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MBOの導入事例|運用のポイントや成功事例・失敗事例について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

成長ベンチャー企業が直面する
よくある「人事問題」事例集

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人事評価制度は、会社の利益確保に向けた従業員の貢献度や成果を評価し、給与や処遇に反映させるうえで制度化されたものになります。その中でも、目標管理制度(MBO)は、多くの会社で導入されている評価制度です。

本記事では、実際にMBOが導入された事例をご紹介しますので、自社で導入を検討するにあたり、参考にしてください。

MBOとは

MBOは、個人やグループが設定した目標の達成度に基づいて評価を行う制度です。

MBOが人事評価制度と混同される場面もありますが、MBOはただ人事評価をするのではなく、人材育成も目的としており、加えて会社のビジョンや方向性の浸透、従業員の主体性やモチベーション向上を図ることができます

MBOについては、次の記事もご参照ください。
MBO(目標管理制度)とは?具体例と作成時のポイント・OKRとの違いについて解説

MBOの運用ポイント

MBOを効果的に運用していくにあたって次の2つのポイントを紹介します。
・定期的な進捗管理
・評価後のフォロー面談

定期的な進捗管理

1つ目のポイントは、従業員が目標達成に向けた意識を維持できるよう、上司が定期的に進捗管理を行うことです。

定期的な面談では、部下の主体的な行動や考えを重視するよう意識しましょう。目標達成に向けた意識を上司から押し付けられるのではなく、従業員自身が認識し、自ら行動しなければ成長することができません。そのため、従業員自身に自覚させるという点を意識して面談を実施するようにしましょう。

評価後のフォロー面談

2つ目のポイントは、期末のフォロー面談です。MBOの運用において、期末に目標達成度についてフィードバックを実施する際に、反省点を洗い出すようにします。この時、一方的に上司から反省点を伝えるのではなく、従業員自身から引き出すようにしましょう

そして、本人にどのようにすべきか考えさせるようにします。お互いの認識を共有し、サポートしていくようにしましょう。

MBOの成功事例

それでは、MBOを実際に導入して効果的に活用されている事例をポイントと共に2つ紹介します。
・印刷業の企業例
・不動産・建築業の企業例

印刷業の企業例

1つ目の事例では、地域でトップグループの印刷業を営む会社の事例です。MBOを導入するにあたり、従業員の職種が増えてきたことから、人事制度の再構築をする中で、成果が従業員に公平に分配される評価制度を検討し、MBOを導入するに至りました

導入の成功におけるポイントとして、ボトムアップ式の目標設定における課題点を整理し、トップダウンの要素を導入したことや、MBOを人事制度とは別の制度として活用し、それぞれの目的を明確にしたこと、更には経営者や管理職にマネジメントについて理解を深めさせ、MBOの制度を導入しただけでなく、効果的に活用できるよう取り組みを行ったことが挙げられます。

不動産・建築業の企業例

2つ目の事例は、不動産・建築業を営む中堅企業の事例です。この会社では、地域密着型の事業として好調でしたが、市場の変化に対応した社内制度を検討する必要がありました。そこで、業績評価として効果的にMBOを活用していくことを目的とし、MBOを導入しました。

MBO導入の成功におけるポイントは、MBO運用にあたり経営目標や経営計画に沿った目標を設定したこと、また今後の行動計画に基づいた資源や行動をしっかりと分析し、MBO導入に向けた準備を徹底したうえで運用を推進したことが大きなポイントです。

MBOの失敗事例

次にMBO導入における失敗事例も2つ紹介しますので、併せて確認していきましょう。
・サービス業の企業例
・製造業の企業例

サービス業の企業例

1つ目の事例は、サービス業を営む企業の事例を紹介します。この企業は、労働集約型の事業であることから、人員を多く抱えていた中小企業でした。MBOを導入するにあたって、企業目標が従業員に十分に共有されておらず、管理職においても企業の方向性や目標が十分に理解されていない状況でした。

一方で、部下が管理職の考えに沿わない目標を設定すると叱責するといった場面が見られていました。また、MBOの制度について管理職も十分に理解しておらず、設定された目標が具体性に欠けており、目標の内容や達成までの手段についてしっかりと議論がされずに導入されていました。

製造業の企業例

2つ目の事例として、製造業を営む企業の事例です。この企業では、現場の社員と経営層で方向性や考えが十分に共有されておらず、MBOの運用においても十分な意思疎通が図れない状況で運用している状態でした。こうした中、目標達成に向けどのように進めていくべきか、上司が一緒に考えアドバイスすることなく、従業員個人に任せていました。

また、管理職から目標を達成するまでに解決しなければならない課題やどのように解決していくのか指導することもなく、MBOの目的を従業員に伝えることなく運用していました。

MBOのその他導入事例

最後に、MBOを導入した企業とその活用方法についてご紹介します。
・グリー株式会社
・ヤフー株式会社
・株式会社ユー・エム・アイ
・SCSK株式会社
・株式会社ディー・エヌ・エー

グリー株式会社

1社目はグリー株式会社です。グリー社は、2004年に設立され、ゲームを主軸としたエンターテイメント事業を営んでおり、2007年にMBOを導入しております。

グリー社では、目標達成の基準を明確化するために、5段階の指標を導入しました。さらに、2015年から全社員との1on1面談も実施しています。これにより、個人の成長と組織の成長を連動させることに成功しました。

グリー社のMBOは、1on1面談を重視し、目標設定やフィードバックが人事評価と完全に一致しないよう、MBOの運用においてグリー社特有の改良を加えております。評価の影響が強すぎると、数値化できる項目が過度に重視されてしまう傾向がありますが、人事評価との関連を緩くすることで、定性的な側面での行動も適切にサポートできるようになります。グリー社のアンケートにおいても、従業員の7割が1on1面談に満足していると回答しております。

ヤフー株式会社

2社目はヤフー株式会社です。大手IT企業であるヤフー株式会社において、2012年に経営体制の変更とともに、人事制度も刷新されました。その時にMBOを導入しましたが、評価数値に過度に依存するというMBOが孕んでいる課題が問題となりました。本間浩輔氏は山本紳也氏との対談で、部門の組織目標だけでなく、個人の通常業務においても目標化しすぎることで、仕事がすべて「点数取りゲーム」のようになってしまうと述べており、「才能と情熱を解き放つ」という会社のスローガンと乖離が生じてきました。

そこで、ヤフー社では、MBOのメリットである「評価と報酬の連動」を活用していくため、バリュー評価と成果評価を明確に分け、ヤフーバリューを如何に発揮できたかについて重視できるよう、MBOの制度を改良しております。

株式会社ユー・エム・アイ

3社目は株式会社ユー・エム・アイです。株式会社ユー・エム・アイでは、1971年に設立され、プラスチック製品やアルミ製品などを主に取り扱う製造業を営んでおり、職場環境の改善を目的としてMBOを導入しました。

以前より、優れた現場の人材が管理職に昇進することはありますが、それに伴って必ずしも優れたマネジメント能力を持っているわけではないという課題解決と共に、部下においても目標意識を持って日々の業務に取り組むことを目的としておりました。

株式会社ユー・エム・アイでは、半年ごとに目標設定とフィードバックを実施し、能力評価と成果評価の2つの評価を実施します。フィードバックでは、直属の上司及び二次考課者とそれぞれ1on1面談を1回ずつ実施します。結果的として、従業員の納得度及び意欲向上を大きく上げることができました。

SCSK株式会社

4社目はSCSK株式会社を紹介します。SCSK株式会社は、1969年に設立されIT関連の事業を中心とした従業員1万人を超える会社で、評価というよりもマネジメントを主な目的としてMBOを導入しました。

SCSK社では、MBOによる評価項目を「行動評価」・「貢献度評価」・「専門性評価」の3つの軸で評価を行います。しかし、部下の指導や育成を主な目的としているため、MBOによる評価が人事評価における参考指標として活用するまでにとどめ、最終的な評価については上司の判断で評価が決定する仕組みとなっております。

SCSK社の人事企画部副部長の和南城氏は、「MBO導入の目的が重要であり、活用の目的に合わせてMBOと評価の連動も含め、詳細な設計を行うことが重要である」と述べています。

株式会社ディー・エヌ・エー

最後にご紹介する会社は、株式会社ディー・エヌ・エーです。株式会社ディー・エヌ・エーは1999年に設立され、ゲーム事業を中心として、Eコマースやヘルスケアなど幅広いサービスを運営しております。ディー・エヌ・エー社では、「発揮能力」をMBOの指標とし、その達成度を基本給に反映させる仕組みとしています。

本人ではどうしようもないような要因や一時的なもので影響される成果は、報酬として反映させて、自身で制御可能な「発揮能力」については、基本給に反映させる方針を取っています。そこで、社員にとって納得度の高い評価をしていくにあたり、MBOを導入し活用しています。

まとめ

以上、MBOを実際に導入した企業の成功事例や失敗事例、また様々な目的で活用している企業の事例をご紹介しました。MBOを導入するにあたり、活用する目的を明確にし、自社の状況に合わせて設計するようにしましょう。

また、評価については、従業員の納得性が非常に重要な要素となりますので、MBOを導入する際には、しっかりと従業員に説明して活用するようにしましょう。

本記事が、MBOの導入を検討しているベンチャー・中小企業の人事を担当されている方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。