自社における外部環境、事業環境についての分析レポート
・国際機関が公表しているフレーム
・外部評価期間のレポート
・ステークホルダーとの対話

意思決定者の同意

マテリアリティを特定した後には、取締役会と実務担当がそれぞれの役割を明確化し、取り組みを続けることが大切です。

マテリアリティに対応していく、つまりESG経営に取り組んでいくためには、まず経営陣が中期経営計画の策定やトップメッセージによって社員へ周知することが必須となります。

そして、実務担当者は経営陣の示した計画に基づき、マテリアリティの解決の取り組みを実務に落とし込みます。

さらに、取締役会では、取り決めしたESG経営の進捗をモニタリングすることが重要です。

こうして経営陣・実務担当者・取締役会がそれぞれ役割を全うすることにより、円滑にESG経営を進めていく必要があります。

指標や目標値の決定

マテリアリティに取り組むにあたり、目標や指標を設定していきます。

・自社は何を目指すのか
・どのような状態を理想とするのか
など、明確にビジョンを定めた上で、それぞれのマテリアリティに適った指標を決めることが重要です。

指標には定性的・定量の両方が必要ですが、具体的な目標値の設定方法として、東京証券取引所の「ESG情報開示実践ハンドブック」の内容が参考になります。(以下)

・実現可能性の観点から、過去の実績を積み上げて将来の予測値を算出し、目標値とする。
・環境や社会的課題に関する国内外の目標値などを参考にして、自社の目標値を定める。

また、最終的な目標値を設定するだけでなく、目標達成に向けた取り組みやステップを考えたうえで、短期的・中期的なゴールを明確にしておくようにしましょう。

PDCA

マテリアリティへの取り組みを確実に進めていくために、PDCAサイクルを回すようにしましょう。

設定した指標や目標値の進捗を確認しつつ、もし進めていく上で問題が発生している場合があれば、適宜やり方を見直した上で指標や目標値を再度決める必要があります。

場合によっては、マテリアリティの再検討も実施すべき場合もあります。

定期的な公表

ESGの情報を公表する際には、企業価値を投資家たちから適切に評価してもらえるよう工夫して公表していくようにしましょう。

マテリアリティの取り組みがどのように企業価値向上に影響するのかという点や、海外投資家を重視するのであれば、英語での公表が必要となってきます。

ESG投資の手法とそれぞれの定義

ESG投資とは、環境や社会に配慮して事業を行っていてガバナンス(企業統治)が適切になされている会社に投資する取り組みです。

ESG投資では、投資先のESGに対する取り組みを適切に評価し、投資対象を選別することが大切ですが、それには様々な手法が存在します。

ここでは、以下の7つの手法とそれぞれの定義をご紹介します。

①ネガティブ・スクリーニング
②ポジティブ・スクリーニング
③国際規範スクリーニング
④ESGインテグレーション
⑤サステナビリティ・テーマ投資
⑥インパクト・コミュニティ投資
⑦エンゲージメント

①ネガティブ・スクリーニング

ネガティブ・スクリーニングは、倫理的・環境といったESGの観点から好ましくない企業を投資先から除外していく手法を指します。

具体的には、ギャンブルやタバコ、アルコールやポルノなどが挙げられ、最も長く利用されてきた手法となります。

②ポジティブ・スクリーニング

ポジティブ・スクリーニングは、ネガティブ・スクリーニングの真逆に当たり、ESGの観点から好ましい企業を投資先に選んでいく手法を指します。

環境問題や社会課題など、ESGに配慮した取り組みを評価し、より良い企業を優先的に選択し投資していく手法となります。

③国際規範スクリーニング

国際規範スクリーニングは、国際的に定められている規範を判断基準として投資先を選んでいく手法であり、ESGに関連する項目が一定以上の評価でない場合は、投資先から除外する手法を指します。

国際的な規範とは、国連条約や安保理制裁、国連人権宣言などが該当します。

④ESGインテグレーション

ESGインテグレーションは、財務に関する情報とESGに関する情報を総合的に評価し、投資先を選んでいく手法を指します。

なお、インテグレーションとは、統合や統一といった意味であり、財務に関わる情報とESGといった非財務情報を合わせて考えて適性を判断していく手法です。

これは投資家において最も活用されている投資方法となります。

⑤サステナビリティ・テーマ投資

サステナビリティ・テーマ投資は、サステナビリティに注目して投資先を選んでいく手法を指します。

再生可能エネルギーや多様性の推進など、持続可能な社会に向けた企業の取り組みを重視し、投資を行う手法であり、世界全体では近年徐々に増えてきています。

⑥インパクト・コミュニティ投資

インパクト・コミュニティ投資は、社会やコミュニティに貢献する技術やサービスの提供など、大きく影響を与える企業を投資先を選んでいく手法を指します。

この手法では、リスク・リターン・インパクトの要素を基準として評価を行います。

これは非上場のベンチャーに当てはまるケースが多いです。

⑦エンゲージメント

エンゲージメントは、ESGに関する取り組みを株主が積極的に促進させる手法を指します。

ESGの分野におけるエンゲージメントとは、株主と経営者間の対話を意味し、投資先の企業をより良い方向に促すことで企業利益を向上させ、株主の利益を最大化させることが目的となります。

まとめ

本記事では、ESGの示す概念や注目されるに至った経緯、ESG経営の導入方法や投資についてご紹介しました。

SDGsへの取り組みが推進される中、ESGに対する取り組みを重視していく企業が増え、株主から評価を得るために必要不可欠なものとなってくるでしょう。

ESG経営のメリットや課題、またESG投資についても十分に理解したうえで、自社でどのように取り組んでいくのか検討していくようにしましょう。

本記事が、企業の経営者やガバナンスに関わる担当者の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。