fbpx

COLUMN

コラム

子会社上場とは?審査基準・メリット・デメリットを踏まえて解説!

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

『資金調達の手引き』
調達ノウハウを徹底解説

資金調達を進めたい経営者の方の
よくある疑問を解決します!

今すぐダウンロード

現在、親会社だけでなく子会社も上場しているケースが多数見られますが、東京証券取引所には200社を超える子会社が上場しています。

子会社の新規上場は、親会社と子会社の少数株主の利害が対立する「利益相反」など数多くの弊害が指摘されており、2006年をピークに新規上場数は減少傾向にあります。

そこで本記事では、子会社の上場に伴うメリットやデメリット、そして子会社が上場する際に留意すべきポイントについてご紹介します。

子会社上場とは

子会社上場とは、文字通り子会社に当たる企業が上場(※)することを指します。
※上場とは、企業が発行する株式を証券取引所で売買できるように証券取引所が資格を与えること。

以下では、子会社上場に関する理解を深める前の前提知識として、親会社と子会社について理解しておきましょう。

親会社と子会社とは

会社法上では、親会社と子会社は以下のように定められています。

・親会社
  株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう(会社法第2条第4号
・子会社
 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社が経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう(会社法第2条第3号

 つまり基本的な考えとしては、子会社の株式において過半数を保有している会社が親会社にあたることになります。こうした親子関係にあり、かつ親会社も子会社も上場している企業は日本においても多数存在します。

子会社上場における審査基準

子会社の上場における審査基準は、親会社等からの独立性を有していることが総合的に認められるかが重要なポイントになります。

本項では、東証の新規上場ガイドブックに記載された独立性を示すために必要な3つのポイントをご紹介します。
・上場申請会社の不利益となる取引がないこと
・上場申請会社が親会社等からの出向者受け入れが適切であること
・上場申請会社が親会社等の一業部門と認められる状況にないこと

上場申請会社の不利益となる取引がないこと

まず1つ目は、親会社等との取引行為は第三者との取引と同様に公正な取引が行われ、上場申請企業(子会社)の不利益が生じる取引が行われていないかが重要なポイントとなってきます。

子会社の意思に反して、親会社から不利益な取引を強要される場合は、親会社からの独立性が確保できていないとみなされます。

上場申請会社が親会社等からの出向者受け入れが適切であること

2つ目は、上場申請会社(子会社)において、親会社から派遣される出向者の受け入れが適切であるかどうかがポイントとなります。これは、子会社が親会社等から独立して企業活動を進めていくための人員を確保できるかが確認されます。

その中で、まずは親会社等から受け入れられた取締役・監査役が取締役会・監査役会の半数以上を占めていないかどうかが確認されます。また、親会社等の影響を受けやすい部門を担当する部門長・役員に出向者が配置されていないかも確認されます。

加えて、出向者の出向契約が終了した場合において代替要員を確保することができるかどうかも重要となります。

つまりは、事業の継続性という点から出向者に依存していないかどうかが重要なポイントとなります。

上場申請会社が親会社等の一業部門と認められる状況にないこと

3つ目は、上場申請会社(子会社)が親会社等の一事業部門には当たらない、独立した事業となっているかどうかが重要なポイントとなります。これは、営業活動を含めた事業活動全般が親会社等に依存していると判断されるかどうかがカギとなります。

そのため、親会社等によるノウハウや意思決定、技術力などに依存することなく、親会社等の一業部門として見なされないことがポイントです。

子会社上場におけるメリット

上記に見て取れる通り、子会社上場の審査は比較的厳しく見られていますが、この審査を突破して上場すると以下のようなメリットが得られます。
・資金調達
・子会社の価値向上
・経営の自由度向上
本項にて順々に解説していきます。

資金調達

1つ目は、親会社側が資金調達出来る点です。

子会社が上場することにより、親会社は子会社の株式を売却する必要があります。親会社は、子会社の株式を売却することで売買益を得ることができ、新規事業や投資等の活動が可能となります。

子会社の価値向上

2つ目は、子会社の市場価値や社会的信用力が向上することです。

株式上場することで金融機関からの信頼性や数少ない上場企業としての知名度が向上します。これにより、子会社独自の経営力や人材確保に向けた求心力の向上に繋がります。

また、子会社だけのメリットにとどまらず、親会社含むグループ全体の価値向上にも繋がることが予想されます。

経営の自由度向上

3つ目は、子会社にとって経営の自由度が向上することです。

親会社から独立して経営を行うことで、子会社独自の経営を自由に進めることができ、結果として子会社に従事する社員全体のモチベーション・生産性の向上に繋がることが期待されます。

子会社上場におけるデメリット

子会社が上場するにあたって、当然メリットだけでなくデメリットも存在します。本項では、5つのデメリットをご紹介しますので、しっかり確認しておくようにしましょう。
・親会社の支配力低下
・子会社の利益流出
・コスト増加
・子会社の少数株主の利益阻害
・親会社からの不利益享受リスク

親会社の支配力低下

まずは、親会社の支配力が弱まることが挙げられます。
子会社が上場することで親会社から独立して経営を行うことになり、親会社の支配力が弱まります。結果、グループ企業としての経営判断が遅くなったり、グループで判断にブレが生じてくる可能性があります。

子会社の利益流出

2つ目は、子会社の利益が外部に流出してしまうことです。

新規上場により、株主は親会社だけでなくその他資本関係のない会社も資本参加します。資本参加する企業が増えることで、親会社以外の株主による考えが子会社の経営方針に影響を与えるようになり、グループ共通の経営方針を阻害しかねません。

その結果、営業利益や配当等の一部が資本関係にある親会社だけでなく、外部の会社に流出してしまうことがあります。

コスト増加

3つ目は、ガバナンスを管理するためのコストが増加することです。

子会社の上場により、上場基準を満たしたレベルの高いガバナンスが求められる他、親会社としてもこれまで以上に詳細な情報開示が必要となります。

そのため、体制の整備や事務処理に関する負担が増えることでコストが増加する可能性があります。

子会社の少数株主の利益阻害

4つ目は、子会社における少数株主の利益が阻害される可能性があることです。

株式会社は、株主の利益を最大化することが必須になってきますが、親会社を持っている子会社が上場している場合、親会社にとって有益な行動が株主にとって利益の最大化に合致しない場合があります。

例えば、子会社の廃業が親会社やそのグループ外車全体にとって有益であったとしても、資本関係にない株主にとっては不利益になる可能性があります。

親会社からの不利益享受リスク

最後は、親会社から不利益を受ける場合がある点です。

もし親会社の経営状況が芳しくない場合、親会社の不要な人材や採算が取れない部門を子会社出向などを通じて押し付ける場合があることから、子会社にとって不利益となるリスクが生じます。

子会社上場の審査をクリアするポイント

上述した通り、子会社が上場するためには複数の審査基準をクリアする必要がありますが、審査基準を通過するためのポイントを8つ紹介します。
・事業の棲み分け
・子会社が中核的でないこと
・独立した意思決定
・取締役の兼務理由における明確化
・独自の営業基盤確立
・公正なグループ内取引
・出向
・賃貸借関係にある資産の影響が少ない

事業の棲み分け

1つ目は、親会社やグループ企業と子会社における事業を棲み分けることです。

親会社等グループ企業と子会社が競合する場合は、子会社の上場が認められることがないため、手始めに親会社等グループ企業における事業の棲み分けについて確認するようにしましょう。

子会社が中核的でないこと

続いてのポイントは、子会社が中核的な存在でないことです。

親会社やその他グループ企業において収益の過半数を占め、グループ全体の中核的存在として見なされる場合、実質親会社と同等であると考えられるため子会社の上場が認められません

独立した意思決定

3つ目は、子会社において経営判断が独立して行うことができるかがポイントとなります。

親会社等グループ企業から命令されて重要な経営判断をしていたり、事前に経営判断の承認を親会社に求める場合は子会社の上場が認められません。そのため、上場する前に関係会社管理規程や株主間契約を見直すようにしましょう。

取締役の兼務理由における明確化

4つ目は、親会社等グループ企業から出向された役員が子会社における取締役の過半数を占めていない、もしくは半数以上であった場合でも、子会社が業務を執行するにあたって親会社等グループ企業の影響がない必要があります。

もし、子会社において兼務役員が存在する場合、その役割や理由について明確にしておく必要がありますので必ず確認するようにしましょう。

独自の営業基盤確立

5つ目は、子会社独自の営業基盤を確立していることです。

子会社が提供する製品やサービスにおいて子会社独自の開発力や技術などを保有しており、価格の交渉や販路拡大に向けた営業活動を独自に実施していること、また親会社等グループ企業に売上や仕入れが大きく依存していないことが条件となります。

公正なグループ内取引

6つ目は、グループ内の取引において公正で合理的根拠が存在する必要があります。

また、子会社と親会社等グループ企業において、一方が不利益となるような取引が行われていないこと、通常と大きく異なる条件で取引されていないことが必要となります。

出向

7つ目は、親会社等グループ会社から出向された役員・部門長の出向契約についてです。

重要な決定権限を有している者は、子会社への転籍出稿が必要となります。また、子会社における役職員が出向者に著しく依存していないかに関しても、子会社上場において必要な要件となります。

そのため、子会社独自で人材を確保していく基盤を確立していく必要があります。

賃貸借関係にある資産の影響が少ない

最後は、親会社等グループ企業から賃貸借の関係に当たる資産を保有している場合、その資産が子会社の運営において影響度が少ないことが必要となってきます。

仮に、親会社から借りた資産が子会社の経営において重要な資産に当たる場合、親会社の都合で子会社の経営が成り立たなくなり問題視されるケースもあるので注意しましょう。

子会社上場の審査厳格化の対応

これまで子会社が上場するための審査基準と審査時のポイントを解説してきました。

その上で、以下3つの観点から審査の厳格化が行われていますので、子会社上場を目指す方は是非抑えておきましょう。
・人的要因について
・取引関係について
・事業運営について

人的要因について

人的要因にて注意すべきポイントは、親会社等グループ会社から出向している社員、出身としている社員の状況についてです。

具体的には、親会社から出向している社員が子会社の役員や重要ポストに就くことは認められず、また親会社等のグループ会社から出向している社員が子会社における従業員の割合の多くを占めている場合は状況改善が求められます。

また、子会社の事業部門においては、親会社を出身とする社員の割合についても注意が必要です。

取引関係について

取引関係において注意すべきポイントは、親会社との取引が構成に行われているかどうかです。親会社との取引において、親会社以外の企業と同様に利益操作が出来ないよう一定の条件を明確にする必要があります。

また、親会社に対する子会社の依存度も大きなポイントとなります。例えば、子会社の売上や利益が親会社との取引による割合が大きい場合や親会社からの借入がある場合、親会社への依存度が高いとして状況の改善が必要となります。

事業運営について

最後に、事業運営において注意すべきポイントは、子会社が独自に意思決定を行っていることです。

例えば、子会社が意思決定をするにあたり、親会社の承認が必要でないことや親会社の指示による事業活動が行われていないこと、また子会社自身が企画や製品等の開発、ノウハウ等を有し、営業活動を実施していることが必要となってきます。

まとめ

本記事では、子会社の上場における概要やメリット・デメリットについて詳しくご紹介しました。

子会社にお勤めの方で上場を検討する方は、子会社上場のメリットだけでなくデメリットも十分に確認した上で、親会社等グループ会社と子会社との関係や現状について、上述したポイントを確認しておくようにしましょう。

本記事が、グループ企業の親会社・子会社の経営者の方やガバナンスに関わる担当者の方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

また、管理部門体制の構築をしたり、CFO人材の採用を進めたり、資金調達を加速させたりするには、プロの専門家に相談するのが一番です。

そこでSOICOでは、CFO中心とした管理部門組織の構築や、ファイナンスに長けたプロによる、個別の無料相談会を実施しております。

・CFOやバックオフィスの部長クラスが採用できている会社は、給与/役員報酬、株式報酬、採用手法は具体的にどうやっているか?
・今の自社の経営状態を踏まえた上で、資金調達を失敗しないために、どういったポイントを意識して進めるべきか?

そんなお悩みを抱える経営者の方に、要望をしっかりヒアリングさせていただき、
適切な情報をお伝えさせていただきます。

ぜひ下のカレンダーから相談会の予約をしてみてくださいね!

この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。