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職務評価とは?職務評価の4つの手法と評価項目・導入事例・役割評価と情意評価との違いを解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

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よくある「人事問題」事例集

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企業におけるあらゆる職務を比較して点数化することで職務の大きさを評価する評価方法が職務評価です。

職務評価を導入すれば、職務のウェイトに応じて賃金を支払うことができるので、従業員間の不平等が是正でき、業務ごとのプロフェッショナルを育てやすいなどのメリットがあります。

また、ジョブ型人事制度にもすぐに対応できるので、今の働き方にあっているとも言えるでしょう

しかし実際に、会社に職務評価制度を導入したいと考えても、具体的にどのように導入すべきなのかが分からないという方も多いのではないでしょうか?

本記事では職務評価制度の手法や評価項目などについて具体的に解説していきます。

職務評価とは?

職務評価とは職務の大きさによって評価を決定する方法です。

例えば、正社員とパートタイムやアルバイトでは、一見して同じ仕事をしているように見えても、その職務の大きさは異なるのが一般的です。

職務評価においては、職務の大きさを点数化して比較することができるので、パートタイムやアルバイト従業員の納得感を得ることにも繋がりますし、報酬が適正かどうかを企業が確認することにも役立ちます。

まずは職務評価を構成要素ごとに比較していく要素比較法の概要について詳しく解説していきます。

職務評価は主に次の3つの要素から構成されています。

・評価項目
・ウェイト
・スケール

職務評価の3つの構成要素とは何か詳しく見ていきましょう。

評価項目

評価項目とは、職務内容の構成要素です。具体的には協調性や規律性など、職務において従業員に求められる要素を会社によって定めて、それらを1つ1つ項目として定めていきます。

ウェイト

ウェイトとは構成要素の重要度です。

会社の特性や企業風土などに応じて、構成要素のウェイトを決めていきます。

ウェイトが大きい構成要素ほど企業にとって重要ということになり、例えば、会社の輪を重視する企業の場合には、協調性のウェイトを高めるなど、企業風土や業種に応じて最適なウェイトを配分します。

スケール

スケールとは、それぞれの構成要素を評価する際の尺度のことです。

一般的には5段階評価で評価を行いますが、より精緻な評価を行いたいのであれば10段階評価などを使用します。

反対に、真ん中の評価に集中させたくない場合には4段階評価など、真ん中の評価がない方法で評価する方法もあるでしょう。

職務評価は、スケール×ウェイトで評価項目の点数が決まり、全ての評価項目の点数を合計したものが、その職務の大きさということになります。

5段階評価については次の記事もご参照ください。
5段階評価とは?評価のつけ方・評価作成のポイント・注意点を解説

職務評価の4つの手法

 

職務評価を行う際には次の4つの手法が使用されるのが一般的です。

・序列法
・分類法
・要素比較法
・点数法

それぞれの手法の概要やメリットとデメリットなどについて詳しく解説していきます。

①序列法

序列法とは会社内の職務に序列をつけて、序列順に評価をしていく方法です。

例えば「営業職が最も職務が大きい」という会社であれば、営業職を最上位の職務として他の職務よりも高い評価を行います。企業が何を重視しているのかに応じて職務の序列を決めていきます。

最もシンプルな方法ですが、職務の大きさを数値化して比較しているわけではないので、下位の序列の職務を担当している従業員から不満が出るリスクもあります。

②分類法

分類法とは、まずは大きさごとに段階を設定し、その段階の中に職務を当てはめていきます。

職務の大きい順にA、B、Cなどとランクを設定し、そのランクにそれぞれの職務を配分していきます。Aランクは営業やカスタマーサポート、Bランクは経理などというように、企業が考えた職務の大きさ順に分類していきます。

基本的には序列法とそれほど異なるものではありませんが、分類法では、複数の職務を同じ大きさに設定できるので、序列法と比較して従業員から不満が生じにくいという点はメリットです。

一方、必ずしも職務を序列化する必要がないので、多くの職務が同じランクに集中してしまうリスクもあるので注意しなければなりません。

③要素比較法

要素比較法とは職務における構成要素を会社が設定し、その構成要素によって職務の大きさを比較する方法です。

要素条件には知力や熟練度など、職務によってどのような条件が従業員に求められるのかを企業が決定していきます。

職務に求められる要素を比較し、ウェイトの大きな要素が含まれる職務ほど「大きい」と判断されます。

④点数法

点数法は要素比較法を点数化する方法です。職務において従業員に求められる要素を会社によって定めて、それらを1つ1つ項目として定め、それぞれの要素を点数化し、合計点を職務の大きさとする方法です。

例えばAという職務には、協調性が5、コミュニケーション能力が3、自律性が5求められるのであれば、この職務の大きさは合計点である13ということになります。

このように職務の構成要素を1つ1つ決めて、それぞれの配点を計算することによって職務の大きさを数値的判断して、職務の比較を行う方法を点数法といいます。もしくはこの方法を要素比較法ということもあります。

点数法は職務の大きさを数値化でき、さらにその数値の内訳も公表できるので従業員から不満が出にくい点がメリットです。

しかし構成要素や配点を決める作業が非常に大変なので、制度を導入するまでに時間がかかってしまうという点はデメリットだと言えるでしょう。

さらに、配点も従業員から納得されるものでなければならないという点にも注意が必要です。

職務評価とその他の評価方法の違い

人事評価で利用される評価手法には職務評価の他に主に次の2つがあります。

・情意評価
・役割評価

それぞれの評価の違いについて詳しく見ていきましょう。

職務評価と情意評価の違い

情意評価とは従業員の仕事に対する姿勢ややる気などを評価するアプローチです。

職務評価はそもそもの職務の大きさを評価することと比較するので、仕事そのものへの取り組み姿勢を評価するという点で、全く異なる方法だと言えるでしょう。

職務が大きい仕事をしていてもやる気がない人はいるため、職務評価は高くても情意評価は低いという従業員も、その逆も存在します。

また、職務評価は評価者である上司が動かすことができない評価であるのに対して、情意評価は「やる気」や「取り組み姿勢」など、客観的な評価が難しい部分を評価するので、上司の主観に左右されてしまう点はデメリットです。

職務評価と役割評価の違い

役割評価とは、社内の役割の重要度をあらかじめ決定し、その役割に応じて評価や報酬を決定する方法です。職務評価と非常に似ている評価方法だと言えます。

しかし職務評価はあらかじめ企業が設定した職務の大きさである「仕事内容」だけが評価の対象となるのに対して、役割評価はその役割(仕事)を担当する従業員の能力や情意的な部分も評価の対象となります。

役割評価には「人」という要素も加味されるという点が職務評価との違いです。

しかし役割評価や職務評価はまだまだ新しい評価制度で、企業によって定義も異なります。

あらかじめ企業が設定した職務や役割の大きさや重要度に応じて、そこで働く従業員を評価するという点では同じ評価方法と捉えても問題はないでしょう。

職務評価の職務等級制度の関係

職務等級制度とは、​​組織における職務を定義するジョブ・ディスクリプション(職務記述書)に基づいて、等級を決定する方法です。

等級によって評価や報酬が決定するので、職務評価と職務等級制度は基本的には同じです。

職務評価は単に職務の大きさに応じて従業員を評価する方法ですが、職務等級制度では職務に応じて等級まで決定するので報酬面だけでなく、会社内での序列や出世にまで大きく関係する制度と言ってもよいでしょう。

具体的には職務の大きな仕事を担当する従業員ほど等級が上がり、さらに大きな職務を担当するようになります。職務に応じて会社を序列化することまでできるのが職務等級制度の大きな特徴だと言えるでしょう。

そのため、職務評価だけを行っている会社と、職務等級制度まで導入している会社に分かれます。

職務評価の評価項目

職務評価を行うにあたって、要素比較法や点数法を採用する場合には、その評価の基準となる項目を会社の方針や企業風土に応じて決定しなければなりません

決定しなければならない項目は、職務の仕事内容や業務面での特徴、担当するための資格などの要件、責任の重要度、熟練度など、企業やその職務が「どのような要件を必要とするのか」に応じて、いくつか項目を設定していきます。

具体的な項目としては、人材代替性などをあげることができます。人材代替性とは、採用や配置転換などによって代わりの人材を探すのが難しいかどうかという評価です。

また、その職務に従業員の自由裁量がどの程度あるのか、職務を遂行するために特殊なスキルや資格が必要なのか、革新的なアプローチが求められるかどうか、対人関係でどの程度調整や交渉が必要なのか、その職務が経営にどの程度の影響を与えるのかと言ったことが項目として挙げられます。

具体的には次のような項目が考えられます。

・人材代替性
・革新性
・専門性
・裁量性
・対人関係の複雑さ
・問題解決の困難度
・経営への影響度

職務の大きさを測るための項目にはどのようなものがあるのかについて、詳しく解説していきます。

人材代替性

人材代替性とは、簡単に言えば「その業務は他の人に替われるのか」ということです。

採用や人事異動によって簡単に人が代替できるのであれば、その仕事の重要度は低いということですので、職務の大きさも低くなります。

反対に代替できない仕事であるのであれば、職務の重要性が高いということになります。

例えば、特別な技術や経験が必要な仕事は代替できないので職務の大きさは高いと考えられるでしょう。

革新性

革新性とは「これまでとは異なる新しいアイデアや手法が必要になるかどうか」ということです。革新性が求められる仕事は職務としても大きく、革新性が低い業務は職務が小さくなります。

例えば、商品開発などの部門は、新しいアイデアがなければ、職務を遂行することが困難です。そのため、革新性の項目においては高い配点が与えられます。

一方、生産部門においては、革新性は求められず、マニュアル通りに作業をこなすことが重要になるので、革新性の項目における配点は少なくなります。

専門性

専門性とは専門的な技術や知識が求められる仕事かどうかという視点です。専門性が高ければ配点も高く、専門性が低いのであれば配点は低くなります。

例えば、税務部門などは特別な会計や税務の知識が必要になるので、専門性の項目では高い配点が与えられるべきでしょう。

一方、庶務などの部門では専門性はそれほど求められないので、配点は低くなるかもしれません。

その職務にどの程度の専門性が求められるのかによって配点を決定していきます

裁量性

裁量性とは、その職務に従業員の自由裁量がどの程度認められるのかという項目です。自由裁量というと聞こえはいいですが、従業員の決定に大きな責任も伴うので、裁量性が高い職務の方が責任も重く、配点も高くなるでしょう。

他方、裁量性が低い仕事は責任も少なく、従業員の判断能力などは求められないので、配点は低くなります。

例えば、管理部門などは裁量性が高い業務ですので、裁量性の配点が高くなる職務だと言えるでしょう。

対人関係の複雑さ

対人関係が複雑な職務ほど高い配点となる項目です。他人との調整が必要な営業部門などはこの項目における配点が高くなる可能性があります。

一方、対人関係がほとんど必要ない、研究部門などではこの項目の配点が低くなります。

問題解決の困難度

問題解決の困難な仕事ほど高い配点を与える評価項目です。

例えば、顧客対応部門などでは、顧客から無理難題なクレームを押し付けられることも多いので、問題解決の困難度は高くなります。

一方、事務部門はマニュアル通りに業務をこなすのが主になるので、問題解決の困難度は低いと言えます。

経営への影響度

経営にどの程度影響するのかに応じて職務の大きさを決める項目です。全ての業務が経営に影響するので、この点を適正に評価することは簡単ではありませんが、あくまでも会社にとって「どの項目が経営に影響を及ぼすのか」を決めることが重要になります。

また「経営陣への近さ」を基準として近い職務からウェイトを高くする方法も有効です。

例えば、管理部門は生産部門よりも経営に近いのでウェイトが高くなると考えられます。

職務を経営に近い順に並べて配点を決定するのがよいでしょう。

職務評価の導入事例

実際に職務評価を導入している企業として、次の2社が有名です。

・銀座アスター食品株式会社
・株式会社大丸松坂屋百貨店

職務評価を導入している企業の実例をご紹介していきます。

銀座アスター食品株式会社

銀座アスター食品株式会社は、中国料理レストランの経営をしている会社です。

銀座アスター食品は、調理部門において職務評価を導入して、均等・均衡待遇を意識したパートタイム労働者の人事制度を作りました

同社は調理などの主な仕事は長期間育成する正社員に担わせてきましたが、正社員の採用が難しくなってきたため、パートタイム従業員に対してもこれまで正社員が担ってきた仕事を担当してもらう必要性が生じました。

そこで、調理部門の業務を、洗い場・下処理、デザート、麺、揚げ、前菜、鍋と項目に分けて、それぞれの項目において職務評価を行うこととしました。

これによってパートタイム従業員の中においては、職務の大きさに応じた評価と報酬の差異が生まれ、パートタイム従業員がやりがいを持って様々な調理業務に当たれるようになりました。

株式会社大丸松坂屋百貨店

株式会社大丸松坂屋百貨店は、大丸や松坂屋などの百貨店を運営する会社です。

同社は「組織生産性」「人的生産性」の飛躍的な向上に向けて、適正・公正な処遇を目指して、人事制度改革を進める一環として職務評価を取り入れました。全社員・正社員の全職群 550 ポジションをベンチマークして、実施職務を3分野6要素16項目で評価しています

さらに職務等級制度をベースに、貢献基軸を組み込むことで、等級ごとの給与幅を均一化しました。

パートタイム従業員の教育訓練制度や福利厚生制度などを正社員と均一化し、正社員との均衡待遇を実現することに成功しました。

まとめ

職務評価とは職務の大きさを比較して、職務の大きな業務ほど高い評価や報酬が与えられる評価制度の仕組みです。

職務の大きさで人事評価ができるので、正社員やパートタイムで不公平感が出ませんし、人事の透明性を確保することもできます。

職務の大きさをどのように評価するのかが、職務評価においては最も重要になるので、時間をかけて自社の業務を細分化し、職務の大きさを的確に評価しましょう。

       
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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。