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【2023年最新】トレンドの人事制度|最新人事制度9選を徹底解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

成長ベンチャー企業が直面する
よくある「人事問題」事例集

成長ステージごとにも解説!

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人事制度は時代とともに変遷するものです。

以前であれば当たり前だった人事制度が今は古くなり、これまでにはない人事制度が多数登場しています。特に最近は男性の育休取得や、テレワークの普及など、働き方が大きく変化しています

経営者や人事担当者の方は人事制度がどのように変遷してきたのか、しっかりと把握しておく必要があるでしょう。本記事では、最近の人事制度のトレンドと最新の人事制度を導入している企業の事例とともに詳しく解説していきます。

最新の人事制度9選

最新の人事制度として次の 9つの制度をご紹介します。

・ノーレイティング
・360度評価
・バリュー評価
・ピアボーナス
・リアルタイムフィードバック
・OKR
・コンピテンシー評価
・チェックイン(Check-in)
・パフォーマンス・デベロップメント

これらの制度は従来の制度と評価を行う視点が異なるだけでなく、評価をする人や評価をする頻度などにも大きな違いがあります。最新の人事制度がどのようなものか詳しく解説していきます。

ノーレイティング

ノーレイティングとはランク付けを行わない人事制度を指します。従業員同士の優劣を等級という形でつけず、従業員自らが策定した短期的な目標をどの程度達成できたのか、その達成度に応じて評価します。

ランク付けをしないことによって、従業員の間に競争が生まれないので、従業員が協力して業務にあたることが期待できます。さらに、従業員間の一体感が出るので、チームワークで会社を成長させていくことが期待できるでしょう

ノーレーティングは従業員の自主性に任せる人事制度ですので、短期的に達成度をチェックしてフィードバックを行うことが重要です。そのため評価とフィードバックに時間と手間がかかるという点がデメリットです。

360度評価

360度評価とは、上司が部下を評価するだけでなく、同僚や部下からも評価を受けるという人事制度です。従来の人事制度は上司が部下を評価するだけという一方的なものであったため、評価される側は「上司から気に入られればいい」という心理が働きます。

しかし、360度評価では同僚や部下からも評価を受けるので「良き部下」であると同時に「良き仲間」「良き上司」でなければ高評価を得ることができません。

皆から評価される従業員へと育てることができますし、パワハラなどの抑止にもなります。ただし、評価者が増えるので、評価にかかる事務的・時間的コストが大きくなるのはデメリットです。

バリュー評価

会社が定めたバリュー(価値観)に則って行動できたかどうかを評価するものです。会社の理念や会社が重視する規範に沿って行動できているかどうかが評価されるので、いくら業績が高くても、会社の定めた価値観から外れた従業員は評価されません。そのため、従業員全体が同じ方向を向いて統率していくのには長けた人事制度だと言えるでしょう。

一方、どのように評価すべきかが難しい点が大きなデメリットです。価値観に則っている従業員とはどのようなものかは数値化も言語化も難しいので、モデルとなる人物像を定めておき、その人物像に近いか遠いかで評価するのがよいでしょう

ピアボーナス

従業員の行動をその都度評価し、従業員同士がポジティブなフィードバックを相互に行う環境を作ることです。賞賛する際には少額のインセンティブなども付与され、評価の場ではポジティブなことだけを伝えられるので、従業員のモチベーションアップとチームワークの向上に繋がります

フィードバックする場所はオープンチャットなどのオンラインの場であることが基本ですので、環境を整えることに時間がかかるという点とインセンティブ付与のための金銭的なコストが高くなるという点はデメリットです。

リアルタイムフィードバック

リアルタイムフィードバックとは、上司が部下の働きをリアルタイム(即座)に評価することです。良いことも悪いことも上司がすぐに従業員へフィードバックするので、高い行動改善効果が期待できます。

ただし、フィードバックの回数が多すぎると、上司も部下も時間を取られてしまうので逆に業務に支障をきたすリスクもあります。どの程度の頻度でフォードバックを行うべきか、あらかじめ定めたおいた方がよいでしょう。

OKR

OKRとは会社の目標と個人の目標を総合した目標を策定し、その達成度に応じて評価する方法です。会社の目標達成だけを評価すると、従業員個人の満足度が下がる傾向にあります。

一方、個人の目標達成度だけを評価すると、会社の業績が上がらないリスクもあります。OKRであれば、会社の目標と従業員個人の目標の両方を評価できるので、会社の業績と従業員個人の満足度の両方の達成を期待できます

ただし、複数の部署を担当する従業員は目標が多くなってしまうリスクがあるので、その場合には当該従業員の目標数を絞るか、その従業員に限っては別の方法で評価を行うなどの配慮が必要です。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、企業が「優秀な社員だ」と考える社員にどの程度近づいているかどうかで従業員を評価する方法です。理想とする社員像の行動特性を企業が分析し、項目に分けて、項目ごとに従業員を評価していきます。

また、理想とする従業員は実在する従業員であることもあります。「理想とする従業員」という分かりやすいベンチマークがあるので、従業員にとっては非常に分かりやすい人事制度だと言うことができます。

その一方、理想とする従業員を探すことが難しいという点や従業員全員が同じ理想像に近づこうとするので、個性が失われ、画一的な人材しか育たない点はデメリットです。

チェックイン(Check-in)

チェックインとは上司と部下の面談機会を増やして、それぞれがフィードバックをし合う仕組みのことです。継続的に頻繁に面談を重ねることによって、従業員のスキルアップやモチベーションの向上が期待できます。

上司が部下を評価できる裁量が大きく、評価項目はありません。上司は部下を自由に評価できるので、人事評価シートなどを詳細に記入する手間がかからないのがメリットです。

ただし、上司と部下の人間関係に左右されるリスクがあるので、ヒューマンエラーが起きやすい制度と言う点はデメリットです。

パフォーマンス・デベロップメント(PD)

上司が「部下の成長」を評価する制度です。業績ではなく、上司が部下の成長にコミットして評価するので、評価される側の満足度は高くなります

そして、長期的に見て会社に有用な人材を育てることができるので、長期的な人材育成にも効果が期待できます。ただし、短期的な業績が評価されない分、業績に直結しない人事制度だとも言えます。

従業員が数字を追わずに自己目標達成に傾注するリスクがあるので、若手社員だけに適用するなどの運用上の工夫が必要になるでしょう。

2020年代の人事制度のトレンドとは?

最近になって新しい人事制度が次々と登場している背景は、日本人の働き方が大きく変わったことに起因しています。

そして、新しい人事制度は働き方が変わったことに合わせて次の3つのトレンドが見られます。

・男性の育休
・人的資本経営
・シニア世代の活用

2020年代の新しい人事制度のトレンドについて詳しく解説していきます。

男性の育休

男性従業員に育休を取得させることも企業に求められる新しい潮流です。育児・介護休業法が2022年4月に施行され、同法では「産後パパ育休制度(出生時育児休業)」が創設され、男性労働者が子どもの出生後8週間以内に4週間までの休業を取得できる制度です。

これに合わせて男性従業員に4週間までの育休を取得させることができるよう、企業は人事制度を新たにしていく必要があります。

人的資本経営

人的資本経営とは、人を企業にとっての「資本」と捉えて、その価値を最大限に引き出すことによって企業の中長期的な成長を目指すというものです。

岸田内閣においても「人への投資」が重点項目として挙げられており、2022年6月に発表された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では、人への投資を促進するため5年間で1兆円の政策パッケージを用意することが発表されています。

このような流れを受けて、企業は従業員個人がスキルアップできるような人事制度を用意する必要性に迫られています。

シニア世代の活用

2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されています。この法律は企業が従業員を70歳まで雇用する努力義務を課すものです。

そのため、人事制度においても「シニアをどのように活用するか」という視点を持つ必要性が生じています。

トレンドの人事制度を取り入れるメリットとデメリット

トレンドの人事制度を取り入れることにはメリットとデメリットが大きく分かれます。

トレンドの人事制度を企業へ導入するメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。

トレンド人事制度のメリット

トレンドの人事制度を企業が採用することのメリットは次の3点です。

・企業の生産性向上
・人材獲得や離職率低下につながる
・生産性の低い人材を判別できる

新しい人事制度は「従業員個人の満足度を高める」という視点を持っているものばかりです。そのため、従来の会社が一方的に業績だけを判断して評価する制度よりも従業員の満足度が高くなり、生産性の向上に繋がります。

また、従業員のスキルアップにつながる制度も多いので、長期的に会社の収益性も高くなるでしょう。このような環境下で働くことは従業員個人にとってもメリットが大きいので、新規採用には大きくプラスに働きますし、従業員の離職率低下にも大きく寄与します

さらに、新しい人事制度は従来の制度よりも多角的な視点から従業員を評価できるものとなっています。そのため、これまでは上司に見えなかった従業員の姿が見えるようになり、生産性の低い従業員を浮き彫りにすることが可能です。

トレンド人事制度のデメリット

トレンド人事制度には次の3つのデメリットもあるので実際に導入する前に把握しておきましょう。

・古参の従業員から反発がある
・切り替えに失敗すると組織は弱体化する
・短期的な利益には繋がりにくい

新しい人事制度を導入したことによって、古くからの従業員は新しい人事制度の元では評価されなくなる可能性があります。また、そもそも変化を嫌う古参従業員も存在するので、優秀なベテラン従業員の離職を招いてしまうリスクがあると理解しておきましょう。

そのため、人事制度の切り替えに失敗するとむしろ組織は弱体化します。つまり、新しい人事制度を導入したことによってチームワークが乱れて生産性がむしろ下がってしまうリスクもあります。新しい人事制度について丁寧に説明するか、段階的に切り替えるなどの配慮をする必要があるでしょう。

また、新しい人事制度の多くが長期的な従業員の成長や会社の発展につながるものばかりです。短期的な業績を評価するものではないので、半期や1年などの短期的な業績アップには繋がりません。短期的に業績を向上させ、長期的な成長に繋げたい企業には不向きであるという点も把握しておきましょう。

トレンドの人事制度を取り入れた企業

実際にトレンドの人事制度を取り入れた企業として有名なのが、次の6社です。

・アドビシステムズ株式会社
・株式会社メルカリ
・Chatwork株式会社
・株式会社ディー・エヌ・エー
・ヤフー株式会社
・GMOインターネット株式会社

これらの企業がどんな人事制度を取り入れて、どんな効果があったのか、詳しく解説していきます。

アドビシステムズ株式会社

アドビシステムズは目標に対する達成度を評価する人事制度から、上司と部下が頻繁に対話を行うチェックインという人事システムを導入しました。アドビシステムズは、年間目標を策定し、その目標の達成度で評価をする人事制度を運用していました。

しかし、その制度では評価を行うマネージャーの負担が非常に大きくなり、従業員も「目標に対する達成度」という点でしか評価されないのでモチベーションを維持するのが難しいという問題が生じます。そこで、上司と従業員が頻繁に対話を行い、従業員の成長度合いを評価するチェックインというシステムにアドビは切り替えました。

チェックインでは、会社と従業員があらかじめ対話内容を決めて、会社から期待されることのすり合わせを行います。その上で従業員の働きを上司が評価し、頻繁にフィードバックを行うようになりました。結果的に従業員の満足度が向上し、離職防止に効果を発揮しました

また、チェックインではフリーハンドで評価を行うことができるので、これまでのように評価に事務的な手間を取られる問題も解決できるようになりました。

株式会社メルカリ

メルカリは3ヶ月に一度「OKR評価」と「バリュー評価」を取り入れた評価を実施しています。OKR評価では、全社的な目標(O)に向けて部署や個人がどの程度の目標を(Key Results)達成すべきなのかをそれぞれ設定する方法です

またメルカリは次の3つの会社のバリューとして掲げています。

・Go Bold(大胆にやろう)
・All for One(全ては成功のために)
・Be Professional(プロフェッショナルであれ)

この企業理念(バリュー)をどの程度達成できたのかを評価するバリュー評価も導入しています。メルカリはバリュー評価をどの程度達成できたのか賞を設けることで従業員のモチベーションアップを図っています

さらに、「mertip(メルチップ)」というチップ制度を導入し、社内でいつでも誰もが他の従業員を賞賛してチップを配れるピアボーナス制度も導入しているので、従業員の目標達成とモチベーション管理に非常に力を入れている会社だと言えるでしょう。

Chatwork株式会社

Chatwork株式会社はOKR評価を導入し以下の3つの評価項目を設けています。
①業績評価 ②行動評価 ③全社業績

ただし、Chatwork株式会社は目標の達成度だけを一方的に評価するのではなく「目標に対してどれだけチャレンジしたか」という目標の達成度が評価されます

そのため、従業員は困難な目標を達成しようと積極的にチャレンジをすることが期待できます。

Chatwork株式会社は、次のようなユニークな人事制度を導入している会社として有名です。

・遣唐使制度:自分が所属するオフィス以外の支社へ行き、他支店の従業員と交流する
・ゴーホーム制度:従業員が実家に帰る際に、会社から交通費を補助
・ランチトーク制度:従業員が幹部や上司とランチする際にランチ代を補助
・メンター制度:企業文化や疑問点などを気軽に相談できる場所を提供
・ヘルシー部活制度:健康かつ円滑な人間関係を構築することを目的に、社内の部活動へ補助金を支給する

このようにChatwork株式会社では、従業員が社内で円滑な人間関係を構築するためにさまざまな施策を実施しています。

株式会社ディー・エヌ・エー

株式会社ディーエヌエーは「シェイクハンズ」という非常にユニークな人事評価制度を採用しています。シェイクハンズは直属の上司の承認なしに、異動先部署と本人が合意すれば異動できる制度です。この制度を導入したことによって社内異動が増えて社内の動きが活発になりました。そして従業員自ら、自分の強みはどこなのかと検討を行うようになります。

逆に優秀な人材には部署としても「抜けて欲しくない」と考えることから、従業員を大切にする風潮が生まれます。結果として社内の競争力強化とともに、部署としても熱意を持って従業員に魅力発信できる会社へと生まれ変わることができました

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社は「ヤフーバリュー」という人事評価制度を導入しています。ヤフーバリューとは、行動評価の面でヤフーの企業文化にあった行動ができているかということを評価の対象としています。バリューに沿った行動ができている従業員は将来的に企業に貢献できる人物であるとして、給与へ反映させることとしました。

一方、業績評価の部分は賞与に反映させる仕組みとなっているので、バリューを大切にしながらも短期的な業績も体現できるような仕組みとなっています。

GMOインターネット株式会社

GMOインターネット株式会社は360度評価を実施しています。等級ランクを公開しているので、どんな評価の人がどの等級になるのかを一目瞭然で従業員は知ることができます。

等級を公開し、他部署も含めた360度評価を実施しているので、従業員の評価に対する不満が無くなり評価に対する満足度がアップしました

まとめ

トレンドの人事制度は「従業員の満足度を向上させ」「短期ではなく長期的な会社の成長を達成する」という特徴があります。

男性の育休取得、人的資本経営、シニアの活用など、企業に求められる社会的な背景はどんどん変わっていきます。

従来のように短期的な業績だけを見て上司が部下を一方的に評価する人事制度では、優秀な人材を獲得できないばかりか優秀なベテラン従業員も離職してしまうかもしれません。

会社の長期的な成長にとって、どんな人事制度が必要なのかを検討し、自社にとって最適な人事制度を採用していきましょう。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。