fbpx

COLUMN

コラム

【人事必見】コンピテンシー評価とは | メリット・デメリットや導入時の注意点をご紹介!

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

成長ベンチャー企業が直面する
よくある「人事問題」事例集

成長ステージごとにも解説!

今すぐダウンロード

社員の人事評価制度の見直しを検討しているご担当者様の中には、コンピテンシー評価の導入をお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

年功序列や上司の主観的な評価ではなく明確な評価基準が設けられているコンピテンシー評価は、2000年ごろを皮切りに日本でもブームになりましたが、導入企業数は少なく導入に踏み切りにくいのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、
コンピテンシー評価の概要
コンピテンシー評価が持つメリットとデメリット
コンピテンシー評価の導入に際して注意すべきポイント
について解説致します。

今回の記事をお読みいただければ、コンピテンシー評価とは何かを理解いただき、他の人事評価制度とは何が異なるかを掴んでいただけます。


尚、改めて評価制度について学び直してからコンピテンシー評価の詳細を理解したい方は、以下の記事で詳しく解説しておりますのでこちらをご覧ください。
評価制度とは?評価制度の目的・種類・制度の導入時に考えるべきポイントを解説

コンピテンシー評価とは?

コンピテンシー評価とは何か、他の人事評価との違いを言葉で説明できるようにまずは概要を理解しておきましょう。

本項では、上記評価について人事制度自体についてや求められるようになった背景を記載しておりますので、読み進める前にしっかりと抑えておきましょう。

コンピテンシーの定義について

コンピテンシー評価とは、仕事で高いパフォーマンスを発揮している社員に共通している行動特性を指す「コンピテンシー」を評価基準とする人事評価を指します。

この評価制度の目的は、「人事評価の公平性の担保」「効率的な人材育成」などを通じて従業員の成果を向上させ、最終的には企業の成長に繋げることです。

この評価制度が何故日本でも普及し始めたのでしょうか。

次項では、コンピテンシー評価が昨今注目されている背景や職務資格制度(能力評価)との差異について解説いたします。

コンピテンシー評価が求められる理由について

昨今、コンピテンシー評価が注目されている背景には時代の変化が挙げられます。

具体的には、従来型の職務資格制度(能力評価)や年功序列制度といった制度が、今の時代の評価体系としては不適切だとされ始めたことが要因です。

ここで、従来型の制度として挙げた職務資格制度(能力評価)と年功序列制度について触れておきます。

職務資格制度(能力評価)
業務に関する知識や経験、協調性といった職務経験を通じて身に付く能力やスキルを評価する制度のこと。長期的な視点でゼネラリストを育成しやすい特長がありますが、評価基準が曖昧で公平性を欠く制度です。

年功序列制度
齢や勤続年数に応じて役職・賃金を上昇させる人事制度のこと。人材の囲い込みを目的に普及した制度になりますが、仕事の成果が給与に反映されないため、特に仕事への意欲が高い若手社員のモチベーションが低下しやすい制度です。

その他、従来型の制度が抱える課題には、「従業員の勤続年数に比例して給与を上げなくてはならないため人件費が高騰し続ける」という課題も孕んでいます。

こうした課題を解決する手段の1つとして、年齢や勤続年数よりも従業員一人ひとりの成果を重視することで、客観的かつ公平性の高い人事評価を実現できるコンピテンシー評価が注目されています。

職務資格制度(能力評価)について

ここまでコンピテンシー評価の概要について説明いたしました。

本項では、多くの企業で導入されている職務資格制度(能力評価)との相違点について解説いたします。

具体的な違いについて、評価基準・効果・課題の3つの観点から以下の表に記載しましたのでご確認ください。

コンピテンシー評価 職務資格制度(能力評価)
評価基準 行動特性(コンピテンシー) 業務に関する知識や能力、スキル
効果 ・効率的/戦略的な人材育成が可能
・評価基準が具体的なため、評価の公平性を担保しやすい
・ゼネラリストを育成しやすい
・長期的な視点で人材を育成できる
課題 ・導入までに時間/手間がかかる
・評価基準が明確なため、外部環境の変化に応じた柔軟な対応が困難
・評価の基準が曖昧なため、評価の公平性を担保しにくい

以上のように評価基準が異なれば、育成される人材の性質も大きく変化します。

それぞれの人事制度にメリット・デメリットが存在しますので、自社のフェーズに合わせて適切な精度を導入するようにしましょう。

コンピテンシー評価導入のメリットとは?

ここまでコンピテンシー評価に関する基礎を解説しましたが、導入を検討するにあたって抑えておきたいポイントは導入によって得られるメリットについてです。

本項では以下3つのメリットについて言及しています。
効率性の良い人材育成が可能
被評価者の納得感の醸成
戦略的人材マネジメントのしやすさ
それでは順々に解説していきます。

メリット①:効率性の良い人材育成が可能

コンピテンシー評価では、社内で実際に高い成果を上げている社員の「行動」を評価基準として設定するため、現場に即した具体的かつ実践的な評価基準をもとに社員を評価することが可能です。

社員一人ひとりが具体的に「何を努力すれば評価されるのか」を明確に理解することができれば、モチベーションの向上に寄与し、結果的に能力開発や業績向上も期待できるでしょう。

本来高い能力や知識、技術を持っているのにも関わらず業績が低迷している社員の場合、飛躍的に業績が改善されるといわれています。

メリット②:被評価者の納得感の醸成

評価が明快であることで得られるメリットは、モチベーション向上だけではありません。

被評価者は
どんな行動が足りないのか/足りているのか
評価を得るためには何を身に着けるべきなのか
を具体的な業務レベルに落として知ることができるため、評価内容の理解及び納得がしやすくなる特長があります。

自身の能力やプロセスに基づく評価では基準が曖昧になりがちですが、コンピテンシー評価では何を努力すればプラスの評価に繋がるか具体的に示されます

評価される側は、高い評価を得るために何をすべきなのか明確に理解することができるため、自身に対する評価への不満は減っていくでしょう。

また、結果的に周囲との信頼関係も強固になるため、環境に対する違和感が薄まっていき若手の離職率も低下するでしょう。

メリット③:戦略的人材マネジメントのしやすさ

上記に加えて、どの社員がどんな行動を取ることができるのか明確になるため、社員の配置など人材マネジメントが実施しやすくなる点も特長です。

実際に社員の行動管理も可能になりますので、適材適所の人材配置が可能になります。

人材配置がうまく機能し始めれば、
社員一人ひとりのパフォーマンス向上
組織全体の業績向上
不満やストレスの軽減
の3点も副次的に期待できるでしょう。

また、人材マネジメントだけでなく自社の採用活動にも活かせるでしょう。採用時にコンピテンシー評価を用いることで、
求職者の適性を知る
採用後のミスマッチを防ぐ
内定後、事前にふさわしい人材配置を考える
ことも可能になります。

コンピテンシー評価導入のデメリットとは?

人事制度にはメリットもあれば、当然デメリットも存在しています。

他の制度と比較した際に、果たしてコンピテンシー評価が適切な制度なのか判断するためにデメリットについても理解しておきましょう。

具体的なデメリットは以下3点です。
コンピテンシーの分析・モデル開発・導入が困難
定めたコンピテンシーが適切とは限らない
環境の変化に対して脆弱
それでは順々に解説していきます。

デメリット①:コンピテンシーの分析・モデル開発・導入が困難

コンピテンシー評価には、元々決まったテンプレートがあるわけではありません。

そのため、企業ごとに独自のコンピテンシーを定義することから始め、定義したコンピテンシーに沿った評価基準を策定する必要があります。

また、そういった評価基準を部署や職種、等級などから具体的かつ細かく明示しなければなりません。

実際に評価基準を確立するまでには、時間も手間もかかります。具体的には、
高業績者の行動を分析
評価モデルの開発
評価基準の調整
最終的な導入
まで多くの手順を踏まなくてはならないため、他の人事評価制度と比較して導入のハードルは高いといえるでしょう。

デメリット②:定めたコンピテンシーが適切とは限らない

導入までに時間や労力のかかるコンピテンシー評価ですが、必ずしも自社の成果に定義したコンピテンシーが貢献するわけではありません。

策定したコンピテンシー評価モデルが正しいかどうかは、何度も検証を重ねなければ真偽は分かりません。そのため、コンピテンシー評価の運用と併せて、従業員が成果を出すことができるように基準の調整も必要となります。

デメリット③:環境の変化に対して脆弱

コンピテンシーは基準が明確で細分化されている分、柔軟性に乏しく環境変化に適応しにくい点もデメリットとなります。

一般的に、企業は成長過程で事業フェーズが変化するため、都度業務上必要とされる行動も変化します。事業フェーズ、ひいては社員の業績達成に向けた行動内容が変化すれば、これまで定義していたコンピテンシーの基準は意味を成さなくなるでしょう。

内容を改定することになれば、コンピテンシーの再定義やメンテナンスの労力、コストが多分にかかってきます

また評価基準が頻繁に変わると、従業員は自身が目指すべき方向を理解しにくくなりかねないので、変化の著しいラウンドの企業様には適さないかもしれません。

コンピテンシー評価導入時の注意点とは?

本項では、コンピテンシー評価の導入に際して注意しておきたい次の3つのポイントをご紹介いたします。
目的(成果の向上)をブラさない
評価内容を定期的に更新する
コンピテンシーモデルに執着し過ぎない

注意点①:目的(成果の向上)をブラさない

そもそもコンピテンシー評価は、従業員の成果を向上させ、企業の成長につなげることを最上位の目的としています。

導入までの道のりが険しい制度ではありますが、本来の目的を見失い、形式的にコンピテンシー評価を導入してしまうと、効果が限定的で成果の向上に寄与しないでしょう。

コンピテンシー評価のベースとなるのは、成果を上げるための行動であることをしっかり認識することが重要です。

「コンピテンシー評価をただ導入するだけ」「従業員に行動を促すのみ」ということにならないよう十分に注意しましょう。

注意点②:評価内容を定期的に更新する

上述のとおりビジネスモデルや事業フェーズ、外部環境の変化に脆弱な制度ですので、定期的な制度内容の見直しは欠かせません。

例えば、
自社のビジネスモデルや競合他社と比較した時のポジショニング
注力しようとしている事業ドメイン
などに変化が生まれた際は、必ずコンピテンシーとマッチングができているか見直しましょう。

注意点③:コンピテンシーモデルに執着し過ぎない

制度の導入までに骨が折れるため、導入後定義したコンピテンシーモデルに執着しすぎてしまう事があります。

大前提として、全てのコンピテンシーを高いレベルで満たす人材は滅多にいません。そのため、定めたコンピテンシーに執着し過ぎないことも大切です。

全ての項目を高いレベルで満たすことを一方的に従業員に要求してしまうと、従業員の反感を買い、モチベーション低下を招くリスクがあります。

定めた評価基準はあくまで一つの基準に過ぎないと認識し、従業員に過度な要求をしないように注意しましょう。

評価シートの作成と運用方法とは?

コンピテンシー項目の設定が完了すると、評価シートで運用することがほとんどになります。

評価ツールのようなシステムにおいても、基本的には評価シートのテンプレートがありますのでご安心ください。

評価シートの作成方法とツール活用のメリットについて

評価シートは
大項目:領域
小項目:行動特性
として示し、評価の数値が記入できるように作成します。

エクセルシートを用いて作成することもありますが現在は、
Smart HR
カオナビ
あしたのクラウド
タレントパレット
等のクラウドベースの評価ツールも多数存在しています。

上記のようなクラウドベースのツールを利用するメリットは、集計や偏りなど全体を見ることが可能になり、エクセルシートを整理する手間が省け、人事部門がより重要なコンピテンシーモデルの作成や項目設定のアップデートに注力できることです。

コンピテンシー評価と採用の関連性について

人事評価制度のために定義したコンピテンシー項目は、求職者と対峙する採用の場面でも基本的にそのまま利用可能です。

定めたコンピテンシーの項目を測定するための質問を複数個設定し、面接や筆記試験などで活用してみてください。

採用活動においてコンピテンシー項目を利用する意味は、会社の理想とする人材を採用し、人材への期待と実際のギャップを小さく出来ることです。

また項目の使いまわしにより、人事業務の効率化にも役立つなど大きなメリットがあります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回の記事では、コンピテンシー評価の概要からメリット・デメリット、導入時の注意点について幅広く解説致しました。

年功序列や評価者の主観的な判断によってではなく、明確に定められた評価基準に基づいて評価を下すため、社員の納得感を醸成しやすい制度になっています。

但し、制度自体を導入することが目的なのではなく、あくまで従業員の成果の向上並びに会社の事業成長を叶える事が本筋ですので、導入時にはなぜコンピテンシー評価が自社の導入制度に適切なのか明確にしておきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございます!

       
成長ベンチャー企業が直面する
よくある「人事問題」事例集
・成長ベンチャー企業によくある人事問題
・成長ステージごとに起きやすい人事問題の種類
・実際にベンチャー企業で起こった人事問題の事例

これら「ベンチャーの人事問題」について資料にまとめました。
  1. <主な内容>
  2. ●ベンチャー企業が人事問題に先手を打つべき理由
  3. ●人事問題が表面化しやすい時期とは?
  4. ●成長ステージ別 よく見られる人事問題
  5. ●事例1:上司の評価能力不足と曖昧な評価基準による問題
  6. ●事例2:単一的なキャリアパスによる問題
  7. ●事例3:優秀な幹部人材の社外流失についての問題

フォームに必要事項をご記入いただくと、
無料で資料ダウンロードが可能です。

この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。