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目標管理制度は時代遅れ?制度の導入に伴う注意点と成功のポイントを解説!

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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日本全国で「目標管理制度」を導入している企業は多くあります。「目標管理制度」は、企業や個人が同じ方向に向かって仕事に取り組むために欠かせない施策の1つです。しかし、うまく運用できず、時代遅れと感じてしまう企業もあるかもしれません。

そこで本記事では、目標管理制度が時代遅れと感じられる要因と成功させるためのポイントを解説していきます。また、目標管理制度が向いていない企業と向いている企業についても解説しますので、人事施策を見直したいベンチャー企業・スタートアップ企業の人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

目標管理制度とは

目標管理制度とは、「現代の経営」の著者、ピーター・ドラッカーが提唱したマネジメント手法で、正式名称は「Management By Objective(目標による管理)」です。それぞれの頭文字を取って「MBO」と呼ばれることもあります。

目標管理制度は、個人またはグループが目標設定と申告を行い、その進捗を管理しながら生産性を高めていく手法です。目標設定を行うことで、個人や企業が目標達成のために努力し、個人のスキルアップやモチベーションの向上、企業全体の成果につながります。つまり、目標管理制度とは、目標を設定することで企業を管理する手法であり、目標を管理する手法ではないということです。

目標管理制度とは、その名の通り、適切な目標設定が重要です。一般的に企業や組織で用いられている「目標」とは、「いつまでにどの仕事を終わらせる」といったノルマのようなものと考えられています。

しかし、目標管理制度とは、従業員自らが目標を設定し、従業員が主体的に目標達成に取り組める制度です。目標管理制度での上司の役割は、従業員にノルマのような目標を与えることではなく、従業員の定める目標が適切なものになるように援助することです。

目標管理制度が導入された背景

日本において目標管理制度が導入された背景には「成果主義」の影響があります。バブル崩壊の1990年以降、本格的に「成果主義」が導入されました。成果に見合った評価や人材の育成、また企業の業績アップがより意識されるようになり、現在の目標管理という手法に至ります。

成果主義が導入される以前の日本は、「職能資格制度」という終身雇用と年功序列を前提とする制度で、従業員の勤続年数に応じた評価が一般的でした。しかし、年功序列による評価制度は、能力の高い従業員の不満を生み、モチベーション低下にもつながります。また、バブル崩壊後の日本では、企業存続をかけたコスト削減を余儀なくされ、多くの企業で人件費削減が必要となりました。これにより、成果や業績に応じた評価が注目され、現在の目標管理制度が浸透していきます。

ここ数年の新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークが日本においても導入されています。テレワークは、上司によるマネジメントがしにくいということがデメリットです。しかし、自律的な姿勢を促す「目標管理制度」は、この「上司によるマネジメントがしにくい」というデメリットを補うことが可能であるため、多くの企業において注目されています。

目標管理制度が時代遅れと考えられる理由と課題

多くのメリットがある目標管理制度ですが、企業の状況によっては「時代遅れ」と感じてしまう場合があります。

目標管理制度が「時代遅れ」と考えられる理由の1つに、働き方改革促進の影響があります。組織や企業の成長と従業員個人の成長は、必ずしも一致しなくなったことが現状です。企業の目標を達成するために自分の業務を推進するという目標管理制度(MBO)の考え方が時代の流れに合わなくなってきたことがあります。現在、多くの企業で意図的に階層化を排除するフラット化が行われており、それぞれの環境に合った目標を立てた方が効果的という考え方が広まっています。

目標管理制度が「時代遅れ」と考えられる理由は、他にもいくつかあります。以下の3つのポイントを考慮しましょう。
・個人のキャリアアップが見込めない
・進捗確認や指導のための面談がない
・振り返りや学習のための面談がない

個人のキャリアアップが見込めない

目標管理制度が「時代遅れ」と感じてしまう要因に「個人のキャリアアップが見込めない」ことがあります。個人で目標を立てても、本人の成長にも企業の成長にもつながらないのであれば意味がありません

個人が「やりたい」と思うことを目標にするのではなく、「達成しやすい」と思う項目や目標を立ててばかりいると、成果にはつながらない可能性があります。また、業務をこなすことが精一杯な従業員に目標管理制度を導入しても過重労働になるだけで、「働き方改革」の流れにある現在において矛盾した制度になってしまう可能性もあります。

進捗確認や指導のための面談がない

目標管理制度は、一般的に6か月から1年のスケジュールで運営しています。その間、進捗を確認し、必要であれば軌道修正する面談がないことが現状です。目標管理制度完了時の従業員評価だけの面談だけでは、業績や個人のスキル向上にはつながらないことがほとんどです。

また、比較的長期間である6か月から1年の間に面談がないと、業務の忙しさのため目標自体を忘れてしまうという事態にも陥りかねません。

振り返りや学習のための面談がない

目標管理制度が「時代遅れ」と考えられる理由の1つに「振り返りや学習のための面談がない」こともあります。

従業員は、設定した目標に沿ってただ業務をこなしていくだけでは、次につながる自発的な行動が生み出されません。何が問題点で、次回はどうすれば問題を克服することが可能なのか、という業務を「振り返る」場が必要です。また、業務効率化を図る方法や他のアイデアを報告する場がなければ、従業員のスキルアップやモチベーション向上を期待することは難しいでしょう。

目標管理制度を成功させるためのポイント

目標管理制度が時代遅れと考える理由はいくつかありますが、成功させるためのポイントもいくつかあります。それらのポイントを抑えることで、企業において目標管理制度導入による効果を期待することが可能です

目標管理制度を成功させるためのポイントを4つご紹介します。
・目標を明確化する
・目標に適切な難易度を設定する
・できるだけ数値化して定量化する
・スケジュールを明確化する

目標を明確化する

目標管理制度を成功させるポイントの1つに「目標を明確化する」ことがあります。設定する目標は、できるだけ明確で具体的なものにしましょう

曖昧な目標は、現実味がなく、従業員のモチベーションを下げてしまう恐れがあります。目標が明確であれば、目標達成に向けた具体的な行動を取りやすくなります。数値で定量化できる目標を立てることをおすすめします

目標に適切な難易度を設定する

目標管理制度を成功させるためには「目標に適切な難易度を設定する」必要があります。全体を100%としたとき、各目標の難易度を決めておきます。たとえば、難易度の規準としては「目標達成のために取り組む時間の長さ」や「目標や業務の重要度」などです。

目標に適切な難易度を設定することで、従業員は定めた目標に関連する業務でどのような役割を果たすか、責任の範囲を明確化することが可能です。あまりに難易度が高すぎる目標を設定してしまうと、計画倒れが懸念されます。

できるだけ数値化して定量化する

設定する目標は、定性的なものもありますが、可能な限り測定可能で「できるだけ数値化して定量化する」ことが理想的です。たとえば、「年間売上30%増」や「Webでアポイント件数を100件獲得」などの目標です。

しかし、単に数値化するだけでは十分ではありません。最終目標と目標を達成するためのプロセスがリンクしていることも重要です。たとえば、上記で示した「Webでアポイント件数を100件獲得」という目標を立てたとしても、そのうち何件を成約に結び付けようとしているのかはわかりません。このような目標設定の場合、「100件のうち、見積り、提案の目標を70件とし、売上を〇〇万円とする」という明確な、目標に対してのプロセスが定量化できることが成功のポイントです。

スケジュールを明確化する

目標管理制度を成功させるためのポイントに「スケジュールを明確化する」ことがあります。設定した目標を、いつまでに達成するのか、具体的な期限を決めておくことが重要です。たとえば、「12月31日までに」や「1年以内」「四半期中」などの期限があります。

最終目標の達成期日だけでなく、一定のタイミングで進捗の確認や振り返りのための期日も設けましょう。そうすることで、必要ならば目標達成のための軌道修正を行うことが可能です。

目標管理制度が向いていない企業

目標管理制度が向いていない企業にはいくつかの特徴があります。たとえば、以下のような特徴を挙げることが可能です。
・組織の方針が頻繁に変わる企業
・フラット化された企業
・社員の主体性が育たない環境の企業

組織の方針が頻繁に変わる企業

「組織の方針が頻繁に変わる企業」は、目標管理制度で設定した目標もそれに応じて変更しなければなりません。せっかく目標を設定しても、その立てた目標を変えなければならなくなる可能性が高い場合、目標管理制度で想定している運用サイクルや手法とは相性が合いません。

このような企業は、別の目標管理制度を選択することをおすすめします。

フラット化された企業

フラット化され、組織の階層化を意図的に排除した組織には、目標管理制度は向いていません。目標管理制度は、目標を「企業目標→部署目標→個人目標」へとブレイクダウンさせていくことで、組織階層の縦の連鎖を効果的に活かす特徴があります

しかし、フラット化された企業では、組織階層が薄くなりがちで、経営トップとの直接的な接点が増え、変化し続ける中でいかに目標設定を素早く変えていくかが重要になります。そのため、このような企業は、目標管理制度が向いていない企業です。

社員の主体性が育たない環境の企業

企業の上層部からの指示だけで組織を運営している企業は、目標管理制度の持つ1つの特徴である「主体的な目標設定と管理」が実現できません。そのような「社員の主体性が育たない環境の企業」は、目標管理制度の導入に向いていない企業です。

このような企業は、目標管理制度を導入することは可能であっても、目標管理制度の持つ本来の成果を得ることは難しいでしょう。

目標管理制度が向いている企業

目標管理制度が向いている企業には、どんな特徴があるのでしょうか。

以下の2つの特徴についてご紹介します。
・従業員の自律性・主体性が確立されている企業
・組織の体制がピラミッド型の階層に分かれている企業

従業員の自律性・主体性が確立されている企業

目標管理制度が向いている企業の特徴に「従業員の自律性や主体性が確立されている」ということがあります

経営者トップや上層部だけの意見で企業の方針が決定されるような社風の企業には、目標管理制度の導入は向いていません。

組織の体制がピラミッド型の階層に分かれている企業

目標管理制度に向いている企業は、ピラミッド型です

目標管理制度は個人の目標を自ら設定し、自主的に目標管理をします。また、個人の目標を組織やチームの目標と連動するため、組織の管理体制が階層的に分かれているピラミッド型の企業に適しています。

まとめ

この記事では、目標管理制度が時代遅れと感じられる要因と成功させるためのポイントを解説してきました。

目標管理制度をうまく運用できず、時代遅れと感じてしまう企業は多くあります。しかし、自社に向いている方法を選択したり、本記事でご紹介した成功させるためのポイントに気を付けていけば、効果を発揮させることが可能です。

目標管理制度を効果的に導入することは、企業の生産性を高め、従業員個人のスキルアップやモチベーションアップにつながります。自社に合った最適な目標管理制度の運用により、より良い組織づくりを行っていきましょう。

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。