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グループガバナンスとは?目的・必要性・実務指針・ガバナンスの構築について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

コーポレートガバナンス・コードの基本のキ
~概要と基本原則を解説~

コーポレートガバナンス・コードの「基本的な概要」と「基本原則」にフォーカスして紹介

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2015年にコーポレートガバナンス・コードが施行されたことにより、多くの企業において、社内の機能・機関の見直しが進んできています。こうした状況の中で、グループ会社がもととなるガバナンスの問題が頻発していることから、グループを視野に入れたガバナンスの検討が重要となってきています。

そこで、本記事ではグループガバナンスの目的やその概要をご紹介します。

グループガバナンスとは

グループガバナンスとは、企業のグループ全体を統制する仕組みを指します。グループガバナンスの定義は一概に決められているわけではありませんが、具体的な例として、経営者がグループ全体の企業価値の向上のため、またはリスクの最小化のために構築された仕組みとして考えることができます。

コーポレートガバナンス・コードとグループガバナンス

コーポレートガバナンス・コードは、上場企業を対象とした企業統治におけるガイドラインであり、東京証券取引所が2015年に策定しました。コーポレートガバナンス・コードにおいては、グループガバナンスについてあまり焦点が当てられておらず、単体企業の経営に関する規範を示したガイドラインとなっておりました。

そこで、経済産業省がコーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえて補完するものとして、2019年にグループガバナンスシステムに関する実務指針を策定しています。

これは、グループ経営を行う企業を対象として、グループ全体の企業価値向上を目指したガバナンスの在り方を示すガイドラインとなっており、グループのガバナンスに関しての課題に対する対応策として注目を浴びています。

なお、コーポレートガバナンスおよびコーポレートガバナンス・コードについては、別の記事で詳細にご紹介しているので、そちらも併せてご覧ください。
コーポレートガバナンス(企業統治)とは?目的・強化方法・歴史的背景について解説
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グループガバナンスの目的

グループガバナンスの目的は、会社法による規制への対応だけでなく、株主への対応がありますので、それぞれご紹介していきます。
・会社法による規制
・株主への対応

会社法による規制

会社法では、企業の取締役会において、業務の適正性を確保するための体制を整えることが求められており、親会社だけでなく、企業グループ全体に内部統制のシステムを設置することが必要とされています。

そのため、会社法においては、親会社と子会社で構成された企業グループ全体の業務適正化が目的とされています。

内部統制については、こちらの記事もご参照ください。
内部統制とは?会社法・金融商品取引法での定義や方針を徹底解説!
IPOに内部統制が必要な理由とは?構築する目的・要素も解説!

株主への対応

取締役会において、株主に対し、企業の経営や業務執行に対する結果の説明をする必要があります。その中で、企業グループとして経営を行っているのであれば、グループにおける戦略やその結果について説明を株主に正確にする必要が有ります。

グループガバナンスでは、株主から求められている「企業価値の最大化に向けたグループ全体の適切な統制」への対応も目的とされています。

取締役会については、こちらの記事もご参照ください。
取締役会における監査役の役割とは?監査役の義務・取締役会の決議における監査役の関わりについて解説

グループガバナンスの必要性

グループ全体のリソースを効率的に配分し、効果的に活用していく為には、グループガバナンスの機能が必要不可欠になります。グループ全体の企業価値を最大化させ、業績を向上させていくためには、グループガバナンスの適切な運用をしていく必要があります。

また、グループガバナンスが適切に機能していることで、グループを運営するにあたってのリスクを抑えることにも繋がってきます。グループ設計の在り方や事業ポートフォリオマネジメントの在り方など、具体的な内容を示したグループガバナンスシステムに関する実務指針においても、グループガバナンスの強化の必要性が記載されています。

グループガバナンスシステムに関する実務指針

グループガバナンスシステムに関する実務指針は、以下の6つの章から構成されており、100ページ以上のガイドラインとなっています。ここでは、各章におけるポイントをご紹介します。
・ガイドラインの目的と対象
・グループ設計の在り方
・事業ポートフォリオマネジメントの在り方
・内部統制システムの在り方
・子会社経営陣の指名・報酬の在り方
・上場子会社に関するガバナンスの在り方

ガイドラインの目的と対象

まず、ガイドラインの目的と対象では、グループガバナンスシステムの指針における目的や対象等について説明をしています。グループガバナンスの在り方について、コーポレートガバナンス・コードに沿った形で示しており、経済産業省の企業に対するヒアリングやアンケート結果に基づいた有効な手法を紹介しています

ただし、グループ経営は企業ごとで異なることから、本指標で示した取り組みを画一的に実施することを求めたものではありません。そのため、各企業でグループガバナンスの在り方を検討する際のガイドラインの位置づけが説明されています。

グループ設計の在り方

次に、各企業における事業の特性やグローバル化などの状況にあわせて、中長期的なグループ全体の企業価値向上および持続的な成長に向けたグループ設計の在り方を説明しています。本社では、グループ全体のシナジー効果を最大化させるための戦略や共通インフラの提供など、重要となる役割を説明しています。

また、本章では、グループ各社における業務執行に関して、本社の取締役会において適切に関与していく体制についても触れています。

事業ポートフォリオマネジメントの在り方

続いて、グループ全体の経営資源の最適配分であるポートフォリオマネジメントにおいて、説明されています。グループのシナジーを発揮するため、また持続的な収益を確保するために、ポートフォリオマネジメントを定期的に見直していくことが重要であるとしています。

また、この時に、自社の中核となるコア事業を見つめ直し、M&Aやノンコア事業の整理をしていくことで、経営資源をコア事業に投資していくことが重要であるとされています。

内部統制システムの在り方

ここでは、グループ企業の価値向上に向けた内部統制システムの構築や運用の重要性を説明しています。

具体的な内容については、各企業の経営方針や各子会社の体制など、実態を見極めたうえで、監視・監督型や一体運用型、またはその組み合わせを検討していくことが重要であると説明しています。

子会社経営陣の指名・報酬の在り方

そして、子会社の経営に関して、親会社の関わり方が説明されており、グループとしての経営陣の報酬や育成についての考え方が示されています。重要となるポイントは、グループで一体となる経営の共通化や、それぞれの子会社や地域にあわせて柔軟に対応することのバランスが重要であると説明しています。

経営陣の報酬に関わる「役員報酬」については、こちらの記事もご参照ください。
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上場子会社に関するガバナンスの在り方

最後に、上場子会社における経営陣のガバナンス体制とその在り方について説明しています。上場子会社として維持すべきか否か、またその合理的理由や子会社のガバナンス体制について、投資家に情報開示し説明すべきであるとしています。

また、上場子会社としても独立した意思決定を担保するためのガバナンスが構成されることが重要と説明しています。

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グループガバナンスの課題と解決に向けた検討時期

グループガバナンスの課題の多くは、親会社と子会社における関係性によるものです。例えば、グループ会社におけるルールが統一されておらず、子会社独自の解釈を認めている場合や、子会社のサポートのための業務が親会社の負担を重くしているなどが挙げられます。

その他にも、海外拠点の場合は、法規制の対応リスクの変化など、海外事業に伴うリスクが複雑化することで一層困難な状況となっています。

そのため、グループがガバナンスを検討する場合は、グループガバナンスのみを考えるのではなく、検討すべき事案が発生した際に、グループガバナンスを改めて検討することがより効果的な方法となります。例えば、子会社による不正が発生した場合は、その要因や子会社および本社におけるガバナンスの強化を検討するなどが挙げられます。

グループガバナンスの構築

グループガバナンスを構築していくにあたり、取り組むべき内容についてご紹介します。
・本社機能の最適化
・事業や子会社に対する本社の関与方針の明確化
・規程類などの整備と変革の実行

本社機能の最適化

まずは、本社機能の最適化です。グループガバナンスを構築するにあたり、グループ経営の要となる本社機能の最適化が最重要となってきます。子会社からは様々な意見が出ている場合もありますが、資本の効率性を考えるのであれば、個社の視点ではなく、全社最適の観点からグループの本社が事業ポートフォリオを見極めたうえで、事業の再編を実施することが求められます。

子会社の現場から挙がる意見を収集する役割を担うだけでは、本社機能としては不十分です。本社はグループ全体をけん引する役割があり、グループビジョンの設計や事業戦略、迅速な意思決定などの役割を果たす必要があります。

注意すべき点としては、ここで述べている内容というのは、本社が子会社を抑圧し制御するということではないということです。例えば、戦略を策定することやシナジーの推進をすること、リスクマネジメントを推進することなど、それぞれの子会社の状況や特性にあわせて機能の最適化を測っていくことが重要であり、中長期的な全社的な戦略や業界の状況を踏まえたうえで、適切にすすめていく必要があります。

事業や子会社に対する本社の関与方針の明確化

続いて、事業や子会社に本社が関与するにあたり、その方針を明確にすることが重要となってきます。グループにおける戦略の重要性やリスクの度合いに応じて、本社が保有するリソースの投入具合を分けていく必要があります。

そのために、まずは事業や子会社についてさまざまな要素で分類または評価を実施し、その上でそれぞれの区分に応じた関与の方針を決めていくことが効果的な手段となります。また、方針を決めることで、M&Aやアライアンスへの対応においても効果的な手段となります。

M&Aについては、こちらの記事もご参照ください。
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規程類などの整備と変革の実行

最後に、規程類に落とし込み、変革を実施していくことが重要となります。上述した、本社機能の最適化及び本社の関与方針を明確化した後に、それら内容を規程に反映していきます。

規程だけではなく、コミュニケーションに関する規則や業務プロセスなどについても、本社の関与方針を調整することは有効な手段となります。

まとめ

本記事では、グループガバナンスの概要や構築の仕方などについて、ご紹介しました。グループ全体の生産性を向上させ、企業価値を最大化していくためには、適切に整備されたグループガバナンスが非常に重要となってきます。

本記事が、グループ会社の経営者・役員・企業のガバナンスに関係する担当者の方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。