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経営戦略職に役立つ資格|経営企画との違い・必要なスキルについて解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

CFOになるには?キャリアパスも解説

経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア

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自社を取り巻く外部環境と内部環境の変化を捉えて、自社の長期的な成長ビジョンを描く経営戦略部門を設置している企業は多くありません。多くの企業が、外部のコンサルティングファームに依頼し、経営層と共に企業の長期的なビジョンを描いています。

事業会社の中でも、経営戦略部に所属する従業員は珍しく、企業の経営層としての将来性も期待されているため、人材としての市場価値も非常に高いことも伺えます。

経営戦略部は、経理や法務のように特定の資格を取得が求められる訳ではありませんが、一昔前は、会社が費用を負担して、海外のMBA(経営学修士)コースに自社の幹部候補生を送り込む文化がありました。

キャリアとして経営戦略部門を考えている人の中には、資格を取得することでキャリアアップを検討している人もいるかと思います。

本記事では、経営戦略と経営企画の違い、経営戦略に必要な知識とスキルや経営戦略の策定に役立つ資格について解説をしていきます。

経営戦略とは?

経営戦略は企業が環境の変化を適切に捉えて、企業自身を成長させていくためにはどのような対応が必要であるかを考え、長期的な計画として立てる戦略のことです。

法律による規制緩和が産業に与える影響を元に立てる長期計画や世界的な疫病の流行に伴う大きな働き方の変化を前提に立てる経営計画などが、経営戦略にあたります。

この経営戦略は、市場の変化を正確かつ迅速に捉え、企業の成長のビジョンと市場の変化を元に戦略を立てることが必要です。経営戦略は企業の将来を決める重要なものであるため、中小企業では一般的には社長や経営陣などの重役が担いますが、規模が大きい企業であれば経営戦略を立てる経営戦略部と呼ばれる部署を立てているところが多いです。

経営戦略の構築は抽象的で難易度が高いので、企業によっては外部のコンサルタントに自社の経営戦略の策定を依頼するところもあります。

経営戦略部門については、次の記事もご参照ください。
経営戦略部門とは?業務内容・やりがい・必要なスキル・近年の動向について解説

経営戦略と経営企画の違い

企業によっては、A社の経営戦略部門とB社の経営企画部門の業務内容が似ていることもあるかもしれませんが、実際には、それぞれの役割も業務内容も異なります。

経営戦略は、企業の成長のために立てられる長期的な計画であり、経営企画は、この計画を実行するために必要な中長期的な経営計画の立案と実行を行います。

自社内のリソースを元にミクロ的な視点で中長期の経営企画を立案するのに対して、経営戦略はマクロ的な視点で社会の変化を含む外部環境の変化や自社内の事業の拡大や縮小など内部環境の変化を元に長期の経営計画を立案します

経営戦略部の仕事内容

経営戦略部は、企業の未来を見据えた中長期的なビジョンを定め、その達成のための戦略策定やその実行管理を主導します。その業務範囲は広く、市場動向や競合他社、自社の情報を収集・分析し、その知見から経営目標や実行計画などの「経営戦略」を設計します。

また、経営会議を円滑に運営し、重要な意思決定を支える役割も果たします。一度定められた経営戦略が全社規模で適切に実施されるよう、その管理も担当します。その他、M&Aやコストダウン、組織の再編成、マーケティング戦略など、具体的な経営課題に対する戦略の設計・立案も行います。さらに、必要に応じてコンプライアンスや労務状況の確認・改善なども手がけます。

経営戦略部は、これら全ての活動を通じて、企業の経営を大きな視点から見守り、重要な判断を下す立場にあります。

経営戦略部門の業務内容・M&Aについては、次の記事もご参照ください。
経営戦略部門とは?業務内容・やりがい・必要なスキル・近年の動向について解説
EXITにおけるIPOとM&Aについて|相違点・メリット・デメリットについて解説

経営戦略に必要なスキル

経営戦略部門に必要な知識とスキルは以下の4つが挙げられます。
・情報収集力
・情報分析力
・論理的思考力
・意思決定力

それぞれについて解説していきます。

情報収集力

自社を取り巻く外部環境や状況によって変化する内部環境に関する情報を集める力が求められます。情報源となるニュースや新聞だけでなく、インターネットの発達に伴い情報収集の対象となるメディアが増えたことで、同じ情報でも媒体によって情報の切り口や質的な情報の捉え方が変化することもあります。

AIのような新しい技術に対しても、生産的・建設的にどのように産業を変えていくかと論じるメディアがある一方で、新しい技術が既存の産業や労働力を破壊するという見方をするメディアもあります。

偏った情報源にならないように、情報収集の力を強化していきましょう。

情報分析力

収集した情報を経営層にそのまま伝えるだけでは、周りから期待される経営戦略部門が提供する価値に届かない可能性があります。自社のリソースや散らばった情報から示唆に富むインサイトを生み出すために徹底した分析力が求められます。

1パターンの分析だけでなく、悲観シナリオや状況が好転した際のシナリオなどさまざまなシーンを想定したアウトプットを出すことで、自社の今後のシュミレーションをする時に役立ちます。

論理的思考力

ここまで、情報収集と情報分析について触れましたが、収集した情報から分析をしたり、分析結果からインサイトを得るためには、論理的思考力が必要です。論理的思考力と思いつきやアイディアとの違いは、事実に基づいた矛盾や飛躍の無い筋道を立てた考えた「パッ」と頭に湧き上がった考えかといった点にあります。

企業が成長するためには、直感や思いつきから始まる新規事業が必要な場合もありますが、すでに事業を始めている中堅企業・大手企業にとっては、論理的思考から導かれる打ち手が有効な場合が多く見られます。

意思決定力

収集した情報を元に分析を行い、論理的思考力を駆使して出したインサイトを元に企業が何をすべきか、もしくは、何をすべきでないかを決めることは経営戦略において非常に重要です。

状況によっては、企業の命運を分ける意思決定の場面で限られた時間の中で答えを出さなければならない事態も起こり得ます。

意思決定を含めた、情報収集・分析、論理的思考力などのスキルはMBAコースでトレーニングをすることができます。

経営戦略の実務に役立つ資格

経営戦略部門で働くのに特定の資格が必須要件とされる企業はあまりないですが、先ほども触れた「MBA(経営学修士)」が歓迎される要件として求められることがあるようです。ここではMBAと同様に、必須要件ではないけれども経営戦略の実務に役立つ以下の資格について解説していきます。
・MBA(経営学修士)
・経営士
・中小企業診断士
・企業経営アドバイザー
・ビジネス統計スペシャリスト
・ビジネス会計検定

MBA(経営学修士)

MBA(経営学修士)も経営戦略の実務に役立つ資格の1つです。MBAとは、「Master of Business Administration」の略語で、経営学修士という経営学や経営管理の専門家の称号です。資格は、2年ほど経営大学院に通い、修士課程を修了する必要があります。

MBA取得の過程では、経営戦略部門での実務に役立つ幅広い知識とスキルが獲得可能です。また、MBAコースではファクトに基づいた論理的思考力の養成や高度な議論法や意思決定するためのトレーニングなど実際の業務において役に立ちます。

また、海外の大学院の中には戦略コンサルタントの実務を意識したカリキュラムが組まれているところもあるので、大幅なキャリアアップを考えている方は選択肢として考えるのも良いでしょう。

MBA資格を取得しておけば経営戦略部門での実務において大きなメリットとなります。デメリットとなり得るのは、取得までの期間や費用の点です。たとえば、大学院によってはMBA取得のための準備期間が1年以上とされ、その後2年ほど大学院生活をすることになる場合があります。(※ヨーロッパ圏には1年のMBAコースもあります。)

また、費用においても500万円〜2,000万円ほどかかるため、MBA取得を望む方は事前にスケジュールを調整する必要があるでしょう。

経営士

経営者に対してアドバイスができる民間資格である「経営士」は、経営戦略部門で働く上で役に立ちます。経営に欠かせないセールス、ファイナンス、人事など広い分野の知識の習得を期待できます。

日本経営士協会が定める正しい知識を判断の基準にしたコンサルティングを背景にした、企業経営を行うことができます。

この資格の受験要件には、大学卒業程度の学力と経営管理の実務経験が5年以上あることが定められているので、誰でも受けることができる試験ではないという特徴があります。

受験生の合格率は70%と高めに見えますが、これは実務経験5年以上が足切りになっており、質の高い受験生が多いことを示唆しています。

筆記試験と面接と書類審査で合否を判断しますが、日本経営士協会の提供する養成講座を受講することで筆記試験は免除されます。

中小企業診断士

「中小企業診断士」という資格も経営戦略部門で役立つ資格の1つです。中小企業診断士とは、企業の経営課題に対する診断や助言を行う専門家のことです。国家資格の1つであり、取得するには、財務・会計、経営法務、経営情報システム、オペレーション・マネジメントなど各分野での幅広い知識を学ぶ必要があります。

中小企業診断士を取得するために得られる幅広い知識によって、さまざまな視点で企業の課題に対応できるようになります。そのため、MBA同様、経営戦略部門での実務に役立つ資格と言えます。

資格取得のためにかかる受験費用は3万円ほどで、全体的に資格取得まで必要な費用は30万円ほどです。MBAと比べると取得費用を安く抑えられるため、経営戦略部門を目指す人の中にはまず中小企業診断士の資格を取得する方もいます。

企業経営アドバイザー

名前の通り、企業経営のための基礎知識や実践的スキルにつながるのが「企業経営アドバイザー」です。

企業経営アドバイザーは、企業の抱える課題を捉え、必要に応じて専門家とも連携しながら、企業の成長のための適切な打ち手や取るべき施策について提案をすることができることを証明する資格です。

経営者との対話や質問を通して、課題を抽出し、引き出された情報や数字データを分析することで、適切な事業性評価に基づいた経営支援を行います。

企業経営アドバイザーは、知識科目と実践科目の2つの科目でそれぞれ100点中の60点以上を取ることで合格となります。また、出題範囲は以下からになります。

  出題範囲 項目
知識科目


企業財務 損益分岐点分析
管理会計
設備投資の経済性計算
企業価値
キャッシュフロー計算書
経営分析
ローカルベンチマーク
中小企業会計
原価計算
企業法務 民法
会社法
組織再編
知的財産権に関する法律
企業経営・企業支援 経営戦略
組織の構造
組織の行動心理
人材管理
マーケティング
中小企業支援施策
生産管理 生産システムの概要
ライン生産への対応
生産管理の実行
生産プロセスの管理
品質と技術の管理
実践科目 事業性評価 事業性評価に基づく融資
ローカルベンチマーク
経営デザインシート
知的財産
外部環境分析
定量分析
内部環境分析
SWOT分析と経営戦略
事業計画

ビジネス会計検定

経営戦略部門において重要なスキルの1つは、財務諸表を分析する力です。長期的な経営戦略を描くためには、財務諸表から得られる情報も意思決定のために利用する必要があります。

経理部門や財務部門が作成する財務諸表や会計に関する情報から自社の今後のために何をすべきで何をすべきでないかを考える力を養うために、ビジネス会計検定の取得も考えてみるのも良いでしょう。

ビジネス会計検定には1級と2級、そして3級があります。1級は取得までの難易度が高いため、まずは2級取得をおすすめします。級ごとの出題範囲とそれぞれの項目は以下のようになります。

  出題範囲 項目
3級


財務諸表の構造や読み方に関する基礎知識 財務諸表の構造や読み方に関する基礎知識
財務諸表
貸借対照表
損益計算書
キャッシュ・フロー計算書の構造と読み方

財務諸表の基本的な分析 基本分析
成長率および伸び率の分析
安全性の分析
キャッシュ・フロー情報の利用
収益性の分析
1株当たり分析
1人当たり分析
2級 財務諸表の構造や読み方
財務諸表を取り巻く諸法令に関する知識
会計の意義と制度
連結財務諸表の構造と読み方
財務諸表の応用的な分析 基本分析
安全性の分析
収益性の分析
キャッシュフローの分析
セグメント情報の分析
連単倍率と規模倍率
損益分岐点分析
1株あたり分析
1人あたり分析
1級 会計情報に関する総合的な知識 ディスクロージャー
財務諸表と計算書類
財務諸表項目の要点
財務諸表の作成原理
財務諸表を含む会計情報のより高度な分析 財務諸表分析
企業価値分析

ビジネス統計スペシャリスト

ビジネス統計スペシャリストは、データ分析のスキルと分析結果で得られる結果を理解した上でインサイトを抽出する能力があることの証明となる資格です。

経営戦略の実務では、正しい情報を収集することが極めて重要です。売上や経費などの情報から経営の意思決定に関わる有益なアウトプットを出すには、直感や「なんとなく」から数字を捻り出すのではなく、正確な情報ソースから正確な操作を行うことが必要です。

ビジネス統計スペシャリストには、基礎レベルと上級レベルの2つがあります。それぞれ、以下のスキルの習得が可能となります。

  内容 項目
基礎レベル ビジネスデータ把握力 平均 / 中央値 / 最頻値 / レンジ / 標準偏差
ビジネスデータ課題発見力 外れ値の検出 / 度数分布表 / 標準化 / 移動平均 /季節調整
ビジネスデータ仮説検証力 集計 / 散布図 / 相関分析 / 回帰分析 / 最適値
上級レベル ビジネスデータ把握 分析データの理解 / 変量データのまとめ方
ビジネスデータ課題発見力 仮説検定
ビジネスデータ仮説検証力 回帰分析の応用

まとめ

この記事では、経営戦略と経営企画の違い、経営戦略に必要な知識とスキルや経営戦略の策定に役立つ資格について解説してきました。

本記事が、今後のキャリアを考えている方や社内のキャリアに関わるポジションの方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。