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監査役会設置会社とは?指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社との違いも解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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会社が上場すると、事業開発や営業を進めていくだけでなく業務が適正に執行されているかを監督・監査することも求められます。業務執行がなされているかを監査することは会社法で定められており、これから会社規模を大きくしていく人・会社のガバナンスの強化を考えている方は、監査役会の設置を検討すべきでしょう。

この記事では、監査役会設置会社について監査役と監査役会の関係、取締役会と監査役会の関係、監査役会を設置する義務のある会社、指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社との違いについて解説します。

監査役会・監査委員会・監査等委員会の違い

名前が非常に似ていますが、どれも業務執行に関する適法性を監督するという役割は共通しています。従来は、監査役会が取締役会の業務執行の監督を行っていましたが、2014年の会社法改正によって指名委員会等設置会社に監査委員会が置かれ、監査等委員会設置会社に監査等委員会が置かれるようになりました。

内容 設置
監査役会 取締役の職務の執行を監査する監査役全員で構成される機関 監査役会設置会社
監査委員会 執行役・取締役の職務の監査 指名委員会等設置会社
監査等委員会 取締役の職務の執行の監査 監査等委員会設置会社

監査役会設置会社とは

監査役会は全ての株式会社が設置する必要はありませんが、大会社(資本金5億円以上または負債額200億円以上の株式会社)もしくは株式を公開している上場企業は監査役会を設置しなければなりません。現在、多くの上場している日本企業でこの制度が採用されています。

監査役会設置会社は、取締役の業務執行を監査する仕組みを有する株式会社を指します。この監査役会は、過半数の社外監査役を含む3人以上の監査役で構成される必要があります。業務を監査・監督する役割を外部の取締役に任せることで、独立性を保ちながら経営の透明性を高め、会計の粉飾や不正などを防ぐことが期待されます

また、監査役会設置会社において3名の監査役が必要なのは大会社もしくは株式を公開している会社ですが、大会社でありながら公開会社に該当しない場合は、原則として1人以上の監査役を置く必要があります。これらは、法律によって設置が義務付けられているという特徴もあります。

監査役会とは

監査役会とは、監査役それぞれの考えをまとめ、組織的に監査・監督をすることを目的にした組織です。企業が健全に成長を続けながら、社会的信頼を得ていくガバナンス体制を確立するために、監査役は業務監査・会計監査を行います。

業務監査では、代表を含む取締役が法令及び定款を遵守しながら職務執行できているかを監査し、会計監査では、株主総会で報告する決算の事前確認などを行います。もし、法令及び定款に反する行為や会社に不利益をもたらす事実が認められる場合には、報告を受けた監査役会は事実を調査し、当該行為の中止要請や場合によって取締役会の招集を要求します。

監査役とは

監査役は監査役会に所属し、取締役や会計参与などの業務を監査する役職のことを指します。社長や取締役と並ぶ役員の立場にあり、業務や会計に不正あるいは不利益な事実がないかを確認し、是正する役割があります。
ここでは以下の点から監査役の特徴について解説していきます。
・監査業務について
・選任方法
・監査役の報酬
・取締役との権限の違い
・日本と米国の監査役の違い

監査役と監査役会の関係

監査役は独任制として設定されます。独任制とは、経営組織から独立して監査し、独自の権限を行使して監査やそれに付随する業務を行う制度のことです。監査役会は、監査役や会計監査人から報告を受け取ります。各監査役は分担して業務を担うのが一般的ですが、必要に応じて担当以外の項目について調査することも可能です。

監査役会は、そのような「業務執行や財務状況に関する調査方法」や「監査役の業務に関する事項の決定」を行うものの、各監査役の権限行使を妨げる権限はなく、監査役は監査役会に縛られることなく監査業務を遂行できます

取締役会と監査役会の関係

監査役会は、業務執行にあたる取締役や取締役会の動きを監査する立場にあります。後述する点ですが、取締役と監査役のいずれも株主総会で選任・解任され、組織図上は横並びの位置にあります。

しかし、監査役会設置会社に属する監査役会は取締役会における議決権を有していません。あくまで監査とそれに付随する業務の執行、そして取締役会や株主総会への報告が主な役割です。いわば司法機関のように事実確認や調査を行い、報告します。監査役会は、常勤する監査役と社外監査役で監査業務を遂行するよう規定されています。

監査役会を設置する義務のある会社

要件
大会社 資本金5億円以上または負債額200億円以上の株式会社
公開会社 株式を自由に譲渡できる株式会社

会社法上で上記の条件に当てはまる会社は、監査役会の設置義務を負う対象です。中小企業庁によると、日本でこの定義が当てはまる会社は約12,000社あり、これだけの数の会社が監査役会を設置するいずれかの企業設計を採用しています。

公開会社という言葉は、時折上場会社と混同される場合があります。会社法が定める公開会社とは、「(全株または1株でも)当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない」株式会社が対象です。定款で株式を自由に譲渡し発行できると定めている場合、証券取引所に上場していない会社でも公開会社に該当します。

これらの会社が監査役会を設置する場合、監査役会を設置する定款変更や、監査役の選任のためにまずは株主総会で決議を取らなければなりません。監査役に選任された人が承認した場合、登記を法務局へ申請し必要な書類をすべて提出します。以上が受理されれば、監査役会設置会社として登録されます。

監査役を設置しなくてもよい会社

反対に、監査役を設置しなくてもよい会社は以下の通りです。

要件
株式譲渡制限会社 株式を譲渡する際に株主総会など会社からの承認を必要とする会社。
取締役会を設置していない 取締役会を設置する場合、3名以上の取締役を設置する必要がある。そのため、取締役が2名以下の場合は監査役の設置義務はない。
取締役会はあるが、会計参与が設置されている 取締役会が設置されていても会計参与が存在する場合、監査役ではなく会計参与が取締役会の監査を担当。
※例外として、大会社と会計監査人を置く会社は監査役会を設置しなければならない。
会計監査人を設置していない

会計監査人は監査役とは異なり、公認会計士もしくは監査法人でなければならない。また、会社と契約した役員ではなく独立した外部の第三者機関となる。

会計監査人を設置している場合は監査役が彼らの監査対象となるため、会計監査人を設置していなければ監査役を設置する必要は生じない。

委員会設置会社 委員会設置会社の場合、監査委員会という専門機関を既に有しているため、監査役を設置することは許可されていない。公開会社で唯一監査役を設置しない会社。
中小企業(公開会社あるいは大会社に該当しない)の場合 取締役会を設置していないか、もしくは取締役会があるが会計参与を設置している場合、一定の条件を満たすと監査役の設置は任意となる。

監査役会設置会社の目的

監査役会による取締役会の監査を行うことで、経営陣が会社を適正に運営していることを証明するのが主な目的です。会社の経営リスクを第三者的な視点で明らかにし、経営陣がリスクマネジメントを適切に行えているかを株主に報告することにより、客観的な保証を与えられます。これによって、株主の保護とコーポレートガバナンスの強化がなされます。

さらに、取締役の業務執行すべてを調査することで、会社組織全体のガバナンスが有効に機能しているかどうかを確認するのも役割の1つです。また、会社のリソースが適切に管理されているかどうかも評価します。経営陣から独立してリスクの調査・報告ができ、会社とそのオペレーションに関して意見を述べることが期待されています。

企業が大規模化するにつれて複雑性も増すため、監査役会による経営の透明化・健全化向上がその狙いです。

指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社との違い

2014年の会社法改正から、指名等監査委員会と監査等委員会設置会社という制度が導入され、これらに移行する会社も見られるようになりました。欧米的な会社制度を目指した指名等監査委員会に移行する会社と監査役会と違い、議決権を有する監査等委員会設置会社に移行する会社の違いを概観していきます。

指名委員会等設置会社との違い

「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」の3つの委員会を設置しなければならないのが指名委員会等設置会社です。それぞれ3名以上の委員を設置する必要があり、各委員は株主総会で選任・解任されます。

監査等委員会設置会社の場合と同じく、指名委員会等設置会社に含まれる監査委員会も取締役会での議決権を有しているのが特徴です。指名委員会等設置会社の3つの委員会が取締役会を構成し、指名委員会が取締役の選任・解任の権限を有し、監査委員会が会社の業務執行にあたる取締役・執行役の選任・解任および監査をします。

監査等委員会設置会社との違い

監査等委員会設置会社と監査役会設置会社との最大の違いは、「監査役が取締役会の中に設置されているかどうか」という点です。監査等委員会設置会社の監査等委員会は取締役会における議決権を有しており、取締役決議に参加できます。これに対して、監査役会は取締役会の議決権を持たないので監査等委員会設置会社よりも権限は弱くなります。

また、監査等委員会設置会社は株主総会では他取締役の選任や報酬についても意見を述べることが可能です。役員が株主総会で選任・解任される点は監査役会設置会社と同じですが、監査等委員会設置会社に置かれる監査等委員会の構成員は取締役なので取締役会の議決権など監査役会設置会社に比べて権限が強い点も特徴として挙げられます。

監査役会設置会社の監査範囲が業務執行の適法性であることに加えて、監査委員会等設置会社では業務執行の妥当性まで監査範囲となることも相違点になります。

まとめ

ここまで、監査役会設置会社について監査役と監査役会の関係、取締役会と監査役会の関係、監査役会を設置する義務のある会社、指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社との違いについて解説してきました。

この記事が、上場後にガバナンス強化を検討している経営者・役員・ガバナンス担当者のお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。