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【10分でわかる】譲渡制限付株式とは!?株式報酬制度の仕組み・メリットを総まとめ!

社会的なコーポレートガバナンス強化の気運の高まりから、多くの上場企業での導入が進む株式報酬制度ですが、皆さんは「株式報酬制度ってなに?」と聞かれたら、網羅的に説明することはむずかしいのではないでしょうか?

株式報酬制度は種類が多く、それぞれの違いを正確に理解するのは大変というお声をよく頂きます。そこで今回は、

・株式報酬制度の目的
・各報酬制度の違いを理解するポイント
・各報酬制度の具体的なメリット・デメリット

について解説いたしました!株式報酬制度に馴染みのない方でも記事を読み終わった後には、株式報酬制度の基礎をご理解頂けます!

株式報酬制度を導入する目的とは?

株式報酬制度を導入することの目的は、経営者が投資家目線の経営と中長期的な企業価値向上を意識したインセンティブ設計を通じて、日本企業のグローバル競争力を高めることです。

2014年に日本再興戦略』の改訂を閣議決定し、それに伴い金融庁・東京証券取引所が示すガイドラインである「コーポレートガバナンスコード(=CGコード)」も改訂されました。政府がCGコードを改訂した背景には、グローバル企業と比較して日本企業の収益性が低く、その原因がコーポレートガバナンス機能の弱さにあると考えました。

特筆すべきなのは、「経営者が株主目線の経営を促し、中長期的に業績を向上させるインセンティブを与える制度設計にすべき」であると明記されたことです。

下記のグラフは世界各国の企業のCEO報酬の内訳です。

出典:CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第6回)‐配布資料 ウイリス・タワーズワトソン 説明資料

上のグラフを見てわかる通り、従来の日本企業の多くは、欧米の国々と比較して、基本給+賞与(1年間の売上や利益などの短期指標と報酬が連動)の割合が高く、中長期的に企業価値を向上させるようなインセンティブ設計が行われていませんでした。

固定報酬の欠点は、経営者が過度にリスクを避け、ローリターンの投資しかない、「守りの経営」を助長します。

例えば、一般管理費に含まれる「研究開発費」は単年度の業績は投資をすればするだけ減少します。しかし、研究開発費は将来、大ヒット商品を発明するかもしれない先行投資です。会社の売上が振るわず、なんとか利益を増やそうと過度に研究開発費を削ることとなってしまえば、単年度は良くても将来的な企業価値は毀損してしまいます。

そのため、経営者が株式を保有し、中長期的な企業価値と連動する報酬体系とすることで、企業価値を向上させる適切な投資を行う、言い換えれば「攻めの経営」に変革することできます。結果、日本企業の収益力向上に繋がります。

株式報酬制度のメリットとは?

株式報酬制度を導入することで、コーポレートガバナンスの強化のみならず様々な面でメリットを享受することができます。

メリット1:経営陣のモチベーション向上

企業が定める重要な業績指標の達成度合いで報酬が決まるとすれば、経営陣が目標達成に向けた施策を行うインセンティブが強まります。従来のようにリスクを極端に避けるのではなく、適切な投資を行い企業価値向上に繋がるようになります。

業績指標は、単一ではなく複数の指標を組み合わせることで、付与対象者にとっても納得できる設計も可能です。

注意点として、過度に高い目標設定は、かえってモチベーション下げたり、不正を誘発する可能性がありますので、適切な目標設定をする必要があります。

メリット2:優秀な人材の流出防止

制度設計によっては、「〇〇年以上の勤続をしなければ株式報酬を得られない」という設計にすることができるため、優秀な社員が他者に流出しないような抑止力があります。

メリット3:ガバナンス機能の向上

制度設計によっては、(譲渡はできない)株式の付与と同時に配当を受ける権利や議決権を得ることができるため株主と利害を共有する立場となります。また、業績や株価と連動したインセンティブ設計にすることで企業が中長期的に企業価値を向上させる思考を付与対象者に促すことができます。

経営陣の役員報酬を増額したとしても、成果指標を元に報酬が確定するため、役員報酬の引き上げに対して株主から納得を得られやすい構造となっています。

メリット4:現金拠出(=キャッシュアウト)不要

現金で支払わらず企業価値向上によるキャピタルゲインにより、対象者が報酬を受け取るため、現金が不足しがちな成長企業にとっては、株式で報酬を支給することは大きなメリットとなります。

注意点は、対象者は株式で報酬を受け取っても、株式報酬にかかる税金の支払いは金銭となるため、納税資金を確保することが必要となります。

株式報酬制度とストックオプションの違いは?

ストックオプションは、数ある株式報酬制度のひとつです。

そもそも、株式報酬制度とは現金で給与を支払う代わりに、株式や将来的に株式になるかもしれない権利(=ストックオプション)で給与を支払う制度のことです。給与の一部を現金ではなく、ストックオプション(新株予約権)で支払われるため株式報酬となります。

株式報酬制度の特徴を理解するポイント

数ある株式報酬制度の違いを理解するには、「①対価、②タイミング、③条件」の3つのポイントに注目すればできます。

①対価

「対価」とは報酬を「何を対価として受け取るのか?」つまり、株式で受け取るか、新株予約権(=将来的に株式に受けることのできる権利)で報酬を受け取るかによって分類できます。

②タイミング

「タイミング」とは、報酬を受け取るタイミングのことです。つまり、報酬を受け取るか確定する前に「事前に」株式等を受け取るのか、それとも報酬を受け取るのが確定してから「事後に」報酬を受け取るということです。(当然、経営者が条件を達成しなかった場合は、事前に付与した株式等は没収されます!)

③条件

「条件」とは、“中期経営計画の目標を達成したら”株式の譲渡制限が解除されるなどの「業績条件」、もしくは“勤続5年以上”で株式の譲渡制限が解除されるなどの「勤務条件」に分けられます。

一目でわかる、株式報酬制度の分類表

上述した「①対価、②タイミング、③条件」を基準に株式報酬制度を分類した表を作成しました。

それぞれの報酬制度を組み合わせて賞与を決めることも可能です!
以降では、それぞれの報酬制度の仕組みとメリット・デメリットに関して解説しますので、ご覧ください!

譲渡制限付株式報酬(RS)とは?

譲渡制限付株式・Restricted Stock・リストリクテッド ストック は通称RSと呼ばれています。RSは「譲渡制限付」という名前から分かる通り、事前に付与対象者に株式が付与されているのですが、条件達成までは譲渡ができない株式のことです。

譲渡制限を解除するには、勤務条件以上の継続勤務が必要となります。満たさなかった場合は、事前に付与したRSは没収することができます。

メリット1:投資家と利害関係が一致した経営

RSを付与されると、譲渡制限が付いている状態であっても「議決権」と「配当を受け取る権利」を持っています。そのため、RSを付与されたその瞬間から、株主と同じ立場となるため、投資家目線を意識した経営を促し、ガバナンス機能の向上を期待することができます。

メリット2:優秀な経営者を一定期間引き留めることができる

RSは条件が「勤続年数」等であるため、一定期間、優秀な人材をつなぎとめる効果(リテンション効果)があります。そして、もし辞めることとなった場合はRSを没収できるため、人材流出の抑止力となります。

デメリット:業績へのコミットメント力が弱い

RSは条件の性質上、「中期経営計画の目標指標の達成」などの業績指標を基準とした条件が無いため、後述する業績連動型株式よりも業績へのコミットメントを求める力が弱いと考えられています。

RSの活用事例 株式会社SUBARU

SUBARUは自己株式を処分し、その株式を役職員に付与するという形で利用しています。

プレスリリース:株式会社SUBARU『譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分に関するお知らせ

目的:経営陣の企業価値向上に対する中長期的なインセンティブの付与と株主との価値共有
譲渡制限期間:3年
金額(百万円未満は切り捨て):1億4,300万円
対象者:取締役6名、執行役員18名
割り当て株数(千株未満は切り捨て):取締役6名に対して、2万2,000株。執行役員18名に対して3万8,000株
譲渡制限の解除条件:譲渡制限期間の満了時において対象取締役等が有する本割当株式の全部につき解除される。ただし、対象取締役等の地位が喪失された際は、会社が無償所得できる。

譲渡制限付株式ユニット(RSU)とは?

譲渡制限付株式ユニット(=RSU)とは、RSとタイミングが異なり条件を達成した後に、「事後」的に株式を付与する仕組みとなっています。

「ユニット」とは簡単にいうとポイントです。①規定に則り、ポイントを付与します。②権利確定後に保有しているポイントの数に応じて株式、ないしは現金を付与を決定します。③ ②で決定した量の株式を入庫します。

メリット1:フレキシブルな報酬制度!

RSUにはあってRSに無い、最大のメリットは報酬制度を自由に設計できることです

具体的に申しますと、100ポイントを付与していた場合80%は株式を交付し、20%分は現金で付与するなど株式と現金を組み合わせた報酬制度にすることも可能です。

金銭報酬と株式報酬を組み合わせることのメリットは、付与対象者が最も流動的な資産である現金を手に入れることにあります。また、報酬が全て株式である場合、給与課税されるにも関わらず手元に現金がないため、納税に困るということが考えられます。そのため、一部を金銭で支給されると納税する資金が入るため付与対象者にとってはメリットの大きなスキームとなります。

メリット2:優秀な経営者を一定期間引き留めることができる

RS同様に、譲渡制限解除の条件が勤務条件となりますので、優秀な人材の流出を防ぐ効果が他の報酬制度比較して、最も高いスキームとなります。

デメリット:投資家と利害が一致するタイミングがRSと比較して遅い

株式が交付されるタイミングが条件達成後となるため、投資家と利害が一致するのはRSとして遅くなるため、ガバナンス力という観点で言うとRSと比較して弱いです。

業績連動型株式(PS)とは?

業績連動型株式は別名、Performance Share・パフォーマンスシェア・PSとも呼ばれています。

PSの交付タイミングは事前となります。そのため、事前に譲渡制限が付いている株式を付与します。その後は、「業績連動型」という名前の通り、一定期間経過後の業績目標を設定し、その達成度合いに応じて譲渡制限が解除されるという仕組みになっております。

当然、RSと同様に目標を達成できなかった場合は、すでに配布している株式の一部もしくは全部を没収することができます。

業績目標は、会社が中期経営計画に設定しているKPI、株価やROEなどが挙げられます。重要な業績指標を向上させることが株式報酬制度の目標(=企業価値向上)につながります。

メリット1:投資家と利害関係が一致した経営

PSもRS同様に事前に交付されます。そして、譲渡制限株式が付与された時点で配当を受ける権利と議決権を行使する権利を得ることができます。したがって、株主と同じような目線を経営者が意識しやすくなる仕組みとなります。

メリット2:業績向上に対する強いインセンティブ

RSとは異なり、譲渡制限の解除条件が業績目標の達成であるため、必然的に経営陣に対して業績向上に対するコミットメントを求めるスキームとなります。そして、もし業績条件を達成できない場合は、会社が事前に交付している譲渡制限付株式を没収することができます。

デメリット1:株式報酬費用の損金算入ができない

平成29年度以降、役員報酬として支給するPSの株式報酬費用は原則、損金算入されません。一方、RS・RSU・PSU等では条件つきではありますが損金算入できるため税務的な観点からは相対的に不利なスキームとなります。

デメリット2:業績条件を達成しなくても、議決権と配当を受けられてしまう

PSは、事前に付与対象者に対して株式を付与しますので、議決権や配当などの権利を、業績目標を達成していなくても得られてしまうことが、問題視されている側面があります。

業績連動型株式ユニット(PSU)とは?

RSとRSUは、上述の通り事前にユニット(=ポイント)を付与し、一定期間経過後に保有しているポイントの数に応じて、株式が付与されます。

PSUも同様にポイントが付与され、一定期間経過後に業績達成度合いに応じて株式交付数が決定されるという仕組みになっています。

株式でなくポイントを付与していることから、そのポイントに応じて80%を株式で、残りの20%を現金で支給するといったフレキシブルな制度設計にすることが可能です。

業績連動型株式ユニット(PSU)のメリット

RSUのメリットでも記載しましたが、株式報酬と金銭報酬を組み合わせることは、付与対象者にとってはメリットの大きいスキームとなります。

現金は流動性が高く最も安全な資産とされています。そして、②全て株式で報酬を受けてしまうと、受け取った株式に給与課税され、現金が増えていないのにも関わらず納税を求められるため、まとまった現金を持っていないと面倒なことになります。

当然、PS同様に業績目標の達成状況に応じて報酬が決定されるため、他の株式報酬制度と比較して最も仕事へのモチベーションを向上させることのできるスキームです。

PSUの活用事例 株式会社資生堂

プレスリリース:株式会社資生堂『業績連動型株式報酬制度の導入に関するお知らせ

目的:長期的な企業価値の創造に向けた動機づけと株主との価値共有
評価年数:3事業年度
対象者:取締役・執行役員・海外リージョンCEO
交付上限株数:20,500株/人
対価:株式と金銭
報酬の算定基準(業績連動型):連結売上高の年平均成長率・連結営業利益の年平均成長率、ESGに関する指標、ROE

ファントムストックとは?

参考文献:あいわ税理士法人 『業績連動・株式報酬制度を導入したい!と思った時に最初に読む本!』(2020年6月)

まず、擬似的な株式を発行して対象者に株式を付与したものとします。その後、業績条件を達成した際に、その擬似的な株式を売却したと仮定して得られる額を金銭で対象者に支給するという制度です。(株式はあくまで仮想であるため、売却といっても実際に誰かに売るわけではないです。)

ファントムストックは、株価と同額の金銭を得られることから、「フルバリュー型」と言われています。それに対して、株価の値上がり益に対して付与されるタイプを、「値上がり益型」と言われています。

ファントムストックが利用されるケース

ファントムストックは主に、海外に居住している外国人経営者に対して利用されます。

その理由は、上記のように株式を付与するには日本で証券口座を開設しなければなりませんが、非居住者であるため開設が困難であったり、そもそも株式に関わる税制や法律が異なることがあり扱いが対象者にとって扱いが難しいということから、株式の代替としてファントムストックを利用されます。

現在は日本人に対してファントムストックを利用されるケースは少ないです。

SAR(ストック アプリシエーション ライト)とは?

SAR (=Stock Appreciation Right)は、別名ストック アプリシエーション ライトと呼ばれています。また、SARは権利行使価格等を払込むことなく、株価の値上がり分を「現金or株式」で受け取ることができる権利です。

ちなみにSARは、日産自動車株式会社の元社長・西川廣人 氏がSARを不正に利用し退任となったことで、一時期話題になりました。(参考:日本経済新聞 2019年9月9日『「SAR報酬」世界でも珍しく 日産、運用見直しへ』)

ファントムストック・SARの注意点

上記のメリットがある一方、現金で報酬を支払うため、現金が足りなくなったり、他の投資などに使えなくなってしまう可能性がある点は要注意です。特に、株価がどのくらい上昇するかに関しては予測がしにくいため、当初の想定以上のキャッシュアウトになる可能性があります。

株式交付信託とは?

信託制度を利用した株式報酬制度です。

信託制度なので、次に記載する3者が関わってきます。①「委託者(=財産の管理を依頼する人=企業)」、②「受託者(=委託者から財産管理を依頼された人=信託銀行等)」、③「受益者(=託した財産から生まれた利益を享受する人=役職員や従業員)」

株式交付信託とは、A社がお金を信託銀行に託します。信託銀行は、A社から託された金銭を使い市場からA社の株式を取得します。そして、信託期間中は、A社が定めた勤務条件や業績条件の達成度合いに応じて役職員にポイントを付与します(この部分はユニット型と同じです!)。信託期間満了後に、役職員が保有しているポイントに応じて、信託銀行が取得したA社の株式を付与します。

メリット1:自由な報酬プランの設計

株式交付信託は、ポイント付与によって交付する株式数を決定します。したがって、上述したユニット型の報酬制度と同様に株式交付信託も自由に金銭と株式を組み合わせたスキームにアレンジすることができます。

メリット2:企業の業務負担の軽減

株式交付の事務手続きを受託者が担当するため、企業の業務負担が軽減されます。PSU等では企業が直接、付与対象者に対して株式を交付する場合ですと、その手続きや付与後の管理まで企業が担うことになりますが、信託型のスキームを利用することで、上記業務を受託者に託すことができます

デメリット:信託管理手数料の負担

株式交付信託では、受託者(信託銀行)に対して、信託が満了するまでの間、手数料を支払う必要があるため、RSやPSU等のスキームと比べて費用が大きくなります

まとめ

株式報酬制度を利用することで、「ガバナンス力の向上」・「中長期的な企業価値向上へのインセンティブ」・「優秀な人材の引き留め」・「現金拠出が不要」という金銭報酬にないメリットが多くあります。

また、株式報酬制度にはいくつかの種類があり自社の状況や目的に応じて適切なタイプの報酬制度を利用しましょう。そして、それぞれの報酬制度のタイプを見分けるには、「タイミング」「対価」「条件」の3点に注目することで理解することができます。

今回は、株式報酬制度の導入の目的、各インセンティブ報酬制度の概要とメリット・デメリットなどの基本事項の解説をいたしました。今後は、別の記事で株式報酬制度の会計・税務・法務の観点からも解説しようと思います!

また、今回は対価を株式(現金)である株式報酬制度を中心に解説しましたので、ストックオプションについて知りたいという方は下記の記事をご参照ください。

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