fbpx

COLUMN

コラム

監査役会とは?組織の概要・取締役会との関係・メリット・デメリットについて解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

IPOまでに必要な管理部門の
「業務・人材・体制」ガイドブック

今すぐダウンロード

会社の経営や業務執行を監査する監査役会は、会社の経営の透明性を高め、ガバナンスを強化するために採用されています。近年も会社の行き過ぎた経営判断が、さまざまな関係者を巻き込んだ社会問題にまで発展するケースもあることも背景に、ガバナンスの強化は上場企業だけでなく多くの企業でも課題とされています。

この記事では、監査役会の役割や権限・設置状況・運営方法、制度を導入する際のメリットとデメリットについて解説します。

監査役会とは

監査役会とは、取締役によって構成される、会社の経営や業務執行を監査する機関を指します。監査役会の設置は、会社法で定められており、一定以上規模の会社のコンプライアンスやコーポレートガバナンス強化につながります。これらの強化によって、監査役会の目的である「株主や各ステークホルダーの利益を損なうことなく会社が運営されるよう働きかける」ことが可能になります。

会社の規模が大きくなると業務量や組織上の複雑さも比例して増加するため、監査の対象となる業務も多くなります。監査役の業務が適正に行われるためには、複数の監査役を設置することが必要です。そこで、監査役会を複数人で構成して独立させ、各監査役が協力して的確な監査業務を遂行します。

監査役会は、会社法により以下のように設置することが定められています。

監査役会設置会社では監査役は3人以上で、かつその半数以上を社外監査役としなければならない(会社法335条3項)
監査役会はすべての監査役で組織し、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない(会社法390条1項、3項)

ここからは、監査役会の概要をさらに以下の点に分けて解説します。
・監査役会の役割
・監査役会の権限と地位
・監査役会の設置状況
・監査役会の運営方法

コーポレートガバナンスについては、次の記事もご参照ください。
コーポレートガバナンスコードの5つの基本原則|特徴・制定の背景・適用範囲と拘束力について解説
コーポレートガバナンス(企業統治)とは?目的・強化方法・歴史的背景について解説!
【2021年改訂】コーポレートガバナンス・コードの実務対応と開示事例

監査役会の役割

監査役会は、監査役全員で経営の意思決定プロセスにおける監査内容やコーポレートガバナンスに関する問題点を話し合い、監査役会としての見解をまとめ決議を取る役割を担っています。各監査役はそれぞれ監査業務を分担するのが通常で、監査した内容を監査役会で報告します。組織的に監査業務を遂行することで、全体として監査を効率的に進めることが目的です。

「監査役会設置会社」の監査役会の場合、会社の経営業務に関する監査と会計監査が求められます。監査役会は、定款・監査役会が定める規則・監査役監査基準で規定され、それらに基づいて監査業務を遂行することが目的です。監査役会を招集したり議事を進めたりすることも、監査役会で決定した人事や規程に基づいて行います。

監査役会の主な業務内容は以下のようなものが挙げられます。
・監査方針や監査方法の決定
・代表取締役により遂行される業務のリスク評価
・コンプライアンス遵守
・経営に関する意思決定プロセスの監視
・内部統制の評価
・監査役会でまとめた監査報告書の作成
・不正の発見
・会社が所有する資産の保護

通常、監査対象となる部門には事前通知がなされ、監査のために必要な資料提出を要求します。しかし、不正が疑われるなど緊急性の高い案件の場合、事前通知なしに監査することもあります

内部統制に関しては、こちらの記事もご参照ください。
内部統制とは?会社法・金融商品取引法での定義や方針を徹底解説!
IPOに内部統制が必要な理由とは?構築する目的・要素も解説!

監査役会の権限と地位

監査役会は、職務遂行に関して取締役会より独立しており、各監査役と監査役会の関係も独任制に基づいています。監査役会は、経営組織より独立して監査権限を行使し、各種事実について調査します。

監査役会も、各監査役の業務の支障となるような規程や制限を設けることはできず、監査に関係する職務遂行を妨げることはできません。それぞれの権限を独立させることで、利害関係者が監査役会と監査役をコントロール下に置くことを防ぎ、適正な監査が行われるよう制度設計されています

加えて、監査役会を構成する監査役達は、経営者に対していつでも事業の報告を求め、財務状況を調査できると定められ、内部統制や意思決定改善に関わることも役割の1つです。さらに、一定の条件下で子会社に対しても報告を要求する権限を行使できます。

しかし、監査役会は定款や監査役会規則を超える範疇で権限を行使することはできず、個々の監査役の調査・権限を制限しないよう求められます。

監査役会の設置状況

日本では、一定の条件を満たした株式会社は3つの組織設計(監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社)の中のいずれかを採用しなければなりません。その中では、監査役会設置会社が多く設立されてきました。

上場企業の中では、監査役会設置会社で監査役を3名任命しているのは50%以上で、4名を任命する企業と合わせると約90%に達します。残り2つの監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、監査役会設置会社の総数と比較すると少ないものの、監査等委員会設置会社の場合はプライム市場における採用企業の割合は2023年1月には約40%にまで増加しています。

監査役会の運営方法

監査役会が機能するには、組織として適正に運営されなければなりません。監査役会を運営する召集方法・決議・議事録については以下のような規定があります。

召集方法

監査役会を開催する場合、すべての監査役が出席できるよう調整しなければなりません。すべての監査役を招集するにあたって、監査役会は事前に日時や場所を通知し、議題で取り扱う事項と関連資料を通知または送付します。

監査役会として一致した見解を持つため、監査役会規程などによりあらかじめ運営方法を定め、それに基づいて決議・討議を行います。監査役は取締役会にも出席しなければならないため、一般的には取締役会開催日と同じ日か、監査役が全員出席できる最も近い日程で開催される傾向にあります。

決議

各監査役は、1人につき1つの議決権を行使できます。決議は、監査役の過半数によって可否を決定しますが、代理人による議決権の行使は認められていません。すべての事項が決議を要するわけではなく、監査役会で扱う議題は以下の表に挙げたような種類があります。

決議事項 すべての監査役の過半数により決定される事項。監査役会全体としての同意か否かが求められている場合、同意を決定する同意事項も含まれる
協議事項 監査役会としての決定は求められないものの、監査役間で意見交換が求められる事項。各監査役の職務や権限行使に関する内容など
同意事項 監査役会としての決議は必要ではなく、各監査役が個別に同意か否かを意思表示するべき事項。必ずしも監査役会を招集する必要はないものの、十分な協議に基づいた、意思表示までの妥当性が求められることが多い

注意が必要な点として、監査役会の手続きや内容上の瑕疵が認められる場合や、監査役会の招待通知が監査役全員に行き渡らなかった故に出席できなかった監査役がいる場合、(妥当な事情がある場合を除き)その監査役会での決議は無効になります。

議事録

監査役会の議事録は、出席した監査役の署名(もしくは記名捺印)を付した上で、会社の本店に10年間保管するよう定められています

このように議事録の保管が必要な理由は、株主が裁判所の許可を得た上で閲覧請求するため、あるいは会社債権者が役員を責任追及する際に裁判所の許可のもと閲覧請求するためです。さらに、親会社の株主が子会社の議事録閲覧を請求することもあります(裁判所が、議事録閲覧により親会社または子会社に損害をもたらす恐れがあると認めた場合、請求は却下される)。

監査役会が決定した事項や議事録に関して、一部の監査役が反対意見を述べることも当然生じ得ますが、そのような場合には反対したという記録を付記します。監査役会の監査報告においても、異論がある場合は個人として見解を付記するのが通常です。これにより、決議や監査報告内容に賛成したとみなされて不利益を被るといった事態を避けられます。

監査役会設置会社とは

監査役会設置会社とは、取締役の業務執行を監査する仕組みを有する監査役会を設置している会社のことです。会社法により、一定の基準を満たすと監査役会の設置が義務付けられます。

監査役会設置会社については、こちらの記事もご参照ください。
監査役会設置会社とは?指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社について解説

指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社との違い

監査役会を設置する会社と、指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社には制度上大きな違いがあります。

まず指名委員会等設置会社は、監査役の役割を担う監査委員会が存在しており、役割が重複する監査役会を別途設置することはできません。指名委員会等設置会社は、「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」の3つの委員会を設置する必要があり、各委員会は取締役会から独立して機能します。各委員会は3人以上の取締役を設置しなければならず、加えてその過半数が社外取締役でなければなりません。

欧米の機関設計に似たこれらの特徴により、意思決定や経営判断のプロセスにおける高い透明性を確保しているのが特徴です。しかし、社外取締役に人事や報酬を決定する権限があることを嫌う日本の企業文化により、日本での採用数は多くはありません。

監査等委員会設置会社は、いわば監査委員会のみを設置する会社です。指名委員会等設置会社と異なり、監査等委員会が取締役の人事や報酬を決定することはありません。しかし、監査「等」委員会という名称が指し示すように、取締役会での議決権を有しているのが特徴です。これにより、複数の委員会を設けることなく意思決定プロセスの透明化やガバナンス強化を期待できます。監査等委員会設置会社の場合も、監査役会を別途設置することはできません。

監査役会をこれらの機関設計と比較すると、監査等委員会設置会社は監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の両方の特徴を併せ持つと言えます。監査役を設置する会社は、監査役が株主総会で選任され、株主総会での選任案について同意権を有する点で似ているのが特徴です。しかし、監査の役割を担う委員会に議決権があり、過半数が社外取締役でなければならないという点で指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社に共通点があります。

指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社については、こちらの記事もご参照ください。
指名委員会等設置会社とは?組織の概要・設置の目的・メリット・デメリットについて解説
監査等委員会設置会社とは?組織の概要・設置の目的メリット・デメリットについて解説

監査役会と取締役会の関係

 

取締役会を監査するのが監査役会ですが、取締役会も会社内の大きな権限を有しています。監査役会と取締役会との関係について解説します。

取締役会は業務執行において最も重大な責任を担っています。株主総会によって意思決定が行われるのが大原則ですが、彼らが選任した取締役により都度、株主総会を招集しなくても会社の意思決定をスムーズに行うのが取締役会の目的です。

また、代表取締役が独断で経営の判断をしないように取締役会として意思決定をすることも取締役会の目的とされています。これによって、取締役会は経営の透明化とガバナンスの強化に資する役割を果たしていると言えます。

監査役会は、取締役会の業務執行を監査します。監査役会は、監査委員会もしくは監査等委員会と比べると議決権がないことで権限は弱まるものの、各監査役の調査に伴う情報請求により取締役会の業務遂行や意思決定を監査し、報告内容を株主総会に提供します。

取締役会は、業務執行の監査を別機関に依頼することでその責任からいわば解放されるため、経営の重要な判断に注力することが可能です。

監査役会のメリットとデメリット

監査役会を導入するにあたっては、以下のようなメリットとデメリットを考慮する必要があるでしょう。

メリット

監査役会の制度を会社に導入するメリットは、日本で馴染みのある機関設計で採用例が多く、導入が比較的容易であることが挙げられます。登記や各種手続きのシステムが成熟しており、スムーズに導入しやすいのが特徴です。

加えて、独任制であることにより監査の徹底や機動性が期待できます。監査役会では常勤監査役を設置しますが、常勤監査役は取締役として通常の業務に参加する必要がありません。これにより監査役は監査だけに集中でき、独任制による機動性と合わさってより実行力のある監査が可能です。

さらに、監査役会を設置することで企業の社会的信用の向上も見込めます。指名委員会等設置会社に比べると役員の人数も少なく、役員報酬や経費を抑えられるのもメリットです。

デメリット

監査役会には、取締役に対する人事権や報酬に関与する権限がありません。欧米では、独立した監査役や委員会が代表取締役に対して強力な権限を発揮することで監査の実効性を確保しています。そのため海外での認知度が低く、グローバル展開する会社の場合、海外で理解を得て積極的な投資を招く際にデメリットになり得ます。海外企業や投資家は、収益の安全性だけでなくコーポレート・ガバナンスの質や内容も重視するためです。

もう1つデメリットを挙げるならば、監査役会が形骸化し十分な監査が行われない可能性があることです。上記のメリットの項目で上げた点と矛盾するように聞こえますが、これは任期を終えた取締役が横滑り的に監査役に就任するといったケースにおいて発生し得るデメリットです。適切な監査役を見つけるために、後任者を選定することも業務上の負担となる場合があります。

まとめ

従来の日本の企業文化に合っているのが監査役会という機関です。監査役会は、上場企業での採用例が最も多く、導入しなければならない制度としては比較的負担が少ないといえます。しかし、海外で事業を展開する際にデメリットになりかねないのも事実であるため、導入にあたっては自社の事業内容と合わせて他の制度も含め考慮する必要があります。

この記事が、上場後にガバナンス強化を検討している経営者・役員・ガバナンス担当者のお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

また、IPO準備の具体的進め方を相談するには、プロの専門家に聞くのが一番です。

そこでSOICOでは、IPO準備のプロによる個別の無料相談会を実施しております。

・上場準備を失敗させないために、管理部門体制構築、主幹事証券会社選定...等で考えられるリスクは?
・CFOの採用はどうやったら上手くいくか?
・バリュエーションを上げるために「事業計画及び成長可能性の資料」はどう書くべきか?

そんなお悩みを抱える経営者の方に、要望をしっかりヒアリングさせていただき、
適切な情報をお伝えさせていただきます。

ぜひ下のカレンダーから相談会の予約をしてみてくださいね!

この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。