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経理は転職しやすい?経理職の転職事情・転職しやすい理由を解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

CFOになるには?キャリアパスも解説

経理/会計/財務/経営企画などの管理部門としてのキャリア

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経理職での転職を考えている方は少なくありません。さらなるスキルアップやキャリアアップを求めて同業種の大企業や違う職種の経理職へ転職を考えることもあるでしょう。

この記事では、経理職の転職事情や転職を有利にするポイントについて解説します。

経理の転職事情

経理職の転職事情は比較的安定していますが、最新技術の登場によって業務内容の大きな変化が想定される職種でもあります。その主な理由を以下の2つの観点から概観していきます。
・通年で求人している
・AIの導入

通年で求人している

経理職は通年で求人しているケースが多く見られます。経理はどの業界や企業でも不可欠な業務であり、一定の経理スキルは常に必要とされているからです

会計を扱うという性質から転職市場でも需要が高く、安定して一定数の求人を見つけられます。特に、年明けの1〜2月は求人数が多くなります。日本では3月に決算を行う企業がほとんどであるため、4〜5月の繁忙期に向けて人員を強化する傾向にあります。

加えて、欠員が出たタイミングで求人を出すケースも一般的なため、時期に関わりなく一定数の求人を見つけられます。

求人全体を見ると、中小企業とベンチャー企業・スタートアップ企業が多く、大企業の経理求人は比較的少ないのが通常です。大企業では、その安定性ゆえに辞める人が少ないですが、中小企業やベンチャー企業・スタートアップ企業では人手不足が継続して見られます。また、大企業と比べて高待遇で人材を集めるのが難しく、専門知識と実務経験の豊富な優秀な経理社員が集まりづらいのが実情です。

AIの導入

AI(人工知能)の導入によって、さまざまな職種の存続が問われるようになった昨今ですが、経理業務においてもAIの台頭が大きな影響を及ぼすことが予想されています。

結論から言うならば、現時点ではAIによって経理の仕事がなくなることはないようです。なぜなら、AIが代替できる業務には限界があるからです。例えば、「OCR(光学文字認識)をAIに組み込むことで領収書や請求書を自動データ化する」あるいは「それらの仕分け業務を自動化し複雑な業務をAIに行わせる」「AIチャットボットによって社内外への問い合わせを対応させる」などのAI化が想定されています。

一方で「条件判断の難しい、正確さが求められる税金計算」「AIそのもののメンテナンス」などは人手によって行わなければならないため、イレギュラーな業務や臨機応援さを必要とする業務はAI化は難しいとされています。

経理が転職しやすい理由

経理は比較的転職しやすいと言われています。理由はいくつかありますが、ここでは主に5つの理由をご紹介します。
・求人が多い
・スキルに汎用性がある
・経験を積めば積むほど有利
・資格が評価されやすい
・年齢差が壁にならない

求人が多い

冒頭で触れたように、経理の求人数は多く、しかも需要も安定しています。どの企業にも必ず経理職のポジションがあることに加え、会社の設立当初から存在する部門であるために人員の入れ替えや欠員が必ず発生することなどが理由です。

求人数という母数が多いため、自分に合う職場の求人を見つけられる可能性も高いのが特徴です。一般事務よりも求人数が常に多く、探しやすさという点で常に上位に入る職種の1つです。人手不足で常に経理を募集している企業もあり、求人数だけを考えると転職しやすい売り手市場であると言えます。

年収に地域差が出やすい傾向もあるため、年収アップやキャリアアップを求めて比較的活発な転職活動が行われることも関係しています。

経理職の年収については、こちらの記事もご参照ください。
経理職の年収|年収に影響する要素・年収を上げる方法について解説

スキルに汎用性がある

経理専門の資格となる簿記は「第3の言語」と言われるほど共通性があり、どの企業や業界でもスキルに汎用性があるのが特徴です。現場仕事の場合、職種を変えると業務を1から覚えなければならないのが普通ですが、経理の場合は比較的同じような業務内容が想定できます。

帳簿の記入・会計書類の作成・決算処理などは業種に関わりなく必要で、一定の業務経験があれば基本的に対応できます。会社ごとの細かなルールは異なっていたとしても、それらは転職後に慣れていけば問題ないレベルです。中にはフリーランスとして経理業務を請け負う方もおり、スキルの汎用性を生かして比較的自由な転職が可能です。

経験を積めば積むほど有利

基本的なスキルは共通するものの、現場の作業としては会社ごとのルールや求められる能力が異なります

大企業と中小企業では求められる業務内容が異なり、「建築業経理士」など独自のスキルが求められる職種もあるため、さまざまな業務に対応した経験が多ければ多いほど転職市場における価値が高まります。机の上で行う作業にも求められるスキルや知識が多く、会計ソフトやオフィスソフトのスキルがどこでも役立つことも転職時に有利に働きます。

加えて、企業の会計を扱う高い専門性ゆえに未経験者を教育するにはコストがかかり、やはり経験者が優遇されやすい傾向にあります。さらに、日次・月次・年次ごとの時間的なリミットが常に発生する職種であるため、素早く仕事を終えられる経験豊富な社員が重宝されます

資格が評価されやすい

経理職では必ずしも資格は必須とはされませんが、それでも経理職は資格が評価されやすい職種の1つであると言えます。

経理の資格として代表的なものは日商簿記で、簿記の級数と経験年数を伝えるだけで自分のスキルや実績をある程度アピールすることが可能です。給与計算の場合は、給与計算実務能力検定試験が評価され、取得した資格によって自分の経験を周囲に分かりやすく伝えられるのも経理職のメリットです。

経理職は未経験者採用の求人もそれなりに多く、経理関連の資格を必須とする求人ばかりではありませんが、保有資格を履歴書に書いてアピールすれば書類選考で有利になりやすいのが実情です。

あるいは、実務経験の年数で不利な場合でも、簿記などの資格を取得していることによって転職を有利に進めやすくなります。他にも、業務上必須なエクセルやワード関連の資格を取得することで、転職時のアピールポイントを増やせます。

経理職に役に立つ資格については、こちらの記事もご参照ください。
経理職に役に立つ資格|資格が有利に働く場面とおすすめの資格について解説

年齢差が壁にならない

先ほど述べたような経験が重視される傾向にある経理職では、年齢を重ねても転職にはさほど悪影響はありません。むしろ、経験の豊富さが実績の1つとして評価される傾向があります。

40代以降など通常は転職時に不利な年齢でも、実務経験に加えてマネジメント経験があれば転職に有利になるようです。マネジメント経験がなかったとしても、高い専門性が求められる経験や実績をアピールすれば、即戦力として採用されやすくなります

良くも悪くも、他の職種に比べて年齢による給与の差が少なく、それも転職が比較的容易な理由の1つとなっています。前述の資格が評価されやすい傾向と相まって、年齢を多少重ねたとしても転職しやすい特徴的な職種です。

女性も活躍しやすい

経理職は女性も活躍しやすい職種です。デスクワークで体力的な負担が少なく、繁忙期以外は残業も少ない傾向にあるからです。決算期以外は定時で帰れることが多く、私生活のスケジュールを立てやすいのも特徴です。

閑散期に繁忙期に向けての準備を進めておくことで、一番忙しい時期の負担を前もって軽減するといった対策も立てられます。業務量をある程度自分でコントロールすることが可能なため、私生活と両立しやすいのがポイントです。

さらに、産休・育休後の復帰も比較的容易で、業務の体力的な負担が少ないことと合わせてやはり女性が働きやすい職種であると言えます。残業ゼロや時短勤務などを設定している企業も多く、女性人口が多いこともあり周囲の理解を得やすい環境が整っています

加えて、業務内容が明確で進捗状況が分かりやすく、忙しい時期も基本的に共通しているため、ブランクを経て復帰したとしても業務になじみやすい職種です。業務内容が分かりやすいことは代替要員を確保しやすいことにもつながり、産休・育休中のみ外部から人員を補給して、その後職場復帰するのも容易になります。

異業種への転職も比較的しやすい経理職

経理スキルを活かして違う職種への転職を目指す方もいます。スキルアップやキャリアアップに繋がることもあり、異業種へ興味があるならば是非とも検討したい選択肢です。以下に主に3つの例を取り上げます。
・経理職から財務部門・管理部門への転職
・経理職から会計に特化したコンサルティングファームへの転職
・経理職からベンチャー企業・スタートアップ企業への転職

経理職から財務部門・管理部門への転職

経理職として実績を積むと、財務部門・管理部門への転職が可能になるかもしれません。過去の会計を記録する経理と違い、財務部門は「今後のお金の流れを管理する」部門です。未来の資金計画を立て、今ある資金を今後どのように振り分けるかを考えます。

当然ながら、経理とは違う視点が求められます。しかし、財務部門で決算書や資金計画をもとに運用し、企業の安定した成長のために何ができるかを学ぶのは非常に貴重な経験となるでしょう。数字を記録するだけではなく、数字から論理的な仮説を立てて将来の姿を分析するスキルを身につければ、財務部門や管理部門への異動のために良いアピールとなります。

財務部門・管理部門については、こちらの記事もご参照ください。
財務部門とは?業務内容・仕事のやりがい・必要なスキルについて徹底解説
管理部門とは?職種別の業務内容・部門の重要性・求められるスキル・能力について徹底解説

経理職から会計に特化したコンサルティングファームへの転職

会計コンサルティングは、会計に関する業務プロセス改善や法規制への対応、費用削減についてのアドバイスなどを行います。財務に関係するコンサルティングを行うサービスもあり、資金調達・M&A・企業再生支援までサポートする企業もあります。

クライアント企業の経営に大きな影響を与え得るため、重大な責任を担う仕事ですが、経理職よりもさらなる収入アップやスキルアップが期待できます。大手コンサルティングファームでは監査法人や税理士法人と提携しているため、一企業の経理職では経験できないより複雑な業務の実績を積めるでしょう。

経理職からベンチャー企業・スタートアップ企業への転職

ベンチャー企業やスタートアップ企業では、経理や会計職の体制が十分に整っていないことも珍しくありません。経理職で鍛えた会計知識や文書作成能力を駆使して、経理全体や一般事務全般に対応できる事務職への転職が考えられます。

企業規模が小さい場合、一般事務の業務内容を兼任するケースもよく見られます。経理職や会計処理の経験を活かして、より対応力のあるオフィス要員として活躍できるかもしれません。

経理への転職を有利にする戦略

他職種に比べると比較的転職が容易な経理職ですが、希望する企業への転職をより確実に成功させるために以下のポイントが役立つかもしれません。転職先を選ぶポイントや自己アピールに優位となる以下の要素について解説します。
・現職でもスキルアップに取り組む
・似たような業種の企業を選ぶ
・資格を取得する
・転職予定先の企業文化・社風を理解する

現職でもスキルアップに取り組む

経理職は、常に需要があることから転職市場における一定の価値がある反面、単純作業や定常作業などの基本的なスキルレベルでは希望の企業に就職できないことも考えられます。現在の職場でもスキルアップに取り組むことで、希望の転職を叶える武器を身につけましょう。

例えば、会計ソフトに単に数値を入力するだけではなく、それぞれの仕分けが持つ意味やベースとなっている会計基準についての深い理解を得るために勉強したり、月次決済や年次決算などの業務を積極的に学んでいくことでスキルアップに取り組めます。

財務諸表を作成する場合、過去年度と比較して数値の変化から経営状況を読み取るなど、財務に関係するスキルを伸ばしていくこともできます。さらに、PCスキルやオフィスソフトを扱うスキルはどの職場でも役に立ちます。よりハイレベルで会計・オフィスソフトを扱うスキルを伸ばしても決して損はありません。

似たような業種の企業を選ぶ

経理職のスキルや実績は、確かにどのような業界でもかなりの程度共通しています。それでも、似たような業種や企業規模の求人を選ぶことで転職を成功させる確率をかなり上げられるでしょう。似たような業種の経理職であれば、即戦力とみなされることが多いからです。

加えて、大企業と中小企業でも経理職に求められる実績やスキルは異なってきます。中小企業では、一般事務にも対応できる浅く広いスキルやそこまで高度な経験を必要としない受け入れ業務全般に対応できるスキルが必要とされます。一方、大企業では、経理職の人数が多く分業することになりがちで、特定の経理スキルにおけるスペシャリストや連結決算など、より複雑な業務に対応できるハイレベルなスキルが求められます。

野心的にキャリアアップを追い求める場合は挑戦する価値がありますが、安全に転職を成功させたい場合は比較的似ている業種や企業規模を選ぶのが確実です

資格を取得する

スキルアップと関係している点ですが、経理職関連の資格を取得することでスキルアップと自己アピール武器獲得の両方を達成できます。

例えば、日商簿記検定の取得を目指して会計知識をより深く正確に学べます。日商簿記1級を取得すると、大企業でしか経験できない会計知識を学び、現在の企業規模に関わりなくよりハイレベルなスキルや知識の取得が可能です

給与計算実務能力検定試験では、給与計算・社会保険・年末調整に関する知識を学びます。社会保険の仕組みや税法に関する幅広い知識を取得できるのが魅力です。資格の取得が現職での給与アップに直結するとは限りませんが、転職時には取得済みの資格や向上心を持って勉強に励んできた姿勢が良い自己アピールとなるでしょう。

経理職関連の資格について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
経理職に役に立つ資格|資格が有利に働く場面とおすすめの資格について解説

転職予定先の企業文化・社風を理解する

経理職に限った話ではありませんが、同じ職種で実績を持っていたとしても社風にフィットしていなければ転職が叶わないことも多々あります。また、自分自身が仕事を続けて行く上でも雰囲気が自分に合っているかどうかはとても重要です

コミュニケーションスキルや協調性で対応することも可能ですが、転職予定先の企業文化や社風を事前によく理解しておくと、転職後により職場に馴染めるはずです。事前に徹底的にその企業について調査し、転職エージェントなどのサポートも借りながら企業風土を理解することに努めましょう。

経理のキャリアパス

ゼネラリストとして、経営企画部門やCFO(最高財務責任者)を目指すキャリアパスがあります。1つの企業に腰を据えて経営の中枢を目指すもので、財務や会計知識だけではなく、その企業の業務全般に関する深い知識やマーケティングスキルが必要となります。

より規模の大きい企業への転職もキャリアアップとなります。前述のように、資格の取得やスキルアップをアピールして大企業への転職を目指しましょう。中途採用では現職でいかに経験を積むかが鍵となります。同じ職種のより規模の大きい企業を目指すのも1つの方法です。

コンサルティングファームや独立を目指す方もいます。会計業務のスペシャリストとして公認会計士や税理士の資格取得に励んだり、日系・外資系・有名なコンサルタントの方が独立した新興のコンサルティングファームにおいてコンサルタントやアナリストを目指すというキャリアパスを選択する方もいるでしょう。

CFO・経営企画部門・経理職のキャリアパスについてさらに詳しくはこちらの記事もご覧ください。
CFO(最高財務責任者)とは?定義・意味から役割・仕事内容・なり方・キャリアパスまで徹底解説!
経営企画のキャリアの考え方|経営企画の業務とキャリアパス・必要なスキルを詳しく解説
経理部門のキャリアの考え方|経理の代表的なキャリアプラン・経理のキャリアパスについて解説

まとめ

経理職の転職は比較的容易で、さらなるスキルアップやキャリアアップを求めて大企業やより複雑な業務を経験できる企業へ転職する方も多くいます。経理職はすべての企業に存在する職種であるため、積み重ねた経験は必ず役に立ちます。現職でのスキルアップや資格取得によって転職時の選択肢を増やせるでしょう。

この記事が、経理職での転職を考えている方の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。