株式会社を設立できる人数|会社設立の条件・メリット・デメリットについて解説

株式会社を設立するには、数多くの従業員が必要だと思われているかもしれませんが、1人で設立することもできます。

コストを下げて、リスクを抑えるために最初は1人で会社を創業し、経営が軌道に乗ってきたら、従業員や役員を増やしていくことも1つの戦略として考えることができるでしょう。

この記事では、1人で会社を設立する条件や決めておくこと、メリット・デメリットを中心に解説していきます。

そもそも会社設立の流れについてまずは知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
会社設立の具体的な流れ|設立のための手続き・方法やメリット・デメリットについて解説

株式会社は発起人1人で設立できる

株式会社は発起人1人で設立できます。発起人とは、会社設立の際に、資本金の出資や、定款の作成などの手続きを行う人のことです。

そして、会社設立後は発起人は会社の株主になります。会社法第26条第1項には以下のように明記されています。

株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。

参照:会社法(第26条第1項)

会社の設立に必要な定款を作成する際のルールを定めた会社法では、定款作成にあたって必要な人数のルールを定めていません。そのため、発起人1人で株式会社を設立することが可能です。

発起人について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
発起人とは?役割と責任・注意点・役員と取締役の違いについて解説

株式会社設立に必要な株主・役員の人数

株式会社を設立するためには、最低でも1人以上の株主が必要になるので、株主は1人以上必要です。

また、取締役については、会社法第326条では以下のように明記しています。

株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。

参照:会社法(第326条)

発起人はこれら株主や取締役を兼務することも可能です。つまり、株式会社は発起人1人いれば設立できます。

発起人1人で会社設立する条件

発起人1人で株式会社を設立するためには「株式に譲渡制限を設けている」という条件を満たしている必要があります。

株式に譲渡制限を設けていないと、社内に取締役会の設置義務が生じます。取締役会には3人以上の取締役が必要になるので、1人では会社を設立できません。

株式の譲渡制限と会社法には以下の3つのルールが定められています。

公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。

参照:会社法(第2条第5項)

次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。 
一 公開会社

参照:会社法(第327条)

設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合には、設立時取締役は、三人以上でなければならない。

参照:会社法(第39条)

会社設立の際に「当社の発行する株式を譲渡するには取締役の承認を受けること」と定款に明記することで、株式に譲渡制限がかけられます。株式に制限がかけられることで、社内に取締役会を設置する義務がなくなるので、発起人1人で株式会社を設立することができます。

これから起業する人にとって会社設立は分からないことが多いのではないでしょうか。

また、起業したばかりの人にとっては事業の立ち上げと同時に様々な手続きを進めなくてはならず大変な思いをしている方も多いことでしょう。

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株式会社を発起人1人で設立するメリット

株式会社は発起人1人で設立できますが、1人で株式会社を設立することには、主に以下の3つのメリットがあります。
・自由に意思決定ができる
・人件費の負担を抑えられる
・投資家の経営への関与を防げる

以下、これらのメリットについて解説していきます。

自由に意思決定ができる

1人で会社を設立すれば意思決定を自由にできます。

複数の発起人がいる場合、会社の重要事項を決定する際には、他の発起人と協議した上で重要事項を決定しなければならないので、時には自分がやりたい方向性に進めないこともあるでしょう。また、打ち合わせや準備、複数の発起人や取締役と協議することによって意思決定に時間もかかってしまいます。

1人で会社を設立することによって、発起人が自由に意思決定でき、決定までに時間がかからない点はメリットです。

人件費の負担を抑えられる

会社設立時の発起人はそのまま取締役になるケースがほとんどです。発起人1人で株式会社を設立することで人件費を抑えて経営を始めることができますが、発起人の数が多いほど、会社設立後に支払うべき役員報酬も多くなってしまいます。

会社の経営が軌道に乗る前に、高額な人件費が発生することは会社設立時の大きなリスクになりますが、1人で会社を設立すれば、人件費は1人分しかかからないので、事業が軌道に乗るまでに費用を抑えて経営することができます。

投資家の経営への関与を防げる

発起人1人で株式会社を設立する条件でも述べましたが、1人で会社を設立するには、株式に譲渡制限を設けなければなりません。取締役の承認なしでは株式の譲渡ができないので、取締役の知らないところで第三者が株式を取得することは不可能です。

譲渡制限がかかった株式は第三者に譲渡されず、経営に関与されることがないので、誰にも干渉されることなく自由に経営できます。

株式会社を発起人1人で設立するデメリット

株式会社を1人で設立すれば、確かに低コストで自由な経営ができますが、次のようなデメリットがあることも頭に入れておかなければなりません。
・対外的な信用が低下する
・意思決定や視点が偏ってしまう
・設立手続きを1人で行わなければならない

以下、3つのデメリットについて詳しく解説していきます。

対外的な信用が低下する

取締役や従業員が複数いる会社よりも経営者1人しかいない会社の方が、対外的な信用度は低くなる傾向があります。

取締役や従業員が数多くいた方が、その会社は多くの売上を作ることができ、さまざまな事業や業務にも対応できると判断されるためです。つまり、一般的には従業員が多い会社の方が「大きくてしっかりとしている会社」と判断されるため、銀行から融資を受ける際の審査の通過や新規取引先の開拓などに寄与する可能性があります。

意思決定や視点が偏ってしまう

1人で経営することによって、ワンマン経営に陥ってしまうこともあります。取締役や従業員が他にもいれば、さまざまな提案をしてくれますが、1人の場合には会社内部で意見を言ってくれる人は存在しません。

1人だからこそ、迅速な意思決定ができる反面、1人の場合には誤った決定をしても誤りに気づきにくいので軌道修正や最適解にたどり着くまでに時間がかかることもあります。

1人の経営でも多面的な視点が持てるよう、税理士や金融機関の担当者などから定期的にアドバイスなどをもらう機会を設けることで狭くなりがちな視野を広げることもできるでしょう。

設立手続きを1人で行わなければならない

発起人1人で会社を設立する場合、会社設立に必要な手続きは基本的に1人で行わなければなりません。会社設立には以下のような手続きが必要です。
・​​定款の作成
・公証役場での認証
・法人登記
・資金調達
・銀行口座作成
・事務所や電話番号などの確保

事業そのものの準備を行いながら、これらの事務手続きを進めるのは大変です。司法書士や行政書士に会社の設立に必要な手続きの代行を依頼することもできるので、1人で会社設立をすることが難しい場合には、専門家を活用することも検討しましょう。

法人登記について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

法人登記について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
→ 法人登記|必要となるケース・事前に行うこと・登記の流れと申請方法について解説

会社設立にかかる費用や手続きについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
会社設立は自分で行える?かかる費用や必要な手続きについて解説

1人で会社を設立する時に決めておくこと

会社を1人で設立する際には、あらかじめ以下の3点については十分に検討したうえで決めておく必要があります。
・自分の給料
・社会保険への加入
・経費として認められる支出

以下、それぞれの項目について解説していきます。

自分の給料

個人事業主の場合には、自分への給料支払いは発生しないので、あらかじめ給料を決める必要はありません。しかし、会社を1人で設立した場合、取締役は自分1人だけですが、自分に対して会社から役員報酬を支払わなければなりません

この役員報酬は毎月定額で支払う場合において、会社の経費に参入できます。そのため、役員報酬をいくらにするのかはあらかじめ決めておく必要があるのです。

したがって、あらかじめ見込んでいる会社の売上や利益、コストなどから総合的に判断し、適切な役員報酬を決めておきましょう。

社会保険への加入

法人を設立したら原則として役員も社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険など)への加入が必要です。

個人事業主であれば、国民健康保険と国民年金に加入していますが、法人を設立し、その会社の役員もしくは従業員となると、原則として国民健康保険と国民年金への加入を継続することはできません。そのため、法人設立時には社会保険へ切り替える準備も同時にしておきましょう。

なお、法人を設立しても、役員報酬が社会保険を支払うだけの金額がない場合や、会社経営が軌道に乗らずに売上がない場合には、社会保険の加入義務が免除されることがあります。

社会保険の加入方法について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
会社設立の際の社会保険の加入方法|事業所・従業員別の加入条件について解説

経費として認められる支出

1人で会社を設立する場合には、経費として認められるものが制限されることがあるので注意が必要です。

代表的な例として、福利厚生費が挙げられます。福利厚生費は従業員がより働きやすくするために給与以外に支払う、業務とは直接関係しない費用ですが、代表取締役1人や役員だけで構成される会社には従業員がいないので、経費にすることができません。

一方、取引先との打ち合わせに使用した食事代を交際費としたり、出張した際の旅費や宿泊費を旅費交通費として経費計上することはできます。どこからどこまでが会社の経費として認められるものなのか、認められない支出はどのようなものなのかを税理士に相談することで、ある程度あたりをつけておくと良いでしょう。

株式会社以外に1人で設立できる法人

1人で設立できる法人は株式会社だけではなく、合同会社も合名会社も設立可能です。それぞれの法人の特徴を解説していきます。

合同会社

合同会社は、2006年の会社法改正によって設立できるようになった比較的新しい会社形態です。

合同会社では「所有と経営が一致している」という点が大きな特徴で、出資した人がそのまま社員になり会社の経営を行います。会社の代表者は各社員が務め、役員の任期もありません。

株式会社のように所有と経営が分離されていないので、投資家から経営に関与されることなく早く意思決定ができる点が特徴です。

合同会社と株式会社の違いについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
会社設立にかかる費用|合同会社と株式会社の違い・会社設立後の費用について解説

合名会社

合名会社とは出資者全員が無限責任社員で構成される会社です。

株式会社と合同会社は出資の対象が金銭もしくは現物のみと決められていますが、合資会社は
労働すること自体を出資の形として認める労務出資が可能という点がメリットです。

ただし、出資した社員は無限責任ですので、仮に会社が倒産した場合には、出資額を超える無限責任を負わなければならないため、リスクの高い会社設立の方法だと言えます。

合名会社も合同会社と同様に1人で設立できる上、株式会社よりも設立費用が安いですが、リスクの非常に高い無限責任です。そのため、どうしても労務出資をしたい場合以外には、合同会社と比較するとメリットの少ない法人形態だと考えられるでしょう。

まとめ

ここまで、1人で会社を設立する条件や決めておくこと、メリット・デメリットを中心に解説してきました。

本記事が、これから会社設立の準備や会社設立を検討している起業家・個人事業主・独立予定の会社員の方のご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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