fbpx

COLUMN

コラム

コンピテンシー評価の具体的な記入例:シートの書き方、業種ごとのサンプルをご紹介!

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

成長ベンチャー企業が直面する
よくある「人事問題」事例集

成長ステージごとにも解説!

今すぐダウンロード

従業員の努力や成果などを公平に評価し、昇級・昇進・賞与などに反映させるコンピテンシー評価を導入する企業が増えています。しかし、評価シートやコンピテンシー項目をゼロから作るのは大変と考えている企業の人事担当者も少なくありません。

そこで本記事では、コンピテンシー評価を新しく導入する上で役立つサンプルや書き方を各職種ごとにご紹介します。また、コンピテンシー評価を導入する際のポイントも徹底解説しますので、人事施策を見直したい企業の人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価とは、仕事のできる人材の行動特性(コンピテンシー)を人事評価の基準に設定する手法のことです。目的は、人事評価の公平性の担保や効率的な人材育成による従業員の成果の促進です。人材個人のスキルや能力だけでなく、仕事での成果を出すための「行動」に注目します。

しかし、その行動につながる「性格」「動機」「価値観」といった要素も重要視されます。そのため、コンピテンシーは可視化しにくいということが特徴です。

たとえば、従来の人事評価といえば「能力評価」が主流でした。能力評価は、キャリアを積めば能力も向上するという前提で作成された評価制度です。能力や業績に関係なく、年齢や勤続年数が重要視されていました。

しかし、近年、多くの企業では成果を重視した見方が浸透しており、公平性の高い人事評価制度であるコンピテンシー評価を導入する企業が増えています。コンピテンシー評価項目を設定することで、評価基準が具体的に可視化され、評価に対して従業員から納得感を得られやすいというメリットがあります。

コンピテンシー評価の3つのモデル

コンピテンシー評価を行うには、項目設定の基礎となる、以下の3つのモデル設定が必要です。

・理想型モデル
・実在型モデル
・ハイブリッド型モデル

理想型モデル

「理想型モデル」は、企業の理想の人材像に基づいた設定方法です。企業内にモデルとなる人材が存在しない場合に有効な設定方法です。

実在型モデル

「実在型モデル」は、企業内に実在する優秀な人材をモデルに項目を設定します。しかし、その人材の行動特性(コンピテンシー)は具体的で再現性がなければなりません。

ハイブリッド型モデル

「ハイブリッド型モデル」は、「理想型モデル」と「実在型モデル」を1つにした設定方法です。実在する優秀な人材をもとに、企業の理想像も兼ね合わせて評価制度を設計します。

コンピテンシー評価導入に伴う注意点

コンピテンシー評価を導入する際の注意点はいくつかありますが、以下の5つのポイントをご紹介します。

・評価制度を急に変えない
・成果を重視する
・柔軟に対応する
・他の指標と組み合わせる
・定期的に更新する

評価制度を急に変えない

コンピテンシー評価を導入する際の注意点の1つは「評価制度を急に変えない」ことです。導入するコンピテンシー評価制度が、導入前の評価制度と大きくかけ離れている場合があります。

この場合、評価制度を急に変えると現場に混乱が生じる恐れがあります。まずは、導入を1つの部門などに限定して効果を広げていくことをおすすめします。

成果を重視する

コンピテンシー評価を導入するにあたって注意すべきポイントには「成果を重視する」こともあります。コンピテンシー評価を導入する目的は、企業の組織としての成長、企業の発展を促進し、高い成果をあげることです。

コンピテンシー評価は、結果だけでなく、その結果に至るプロセスの評価も含まれますが、プロセスの評価だけに留まってしまうと目的を達成したことにはなりません。プロセスの評価と共に成果を重視し、企業の目的達成に向けてコンピテンシー評価を効果的に導入していくことが重要です。

柔軟に対応する

「柔軟に対応する」ことも、コンピテンシー評価を導入する際の注意点です。コンピテンシー評価の目的は、企業の組織としての成長であって、完璧な人材を作ることではありません

コンピテンシー評価で設定した企業の理想人物像を社員に押しつけてしまうと、社員のモチベーション低下につながる可能性があるため注意が必要です。コンピテンシー評価で設定された項目は、あくまで1つの指標に過ぎないことを忘れないようにしましょう。

他の指標と組み合わせる

コンピテンシー評価を効果的に導入するには「他の指標と組み合わせる」ことが重要です。コンピテンシー評価は、優秀な人材の行動特性を評価するための指標とされています。そのため、評価するための基準の作り方が難しいとされています。

この課題を補うための方法が「他の指標と組み合わせる」ことです。たとえば、目標と主要な結果を企業のビジョンに合わせて各部署や個人が設定する「OKR」(Objective and Key Result)や「KPI」(Key Performance Index)があります。

「OKR」や「KPI」などを組み合わせることで、コンピテンシー評価において課題とされている「会社の環境変化への対応」に対処できる可能性があります。

定期的に更新する

コンピテンシー評価を設定して導入した場合、「定期的に更新する」必要もあります。時代の流れに伴い、その時に求められている行動特性(コンピテンシー)も異なってきます。

コンピテンシー評価項目は、あくまで「その時代」「その企業」ならではであるため、定期的な更新が必要です。たとえば、時代の流れや企業の状況を見極め、その状況に沿った行動特性を考えます。時代の流れや企業の状況変化に応じて更新することは手間がかかりますが、企業の発展と成功に欠かせない重要なプロセスです。

コンピテンシー評価シートの書き方

コンピテンシー評価シートとは、役職や等級などによって目標とすべき状態や行動指針が記載された、自社に適した独自シートです。運用する際、コンピテンシー評価シートには、数字や記号を入力して評価します。

コンピテンシー評価シートに記載する主な3つの項目をご紹介します。

・分類された評価項目
・各評価項目の具体的な評価軸
・各評価項目の尺度

分類された評価項目

コンピテンシー評価シートにおいて「分類された評価項目」を設定することは重要です。分類する各評価項目の内容は、各企業によって異なります。しかし、各評価項目を設定する際、いくつかの参考になる例があります。その中の1つが「コンピテンシーディクショナリー」です。

「コンピテンシーディクショナリー」とは、企業において優秀とされる人材の行動特性(コンピテンシー)をモデル化するときに重要とされる考えやベースのことです。「コンピテンシーディクショナリー」では、以下の6つの領域に分類されています。

・達成とアクション
・支援と人的サービス
・インパクトと影響力
・マネジメント・コンピテンシー
・認知コンピテンシー
・個人の効果性

「コンピテンシーディクショナリー」は、さまざまな職種や役割に対応しています。「コンピテンシーディクショナリー」を参考に、自社に合った評価項目を設定することが可能です。

各評価項目の具体的な評価軸

「各評価項目の具体的な評価軸」を設定します。つまり、項目や基準ごとに評価するための基本となる事柄を明確にすることです。

たとえば、チームリーダーの場合、「目標やルール、仕事の進め方を部下に説明し、徹底させる」または「経営方針や会社のビジョンなどを部下にわかりやすく落とし込んで理解させ、それに沿った行動をさせる」などがあります。

また、営業関連の職種であれば、支援と人的サービスが重視されやすい評価軸が設定されるでしょう。たとえば、「相手の立場になって話を聴く」などがあります。

各評価項目の尺度

「評価項目の尺度」とは、記号や数字などで評価を表すもののことです。たとえば、記号の中には「S・A・B」などがあり、数字には「1・2・3」などがあります。評価項目の尺度には、以下の2つの基準が存在します。

・共通基準
・個別基準

「共通基準」は、企業全体で使用する共通の尺度のことで、公平な人事評価を達成することが可能です。また、「個別基準」は、個々の人材の目標や項目に落とし込んだ尺度のことです。従業員一人ひとりが求められていることを自覚しやすくなるため、設定することは欠かせません。

コンピテンシー評価シートのサンプル

コンピテンシー評価シートのサンプルを各職種別にご紹介します。以下の職種においてのコンピテンシー評価シートのサンプルです。

・全従業員向け
・営業職向け
・企画・クリエイティブ職向け
・エンジニア向け
・管理職向け

全従業員向け

「全従業員向け」のコンピテンシー評価シートには、いくつかの項目を挙げることが可能ですが、ここでは「業務改善力」という項目についての具体例、評価レベルをご紹介します。

コンピテンシー項目の具体例:
・常に改善意識を持って、日々の業務にあたっている
・担当業務やチーム、部署全体、社内全体といった規模での業務改善を実践している
・業務効率化や生産性向上につなげている

5段階の評価レベル
レベル1:仕事に対する姿勢が常に受け身で、改善意識が一切見られない
レベル2:責任をもって担当業務を行っているものの、改善意識は見られない
レベル3:自ら考えて行動しており、創意工夫や改善行動が見られる
レベル4:自らの業務の枠を超え、チームや部署の課題解決を図り、チーム・部署全体の業務効率化・生産性向上につなげている
レベル5:社内全体に関わる改善行動により、企業全体の業務効率化、生産性向上につなげている

営業職向け

「営業職向け」のコンピテンシー評価シートには、「コミュニケーション力」「プレゼンテーション力」などのコンピテンシー評価項目を挙げることが可能ですが、ここでは「プレゼンテーション力」という項目の具体例および評価レベルをご紹介します。

コンピテンシー項目の具体例:
・プレゼンテーションのための準備を滞りなく行っている
・相手に伝えたい内容を、的確に伝えられている
・相手の理解度に応じて、プレゼンテーションを工夫している

5段階の評価レベル
レベル1:事前準備が不十分で伝えたいことを的確に伝えられない
レベル2:事前準備は十分できるものの、伝えたいことを的確に伝えることには課題がある
レベル3:事前準備を十分に行い、伝えたいことを相手に的確に伝えられる
レベル4:相手の理解度に応じて、プレゼンテーションの内容を柔軟に変更できる
レベル5:相手の理解度や競合先のプレゼンテーションに応じて、プレゼンテーションの内容を柔軟に変更でき、成約につなげている

企画・クリエイティブ職向け

「企画・クリエイティブ職向け」のコンピテンシー評価項目シートには、「戦略力・思考力」といった項目を挙げることが可能です。「戦略力・思考力」の項目においての具体例と5段階評価レベルは以下の通りです。

コンピテンシー項目の具体例:
・視野の広さと先見性、革新性をもって課題をとらえる
・新たな発想で事実や情報の活用を考える
・物事を客観的にとらえ、筋道立てて自分の考えを発展できる

5段階の評価レベル
レベル1:視野が狭く、新たな発想で課題に取り組めない
レベル2:状況を分析できるものの、新たな発想で課題に取り組めない
レベル3:あらかじめ予測されるリスクを想定し、予防策や解決策の立案ができる
レベル4:目標達成のために、企業における経営資源の活きた使い方ができる
レベル5:担当業務における構造的、潜在的な問題、将来的な課題に対するプランニングができる

エンジニア向け

「エンジニア向け」のコンピテンシー評価項目の具体例および5段階の評価レベルをご紹介します。コンピテンシー評価項目には「トラブル対応力」を設定するという前提で考慮してみましょう。

コンピテンシー項目の具体例:
・トラブルの発生にただちに気づき、迅速に初期対応を行っている
・さまざまな対応策の中から、状況に応じた最適な対応を選択している
・トラブルの未然防止、再発防止に向けた取り組みをしている

5段階の評価レベル
レベル1:周囲から指摘されないとトラブルに気づかないだけでなく、マニュアル通りの対応しかできず、対応スピードが遅い
レベル2:トラブルに自ら気づけるものの、マニュアル通りの対応しかできず、対応スピードに課題がある
レベル3:状況に応じた最適な対応を自ら考え、迅速に対応できている
レベル4:状況に応じた最適な対応を迅速に行うだけでなく、トラブルの未然防止、再発防止に向けた取り組みもしている
レベル5:状況に応じた最適な対応を迅速に行うだけでなく、トラブルの未然防止、再発防止に向けた取り組みもしており、そのノウハウを社内全体に共有している

管理職向け

「管理職向け」のコンピテンシー評価項目シートには、「業務遂行力」という項目を設定します。以下、コンピテンシー項目の具体例と5段階の評価レベルのサンプルをご紹介します。

コンピテンシー項目の具体例:
・クレームやトラブルが生じた場合でも的確に処理している
・スケジュールに基づき、段階を追って物事を進めている
・費用対効果を常に考え、最低限のコストで業務遂行をしている

5段階の評価レベル
レベル1:業務の流れを把握できず、業務遂行スピードが遅く、段階を追って物事を進められない
レベル2:業務の流れは把握できても、業務遂行スピードが遅く、担当業務を正確に運用できない
レベル3:業務の流れを把握でき、担当業務を正確に運用している
レベル4:業務遂行スピードが速いだけでなく、費用対効果を常に考え、最低限のコストで業務を遂行している
レベル5:業務の流れや段取り、ツール等を独力で作る力があり、仕事そのものを自ら提案してより良くしている

まとめ

この記事では、コンピテンシー評価を導入する上でのポイント、また役立つサンプルや書き方を各職種ごとにご紹介してきました。

コンピテンシー評価は、企業の理想的な経営を実現するために極めて有効な評価制度であり、従来使われていた評価制度に見られた課題を解決する有効策として多くの企業で導入されています。コンピテンシー評価は、定期的な更新が必要であり、他の指標との組み合わせも必要です。しかし、コンピテンシー評価における課題を克服して効果的に運用できれば、企業の組織改革実行に繫がります

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

       
成長ベンチャー企業が直面する
よくある「人事問題」事例集
・成長ベンチャー企業によくある人事問題
・成長ステージごとに起きやすい人事問題の種類
・実際にベンチャー企業で起こった人事問題の事例

これら「ベンチャーの人事問題」について資料にまとめました。
  1. <主な内容>
  2. ●ベンチャー企業が人事問題に先手を打つべき理由
  3. ●人事問題が表面化しやすい時期とは?
  4. ●成長ステージ別 よく見られる人事問題
  5. ●事例1:上司の評価能力不足と曖昧な評価基準による問題
  6. ●事例2:単一的なキャリアパスによる問題
  7. ●事例3:優秀な幹部人材の社外流失についての問題

フォームに必要事項をご記入いただくと、
無料で資料ダウンロードが可能です。

この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。