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OKRを活用した人事評価のポイント|OKR評価を運用するコツも解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

成長ベンチャー企業が直面する
よくある「人事問題」事例集

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従業員やチームの目標を管理し、チームや会社全体の生産性を向上させ、従業員のモチベーション向上を図る方法がOKRです。

OKRは人事評価とは別に行われることが多いですが、人事評価制度の際にOKRの結果を参考にしている企業も少なくありません。

OKRを人事評価をそれぞれ別々に設定する際には注意しなければならない点がいくつかありますし、上手に運用するためにポイントを押さえておくことも重要です。

本記事では、OKRを活用した人事評価を導入する際の注意点と導入時のポイントについて詳しく解説していきます。

OKRについて

OKRとは、O(Objectives)とKR(Key Results)の意味に分かれます。

O(Objectives)は目標、KR(Key Results)は目標達成のための成果指標のことです。

目標を設定し、その目標を達成するために具体的にどのようなことをすればよいのかを明確にする目標管理方法がOKRです。

OKRの目的やメリット・デメリットについて、まずは詳しく解説していきます。

OKRの目的

OKRの目的は目標の管理です。会社の目標を「チーム→個人」へと落とし込み、会社の目標がチームや個人の目標とズレが生じないようにするためのものです。これによってチーム全体の生産性の向上が期待できます。

また、個人は自分の目標の達成がどの程度会社やチームに貢献できるのかを把握できるので、モチベーションの向上にも繋げることができます。

個人の目標と会社の目標がズレてしまうことは珍しいことではありませんが、OKRを導入することによってこのズレが生じるリスクを軽減し、ズレが生じた場合には簡単に修正できます

OKRはあくまでも従業員の生産性とモチベーション向上のために実施されるので、人事評価のツールとして使用されることは基本的にありません。

OKRとKPI・MBOとの違い

OKRと似たような目標管理指標や評価指標として、KPIやMBOがあります。それぞれの意味とOKRとの違いについて詳しく解説していきます。

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で「重要業績評価指標」という意味になります。

プロジェクトの100%の目標達成を目的として、その達成度を評価します。

また、MBOとは「Management By Objectives」の略で「目標による管理」という意味です。MBOは報酬の決定要素にするための目標をどの程度達成したのかを評価する基準で、やはり100%の達成が求められます。

KPIはプロジェクト達成のため、MBOは報酬決定のため、100%も達成度を求められる成果に対してどの程度達成できたのかが評価されます

50%〜70%程度の達成度でよいとされ、従業員やチームのモチベーションや生産性向上のために行われるOKRとは大きく異なります。

OKRのメリットとデメリット

OKRのメリットとデメリットは以下の以下の通りです。

メリット デメリット
・組織の方向性をチーム・個人で一体にできる
・目標が明確になる
・組織内のコミュニケーションが活性化する
・レスポンスが柔軟で速くなる
・従業員のモチベーションが向上する
・導入に手間がかかる
・従業員の流動性が高い企業では定着しない

チームと個人の目的を一体化させ、同じ方向を向くことができるのが最大のメリットです。これによって、会社全体の生産性向上と従業員のモチベーションアップが期待できます。

ただし、OKRは会社全体の目標と成果指標と各チームへ落とし込み、各チームの目標と行動指標を従業員個人へと落とし込む作業が膨大です。

そのため、導入に時間と手間がかかり、社内での人事異動が多い企業では定着が難しいなどのデメリットもあります。

OKRを活用した人事評価のポイント

チームや従業員の生産性とモチベーション向上を目的としているOKRは人事評価とは別に運用されていることも多いですが、人事評価の際にOKRを活用している企業も存在します。

OKRを活用する際には、次の点に注意しなければなりません。

・実現可能な定性的な目標を設定する
・多すぎない目標管理指標を設定する
・OKRと人事評価を直結させない
・OKRを賃金・報酬と直結させない
・OKRの変更に人事評価が対応できるように環境を構築する

OKRを人事評価に活用する際の5つの注意点について詳しく解説していきます。

実現可能な定性的な目標を設定する

OKRで掲げる目標において1番重要なポイントは、企業にとって最も重要な課題であることです。絶対に達成できない目標だと従業員のモチベーションが下がってしまったり、逆に簡単すぎる目標であると企業の成長に寄与しないこともあります。

個人やチームの60%から70%の力で達成できる実現可能な目標であることが望ましいでしょう。厳しすぎず、やりがいを感じられるようなチャレンジ精神が試されるような目標を設定することが大切です。また、具体的かつ客観的にも分かりやすい言葉で言語化することも重要です。

この時、定量的な目標ではなく「やりたい」と思う価値観が共有できるような定性的な目標であることも重要です。

多すぎない目標管理指標を設定する

OKRでは目標管理指標が多すぎないことも重要です。部下だけでなく、上司も管理がそれほど大変にならないという点もOKRの大切な点です。

また、部下も評価される指標が多すぎるとモチベーションの低下につながる可能性もあります。

目標管理指標は5つ以内程度とし、管理指標は極力少ない方が管理する側もされる側も高いモチベーションで働くことができるでしょう。

OKRと人事評価を直結させない

OKRにおける目標達成度を人事評価に参考にすることは全く問題ありません。従業員がチームや会社の目標に対してどの程度貢献しているかを知るためには、OKRはむしろ活用しやすいと言えます。

しかし、OKRにおける目標達成度をそのまま人事評価と直結させてしまうと「OKRは達成可能な目標を設定し、従業員の生産性とモチベーション向上を図る」という本来の目的とズレてしまいます

従業員の中には高い評価を得ようと、目標以上に成果を追い求めてしまい、結果として会社の目標と従業員の目標とのズレが生じてしまうためです。

OKRはあくまでもモチベーションと生産性向上のためのツールとして活用し、実際に従業員を評価する指標は別のものを使用するようにしてください。

OKRを賃金・報酬と直結させない

人事評価制度と同様に、賃金や報酬を決める根拠としてOKRをそのまま使用しないようにしましょう。

従業員の中には高い報酬を得ようと、100%以上の成果を求めることがあり、そうすると会社の目標と従業員の目標がズレてしまうためです。賃金・報酬の評価基準は別に設け、OKRを報酬の基準と直結させないように注意してください。

OKRの変更に人事評価が対応できるように環境を構築する

OKRの特徴として「すぐに目標が変更できる」という点をあげることができます。OKRは会社の目標と従業員の目標にズレが生じないように導入するものですので、ズレが生じた場合にはすぐに修正しなければなりません。

人事評価の際にOKRを参考にする場合、OKRの変更に伴い人事評価も変更できる仕組みとしておくことが重要です。

この対応ができないと「会社が求めるOKR通りに仕事をしたのに、人事評価で評価されない」という事態になり、従業員のモチベーションは低下する可能性があります。

OKRを導入する企業における2つの人事評価基準

OKRを活用した人事評価基準は主に次の2つです。

・定性評価と定量評価で基本給を決める
・絶対値でボーナスやインセンティブを計算する

基本給とボーナスの決め方について異なる方法で決定するのがおすすめです。

OKRを活用した報酬決定方法を詳しく解説していきます。

定性評価と定量評価で基本給決める

360度評価などによる「定性評価」業績の絶対値をどの程度達成できたのかを把握する「定量評価」によって基本給を決める方法です。

OKR評価の場合は達成率で評価されますが、その場合、10件の目標に対して7件の獲得と、100件の目標に対して70件の獲得の達成率が同じになってしまいます。

そのため、定量評価は業績の絶対値で評価するようにしましょう。

絶対値でボーナスやインセンティブを計算する

ボーナスやインセンティブもやはり業績の絶対値で決定しましょう。ボーナスやインセンティブは、OKRで設定した目標以上の成果を出した従業員に対する成果ですので、どの程度の成果を出したのかに応じてインセンティブを与えるようにしましょう。

ただし、会社としてはOKRを重視すべきですので、会社の目標に直結しない成果についてはインセンティブを与えない方が、翌期以降の会社と従業員の目標のズレが生じにくくなります。

OKR評価を運用するための4つのポイント

OKR評価を運用する際には以下の4つのポイントを押さえておくことによって、効率的に評価制度を運用することができます。

・OKR評価を実施することを社内全体に周知する
・企業から社員個人へ目標へ落とし込む
・進捗を定期的に確認する
・定期的にフィードバックや見直しを行う

OKR評価を運用する際に押さえておきたい4つのポイントについて詳しく解説していきます。

OKR評価を実施することを社内全体に周知する

OKR評価を実施することは会社内の全てのチーム、全ての従業員に対して周知しましょう。

OKRは目標や成果指標を会社からチームへ、チームから従業員へと落とし込むことによって、チームや従業員の目標や成果が会社の目標達成へと直結する仕組みです。

そのため、会社の全員がOKRの導入や目標を把握していなければ意味がありません。

まずは、従業員に対してOKRとは何なのか、何を指針にして仕事に取り組むべきなのかということを十分に説明しましょう。

企業から社員個人へ目標へ落とし込む

OKRの目標や企業からチームへ、チームから個人へと落とし込みを行いましょう。

例えば、会社の目標が「売上20%アップ」、チームの目標が「売上アップのために新商品を5つ開発」、従業員個人の目標が「5つの新商品のうち1つを開発する」というように、会社から従業員へと目標を落とし込んでいきます。

このような上位から下位へと目標を落とし込むことによって、従業員は「自分の仕事がチームや会社へどのように寄与しているのか」ということを把握できます

また、企業からチームへ、チームから個人へと落とし込むことによって、個人の目標と会社の目標にズレが生じるリスクがなくなります。

目標を従業員から設定すると、会社の目標とズレてしまうので、必ず企業から従業員へと目標を落とし込んでいくようにしてください。

進捗を定期的に確認する

OKRでは目標に対する進捗を定期的に確認することも重要です。

2ヶ月〜3ヶ月に1回くらいは、「目標に対してどの程度進んでいるか」「会社が掲げた目標と個人の目標がズレていないか」ということを上司がしっかりと確認するようにしてください。

この確認作業に時間と手間をかけないためにも評価指標や目標の種類は多すぎないのがよいでしょう。

定期的にフィードバックや見直しを行う

OKRでは、進捗を定期的に確認するとともに、従業員の方向性や、そもそもの目標設定が会社の方向性とズレてしまった場合には、適宜目標の見直しを行うことも重要です。

そのため、OKRの目標設定や成果指標はすぐに修正ができるものであることも重要になります。

また、上司は部下に対して、成果や進捗に対して「どこがよくてどこが改善できる」というフィードバックを行うことで、従業員のスキルアップとモチベーションアップを期待できます。

まとめ

OKRとは会社の生産性向上と従業員のモチベーションアップ、さらに会社と従業員の目標にズレが生じないことを目的に行われます。

基本的には人事評価に直結させるものではないため、別途人事評価制度や報酬制度を設ける必要はありますが、OKRを人事評価の参考にすることは全く問題ありません。

OKRを導入している会社が人事評価を実施する際には、OKRと人事評価や報酬制度を直結させないことを徹底するとともに、従業員に対してOKRの導入を周知し、「何のためにOKRを導入するのか」というOKR導入の目的を明確に説明するようにしましょう。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。