fbpx

COLUMN

コラム

経理職から年収1,000万円は目指せるか?必要な資格・スキル・年代別の戦略について解説

執筆者:茅原淳一(Junichi Kayahara)

未経験からCFOになるには?
キャリアパスを徹底解説

経理、会計、財務など管理部門として次のキャリアパスを考えたい方へ

今すぐダウンロード

経理業務に従事している方の中には「将来は経理業務としてキャリアを重ねて年収1,000万円を目指したい」と考えている人も多いのではないでしょうか?

売上や利益の拡大に直結する営業部や経営企画部、プロダクトを開発する新規事業部などと違い、自社の管理業務の一環である経理業務はそれほど高い年収を期待できないというイメージがあります。

しかし、従事する業種や企業によっては経理でも年収1,000万円を目指すことはできます。

また、経理職を背景に資格を獲得したり、実務経験を積んでいくことで、大企業の管理職やベンチャー企業やスタートアップ企業のCFOなどの役職に就くことで年収1,000万円を目指すこともできます。

本記事では、経理業務で1,000万円を目指すために必要なスキルや、1,000万円を含む高年収が期待できる業種や20代から30代の年代から年収1,000万円を目指す戦略などを解説していきます。

経理は年収1,000万円を目指すことができる?

経理業務は年収1,000万円を目指すことは可能です。しかし、一般的に年収1,000万円を超えるのは一部のポストの人だけとなっています。このポストも絶対数は少ないもののIPOの準備を始めようとしているベンチャー企業やスタートアップ企業では、年収1,000万円前後の待遇で募集されていることもあります。

まずは、経理業務の平均年収によってどの程度年収が変わるのか詳しく解説していきます。

経理業務の平均年収

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、経理職の報酬は平均で以下の通りです。

 月額報酬賞与年収
全体平均30万3200円86万1700円

450万100円

従業員1,000人以上の企業

32万5000円

111万3500円

501万3500円

従業員100~999人の企業29万8800円
86万6100円

445万1700円

従業員10~99人の企業29万1500円66万9000円

416万7000円

参照:令和4年賃金構造基本統計調査(職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))

全国平均は450万円程度ですが、企業規模によって平均年収に大きな差があります。

大規模な企業であれば平均500万円程の年収を受け取っていますが、小規模な企業は400万円超の報酬と、企業規模によって100万円近くの差異があります。

平均で見ると、経理職で年収1,000万円を目指すことはかなりハードルが高いことがあります。

年収1,000万円超の経理はどのくらい?

では、実際に経理職で年収1,000万円を受け取っている人はどの程度存在するのでしょうか?

国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、年収1,000万円超を受け取っている人の割合は日本で働く労働者全体の4.9%でした。さらに、事業所の規模別に見ると従業員5,000人以上の大企業に年収1,000万円超の人は多く分布しています。

実際に転職サイトで募集されている「1,000万円を超えている経理職」は、プライム市場に上場している大企業の経理部長やIPO支援経験のある経理部長など希少性の高い人材に限られます。

また、かなり稀な例ですが、近年上場した企業の中でもコンサルティングファームや投資銀行をキャリアに20代や30代で財務・経理の責任者であったり、CFO(最高財務責任者)の経験がある人材は年収(役員報酬)が1,000万円を超えていることがあります。

したがって、IPOを視野に入れているベンチャー企業や資金調達に成功したスタートアップ企業のCFOなど経理・財務の責任者になることで年収1,000万円の待遇で迎えられることもあります。キャリアを考える中での1つの選択肢として、経理職を背景とした役員職も考えてみるのも良いでしょう。

ひるがえって一般的に考えると、「企業規模が大きい」「勤続年数が経過して管理職になる」この2つの条件をクリアした場合に、経理でも年収1,000万円を超える可能性があります。

中小企業であったり、若いうちから純粋な経理で年収1,000万円を獲得することはかなりハードルが高いですが、経理に関係する職務経験を武器にベンチャー・スタートアップ企業の経理部長やCFOを狙ったり、大企業の管理職を目指すことで年収1,000万円の可能性も広がるでしょう。

CFOの年収については次の記事もご参照ください。
CFOの平均年収はいくら?相場を詳しく解説!

経理部長は年収1,000万円超を期待できる

経理職でも大手企業の管理職であれば年収1,000万円を期待できます。経理部長は、経理部門の責任者となるポジションで経営陣ともつながる会社内で非常に重要なポジションです。

経理事務をまとめるだけでなく、社内の収入や支出を集計して分析し、会社の資金繰りや収支の管理や計画を立てなければならないため、重要な管理職として1,000万円を超えるような高い報酬も期待できるでしょう。

先ほども触れましたが、実際に求人サイトでは「経理部長募集」として年収1,000万円の案件が散見されます。主に、プライム市場に上場している大企業のやこれからIPOを目指すスタートアップ企業におけるCFO候補や管理部長など経理を軸にしたキャリアアップを行うことで年収1,000万円を超えることが期待されます。

経理部長については、こちらの記事もご参照ください。
経理部長の仕事とは?仕事の内容・待遇・求められるスキルや能力について解説

CFOは多くの企業で年収1,000万円を超える待遇が多い

最高財務責任者であるCFOは、多くの企業で年収1,000万円を超える待遇で迎えられます。経理だけでなく財務関係のあらゆる責任を負っているCFOは経理部長よりも職位が高く、社長であるCEOに次ぐポジションです。

まさに経営の中枢にいる人間ですので、CFOになれば年収1,000万円超は期待できるでしょう。

なお、上場企業が公開している有価証券報告書では、役員報酬(報酬総額1億円以上の者)の開示義務があります。

転職や就職を希望する企業のCFOなどの役員がいくらの報酬をもらっているのか気になる方は有価証券報告書を確認してみましょう。

外資系の経理職の年収は?

外資系企業は国内企業よりも経理業務の報酬が高い傾向にあります。企業によって幅があるものの、外資系企業の経理業務の平均年収は600万円〜900万円程度と言われており、日本企業よりもかなり報酬が高くなっています。

これは、外資系企業の経理業務では英語力や海外の会計ルールなどの専門知識が求められることが多いため、日本企業よりも高いスキルが必要になるためです。

英語力や海外の会計知識(USCPAやBATICなど)を身につけることができれば、外資系企業の経理業務で年収1,000万円を目指すのは有効な方法だと言えるでしょう。

経理で高年収が期待できる業種3選

経理業務で高年収を獲得したいのであれば、次のような業種を選択するとよいでしょう。

・金融業・保険業
・学術研究・専門・技術サービス業
・情報通信業

これらの業種は経理でもある程度高い年収が期待できるので、ポストによっては年収1,000万円を超えられる可能性もあるでしょう。

金融業・保険業

専門性が高く、また参入障壁の高い銀行や証券などの金融業や保険業も年収が高い業種です。

金融業界は若いうちから他の業種よりも高い年収が狙える業界で、保険業界も業績次第で1,000万円を超えるような年収を目指すこともできます。

経理業務においても高い年収が期待できるので、金融や保険業界も1,000万円を狙える業種だと言えます。

学術研究・専門・技術サービス業

学術研究・専門・技術サービス業は一般的に金融や保険に次ぐ年収水準があると言われています。中には、そんなに年収の高くない専門・技術サービスもありますが、独立した弁護士や会計士が開業する法律事務所や会計事務所もこの業界に該当し、専門知識を持った人が多いので、高年収を期待できるでしょう

そのため、これらの業界で経理部署で働いている人も経理職で高い年収を狙えるでしょう。

情報通信業

インターネットに関わる産業である情報通信業も、平均年収が高い業界です。情報通信業には、IT企業だけでなく、テレビ局・放送局やデータベース・ソフトウェア開発など幅広いインターネットに関わる産業があります。

会社によって年収の差は非常に大きいですが、50代の平均年収は800万円を超えていると言われるほど報酬が高い業界となっています。

経理部門においても、部署の幹部クラスまで出世できれば1,000万円超を目指すことも可能です。

テクノロジーの進化と共に会社が急成長する分野でもあるので、勤務している中で会社が急成長できれば、報酬も飛躍的に大きくなる可能性があるでしょう。特に、スタートアップ企業の中でも大規模な資金調達を背景に経理や財務などバックオフィスを強化している企業は、好条件な待遇で迎えられることもあります。

年収1,000万円を超えるために必要なスキル

経理業務で年収1,000万円を超えるためには、次のような希少性の高いスキルを身につけていることが求められます。
・連結
・税務
・管理会計
・ファイナンス
・IR
・英語
・マネジメント

これらのスキルは専門性が高いので、誰もが簡単に身につけられるものではありません。専門性・希少性の高いこれらのスキルを身につけておけば、経理人材の中でも高い年収を期待できるでしょう。

この中でも特に管理会計のスキルは重宝すると言われています。管理会計とは、経営者の参謀のようなポジションで、自社の経営状況を向上させるための社内向けの会計のことです。

具体的には予実管理、経営分析、資金繰り管理、原価管理などが該当し、これらの指標を改善するためにどのような経営をしていくのか、経営者とともに検討する非常に重要なポジションです。

CFOのような重要ポジションですので、管理会計を身につけている人は高い年収が期待できるでしょう。

経理で年収1,000万円が期待できる資格

経理業務の方が年収1,000万円以上を狙いたいのであれば、次のような資格を取得しておけば高年収が期待できます。
・簿記1級
・米国公認会計士
・TOEIC800点以上

資格の概要や難易度などについて解説していきます。

簿記1級

簿記の分野では最難関の資格です。非常に高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算について習得しており、さらに会計基準や会社法、財務諸表等規則などの法律に基づいて、経営管理や経営分析を行うために必要な知識がないと受かりません。

合格した人には管理会計の知識があると認められるので、経営に近い管理者側のポジションで活躍することもできます。

また、簿記1級に合格すると税理士試験の受験資格が得られるため、将来的に税理士として独立を検討している人にもおすすめです。

米国公認会計士

米国公認会計士とはアメリカにおける会計・税務のプロフェッショナルです。アメリカの会計法規や税務についてマスターする資格ですが、日本でも受験可能で、働きながら資格取得する人も多数存在します。

会社がアメリカと取引する場合やアメリカに支社や関連会社を抱えている場合には、米国公認会計士の知識は非常に重宝します。

他の一般的な経理担当者にはない知識ですので、会社の中での希少性が高まり、年収UPも期待できるでしょう。

TOEIC800点以上

TOEIC800点以上あれば、高い英語力の持ち主として会社から一目置かれます。800点以上獲得するのは受験者全体の13.6%で、学習時間の目安は1450時間程度必要になるので簡単に獲得できる点ではありません。

しかしTOEICで800点以上を獲得できれば、海外と取引をする会社や海外支店を持っている会社にとっては、貴重な「現地とコミュニケーションが取れる人材」と判断されるので、非常に重宝します。

海外取引の多い企業に勤務する場合には、800点以上の獲得を目指してみましょう。

【年代別】簿記1級で年収1,000万円を得られるのか?

20代から30代を中心とした年代別で、年収1,000万円を狙う戦略についてご紹介していきます。

【20代前半】年収1,000万円を狙う戦略

20代前半で簿記1級を所有しているのであれば、大抵の上場企業の書類選考を通過することができます。

20代前半はポテンシャル採用(潜在的な能力を評価して採用する)なので、難関資格である簿記1級を取得していれば、就職活動で圧倒的に有利になります。

外資系の大手企業に就職して、20代半ばくらいで平社員から卒業できれば20代前半でも年収1,000万円を超えられる可能性があるでしょう。

20代前半で簿記1級を取得しているのであれば「上場企業・外資系企業」「ポテンシャル採用を実施している会社」を狙いましょう。

20代前半であれば1回目の転職であれば転職に不利になるようなこともありません。

【20代後半】年収1,000万円を狙う戦略

20代後半の場合、年収1,000万円を狙う場合には、ポテンシャル採用は難しくなります。大手企業のポテンシャル採用枠は枠が限られており、20代前半に枠を取られている可能性が高いためです。そのため、転職活動では1年〜3年程度の経理経験があることが重要になります。

20代後半で年収1,000万円を狙うのであれば、「大企業」「若手の経験者採用」を狙い、自身も経理経験が1年以上ある状態で活用をするのがよいでしょう。

経理業務の勤務経験がない場合、この転職では大企業は避けて、他社で経理の勤務経験を積んでから2回目の転職で大企業を目指すのがよいでしょう。

【30代前半】年収1,000万円を狙う戦略

30代前半の場合、いくら簿記1級という難関資格を取得していたとしても、ポテンシャル採用はまず不可能です。

連結決算くらいまでの実務経験がないと、待遇の良い大手企業へ転職することは難しいでしょう。30代前半になると実務経験が最も重視されるので、いくら難関資格を持っていても実務経験がない人は採用されない可能性が非常に高いと言えます。

経理として3年〜7年程度が必要で、レベル的には連結決算を経験している状態で上場企業の採用に応募してみましょう。

経験がない場合にはまずは中小企業へ勤務して、3年以上の実務経験を積むことで自分の市場価値を上げるという方法もあります。中小企業の中でもIPOを目指すベンチャーやスタートアップ企業で上場に関わる業務を経験することで、30代前半から30代後半にかけてCFOなどの役員となることで年収1,000万円以上の年収を狙うことも考えることができます。

CFOへの転職については、次の記事もご参照ください。
CFO転職の方法とは?CFO転職のメリットやキャリアパスも徹底解説!

【30代後半】年収1,000万円を狙う戦略

30代後半の方は通常の実務経験が数年程度あるだけでは転職に有利になるわけではなありません。待遇の良い大手企業へ転職するためにはマネジメント経験が必要になります。具体的には、上場企業で課長クラス以上を経験している方が望ましいと言えます。

管理職経験を積んで、メーカー系統の大手企業や上場企業へ転職することで、年収1,000万円を超えることも可能です。マネジメント経験のある経理職から管理職・管理部長、またCFOへのキャリアアップをすることが30代後半から年収を上げるための戦略となりうるでしょう。

管理職経験がない場合には、まずは今の会社で管理職経験を積むか、今の会社と同規模程度の企業で管理職を経験してから、上場企業へ転職活動を行うことも視野に入れると良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

経理の平均年収は440万円程度ですので、普通に働いて経理で1,000万円を超えることは簡単ではありません。

しかし、経理部長やCFOになることで経理職を背景として年収1,000万円を目指すことはできますし、外資系企業であれば経営幹部にならなくても年収1,000万円を目指せます。

また、高い年収を得るためには簿記1級や米国公認会計士などを取得して、企業にとって希少性の高い人材になることが重要です。

ただし、資格だけで採用に有利になるのは20代前半〜20代後半までで30代を過ぎたら実務経験の方が重視されることを理解しましょう。

本記事が、今後のキャリアを考えている方や社内のキャリアに関わるポジションの方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

       
CFOになるには?キャリアパスも解説
・経理、会計、財務など管理部門として次のキャリアパスを考えたい
・CFOに求められるスキル・経験を知りたい
・CFOになる具体的なキャリアパスを知りたい

そんなお悩みを抱える方に向けて、「CFOのキャリアパスの解説」をまとめました。

  1. ●CFO(最高財務責任者)について
  2. ●CFOに求められるスキル・経験
  3. ●CFOになるには?具体的なキャリアパス
  4. ●CFO転職について

フォームに必要事項をご記入いただくと、
無料で資料ダウンロードが可能です。

この記事を書いた人

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。