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OKR(目標と主要な成果)とは?目標の設定方法・運用の際のポイントを丁寧に解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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目標管理を運用する際、OKRという手法を取り入れると効果的です。OKRを取り入れ運用し、大きな成果をあげた会社も数多く存在します。

本記事では、OKRとは一体どのような生い立ちを持ち、どのような特徴を持つのか、その効果とメリット、そしてOKRの設定方法、さらに運用する際のポイントなどをお伝えします。

そもそもOKRとは

目標管理のフレームワークの1つに「OKR」があります。「OKR」とは「Objectives and Key Results」の頭文字をとったもので、OKRは「Objective(達成目標)」と「Key Results(主要な結果)」から成り立つ、会社と従業員がともに成長する目標管理の手法をいいます。

OKRの生い立ち

OKRはアメリカのIT企業であるインテル社で発祥しました。当時のインテル社は主力であるメモリチップの市場競争において苦戦を強いられていました。主力品の「8086」が市場のシェアを得る方法として、当時2000人の従業員の内、約1,000人を動員しOKRを採用し実施しました。

インテル社は「8086」の品質改良ではなく、OKRを通じ顧客への関わり合うというマーケティング戦略に特化した結果、メモリチップ市場のシェア8割以上を獲得したのです。OKRはインテル社の業績発展に大きく貢献しました。インテル社が成功を収めた後、Google社やOracle社もOKRを導入し会社の発展を遂げています。

OKRの基本と特徴

OKRでは、Objective(達成目標)1つに対し、Key Results(主要な結果)を複数持たせるのが基本です。さらに、複数のKey Resultsに対し、それぞれObjectiveを持たせるため、ツリー状の階層構造となる特徴があります。

また、OKRは「ムーンショット」に例えられ、難易度の高い目標を意味しています。実際には約60%〜70%の達成度でも、結果的に何か得るものがあったといえるレベルの目標です。そのため、OKRでは「ムーンショット」の例えのごとく、挑戦的で野心的な目標を設定し運用します。

Objectives(達成目標)

OKRのObjectives(達成目標)は、まず分かりやすいという特徴があります。全社や部門などで共有するため、シンプルに言語化されており、かつ覚えやすいことが基本です。従業員の目的意識や動機付けなどを目的としています。

また、Objectives(達成目標)は定量的ではなく、抽象的で定性的な内容であるのが基本です。難易度が高いことが条件となり、簡単に達成できる目標を掲げても成果を得ることは難しく、会社と従業員の成長には繋がりません。

Key Results(主要な成果)

Objectives(達成目標)が抽象的で定性的であるのに対し、Key Results(主要な成果)は具体的で定量的なことが特徴です。Key Results(主要な成果)は、達成の度合を管理できるように数値化し設定してあるため、客観的に判断できます。

また、Key Results(主要な成果)を設定することにより、Objectives(達成目標)を達成するにはどうすればよいか、具体的な行動の共有が可能になります。特に、Objectives(達成目標)は数を増やしすぎないようにし、3個~5個に絞って設定するとOKRの進行促進が可能です。

OKRによる効果

OKRには次の4つの威力があるといわれています。
・フォーカス(戦略を絞る)
・アラインメント(全員で連携する)
・トラッキング(定量的な測定)
・ストレッチ(失敗の許容)

これらについて順に説明します。

フォーカス(戦略を絞る)

OKRでは何が重要で何が重要でないかを明らかにし、重要な項目に絞って運用することが大切です。インテル社でも「8086」のOKRを市場マーケティングに絞ったことにより結果が出たことは先にお伝えしたとおりです。

アラインメント(全員で連携する)

全社が同じ目標を共有していると、部門を超えた連携が可能です。例えば、営業部門を経理部門が協力したり、エンジニア部門を営業部門が協力したりし、効果的に目標達成に取り組めます。

トラッキング(定量的な測定)

OKRでは目標が定量化されているため、客観的なデータに基づく進捗管理が可能です。もし目標の見直しが必要となっても、早い段階で見直しができます。

ストレッチ(失敗の許容)

OKRでは60%〜70%の達成でも会社に成果が出ますが、残りの30%は失敗となってしまいます。しかし、失敗は予め許容されているため、新しい取り組みに挑戦しやすくなります。

OKRとMBO・KPI・KGIなどとの違い

もともと、OKRは、ドラッカーの提唱した目標管理の「MBO(Management by Objectives)」をシンプルにしたものといわれます。

また、KPI(Key Performance Indicator)とは、重要業績評価指標をいい、目標達成の過程を管理する指標です。KPIは中間地点の確認などに利用されます。

一方、KGI(Key Goal Indicator)とは、重要目標達成指標をいい、最終目標を管理する指標です。つまり、ゴールを目標としています。

OKRのメリット

OKRは、先にお伝えしたとおりシンプルなフレームワークです。全従業員でOKRの目標達成に取り組むことで、経営の効率化や業務改善、そして業績の拡大化に繋がります。ここでは、OKRのメリットをお伝えします。

・会社の方向性を全員が共有できる
・迅速に目標設定できる
・社内のコミュニケーションが増える
・目標を設定する力自体の向上

会社の方向性を全員が共有できる

OKRは、全員で共通の目標管理を行うため、会社のビジョンや方向性を全員で共有できるのがメリットです。また、シンプルで分かりやすく設定するため、従業員ごとに目標の解釈が変わることはありません。

目標管理は会社の規模が小さいと運用しやすいですが、会社の規模が大きくなると部門も増えて、従業員の人数も多くなり運用が難しくなります。OKRは全従業員に対して同じ方向性を持つため、従業員の数が増えても目標がブレることはありません

迅速に目標設定できる

OKRは、基本的に四半期ごとに目標の見直しをします。見直しの都度、現状に合わせた目標となっており、柔軟性を持ち合わせています。特に、社会情勢の変化の早い現代では、会社の目標を変更をするサイクルが以前より短くなり、迅速な対応が求められています。

シンプルで柔軟性のあるOKRは、急な目標の変更にも対応できるのがメリットです。そのため、常に最新の状態で全従業員が目標管理に取り組めます。

社内のコミュニケーションが増える

会社が急成長を遂げている場合は、それに伴い従業員が増え組織も複雑化します。その結果、異なる組織間では従業員同士のコミュニケーションを取ることが難しくなりがちです。OKRは目標を全員で共有しているため、コミュニケーションに隔たりがありません

例えば、新たな部門ができても、他の部門と同じ目標のため、コミュニケーションが滞ることはなく質も上がります。その結果、従業員同士の結束も強くなり、OKRにより業績の向上に繋がります。

目標を設定する力自体の向上

短い間隔で柔軟性のあるOKRを導入すると、目標設定に接する機会が増えるため、目標設定するスキルが身についてきます。OKRを運用する期間が長くなるほど、目標設定に要する時間は少なくなるのが特徴です。

また、従業員の目標を設定するスキルが上がると、目標を短期間で設定できることに加え、質の高い目標を設定する力もつきます。短期間で質の高い目標設定ができれば、会社の業績向上にも繋がるのがメリットです。

OKRの設定方法

初めてOKRを導入する際、設定方法に迷うかもしれません。やみくもにOKRを設定しても運用が続かない可能性があります。そこでOKRを作成するフレームワーク「SMART」の原則を利用し、Objectives(達成目標)、Key Results(主要な成果)を設定し導入してみましょう。

OKR作成の5原則「SMART」とは?

「SMART」とは、効果的に人事評価の目標を設定するフレームワークをいいます。

「Specific(明確性)」「Measurable(計量性)」「Achievable(達成可能性)」「Relevant(関連性)」「Time-bound(期限)」などの五つの頭文字をとっています。

OKRを作成する際は、「SMART」の5つの原則にあてはめることが大切です。まず、目標は「明確」で分かりやすくなければなりません。また、目標には「計量性」が必要で、抽象的だと進捗管理が難しくなります。

OKRでは「達成可能性」が60%〜70%位の目標となるよう設定することは先に述べた通りです。さらに、「関連性」では、全社で共有できる目標とし従業員に統一感を持たせます。そして、基本的に四半期ごとの「期限」を設定し、必要があれば、都度目標の見直しをします。

Objectives(達成目標)の設定方法

まず、会社全体として実現したいことが何かを明確にします。全従業員のモチベーションが上がるような野心的な目標でなければならず、達成できる目標を設定すると効果を得ることはありません。

また、定性的な言語化が必要となり、具体的で客観的な分かりやすい言葉で設定します。言語化に際しては、「やらなければならない」ではなく「やりたい」という価値観を意識しておくことが大切です。

Objectives(達成目標)はチャレンジ精神にあふれ、全社のモチベーションを上げていく必要がありますが、度が過ぎるとモラルを損ないかねません。目標達成のためには手段を選ばない、ともなると会社の存続が危ぶまれます。

Key Results(主要な成果)の設定方法

前提として、Objectives(達成目標)は企業にとって最重要な課題を掲げましょう。また、この目標は5原則でも触れたように四半期などの短期間で達成ができるものであるべきです。

また、Objectives(達成目標)が定性的なものであるのに対し、Key Results(主要な成果)は数値で計測し、誰でも認識できるようにします。

1つのObjectives(達成目標)に、Key Results(主要な成果)は、3つ〜5つに絞り設定します。その際、達成できるレベルを概ね60%~70%になるように適度に難しく設定することが大切です。

Objectives(達成目標)とKey Results(主要な成果)には関連性があります。目標を達成するには、全てのKey Results(主要な成果)を達成しなければならず、目標と紐づいているか照らし合わせてみます。その際に、チームや個人の目標と企業の達成目標の関連性も確認しましょう。

OKRの具体的な例

OKRをどのように利用するか、2つの例をあげてご説明します。いずれも1つのObjectives(達成目標)に対し、3つのKey Results(主要な成果)を設定しています。
・オンラインショッピング
・アパレル店舗

オンラインショッピング

1.Objectives(達成目標):1ヵ月間の売り上げを伸ばす

2.Key Results(主要な成果)
・アクセス人数を○○人にする
・1人当たりの購入額を○○円にする
・転換率(CVR)を○○%にする

アパレル店舗

1.Objectives(達成目標):1ヵ月間の売り上げを伸ばす

2.Key Results(主要な成果)
・来店客数を○○人にする。
・1人当たりの購入額を○○円にする。
・売残を○○%にする。

OKRを運用する際のポイント

OKRを運用する際、OKRの持つ特性を十分に理解しておく必要があります。ここでは、OKRの運用を成功させるために気を付けておくべきポイントをお伝えします。

・人事評価と連動させない
・上層部だけで決定せず全員で決定する
・長期の運用を目指し進捗管理する
・OKRを可視化して全員で共有

人事評価と連動させない

OKRは人事考課と連動させないことが大切です。なぜなら、OKRは実現可能性を概ね60%〜70%に設定しているため、もともと目標達成が難しく、社員のモチベーションを下げてしまう可能性があるからです。

もし、OKRを人事異動と連動して運用している会社があれば、OKRの成果ではなく従業員がどのように挑戦したかを人事評価するよう配慮が必要です。

OKRの目的は、従業員が難易度の高い仕事に挑戦を促すことです。そのため、OKRが人事評価と連動すると挑戦を阻み、OKR本来の目的を離れ会社に悪影響を与えるものとなってしまいます。

上層部だけで決定せず全員で決定する

最も大切な目標には、経営トップの関与が必要です。OKRを運用する際は、部署任せにせず会社のトップも参加するようにします。

しかし、従業員の意見を聞かずにOKRを運用すると、従業員は関心を持たなくなり、OKR自体意味の無いものになりかねません。

会社の仕事を実際に行っているのは従業員で、常に現場の問題や改善する知識を持っています。そのため、上層部はもとより全員でOKRを決定することが大切です。

長期の運用を目指し進捗管理する

会社全体に関わるOKRは1年か、それ以上のスパンで見直しをします。部門による見直しは3ヶ月ごとで、個人の見直しは1ヶ月かそれ以下となるのが一般的です。

会社全体の見直しを重ねると数年単位での運用となります。そのため、少なくとも1年で終了せず、長期の運用を進行管理するとOKRの仕組みが会社に定着し、効果を得ることが可能です。

OKRを可視化して全員で共有

OKRを設定できたら従業員全員がいつでも見れる状態にして情報を共有します。経営陣は末端業務で取り組んでいるOKRを知ることができますし、部門マネージャーは他の部門のOKRの実施状況を把握できます。

会社の組織間の上下のフローや部門の横の繋がりも確認できるため、会社がOKRに対しどのように進んでいるかを知ることができ、OKRの効果を全員で得ることができるでしょう。

まとめ

ここでは、OKRの特徴や設定方法、そして運用する際のポイントなどをお伝えしました。OKRは会社全体で目標を共有するため、従業員全員が同じ方向を目指し目標管理を行うメリットがあります。

また、目標達成は概ね60%〜70%と設定しており、新しいことにチャレンジする機会も増えていきます。さらに、OKRには柔軟性があるため、目標の変更にもスピードを持って対応できます。

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。