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MBOシートの効果的な書き方:MBOシートに記載する項目と職種ごとの目標設定を解説!

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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日本全国の多くの企業で「MBO」が導入されています。MBOは、目標を管理することで、チームの労働意欲の向上、企業の経営ビジョンの共有、また従業員の成長などに役立つマネジメント手法とされています。

しかし、「目標管理がうまくいかない」「最適な目標を考えることができない」などの悩みを持っている人事担当者もいることでしょう。目標は、具体的である方が効果的ですが、職種によっては具体的な目標を立てにくいという場合もあります。

そこで本記事では、目標設定において効果的なMBOシートについてご紹介します。設定すべき項目や個人目標の設定方法、そして評価コメントの書き方まで徹底解説しますので、人事施策を見直したい企業の人事担当者は必見です。

MBOとは

「MBO」とは、「Management By Objectives」の略称で、従業員個人、またはチームごとに自主的に目標を設定し、その達成度合いで評価を決める人事評価制度のことです。

アメリカの経営学者ピーター・ドラッガーが1954年の著書「現代の経営」で提唱したマネジメント理論として知られ、多くの日本企業でも導入されています。

MBOでは、目標に対する達成度で従業員の明確な評価を行うことができ、人事評価に活用できる点が特徴です。

MBOシート

MBOを実施していくために必要なツールに「MBOシート」があります。MBOシートは、「目標管理シート」「評価シート」とも呼ばれていて、従業員はテンプレートに沿って入力し、上司や人事担当者との面談に利用します。

MBOシートは、多くの場合Excelのようなスプレッドシートの形式で作成し運用され、目標の明確化、目標に至る道筋の明確化などが目的です。MBOシートを面談で利用することで、上司などの評価者、そして一般従業員の被評家者との間での共通認識を構築でき、安心して面談を行うことが可能です。

MBOシートで設定すべき項目

MBOシートで設定する項目は、各職種によってさまざまです。しかし、各職種においても設定すべき項目はいくつかあります。

以下に記載する9つの項目をMBOシートに含めて、自身に合ったMBOシートを完成させてください。
・基本情報
・個人目標
・難易度
・アクション
・達成期限
・達成のためのスケジュール
・結果
・振り返り
・コメント欄

基本情報

まずは、個人の「基本情報」を記入しましょう。基本情報とは、個人の氏名、所属部署、役職や勤続年数などの情報のことです。情報は正確に記入しましょう。

個人目標

「個人目標」もMBOシートにおいて必ず記入する必要のある項目です。個人目標の内容をもとに、評価者は従業員の評価を行うため、いつでも確認できるように記入しましょう。

個人目標の設定ポイントは、具体的な数値目標を設定することです。たとえば、目標を「売上」に設定した場合、具体的に「売上100万円」「新規顧客10件」などといった具体的な数値目標を設定します。そうすることで、進捗確認や評価を行う際、評価者が測定しやすいというメリットがあります。

難易度

MBOでは、1つの目標に限らず複数の目標を設定するため、全体を100%と設定したときの各目標の「難易度」を決めておく必要があります

難易度の設定方法は、目標達成までの時間や長さ、目標達成における重要度などの要素が関係します。たとえば、重要度を基準とした難易度を設定する場合、上司と従業員の間にズレが生じる可能性があります。そのため、事前に従業員と上司の間で確認を行うことが必要でしょう。

アクション

MBOシートには、立てた個人目標に対しての具体的な「アクション(行動)」を記載することも重要です。評価者や個人が進歩状況を確認する際、目標達成のためのアクション(行動)が実際に取れているかどうかがわかると、今後の改善策につながります。目標達成の指標ともなるため、MBOシートに盛り込みましょう。

段階的に進めていかなければならない業務の場合、時期に応じた「アクション(行動)」を記載していきましょう。アクション(行動)は、具体的な数値で表すことが効果的ですが、定量化が難しい場合、達成条件を示すことが可能です。

達成期限

MBOシートで設定した個人目標の「達成期限」もMBOシートに盛り込みましょう。設定した個人目標をいつまでに達成するのか記載します。

達成期限の設定でのポイントは、数値目標の設定です。具体的な日付、また期間などを数字にて設定しましょう。達成期限が長すぎたり、短すぎたりしないように注意しましょう。適切な期限を設けることもポイントの1つです。

達成のためのスケジュール

MBOシートには、「達成のためのスケジュール」を記載しましょう。設定した個人目標の達成までの具体的なスケジュールを記載します。

達成のためのスケジュールを記載する際のポイントは、具体的なアクション(行動)も盛り込むことです。また、具体的な数値(期日・期間)などを記入することも効果的でしょう。

結果

設定した個人目標が現在どのレベルにあるのか、達成した個人目標の進捗状況を記載します。「結果」は、設定した他の項目とも関係しています。

たとえば、定めた「達成期限」で目標を達成できたのか、また必要な「アクション(行動)」を取ることができたのかなどの要素が関係するでしょう。「S~D」「5〜1」のように、アルファベットや数字を用いて段階的な評価ができるよう「評価基準」を設けておくことも効果的です。そうすることで、「結果」を評価しやすくなります

振り返り

MBOシートには、「振り返り」項目を設けることも効果的です。「結果」に対しての自己評価および評価者である上司のフィードバックを記載します。

「振り返り」の項目を設定する際のポイントは、次の「アクション(行動)」につながる具体的な内容を記載することです。具体的にすることで、日々の業務における個人の改善点が明確になります。目標とした「達成期限」や「達成のためのスケジュール」について厳しく振り返ることで、次の「アクション(行動)」につながっていきます。

コメント欄

MBOシートの項目に「コメント欄」も盛り込みましょう。MBOの期間が終了したら、従業員と上司によるコメントのやり取りが行われます。

「コメント欄」に記載する事柄は、結果に基づいた評価だけを記載することが重要です。結果に対する事実や今後の改善点をコメントしましょう。MBOでは、従業員と上司との間でのコミュニケーションによって、人材育成や能力開発を行っていくことが重要です。「コメント欄」を効果的に活用することで、企業内でのスムーズなコミュニケーションを促進することが可能です。

個人目標の設定方法

MBOシートで設定すべき項目は同じですが、職種によって個人目標や設定方法は変わってきます。職種によっては、具体的な数値を設定しづらい職種もあることから、適切な個人目標を設定するには工夫が必要です。

ここでは、個人目標の設定方法を職種別にご紹介します。

以下6つの職種において、どのように個人目標を設定できるか見てみましょう。
・営業職
・企画・マーケティング職
・クリエイティブ職
・エンジニア職
・事務職
・管理職

営業職

「営業職」は、さまざまな職種の中でも、個人目標を具体的な「数値」で明確に設定できる職種の1つです。一般的には、売上、粗利、受注件数などの数値を設定します。また、個人目標を達成するための「アクション(行動)」も、クライアントへの訪問件数などの細かい数値で設定することが可能です。

たとえば、「営業職」において以下のような個人目標を設定することが可能です。

・リピート件数を20件、総額2,000万円を受注する
・見込み顧客を月に20件訪問、新規顧客を月に20件増加

企画・マーケティング職

「企画・マーケティング職」は、営業職と同じように問い合わせ件数などの数値目標を設定することが可能です。また、企画やプロジェクトのリリースなどの目標設定も可能です。たとえば、どれだけの売上か、またはどれだけの問い合わせなのかを具体的な数値で設定します。また、アイデア数やアイデアの採用率などの数値で設定することも可能です。

「企画・マーケティング職」で設定できる個人目標のサンプルは、以下の通りです。

・毎日20回、自社のイベントやニュースなどの最新情報を発信する
・会社公式Twitterアカウントを開設し、2Q(第2四半期)の終わりまでにフォロワー数2,000人を達成する
・リスティング広告を掲載し、2か月間のLP経由での注文を100%達成する

クリエイティブ職

「クリエイティブ職」での目標設定は、プロジェクトにおいての貢献度や、制作における時間あたりの作業効率などを数値にして目標設定することが可能です。貢献度を目標設定する場合、プロジェクトごとに関わった職種に応じて評価制度も整備されていると、より効果性が高まります。

たとえば、関わるプロジェクトの売上を貢献度に応じて配賦するなどの貢献粗利を目標にしたり、効率化や改善目標を目標設定にしたりすることも可能です。

「クリエイティブ職」における個人目標のサンプルは、以下の通りです。

・構成マニュアルや原稿チェックリストを作成し、原稿不備によるクレーム件数をゼロにする
・参考作品の内容をブラッシュアップし、売上を前回より20%向上させる
・1Q(第1四半期)の終わりまでに原稿の校正体制を整える。

エンジニア職

「エンジニア職」においての個人目標の設定は、スキルや資格の習得や外注先の見直しによるコスト是正などを設定することが可能です。数値での具体的な目標設定は難しいでしょう。納期などを数値にて目標に設定することも可能ですが、この場合、具体的な行動計画が伴っていることが必要です。

「エンジニア職」においての個人目標サンプルは、以下の通りです。

・オンライン授業を毎日受講することで、Pythonのプログラミング言語をマスターする
・期間内にPythonが絡む案件を2つ担当する
・モックアップを改善することで、予定している納期を2週間短縮する

事務職

「事務職」の個人目標の設定方法では、目標を数値化することが難しい側面があり、定性的な目標になりがちです。しかし、改善率やツール導入による進捗などを数値で確認することが可能です。日々の業務オペレーションの「改善」を目標に設定するのが良いでしょう。

「事務職」において、以下のような個人目標を設定することが可能です。

・1Qの終わりまでに運用マニュアルを作成してメンバーに周知させる
・毎週の発注業務で必ずダブルチェックを行いミスをゼロにする
・1Qの終わりに1度業務マニュアルを見直し、時間あたりの作業効率を20%以上向上させる

管理職

「管理職」での個人目標の設定は、事業計画に直結する全体売上などの数値を目標に設定することをおすすめします。また、管理職の役割の1つに、従業員の個人目標達成のための管理もあります。そのため、組織の方針や理念を従業員にどう伝え、従業員をどう動かしていくかを目標設定にすることも可能です。

たとえば、「管理職」において、以下のような個人目標を設定することが可能です。

・担当部署の粗利目標2,000万円を達成する
・週に1回定例ミーティングを行い、チーム目標の達成率を20%向上させる

評価コメントの書き方

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MBOにおいて評価を行う際、上司と従業員でそれぞれ評価コメントを記入します。評価コメントを記入する際、「部下による自己評価」と「上司による部下への評価」とでは、書き方に違いがあるため注意が必要です。

実際にどのようにコメントを書いたら良いのか、書き方の具体例をご紹介します。

部下による自己評価

「部下による自己評価」においてのコメントでは、客観的に自分の成果を分析し事実をコメントしましょう。客観的に自分を分析することは、過大評価や過小評価することを避けることにつながります。

個人目標に対する結果を事実通りに書くことに加え、個人目標を達成できた理由、または個人目標を達成できなかった理由を書きます。そして、今後の改善策をコメントに含めることで、今後のさらなる成長を期待できるでしょう。

自己評価コメントのサンプルを以下にご紹介します。

結果 半年で新規顧客を20件獲得し、目標の「半年で新規顧客15件獲得」を達成できました。
理由 1日平均50件の電話をかけるようにし、電話でのアポイント獲得を増やせたことが理由と考えます。
課題 電話でのアポイント獲得を増やせたが、通話が続かないケースがいくらかあり、返答に迷うことがありました。
改善策 今後は、通話の段階からよい印象を持ってもらうことを考え、自社の〇〇サービスにもっと精通し、顧客からの質問にすぐに返答できるようにしていきたいです。

上司による部下への評価

「上司による部下への評価」においてのコメントは、部下が出した結果を、事実に基づいて客観的に記載することがポイントです。上司にとって、自分と相性の良い部下や相性の良くない部下がいるものですが、評価の公平性を保つためには「好き嫌い」といった感情を排除することが必要です。部下が出された評価に納得できるよう、具体的な数値を用いて客観的にコメントしましょう

また、部下の日頃の業務をよく観察したコメントを含め、改善へ向けてのヒントや良いところを指摘したコメントも含めるなら、部下のモチベーション向上につながります

「上司による部下への評価」のコメントのサンプルを以下にご紹介します。

結果 半年で目標にあげた新規顧客15件を上回る20件の受注に成功し、部署の目標達成に大いに貢献してくれた。
理由 勤勉に営業のための電話を毎日かけたり、飛び込み営業に何度も挑戦したりした結果であろう。
課題 新規顧客の獲得数は目標を上回る結果を出せたが、1社あたりの受注金額は部署の平均を大きく下回っている。
改善策 今後は、1社あたりの受注金額も意識しながら新規顧客獲得を続けてほしい。

まとめ

この記事では、目標設定において効果的なMBOについて、またMBO実施に必要なMBOシートについて解説してきました。

組織目標をもとに個人目標を設定するMBOは、従業員のモチベーション向上や能力開発、また公平な評価への満足度といった効果を期待することが可能です。MBOを成功させるために必要なことは、MBOシートの書き方を理解した上で適切な目標設定を行うことです。本記事でご紹介したMBOシートの書き方や設定すべき項目を参考にしながら、MBOの効果的な運用を目指しましょう。

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。