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絶対評価と相対評価の違い|それぞれのメリット・デメリット・最近の傾向を徹底解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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人事評価において多くの企業で用いられている方法に、「絶対評価」と「相対評価」の2種類があります。絶対評価にも相対評価にも、それぞれのメリットやデメリットがあり、どちらが優れた方法だということではありません。各企業が自社に合った、適切な方法を選択することが重要です。

そこで本記事では、絶対評価と相対評価の違い、また、それぞれのメリットとデメリットを解説していきます。さらに、人事評価の中で相対評価と絶対評価を活かしていくポイントもご紹介しますので、人事施策を見直したいベンチャー企業、またはスタートアップ企業の人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

絶対評価と相対評価の違い

「絶対評価」と「相対評価」の違いは、

・絶対評価:設定された基準と比べる
・相対評価:他の従業員と比べる

絶対評価とは、企業が設定した評価基準に従業員の能力や業績を照らし合わせて評価する方法です。あらかじめ定められている評価基準に沿って、各従業員のレベルを評価します。

たとえば、企業が定めた業務目標に対して150%の達成率ならばS評価、120%の達成率ならばA評価、100%の達成率ならばB評価という基準があるとします。この場合、従業員全員が150%の達成率を獲得した場合、従業員全員がS評価です。また、1人も達成率150%を獲得できなければ、S評価は0人となります。

周囲の従業員がどのくらいの達成率を獲得できたかに関わらず、事前に定められた基準に沿って評価する方法が「絶対評価」です。企業のレベルに左右されず、個人が定められた基準を満たしているかどうかで評価します。

具体的には、目標管理制度(MBO)などに活用されます。従業員個人が上司の指導のもとに設定した目標に対して、達成度をS~Dなどの記号で表記するといった方法です。

目標管理制度(MBO)については以下の記事を参考にしてください。
MBO(目標管理制度)とは?具体例と作成時のポイント・OKRとの違いについて解説

一方、「相対評価」とは他の従業員と比較して評価する方法です。

たとえば、成績上位者順にS評価は2人、A評価は5人、B評価は7人といった具合に、事前に評価分布の割合を決めておきます。仮に、企業が定めた業務目標に対して150%の達成率を獲得した従業員が5人いたとしても、S評価を得られるのは2人だけです。残りの3人は、A評価以下となるのが「相対評価」の特徴です。「AさんよりもBさんの方ができた」また「BさんはAさんよりもできなかった」というように、企業の中で順位を決める評価方法です。

従業員が企業目標を達成しても、他の従業員がそれを超える成果を出した場合、その従業員の評価は下がります。逆に、企業目標を達成できなかったとしても、周りの従業員の成果が自分よりも悪ければ、相対的に評価が上がります

絶対評価のメリットとデメリット

絶対評価のメリットとデメリットをご紹介します。メリットとデメリットをそれぞれ理解することで、自社に合った人事評価制度を導入することが可能です。

絶対評価のメリット

絶対評価のメリットはいくつかありますが、以下の2つのメリットをご紹介します。
・個人にとって明確で納得しやすい
・個人の育成につながりやすい

個人にとって明確で納得しやすい

絶対評価は、目標に対する達成度をもとに評価します。従業員個人のスキルや経験、頑張りに焦点を当てて評価するため、評価が「個人にとって明確で納得しやすい」というメリットがあります。

具体的な評価基準が定まっているため、評価された側が納得しやすい評価理由を得ることが可能です。

個人の育成につながりやすい

絶対評価のメリットは、「個人の育成につながりやすい」ということです。絶対評価では、設定された目標を達成できたかどうか、また達成率に注目します。そのため、従業員個人の課題や課題達成までの個人の状態を明確にすることが可能です。

評価基準が明確なため従業員の課題が見えやすく、課題克服のための目標を段階的に設定しやすいと言えます。上司も部下に明確なアドバイスを与えることが可能なため、従業員の成長速度も向上するでしょう。

絶対評価のデメリット

絶対評価のデメリットについて見てみましょう。絶対評価においてデメリットとなる可能性のあるポイントは、以下の2つです。
・評価基準を定めにくい
・プロセス評価が反映されにくい

評価基準を定めにくい

絶対評価のデメリットの1つに「評価基準を定めにくい」ことがあります。

たとえば、従業員全員が評価基準を達成した場合、従業員全員が最高評価を得ることになります。そうなると、評価制度自体の機能を失ってしまうでしょう。達成しやすい評価基準では高評価者が多くなりすぎてしまうため、バランスが重要です。

また、高評価を与えるからには、昇給や昇進などの見返りを検討しなければなりません。財源やポストを無限に用意できるわけではないため、人件費のバランスを保ちにくいというデメリットもあります

プロセス評価が反映されにくい

絶対評価には、「プロセス評価が反映されにくい」というデメリットもあります。

目標が達成できなかった場合、プロセスに関係なく結果のみで評価されてしまう場合がほとんどです。そうなると、目標が達成されなかった場合、評価される従業員のモチベーションは下がってしまう恐れがあります。その時点では成果が出ていない案件・事柄でも、プロセスがどうであったかによって将来貢献できそうな人材もいます

また、成果は従業員個人のスキルや努力のみならず、その時の社会的動向などの外的要因も関係することが現状です。

相対評価のメリットとデメリット

相対評価にもそれぞれのメリットとデメリットがあります。それぞれのポイントを抑えることで、自社に合った施策かどうかを見極めましょう。

相対評価のメリット

相対評価のメリットにはいくつかありますが、以下の2つのポイントをご紹介します。
・評価基準を定めやすい
・評価バランスを保ちやすい

評価基準を定めやすい

相対評価のメリットの1つに「評価基準を定めやすい」ことがあります。相対評価は絶対評価と比べて評価基準や目標値などの細かな設定が必要ありません。

相対評価で重要なことは、他の従業員と比較したときに自分の成績がどこに位置するかだからです。評価作業自体も、定められた評価基準に沿って従業員の位置づけをすればよいため評価判定が明快です。

また、企業の中で従業員同士を比較し、順位を割り振るだけであるため、検証の時間も削減できます。明確な評価基準を定める必要もないので、短期間での導入が可能なところもメリットです。

評価バランスを保ちやすい

相対評価は、「評価のバランスを保ちやすい」というメリットもあります。あらかじめ設定されている割合で評価を割り振るため、高評価から低評価まで、全体の評価バランスが保ちやすいです。

たとえば、絶対評価では評価基準が複雑になり、また評価者の個人的な主観も入りやすいため評価が変わってしまいやすいというデメリットがあります。しかし、相対評価は、個人的な主観は入りにくくなるため、バランスが良い評価が可能です。

相対評価のデメリット

相対評価のデメリットについてご紹介します。以下の2つのデメリットについて見てみましょう。
・個人の成長につながりにくい
・評価が曖昧になりやすい

個人の成長につながりにくい

相対評価は、他の従業員と比較する相対的な評価方法であるため、「個人の成長につながりにくい」というデメリットがあります。すでに業務に精通していて実績のある従業員が高評価を受けやすくなり、経験の浅い、成長の見込みのある従業員が評価されません

取り組みに対する評価には適しておらず、目標達成のためのプロセスが評価に結び付きにくいため、人材の育成には向いていません

評価結果が集団の属性によって変わってしまう

相対評価は、評価される集団の中で序列がつけられるので、ある部署や組織では良い評価を受ける人が優秀な人が多い集団の中では評価をされないことも起こり得ます。反対に、中々評価を受けなかった人がある集団の中で評価を受けることもあります。

そうなると自分が良い評価を受けることを目的に意図的に高い評価を受けやすい集団への異動などを申し出る従業員も現れるかもしれません。

優秀な人たちがお互いに高め合う空気感や自己成長や競争を従業員に求める企業が、相対評価を導入する時は従業員が受ける評価や評価を受ける集団を事前に想定しながら、ある程度シミュレーションをしてみるのもよいでしょう。

人事評価の中で相対評価と絶対評価を活かしていくには

自社に対して相対評価を導入するにしても、絶対評価を導入するにしても、人事評価の中でそれぞれのメリットを活かしていくには問題点を把握しておくことが重要です。

絶対評価における問題点と、相対評価における問題点を見てみましょう。

絶対評価の問題点

絶対評価の運用においては、さまざまな問題点が存在します。たとえば、目標や評価基準は単に業務成果だけに基づいているわけではなく、目標達成までのプロセスや行動レベルまで考慮することが求められています。そのため、業務成果による評価だけでなく、それを生み出すプロセスや適正などを踏まえた行動評価も併せて行う必要があります

また、目標設定は従業員1人1人に対して行わなければなりません。所属する部署やチーム、また職種によっても求められる要素やレベルが異なります。そのため、人事における絶対評価は、運用上の負担が大きくなることが現状です。

相対評価の問題点

人事評価制度は、社員の目標の持ち方や考え方に影響を及ぼします。相対評価は、他者比較で優劣をつけるので、社員の健全なモチベーションアップを阻んでしまうという問題点があります

相対評価によって、社員は必然的に「周りから優れていると思われたい」「周りに劣っていると思われたくない」という思いが仕事の動機となってしまいます。そうすると、自分のスキルアップに集中できず、健全な自己研鑽につながりにくくなってしまうのです。

最近の傾向は絶対評価

日本国内の企業においては、相対評価が主に導入され運用されてきました。しかし、最近の傾向としては、絶対評価の普及が広がっています。この現状は、近年の働き方改革の影響で、個人の努力や成長を重視する傾向が強まったからです。「相対評価の問題点」の項でも取り上げられた「健全な自己研鑽につながりにくい」という点があります。

最近の傾向が絶対評価にある理由は他にもあります。以下の2つの事柄から、絶対評価が導入されている原因について見てみましょう。
・不公正さの少なさ
・企業のパフォーマンスの向上に貢献

不公平さの少なさ

最近の傾向が絶対評価にあることの理由の1つに、「不公平さの少なさ」があります。絶対評価は相対評価と比べて不公平さが少なく透明性を保ちやすいです。従業員は成果を上げた分だけ必ず評価されます。従業員の間で不満が溜まりにくく、モチベーションを高める効果があるでしょう。

相対評価は、従業員の間での不満が溜まりやすい傾向にあります。たとえば、同じ成果を上げているにもかかわらず、その従業員の評価が低いということが相対評価にはあり得ます。その場合、説明に対して従業員の不信感が高まり、社員のモチベーションを下げるという結果になりかねません。

企業のパフォーマンスの向上に貢献

絶対評価を導入する企業が増えている理由には、「企業のパフォーマンスの向上に貢献」する可能性が高いこともあります。このことは、絶対評価の本質が他の従業員と比べることにあるのではなく、設定された基準と比べることにあるからです。相対評価において高い評価を得るために、他の従業員との競争心を利用することも可能でしょう。

しかし、他の従業員の成果を気にするあまり、本来重要な自身の業務に集中できなかったり、他の従業員の失敗を願ったりしてしまう可能性があることも事実です。

絶対評価は、他の従業員の成果を気にすることなく自身の成果に注意を集中し、目標の達成に向かって進んでいくことが可能です。自身の目標達成が部署やチームの目標達成につながり、最終的に企業全体のパフォーマンス向上につながっていきます。

まとめ

この記事では、「絶対評価」と「相対評価」の違い、また、それぞれのメリットとデメリットについて解説してきました。

従来の日本企業においては相対評価が導入され運用されてきましたが、めまぐるしい経済状況の変化や近年の働き方改革などの影響により、絶対評価を取り入れている企業が増えています。しかし、絶対評価に欠点がないわけではありません。コンピテンシー評価やMBOなどの評価方法を組み合わせながら、自社に合った活用方法を見いだしていきましょう。

コンピテンシー評価については、次の記事の中で説明していますのでご参照ください。
コンピテンシー評価の具体的な記入例:シートの書き方、業種ごとのサンプルをご紹介!

目標管理制度(MBO)については、次の記事の中で説明していますのでご参照ください。
MBO(目標管理制度)とは?具体例と作成時のポイント・OKRとの違いについて解説

企業に合った、従業員にとって納得がいく人事評価制度を確立するには、それぞれの特徴をよく理解した上で導入することが重要です。本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。