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相対評価とは?メリット・デメリット・評価制度の活用事例について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

成長ベンチャー企業が直面する
よくある「人事問題」事例集

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企業において人事考課や個人の能力を評価するにあたり、より良い評価制度の導入が非常に重要となります。適した評価を行うことで、従業員の成長やエンゲージメントの向上、離職率の低下にも繋がる可能性もあります。

ただし、公正に適切な基準で評価することは容易ではないという事実もあります。企業によっては、優れた評価制度の条件は異なります。

この記事では、相対評価という1つの評価基準のメリット・デメリット・制度導入時の注意点・活用事例について詳しく説明します。

評価制度については、こちらの記事もご参照ください。
人事評価の成功事例10選!人事評価項目の種類・人事評価制度の成功事例を幅広くご紹介!
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相対評価とは

相対評価は、個人の能力を評価するために、その人が所属する組織や集団内での相対的な位置を基に行われる方法です。この評価方法では、集団内での順位に応じて評価指数を設定します。

代表的な相対評価の方法として、ランク評価を挙げることができます。ランク評価では、あらかじめ評価の分布を設定し、「S評価は上位5%の層」、「A評価は約30%の層」、「B評価は約60%の層」といったように、枠組みを設定したうえで、実際の運用においては、評価の対象者同士を比較して、社員の成果やスキルに応じて相対的にランクを決めていきます

相対評価を用いると、公平に評価することでき、偏りが生じることを防ぐことができます。このため、日本では、学校教育の学力評価や企業の人事評価など、従来からこの手法が採用されてきました。

なお、後ほど相対評価のメリットとデメリットを詳しく記載しますので、確認するようにしましょう。

相対評価と絶対評価の違い

相対評価に対して絶対評価の手法もあります。日本企業では相対評価が主流であり、一方、外資系企業では絶対評価が広く採用されています。絶対評価では、個人の能力に応じて評価する方法であり、相対評価とは異なり集団内での順位に関係ないという特徴があります。

相対評価と絶対評価は、どちらが優れているかということはなく、それぞれにメリットとデメリットがあり、企業の目的や方針によって適切な選択が異なりますので、特徴をよく理解して運用するようにしましょう。

絶対評価については、こちらの記事もご参照ください。
絶対評価とは?メリット・デメリット・注意点・事例について解説
絶対評価と相対評価の違い|それぞれのメリット・デメリット・最近の傾向を徹底解説

相対評価のメリット

相対評価におけるメリットには次の4点があります。
・評価のしやすさ
・評価者の主観の排除
・競争の活発化
・不均衡の防止

評価のしやすさ

相対評価は、評価作業が容易であるというメリットを挙げることができます。集団内のメンバーを比較して順位を決定するため、検証にかかる時間も必要ありません。そのため、相対評価は評価者の作業負荷を減らし、評価者が他の業務に集中することができます

評価者の主観の排除

相対評価のもう1つのメリットは、評価者の影響を受けにくいことです。特にコンサルティングやシステム運営など、評価基準が曖昧な作業においては、評価者の主観によって同じ人でも評価が大きく変わることがありますが、相対評価を採用することでこのような問題を回避できます。

競争の活発化

企業内やチーム内で相対評価を活用することは、従業員に競争意識を生み出すことに繋がっていきます。従業員たちは互いの順位を競い合い、より良い成績を収めるために積極的に努力するようになるでしょう。

そのため、管理者が積極的にコーチングを行わなくても、従業員自身がモチベーションを高め、スキルアップを促進するようになることで、従業員に競争意識が生まれ、切磋琢磨する空気が浸透しやすくなります。

不均衡の防止

評価が高評価と低評価のどちらか一方に偏りが生じることを防ぐことができます。また、それに伴い、人件費を予算内でコントロールできることもメリットの1つに挙げることができます。

相対評価のデメリット

相対評価のメリットに続いて、次の5つのデメリットも併せて確認していきます。
・成績の低い社員の固定化
・所属部署ごとでの評価のばらつき
・個人の成長や取り組みに対する評価への不向き
・不透明な評価理由
・被評価者間の足の引っ張り合い

成績の低い社員の固定化

相対評価は、競争意識を高めると考えられていますが、成績の低い社員が固定化してしまうというデメリットもあります。

成績が低い社員は、挽回に向けてモチベーションが高まる場合もありますが、低い評価を受け続けると、仕事に対する自信を失い、やる気を失ってしまう従業員も少なくありません。このような負のスパイラルに陥ることがあるため、相対評価の運用には注意が必要です。心情の背景として、周囲から自分が能力が低いと見られることを避けたいという消極的な目標志向があります。

そのため自身の状況が改善されないと、ますますこの考え方が強まっていくでしょう。このような場合、対処法としては、「能力が低いと思われる状況から脱する」よりも、「高い評価を得るために成績を向上させること」が重要だというメッセージを伝えることが大切です。

所属部署ごとでの評価のばらつき

相対評価の基準はグループ全体の成績によって決まるため、所属するグループによって評価の高低や上位評価の難易度が異なり、適正な評価を行うことが難しいというのが相対評価のデメリットです。

例えば、所属しているグループに自分より優秀な社員が多くいる場合、自分は低い評価を受けることがあり、一方で自分より優秀な社員が少ないグループに所属している場合、自分は高い評価を受けるということが生じます。そのため、後者のグループに所属している限り、努力しなくても高い評価を受けるため、優秀な社員から学び、自分自身を高めるような健全な競争や自己成長の意欲が減少する傾向があると言えます。

個人の成長や取り組みに対する評価への不向き

相対評価は、集団内のランキングに基づいて評価が行われるため、個人の能力や取り組みに応じた評価が反映されにくくなります。そのため、経験やスキルが豊富で成果を出しやすいメンバーが高い評価を受ける一方、経験が浅く未熟な若手社員は低い評価を受けることがあります

成果に基づく評価において、相対評価は機能することが多いですが、取り組みやプロセスに対する評価には不向きであり、育成には適していません

不透明な評価理由

相対評価では、評価基準が明確ではないため、合理性を欠いた評価になることがあります。また、同じ程度の能力を持つ社員同士を順位付けしなければならない場合もあり、社員に不満を与えることがあります。

被評価者間の足の引っ張り合い

相対評価では、自分自身の成績や努力ではなく、他人との比較が重視されるため、上位者を蹴落としたり、下位者に落とされないように足を引っ張るような行動が生まれてしまうことがあります。自分自身の利益を優先し、競争心が強い社員がいると全体のチームに悪影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。

相対評価の活用

ここまで相対評価におけるメリットとデメリットを紹介しましたが、相対評価には社内の競争力を高める効果があります。社員同士が切磋琢磨し、一丸となって市場での競争力を高めたいという場合には、相対評価が有効な手段となります。実際に相対評価が活用されている次の2つの例を紹介します。
・大阪市
・株式会社サイバーエージェント

大阪市

大阪市の公務員は、相対評価によって評価され、5つの階層に分かれています。上位5%、5%〜25%、25%〜85%、85%〜95%、95%〜100%の区分が設けられており、昇給や手当などの支給に明確な規定が設けられています。  

株式会社サイバーエージェント

「ミスマッチ制度」として知られるサイバーエージェントの制度があります。この制度は、半年ごとに部署内の下位5%の社員を「ミスマッチ」と認定し、改善点を話し合うためにマネジメント層と面談するものです。

ミスマッチ認定が2回行われると、部署異動などの再配置を提案する仕組みになっています。この制度は、サイバーエージェントが重視する企業の文化や価値観に合った、マイナス査定制度の一例と言えます。

相対評価制度の注意点

相対評価を効果的に運用していくにあたり、押さえておくべき注意点を3つご紹介します。
・評価基準の明示
・詳細な評価基準の作成
・定期的な面談

評価基準の明示

相対評価を導入する際には、評価基準をできるだけ明示することが重要です。社員が努力するためには、評価基準が明確である必要があります。全てを明示する必要はありませんが、社員が努力すべき課題や企業が求める仕事基準などは社員にしっかりと周知するようにしましょう。

評価項目の明示については、こちらの記事もご参照ください。
評価項目の設定方法とは?設定時のポイントやサンプルまでご紹介!
人事評価項目の具体的な例|評価項目の詳細及び営業・技術・事務・管理職の項目例を徹底解説!

詳細な評価基準の作成

評価基準はしっかりと丁寧に作成する必要があります。作成後は、その基準で長期間評価を行うため、スタート段階で入念に練り込んでおくことが重要です。

そうすることで、修正にかかる時間や社員の努力が無駄になることを防ぐことができます。また、社員も安心して努力していくことができます。

評価基準の作成については、こちらの記事もご参照ください。
人事制度における評価基準の作り方とは?評価基準の種類・目的・必要性・注意点について解説

定期的な面談

定期的な面談を行うことで、相対評価を理解してもらうようにしましょう。評価基準が浸透するためには、定期的な面談で評価について確認することが重要です。

定期的な面談によって、評価制度が風化しないようにするだけでなく、部下が抱える仕事上の課題を聞き出してコミュニケーションを取ることも重要です。

定期的な面談については、こちらの記事もご参照ください。
人事評価面談|面談の目的・進め方・ポイントについて解説

評価制度への活用

相対評価と絶対評価のどちらか一方を採用するのではなく、柔軟に両方の評価を取り入れていき、効果的な評価制度を運用していきましょう。

評価基準が明確な営業などの業種には絶対評価を、一方、数値の見えにくいシステム課や法務課などの業種には相対評価を採用するなど、ハイブリッドな制度を設けている企業も存在します。

評価する目的をしっかりと決めたうえで、それぞれの環境や業種に合わせた評価制度を導入していくようにしましょう。ここでは、評価の目的とその評価方法の代表例を4つ紹介します。
活用目的①:給与の決定
活用目的②:ポストの決定
活用目的③:人材育成
活用目的④:企業の価値観の浸透

活用目的①:給与の決定

従業員の給与を決めることを主目的とした場合、絶対評価よりも相対評価を活用していくことが好ましいといえます。

相対評価ではあらかじめ評価の分布割合を決めていることから、予算内で原資をコントロールすることができるからです。

活用目的②:ポストの決定

社員の昇格などによるポストの決定を主目的とした場合も、相対評価を活用していくことが好ましいといえます。絶対評価を採用すると、自分より優秀でない社員が昇格するといった事態も起こり得るため、社員の納得感が得られにくくなります。

そのため、組織内における比較によってされる相対評価の方が適していると考えられます。

活用目的③:人材育成

人材育成を主目的とした場合は、相対評価より絶対評価を活用していく方が良いでしょう。
理由としては、相対評価に比べ、絶対評価は周囲の人と比較することなく、目標に集中しやすく、社員のモチベーション向上につながることが考えられるためです。

また、自分で「どうすれば目標を達成できるのか?」と考え、業務改善に繋げることで、社員の成長につながることもあります。

活用目的④:企業の価値観の浸透

企業の価値観を従業員に浸透させていくことを主目的とする場合も、絶対評価を活用していく方が良いでしょう。従業員に企業の文化や価値観に合わせた行動目標を設定し、目標の達成を意識させることで、企業への理解を深め、企業の価値観に基づいた考え方や行動ができる社員を増やすことができます

人事評価による社員のモチベーション低下に対する対処法

従業員に対して適切な評価を行った上で、期待していた評価に値しなかった場合、従業員にしっかりと伝えるべきです。この時、ただ単に慰めるような伝え方では、従業員自身の成長につながらず、誤った認識を与えることになる可能性もあります。

また、従業員に不信感を抱かせるような特別な措置を行うことは、離職率が高まるなどの問題が発生する可能性もあり、組織力を維持するためにも避けるべき対応です。

なお、部下に対するフィードバックを行う場合、その人自身の努力は認めながら、方向性の修正を提案することが重要です。全てを否定するのではなく、再び前向きに仕事に取り組めるようなアドバイスをすることが必要です。

まとめ

ここまで、相対評価におけるメリットやデメリット、注意点についてお伝えしました。それぞれの企業に適った評価制度を取り入れていくことで、組織力の向上に繋げていきましょう。

本記事が、ベンチャー・スタートアップ企業の経営者・人事担当者の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。