証券会社を作るには|設立の手順と必要な準備を解説

証券会社を作るには|設立の手順と必要な準備を解説

証券会社を設立したいと考えているものの、具体的にどのような手続きや準備が必要なのか分からず悩んでいませんか。

証券会社の設立には、第一種金融商品取引業の登録が必須であり、資本金5000万円以上、自己資本規制比率120%以上の維持、有資格者の確保など、厳格な要件をクリアする必要があります。

この記事では、証券会社設立の基本要件から具体的な手順、必要な資金、人材確保の方法まで、実務的な情報を網羅的に解説します。

IFA(金融商品仲介業)との比較や、設立時のリスク、専門家への相談方法についても詳しく説明しますので、証券会社設立の全体像を理解し、適切な判断ができるようになります。

証券会社の設立は多額の資金と専門的な準備が必要な挑戦ですが、正しい知識と計画があれば実現可能です。

それでは、証券会社を作るために必要な要件と手順を見ていきましょう。

この記事の要約
  • 証券会社設立には第一種金融商品取引業の登録が必要で、資本金5000万円以上、自己資本規制比率120%以上の維持が求められる
  • 設立には億単位の初期投資と年間数千万円の維持費用がかかり、3年以上の業務経験者を複数名確保する必要がある
  • IFA(金融商品仲介業)という選択肢もあり、コストとリスクを比較して慎重に検討することが重要
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

証券会社を作るには何が必要?|基本要件を確認

証券会社を設立するには、金融商品取引法に基づく第一種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。この登録には厳格な要件が定められており、資本金・人材・組織体制のすべてを満たさなければなりません。

証券会社設立の基本要件は、株式会社であること、資本金5000万円以上、自己資本規制比率120%以上の維持、そして有資格者の確保です。これらの要件は登録時だけでなく、事業を継続する限り維持し続ける必要があります。

第一種金融商品取引業の登録が必要

第一種金融商品取引業は、株式や社債などの有価証券の売買、引受業務、有価証券等管理業務、FX、証券CFDなどの店頭デリバティブ取引業務を行うために必要な登録です。証券会社として事業を行うには、この登録が不可欠となります。

登録は内閣総理大臣(実務上は財務局長)に対して行い、厳格な審査を経て認められます。令和3年9月時点で第一種金融商品取引業者は308社しか存在せず、新規登録は非常に限られています。審査では、法令遵守体制、業務執行体制、財務基盤などが総合的に評価されます。

登録申請から承認までには、事前相談を含めて通常6ヶ月から1年程度の期間を要します。事業計画の精緻さ、人材の確保状況、システム構築の進捗などによって、さらに時間がかかる場合もあります。

金融庁「投資運用業等 登録手続ガイドブック」

株式会社であること

証券会社を設立する際は、取締役会及び監査役または委員会設置会社の株式会社である必要があります。合同会社や個人事業では登録を受けることができません。

取締役会設置会社とするため、取締役は最低3名必要です。また、監査役を設置する場合は監査役1名以上、委員会設置会社とする場合は指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を設置する必要があります。

役員には適格性が求められ、金融商品取引業としての業務を公正かつ的確に遂行できる十分な資質を有していることが審査されます。過去に金融犯罪で処罰を受けた者や、暴力団関係者などは役員になることができません。

資本金5000万円以上が必須

第一種金融商品取引業の登録要件として、資本金及び純資産が5000万円以上あることが求められます。ただし、行う業務内容によって必要な資本金額は異なります。

リスクの高い元引受けを行う場合は30億円、それ以外の元引受けを行う場合は5億円の資本金が必要です。一般的な証券売買業務のみを行う場合は、最低限の5000万円でスタートすることが可能です。

資本金は登録時に必要なだけでなく、事業継続中も常に維持する必要があります。業績悪化などで資本金や純資産が基準を下回ると、登録取消の対象となる可能性があります。また、自己資本規制比率の計算にも影響するため、余裕を持った資本金設定が推奨されます。

有資格者の確保が求められる

行おうとする第一種金融商品取引業の業務を3年以上経験した者が複数名確保されていることが要件となります。単に人数を揃えるだけでなく、実務経験を有する専門人材が必須です。

スモールスタートの場合でも、常勤5、6名程度が最低限の人数となります。コンプライアンス担当者、内部監査担当者、営業担当者に金融商品取引業の実務経験者を配置する必要があり、区分管理・分別管理の計算担当者なども必要です。

証券外務員資格、内部管理責任者資格など、業務に応じた資格保有者の配置も求められます。これらの有資格者は、登録申請時だけでなく、事業継続中も常に確保し続けなければなりません。

行政書士トーラス総合法務事務所「第一種金融商品取引業に登録する」

証券会社設立の5つのステップ|準備から開業まで

証券会社の設立は、綿密な計画と段階的な準備が必要です。ここでは、事業計画の策定から開業準備まで、5つのステップに分けて具体的な手順を解説します。

各ステップには一定の期間が必要で、全体として1年から1年半程度の準備期間を見込む必要があります。特に財務局への登録申請と審査には時間がかかるため、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。

ステップ1:事業計画の策定と資金調達

まず、どのような証券業務を行うのか、ターゲット顧客は誰か、収益モデルはどうするのかを明確にした事業計画を策定します。事業計画には、初期投資額、運転資金、3年程度の収支見込み、自己資本規制比率の推移予測などを盛り込む必要があります。

第一種金融商品取引業の参入には、確実に億単位の予算が必要となります。資本金5000万円に加えて、システム導入費用、人件費、オフィス費用などを合わせると、初期投資として1億円から数億円規模の資金が必要です。

資金調達の方法としては、自己資金、株主からの出資、金融機関からの借入などがあります。ただし、自己資本規制比率の計算では借入金は自己資本に含まれないため、基本的には出資による資金調達が中心となります。投資家や金融機関に対して、実現可能性の高い事業計画を示すことが資金調達成功の鍵です。

ステップ2:株式会社の設立

事業計画と資金調達の目処が立ったら、株式会社を設立します。定款の作成、公証人の認証、資本金の払込、登記申請という流れで進めます。証券会社の場合、取締役会設置会社とする必要があるため、取締役3名以上、監査役1名以上を選任します。

定款には、事業目的として「第一種金融商品取引業」を明記する必要があります。また、取締役会、監査役の設置についても定款に記載します。登記完了までには、通常2週間から1ヶ月程度かかります。

会社設立と並行して、オフィスの確保も進めます。バーチャルオフィスや他社との共有オフィスは認められず、独立した事務所スペースが必要です。顧客情報を適切に管理できる設備、システムを設置できるスペース、従業員が業務を遂行できる環境を整える必要があります。

ステップ3:人材の確保と組織体制の構築

代表取締役は、基本的に金融商品取引業者または登録金融機関で十分な職務経験を有する者であることが求められます。経歴及び能力等に照らして、金融商品取引業者としての業務を公正かつ的確に遂行できる十分な資質が必要です。

常勤役職員として、行おうとする業務の3年以上の経験者を複数名確保します。営業部門、コンプライアンス部門、管理部門、内部監査部門を設置し、各部門に適切な責任者と担当者を配置します。コンプライアンス部門は営業部門から独立させる必要があります。

証券外務員資格(一種・二種)、内部管理責任者資格の取得も必要です。これらの資格試験は日本証券業協会が実施しており、受験から合格まで一定の期間が必要です。既に資格を保有している人材を採用することで、時間を短縮できます。

ステップ4:財務局への登録申請

組織体制が整ったら、本店所在地を管轄する財務局に対して登録申請を行います。ただし、いきなり申請書を提出するのではなく、まず事前相談から始まります。

事前相談では、事業スキームや組織体制等について説明し、法令や監督指針上の必要事項を確認します。概要書を作成し、その記載内容に基づいて詳細な事項の確認が行われます。事前相談の期間は、平均的には3~4ヶ月程度です。

事前相談で内容が固まったら、正式な登録申請書と添付書類を提出します。申請書類には、会社概要、役員・使用人の履歴書、業務の内容及び方法、業務執行体制、財務諸表、社内規則など、膨大な書類が必要です。申請後、財務局による審査が行われ、通常2~3ヶ月程度で登録の可否が決定されます。

金融庁「投資運用業等 登録手続ガイドブック」

ステップ5:日本証券業協会への加入と開業準備

法令上、協会への加入は任意とされていますが、協会に加入しない場合は、協会の定款その他の規則に準ずる内容の社内規則の作成・社内体制の整備が必要となります。実務上、ほとんどの第一種金融商品取引業者は日本証券業協会に加入しています。

日本証券業協会の加入審査は、当局の審査以上の厳密性と密度をもって行われるのが通例です。業務方法、社内規則、帳簿書類、システムなど、細部にわたって審査されます。加入審査には1~2ヶ月程度かかります。

協会加入と並行して、証券システムの導入、投資者保護基金への加入、苦情処理・紛争解決措置(ADR措置)の整備など、開業に必要な準備を進めます。すべての準備が整い、財務局の登録と協会への加入が完了したら、ようやく営業を開始できます。

第一種金融商品取引業の登録要件|詳しく解説

第一種金融商品取引業の登録には、金融商品取引法第29条の4に定められた厳格な要件があります。ここでは、資本金・純資産、自己資本規制比率、人的構成、主要株主、内部管理体制について詳しく解説します。

これらの要件は、登録時だけでなく事業継続中も維持し続ける必要があります。要件を満たせなくなった場合、業務改善命令や登録取消などの行政処分を受ける可能性があります。

資本金・純資産の要件

第一種金融商品取引業の登録には、資本金と純資産の両方について基準が設けられています。単に会社設立時に資本金を用意するだけでなく、事業を継続する中で純資産も維持し続ける必要があります。

資本金5000万円以上

第一種金融商品取引業の登録要件として、資本金が5000万円以上であることが定められています。これは、一般的な証券売買業務を行う場合の最低基準です。

資本金は、会社法上の「資本金の額」を指します。設立時だけでなく、事業継続中も常にこの基準を維持する必要があります。減資などにより資本金が基準を下回ると、登録要件違反となります。元引受業務を行う場合は、より高額な資本金が必要です。

純資産額5000万円以上

資本金だけでなく、純資産も5000万円以上であることが求められます。純資産とは、貸借対照表の資産合計から負債合計を差し引いた金額です。

事業開始後、赤字が続いて純資産が減少し、5000万円を下回ると登録要件違反となります。そのため、初期投資だけでなく、運転資金として十分な資金を確保しておくことが重要です。実務上は、最低基準の2倍から3倍程度の資本金・純資産を用意することが推奨されます。

自己資本規制比率120%以上

金融商品取引法では、自己資本規制比率の120%維持義務が規定されており、それを下回った場合、金融庁はその証券会社に対して監督命令を発することができます。自己資本規制比率は、証券会社の財務健全性を測る重要な指標です。

自己資本規制比率とは、固定化されていない自己資本の額を、諸事情により発生し得る危険に対応するリスク相当額で除して算出する指標です。計算式は以下の通りです。

自己資本規制比率(%) = 固定化されていない自己資本の額 ÷ リスク相当額 × 100

140%を下回ったときは金融庁に届出が必要、120%を下回ったときは業務方法の変更等を命じられ、100%を下回ったときは業務の停止を命じられる可能性があります。

そのため、常に120%以上、できれば150%以上を維持することが望ましいとされます。

自己資本規制比率は、毎年3月、6月、9月、12月の末日時点で計算し、翌月末から3ヶ月間、すべての営業所で公衆の縦覧に供する必要があります。透明性の高い財務情報開示が求められています。

日本取引所グループ「総合取引参加者の自己資本規制比率」

人的構成要件

証券会社の登録には、適切な人材と組織体制の構築が不可欠です。単に人数を揃えるだけでなく、実務経験と専門知識を持った人材を適切に配置する必要があります。

役員の適格性

代表取締役は、その経歴及び能力等に照らして、金融商品取引業者としての業務を公正かつ的確に遂行することができる十分な資質を有することが求められます。金融商品取引業者または登録金融機関での十分な職務経験が基本的に必要です。

役員には欠格事由があり、過去に金融犯罪で処罰を受けた者、破産手続開始の決定を受けて復権していない者、暴力団関係者などは役員になることができません。また、業務運営に不適切な資質を有する者も排除されます。

必要な有資格者

行おうとする第一種金融商品取引業の業務を3年以上経験した者が複数名確保されていることが要件です。例えばFXを提供するのであれば、通貨関連店頭デリバティブ業務の3年以上の経験者を最低2名以上確保することが必要です。

内部管理責任者、コンプライアンス・オフィサーなど、法令で定められた責任者を配置する必要があります。これらの責任者には、日本証券業協会が実施する資格試験に合格していることが求められます。証券外務員資格(一種・二種)も、営業活動を行う従業員には必須です。

コンプライアンス・パートナーズ「第一種金融商品取引業」

主要株主の要件

証券会社の主要株主(総株主の議決権の20%以上を保有する株主)についても、一定の要件が定められています。主要株主が欠格事由に該当する場合、証券会社の登録が認められません。

親会社が外国の金融事業者で、日本居住者に対する無登録の営業行為を行ったことがある会社では、多くの場合、登録審査で問題が顕在化します。特に、無登録営業で金融庁から警告書を発出された業者は、その後の登録が極めて困難です。

主要株主の財務状況、事業内容、役員構成なども審査の対象となります。主要株主が反社会的勢力と関係がある場合や、過去に金融犯罪に関与した場合なども、登録が認められない理由となります。

内部管理体制の整備

法令遵守、リスク管理、顧客情報管理、内部監査など、適切な内部管理体制の整備が求められます。社内規則の整備、各種帳簿の作成・保管、定期的な内部監査の実施などが必要です。

契約締結前交付書面、契約締結時交付書面、保証金受領書、取引残高報告書、取引日記帳など、第一種金融商品取引業者に求められる法定帳簿は煩雑かつ多種多様です。行おうとする業務によって必要な帳簿が異なるため、事前に十分な確認が必要です。

コンプライアンス部門は営業部門から独立して設置し、法令違反を防ぐための体制を構築します。顧客情報の管理、適合性の原則の遵守、不招請勧誘の禁止など、金融商品取引法で定められた行為規制を遵守するための仕組みを整える必要があります。

証券会社設立に必要な資金|初期費用と維持費用

証券会社の設立と運営には、多額の資金が必要です。ここでは、初期費用と年間維持費用の内訳を具体的に解説します。資金計画を立てる際の参考にしてください。

第一種金融商品取引業の参入には、確実に億単位の予算が必要となります。また、登録要件の維持のためには多数の役職員の継続雇用が必要であり、年間の維持費も最低でも千万円と高額になります。

初期費用の内訳

証券会社設立の初期費用は、資本金、システム導入費用、登録申請費用、その他の準備費用に大きく分けられます。事業規模や提供するサービス内容によって金額は大きく変動しますが、最低でも1億円以上の初期投資が必要です。

資本金・準備金

資本金として最低5000万円が必要ですが、自己資本規制比率の維持や事業開始後の運転資金を考慮すると、1億円から2億円程度の資本金を用意することが推奨されます。元引受業務を行う場合は、5億円から30億円の資本金が必要です。

資本金に加えて、運転資金として数千万円の準備金も必要です。開業初期は収益が安定しないため、人件費、オフィス賃料、システム維持費などを賄える資金を確保しておく必要があります。最低でも6ヶ月分、できれば1年分の運転資金を用意することが望ましいです。

システム導入費用

証券取引システムの導入には、数千万円から数億円の費用がかかります。自社開発する場合は開発費用、パッケージを導入する場合はライセンス費用と初期設定費用が必要です。

取引システムだけでなく、顧客管理システム、リスク管理システム、会計システムなども必要です。また、セキュリティ対策、バックアップ体制の構築にも費用がかかります。スモールスタートの場合でも、最低3000万円から5000万円程度のシステム投資が必要と見込まれます。

登録申請費用

登録免許税として15万円が必要です。また、事前相談から登録申請までの期間、専門家(行政書士、弁護士、公認会計士など)に依頼する場合は、その報酬も必要です。専門家報酬は、業務内容や期間によって異なりますが、数百万円から1000万円程度が一般的です。

オフィスの賃貸契約(敷金・礼金・前家賃)、オフィス家具・設備の購入、名刺・パンフレットなどの作成費用なども初期費用に含まれます。これらを合わせると、数百万円から1000万円程度が必要です。

年間維持費用の目安

証券会社の年間維持費用は、人件費、システム維持費、協会費・監査費用などが主な項目です。事業規模によって異なりますが、小規模な証券会社でも年間数千万円の維持費が必要です。

人件費

スモールスタートの場合でも、常勤5、6名程度が第一種金融商品取引業の登録を受けるうえでの最低限の人数になります。金融業界経験者の年収は高く、1人あたり500万円から1000万円程度が相場です。

代表取締役、コンプライアンス責任者、内部監査責任者、営業担当者、事務担当者など、最低限の人員で年間3000万円から5000万円程度の人件費が必要です。事業拡大に伴い人員を増やす場合は、さらに人件費が増加します。

システム維持費

証券取引システムの維持費として、年間数百万円から1000万円程度が必要です。システムのライセンス料、保守費用、サーバー費用、セキュリティ対策費用などが含まれます。

システムのバージョンアップや機能追加が必要になった場合は、追加費用が発生します。また、システム障害に備えたバックアップ体制の維持にも費用がかかります。

協会費・監査費用

日本証券業協会への年会費として、数十万円から数百万円が必要です。会費は会員の規模や業務内容によって異なります。投資者保護基金への負担金も必要です。

監査法人による会計監査を受ける場合(資本金5億円以上の大会社は義務)、年間数百万円から1000万円以上の監査報酬が必要です。小規模な証券会社でも、内部監査やシステム監査を外部に委託する場合は、その費用が発生します。

最小限の機能で開業する場合のコスト

コストを最小限に抑えて開業する方法として、業務の一部を外部委託する、パッケージシステムを利用する、特定の業務に特化するなどの選択肢があります。

グループ会社への業務委託を活用する等の方法により、社内体制の構築次第では最小限の人数で業務を開始することも可能になります。バックオフィス業務を外部に委託することで、人件費を削減できます。

ただし、コスト削減を優先しすぎると、登録要件を満たせなくなったり、業務品質が低下したりするリスクがあります。最低限必要な投資は行い、段階的に事業を拡大していく計画が現実的です。最小限の機能で開業する場合でも、初期投資として1億円程度、年間維持費として3000万円から5000万円程度は必要と見込まれます。

有資格者の確保方法|必要な人材と採用のポイント

証券会社設立において、最も重要かつ困難なのが有資格者の確保です。ここでは、必要な資格の種類、採用方法、人材確保のポイントについて解説します。

金融業界経験者の採用市場は競争が激しく、特に3年以上の実務経験を持つ人材は希少です。採用活動には時間がかかるため、早めに開始することが重要です。

証券外務員資格とは

証券外務員資格は、有価証券の売買や勧誘業務を行うために必要な資格です。日本証券業協会が実施する試験に合格することで取得できます。一種外務員資格と二種外務員資格があり、取り扱える商品の範囲が異なります。

二種外務員資格では、株式、債券、投資信託などの現物商品を取り扱えます。一種外務員資格では、二種の範囲に加えて、信用取引、デリバティブ取引なども取り扱えます。証券会社で営業活動を行う従業員は、最低でも二種外務員資格が必要です。

外務員資格試験は、証券業務に関する法令、商品知識、投資理論などが出題範囲です。合格率は一種が約40%、二種が約60%程度とされています。試験は年間を通じて随時実施されており、受験から合格まで1~2ヶ月程度です。

内部管理責任者の要件

内部管理責任者は、金融商品取引業者の営業所または事務所において、法令遵守や顧客管理などの内部管理業務を統括する責任者です。日本証券業協会の内部管理責任者資格試験に合格する必要があります。

内部管理責任者には、証券業務に関する3年以上の実務経験が求められます。また、法令知識、コンプライアンス、リスク管理、顧客対応などの幅広い知識が必要です。試験は年2回実施され、合格率は約50%程度です。

各営業所・事務所に最低1名の内部管理責任者を配置する必要があります。本店のみで営業する場合でも、内部管理責任者の配置は必須です。内部管理責任者は、営業部門から独立した立場で業務を監督する必要があります。

コンプライアンス・オフィサーの役割

コンプライアンス・オフィサーは、金融商品取引業者の法令遵守体制を統括する責任者です。日本証券業協会のコンプライアンス・オフィサー認定試験に合格する必要があります。

コンプライアンス・オフィサーの役割は、社内規則の整備、従業員への法令教育、法令違反の防止と発見、監督当局への報告などです。営業部門とは独立した立場で、全社的なコンプライアンス体制を構築・維持します。

認定試験では、金融商品取引法、金融商品販売法、個人情報保護法などの法令知識、コンプライアンスの実務、事例問題などが出題されます。証券業務の実務経験と法令知識の両方が求められる重要なポジションです。

人材確保の実務的な方法

有資格者を確保する方法として、以下のような選択肢があります。まず、既に資格を保有している経験者を採用する方法が最も確実です。転職サイト、人材紹介会社、ヘッドハンティングなどを活用して、金融業界経験者にアプローチします。

ただし、金融業界経験者の採用市場は競争が激しく、高い年収を提示する必要があります。また、大手証券会社からの転職者は、スタートアップの環境に適応できるかも考慮する必要があります。

もう一つの方法は、未経験者を採用して資格取得をサポートする方法です。資格試験の受験費用を会社が負担し、勉強時間を確保するなどの支援を行います。ただし、資格取得までに時間がかかるため、開業スケジュールに影響する可能性があります。

業務委託や顧問契約で、経験豊富な人材を確保する方法もあります。常勤ではなく非常勤として、必要な時に専門的なアドバイスを受けられる体制を整えます。ただし、登録要件として常勤の有資格者が必要な場合は、この方法だけでは不十分です。

日本証券業協会「投資者のためのガイドブック」

財務局への登録申請|手続きと必要書類

証券会社の登録申請は、本店所在地を管轄する財務局に対して行います。ここでは、申請に必要な書類、申請から登録までの期間、審査で重視されるポイントについて解説します。

登録申請は、事前相談を経て行われます。いきなり申請書を提出することはできず、まず財務局の担当者と事業計画や組織体制について相談し、内容を固めてから正式な申請を行います。

申請に必要な書類一覧

登録申請には、法定の申請書と多数の添付書類が必要です。主な書類は以下の通りです。

登録申請書(法第29条の2第1項各号に掲げる事項を記載)には、商号、資本金、役員の氏名、業務の種別、本店・営業所の所在地、他の事業の種類、加入する協会の名称などを記載します。

主な添付書類
  • 定款
  • 登記事項証明書
  • 最終の貸借対照表及び損益計算書
  • 役員及び重要な使用人の履歴書
  • 役員及び重要な使用人の住民票の抄本
  • 欠格事由に該当しない旨の誓約書
  • 業務の内容及び方法を記載した書面
  • 業務執行体制を記載した書面
  • 社内規則
  • 事業計画書
  • 収支見込書
  • 自己資本規制比率の推移予測

特定の業務を行う場合は、追加の書類が必要になります。例えば、元引受業務を行う場合、不動産信託受益権売買業務を行う場合、外国市場デリバティブ取引を行う場合などです。行おうとする業務内容に応じて、必要な書類を確認する必要があります。

財務局「金融商品取引業者の登録申請書類」

申請から登録までの期間

事前相談にかかる期間は、事業スキームの規模や複雑性などの様々な事情によって大きく異なりますが、平均的には概ね3~4か月程度となります。事業スキームに変更が生じた場合は、再確認などの時間を要します。

事前相談で内容が固まり、正式な登録申請書を提出した後、財務局による審査が行われます。審査期間は通常2~3ヶ月程度ですが、書類の不備や追加確認事項がある場合は、さらに時間がかかります。

事前相談から登録完了までの全体期間は、順調に進んだ場合で6ヶ月から9ヶ月程度、複雑な事業スキームの場合は1年以上かかることもあります。余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。

審査で重視されるポイント

財務局の審査では、以下のポイントが重視されます。まず、事業計画の実現可能性です。収益モデルが明確か、市場環境を適切に分析しているか、収支見込みは現実的かなどが審査されます。

人的構成の適切性も重要なポイントです。行おうとする業務の3年以上の経験者が複数名確保されているか、各部門に適切な責任者が配置されているかが審査されます。

内部管理体制の整備状況も詳しく審査されます。社内規則が整備されているか、コンプライアンス体制は適切か、顧客情報管理の仕組みは十分か、内部監査の体制は整っているかなどです。

財務基盤の健全性も審査の対象です。資本金・純資産が十分か、自己資本規制比率の維持が可能か、資金調達計画は適切かなどが確認されます。審査では、単に登録時の状況だけでなく、事業開始後も要件を維持できるかが重視されます。

日本証券業協会への加入|手続きと審査

財務局への登録と並行して、日本証券業協会への加入手続きも進める必要があります。協会への加入は法令上任意ですが、実務上ほとんどの証券会社が加入しています。

協会に加入しない場合は、協会の定款その他の規則に準ずる内容の社内規則の作成・社内体制の整備が必要となるため、登録手続において、かかる社内規則・社内体制の整備状況について説明・資料の提出が求められます。

協会加入の要件

日本証券業協会に加入するには、第一種金融商品取引業の登録を受けていることが前提です。また、協会の定款・規則を遵守できる体制があること、協会費を支払えることなどが要件となります。

協会加入の審査では、業務方法、社内規則、帳簿書類、システム、人員構成などが詳しく審査されます。日本証券業協会の加入審査は、当局の審査以上の厳密性と密度をもって行われるのが通例です。

協会の規則には、証券業務に関する詳細なルールが定められています。勧誘方法、広告表示、手数料の表示、帳簿の作成・保管、顧客情報の管理など、実務上のあらゆる場面についてルールがあります。これらのルールを遵守できる体制を整える必要があります。

加入審査の流れ

協会加入の手続きは、財務局への事前相談の段階から始めることが推奨されます。財務局の登録と協会の加入を並行して進めることで、登録完了後速やかに営業を開始できます。

まず、協会に対して加入の意向を伝え、必要な書類や手続きについて相談します。協会の担当者から、業務内容、組織体制、社内規則などについてヒアリングを受けます。

ヒアリングで内容が固まったら、正式な加入申請書と添付書類を提出します。協会による審査が行われ、問題がなければ加入が承認されます。加入審査には1~2ヶ月程度かかります。

加入後の義務

協会に加入した後は、協会の定款・規則を遵守する義務があります。協会規則は頻繁に改正されるため、常に最新の規則を把握し、社内規則やシステムを適宜更新する必要があります。

協会への報告義務もあります。業務内容の変更、役員の変更、営業所の開設・廃止などがあった場合は、協会に届出を行います。また、定期的に業務報告書を提出する必要があります。

協会が実施する研修への参加も義務付けられています。内部管理責任者、コンプライアンス・オフィサーなどは、定期的に協会の研修を受講し、最新の法令知識や実務知識を習得する必要があります。

協会規則に違反した場合、協会から注意、勧告、過怠金、除名などの処分を受ける可能性があります。重大な違反の場合は、財務局への報告が行われ、行政処分につながることもあります。

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証券システムの選定と導入|必要な機能と費用

証券会社の業務には、取引システム、顧客管理システム、リスク管理システムなど、様々なシステムが必要です。ここでは、必要なシステムの機能、導入方法、外部委託の可能性について解説します。

システム投資は、証券会社設立において最も高額な初期投資の一つです。自社開発するか、パッケージを導入するか、外部委託するかによって、費用と期間が大きく異なります。

証券システムに必要な機能

証券取引システムには、以下の機能が必要です。注文受付機能では、顧客からの売買注文を受け付け、取引所や市場に発注します。リアルタイムで注文状況を管理し、約定情報を顧客に通知する機能も必要です。

口座管理機能では、顧客の口座情報、保有証券、預り金などを管理します。入出金処理、証券の入出庫、配当金・利金の受け取りなども管理します。顧客情報の適切な管理とセキュリティ対策が重要です。

リスク管理機能では、自己資本規制比率の計算、ポジション管理、信用リスク管理などを行います。金融商品取引法で定められた各種リスク指標を計算し、基準を満たしているかを常時監視する必要があります。

帳簿管理機能では、金融商品取引法で定められた各種帳簿を作成・保管します。取引日記帳、顧客勘定元帳、取引残高報告書など、多数の帳簿を正確に作成する必要があります。これらの帳簿は一定期間保管する義務があります。

システム導入の選択肢

証券システムを導入する方法として、自社開発とパッケージ導入の2つの選択肢があります。それぞれメリットとデメリットがあり、事業規模や予算に応じて選択します。

自社開発

自社開発のメリットは、自社の業務に完全に合わせたシステムを構築できることです。独自のサービスを提供したい場合や、既存のパッケージでは対応できない機能が必要な場合に適しています。

デメリットは、開発費用が高額になることと、開発期間が長くかかることです。システム開発には、数億円の費用と1年以上の期間が必要になることもあります。また、開発後の保守・運用にも継続的なコストがかかります。

自社開発を選択する場合は、システム開発の経験豊富なベンダーに委託することが一般的です。要件定義、設計、開発、テスト、導入という段階を経て、システムを構築します。金融システムの開発経験があるベンダーを選ぶことが重要です。

パッケージ導入

パッケージ導入のメリットは、開発期間とコストを抑えられることです。既に完成しているシステムを導入するため、数ヶ月で稼働できます。初期費用も自社開発に比べて大幅に安く、数千万円程度で導入できる場合もあります。

デメリットは、自社の業務に完全には合わせられないことです。パッケージの標準機能の範囲内で業務を行う必要があり、カスタマイズには追加費用がかかります。また、他社と同じシステムを使うため、差別化が難しくなります。

パッケージを提供しているベンダーは複数あり、機能や価格を比較して選択します。証券業界で実績のあるパッケージを選ぶことで、法令対応や業界標準の機能を確実に実装できます。

外部委託できる業務範囲

証券会社の業務のうち、一部は外部に委託することができます。バックオフィス業務、システム運用、内部監査などを外部委託することで、人件費やシステム投資を削減できます。

バックオフィス業務の委託では、口座管理、入出金処理、帳簿作成などを専門業者に委託します。証券会社向けのバックオフィス代行サービスを提供している会社があり、これを利用することで初期投資と人件費を抑えられます。

システム運用の委託では、サーバーの管理、セキュリティ対策、バックアップなどをデータセンターやクラウドサービスに委託します。自社でサーバーを保有・運用するよりも、コストを抑えられる場合があります。

外部委託する場合でも、最終的な責任は証券会社にあります。委託先の選定、委託業務の監督、委託先の業務品質の確認などを適切に行う必要があります。また、顧客情報を委託先に提供する場合は、情報管理体制を十分に確認する必要があります。

IFA(金融商品仲介業)との比較|どちらを選ぶべき?

証券業を行う方法として、証券会社を設立する以外に、IFA(金融商品仲介業)として活動する選択肢があります。ここでは、証券会社とIFAの違い、コスト・リスクの比較、選択のポイントについて解説します。

IFAは、証券会社に所属せず独立した立場で、証券会社の商品を顧客に仲介する業者です。証券会社に比べて参入障壁が低く、少ない資金で開業できるメリットがあります。

IFAと証券会社の違い

IFA(金融商品仲介業)は、証券会社の委託を受けて、有価証券の売買の媒介、募集・私募の取扱いなどを行う業者です。第二種金融商品取引業の登録が必要ですが、証券会社(第一種金融商品取引業)に比べて登録要件が緩やかです。

最大の違いは、顧客資産の管理です。証券会社は顧客の資産を預かり、自社で管理しますが、IFAは顧客資産を預かりません。顧客の資産は委託元の証券会社が管理し、IFAは仲介業務のみを行います。

取り扱える商品も異なります。証券会社は自社で取り扱う商品を決定できますが、IFAは委託元の証券会社が提供する商品のみを取り扱います。複数の証券会社と委託契約を結ぶことで、幅広い商品を取り扱うことは可能です。

収益モデルも異なります。証券会社は、売買手数料、口座管理料、自己売買の利益など、多様な収益源があります。IFAは、仲介手数料(委託元の証券会社から受け取る手数料)が主な収益源です。

コスト・リスクの比較

初期投資額は大きく異なります。証券会社設立には最低1億円以上の初期投資が必要ですが、IFAは最低資本金1000万円(法人の場合)で開業できます。システム投資も、証券会社は数千万円から数億円必要ですが、IFAは委託元のシステムを利用するため、大きな投資は不要です。

年間維持費用も大きく異なります。証券会社は人件費、システム維持費、協会費などで年間数千万円の維持費が必要ですが、IFAは小規模であれば年間数百万円程度で運営できます。

リスクも異なります。証券会社は顧客資産を預かるため、資産の分別管理、自己資本規制比率の維持など、厳格な規制があります。万が一破綻した場合、投資者保護基金から顧客に補償されますが、会社自体の損失は大きくなります。

IFAは顧客資産を預からないため、資産管理に関するリスクは低くなります。ただし、委託元の証券会社が破綻した場合、顧客との関係が失われるリスクがあります。また、委託元との契約が解除された場合、事業継続が困難になる可能性もあります。

自由度・規制の比較

事業の自由度は、証券会社の方が高くなります。証券会社は、取り扱う商品、手数料体系、サービス内容などを自由に決定できます。独自のビジネスモデルを構築し、差別化を図ることが可能です。

IFAは、委託元の証券会社が提供する商品と手数料体系の範囲内で事業を行います。独自の商品開発はできず、委託元の方針に従う必要があります。ただし、顧客へのアドバイスや提案方法については、IFAの裁量で行えます。

規制の厳しさは、証券会社の方が厳格です。自己資本規制比率の維持、多数の帳簿の作成・保管、定期的な報告義務など、証券会社には多くの規制があります。IFAにも一定の規制はありますが、証券会社に比べて緩やかです。

どちらを選ぶべきか

証券会社とIFAのどちらを選ぶべきかは、事業目的、資金力、リスク許容度によって異なります。以下のような基準で判断することをおすすめします。

独自のビジネスモデルを構築したい、自社ブランドで事業を展開したい、幅広い商品を自由に取り扱いたい場合は、証券会社の設立が適しています。ただし、億単位の初期投資と年間数千万円の維持費を負担できる資金力が必要です。

少ない資金で開業したい、リスクを抑えたい、既存の証券会社の商品を活用したい場合は、IFAが適しています。特に、個人の金融業界経験者が独立する場合や、小規模な事業から始めたい場合は、IFAが現実的な選択肢です。

段階的なアプローチも可能です。まずIFAとして事業を開始し、顧客基盤と資金が蓄積された段階で、証券会社を設立するという方法もあります。ただし、IFAから証券会社への移行には、顧客の口座移管など、一定の手間とコストがかかります。

証券会社設立で気をつけたいこと|リスクと失敗例

証券会社の設立には、様々なリスクが伴います。ここでは、申請却下されるケース、開業後の運営リスク、金融庁検査への対応、よくある失敗例と対策について解説します。

事前にリスクを理解し、適切な対策を講じることで、失敗を避けることができます。特に、人材確保の失敗、資金不足、コンプライアンス違反は、証券会社設立において致命的な問題となります。

申請却下されるケース

登録申請が却下される主な理由は、人的構成の不備です。行おうとする業務の3年以上の経験者が複数名確保されていない場合、申請が却下される可能性があります。経験者の経歴が不十分な場合や、経験者が退職してしまった場合も問題となります。

財務基盤の不足も却下理由となります。資本金・純資産が基準を満たしていない、自己資本規制比率の維持が困難と判断された、収支見込みが非現実的などの場合です。特に、開業後数年間の収支見込みが赤字続きで、資本が枯渇する可能性がある場合は、申請が認められません。

内部管理体制の不備も却下理由です。社内規則が不十分、コンプライアンス体制が整っていない、顧客情報管理の仕組みが不適切などの場合、申請が却下されます。また、システムの脆弱性が指摘された場合も、改善を求められます。

役員や主要株主の適格性に問題がある場合も、申請が却下されます。過去に金融犯罪で処罰を受けた者、暴力団関係者、無登録営業で警告を受けた者などが関与している場合は、登録が認められません。

開業後の運営リスク

開業後の最大のリスクは、自己資本規制比率の低下です。業績悪化により赤字が続くと、純資産が減少し、自己資本規制比率が低下します。120%を下回ると業務方法の変更等を命じられ、100%を下回ると業務の停止を命じられる可能性があります。

顧客とのトラブルも大きなリスクです。投資損失に関する苦情、説明不足によるトラブル、不適切な勧誘による被害など、様々なトラブルが発生する可能性があります。トラブルが多発すると、金融庁から業務改善命令を受けることもあります。

システム障害も重大なリスクです。取引システムが停止すると、顧客が取引できなくなり、大きな損害が発生する可能性があります。また、顧客情報の漏洩が発生した場合、信用を失い、事業継続が困難になります。

人材の流出も運営リスクの一つです。有資格者が退職し、登録要件を満たせなくなると、業務を継続できなくなります。特に、小規模な証券会社では、キーパーソンの退職が致命的な影響を与えます。

金融庁検査への対応

証券会社は、定期的に金融庁の検査を受けます。検査では、法令遵守状況、内部管理体制、顧客対応、財務状況などが詳しく調査されます。検査で問題が発見された場合、業務改善命令などの行政処分を受ける可能性があります。

検査への対応として、日常的に法令遵守を徹底することが最も重要です。社内規則の整備、従業員への教育、定期的な内部監査などを通じて、法令違反を未然に防ぐ体制を構築します。

帳簿書類を適切に作成・保管することも重要です。金融商品取引法で定められた帳簿を正確に作成し、保管期間中は確実に保管します。検査で帳簿の不備が指摘されると、重大な問題となります。

検査の指摘事項には迅速に対応します。検査で問題が指摘された場合、改善計画を策定し、確実に実行します。改善が不十分な場合、より厳しい処分を受ける可能性があります。

よくある失敗例と対策

失敗例の一つは、人材確保の失敗です。有資格者を確保できず、開業が大幅に遅れる、または登録申請が却下されるケースがあります。対策として、早期に採用活動を開始し、複数の候補者を確保することが重要です。

資金不足も典型的な失敗例です。初期投資を過小評価し、途中で資金が枯渇するケースがあります。対策として、余裕を持った資金計画を立て、予備資金を確保しておくことが重要です。また、開業初期は収益が安定しないため、運転資金を十分に用意する必要があります。

コンプライアンス違反による処分も、よくある失敗です。法令知識が不足していた、社内規則が不十分だった、従業員の教育が不足していたなどの理由で、法令違反が発生します。対策として、専門家のアドバイスを受けながら社内体制を構築し、定期的な研修を実施することが重要です。

事業計画の甘さによる失敗もあります。市場環境を楽観視しすぎた、競合との差別化ができなかった、顧客獲得が想定より困難だったなどの理由で、収益が上がらないケースがあります。対策として、市場調査を十分に行い、現実的な事業計画を策定することが重要です。

証券会社設立支援サービスの選び方|費用と実績の比較

証券会社の設立には専門的な知識が必要なため、行政書士、弁護士、コンサルタントなどの専門家に支援を依頼することが一般的です。ここでは、設立支援サービスの内容、費用相場、選定ポイントについて解説します。

専門家に依頼することで、登録申請の手続きをスムーズに進められ、失敗のリスクを減らすことができます。ただし、支援費用も高額になるため、費用対効果を考慮して選択する必要があります。

設立支援サービスの内容

証券会社設立支援サービスの主な内容は、以下の通りです。まず、事業計画の策定支援があります。事業モデルの検討、収支計画の作成、資金調達の支援などを行います。金融業界の知識と経験を活かして、実現可能性の高い事業計画を策定します。

登録申請書類の作成支援も重要なサービスです。膨大な申請書類を正確に作成し、財務局の事前相談に同行し、審査対応をサポートします。法令知識と実務経験に基づいて、申請が通りやすい書類を作成します。

社内規則の整備支援では、金融商品取引法や協会規則に準拠した社内規則を作成します。業務方法、コンプライアンス体制、顧客管理、リスク管理など、必要な規則を網羅的に整備します。

人材紹介サービスを提供している支援会社もあります。金融業界経験者、有資格者を紹介し、採用をサポートします。人材確保は証券会社設立の最大の課題の一つであり、このサービスは非常に有用です。

費用相場と選定ポイント

証券会社設立支援の費用相場は、支援内容や期間によって大きく異なりますが、一般的には数百万円から1000万円程度です。事業計画の策定から登録完了までのフルサポートを依頼する場合、1000万円以上かかることもあります。

部分的なサポートを依頼する場合は、費用を抑えられます。例えば、登録申請書類の作成のみを依頼する場合は、数百万円程度です。ただし、証券会社設立は専門性が高く、部分的なサポートだけでは対応が困難な場合もあります。

支援会社を選定する際のポイントは、まず実績です。第一種金融商品取引業の登録支援実績がある会社を選ぶことが重要です。証券会社設立の経験がない会社に依頼すると、申請が長引いたり、却下されたりするリスクがあります。

専門性も重要なポイントです。金融商品取引法、協会規則、財務局の審査基準などに精通している専門家を選びます。行政書士、弁護士、公認会計士など、複数の専門家がチームで対応している会社が望ましいです。

費用の透明性も確認すべきポイントです。見積もりの段階で、支援内容と費用を明確にしてもらい、追加費用が発生する条件を確認します。支援期間が長引いた場合の追加費用、申請が却下された場合の対応なども事前に確認しておくことが重要です。

専門家への相談の重要性

証券会社の設立は、法令知識、実務経験、業界のネットワークが必要な高度な業務です。自社だけで対応することは非常に困難であり、専門家のサポートを受けることが成功の鍵となります。

特に、財務局との事前相談では、法令解釈や審査基準についての専門的な議論が必要です。専門家が同席することで、財務局の指摘に適切に対応し、スムーズに審査を進めることができます。

また、日本証券業協会への加入審査も専門的な対応が必要です。協会の規則は膨大で複雑であり、これを理解して適切な社内規則を整備するには、専門家の支援が不可欠です。

開業後も、法令遵守、金融庁検査への対応、協会規則の改正への対応など、継続的に専門家のサポートが必要です。顧問契約を結んで、定期的にアドバイスを受けられる体制を整えることをおすすめします。

まとめ

証券会社を作るには、第一種金融商品取引業の登録が必要であり、資本金5000万円以上、自己資本規制比率120%以上の維持、3年以上の業務経験者を複数名確保するなど、厳格な要件をクリアする必要があります。

設立の手順は、事業計画の策定と資金調達、株式会社の設立、人材の確保と組織体制の構築、財務局への登録申請、日本証券業協会への加入という5つのステップで進めます。事前相談から登録完了までには、通常6ヶ月から1年以上の期間が必要です。

初期投資として最低1億円以上、年間維持費として数千万円が必要であり、証券システムの導入、有資格者の確保、内部管理体制の整備など、多額の費用と専門的な準備が求められます。

IFA(金融商品仲介業)という選択肢もあり、少ない資金とリスクで証券業を開始できます。独自のビジネスモデルを構築したい場合は証券会社、リスクを抑えたい場合はIFAが適しています。

申請却下のリスク、開業後の運営リスク、金融庁検査への対応など、様々なリスクがあるため、専門家のサポートを受けながら、慎重に準備を進めることが重要です。行政書士、弁護士、コンサルタントなどの設立支援サービスを活用することで、成功の可能性を高めることができます。

証券会社の設立には多額の資金と専門的な準備が必要です。登録申請が却下されるリスクもあります。詳しくは財務局・金融庁にご確認ください。また、専門家(行政書士・弁護士等)への相談をおすすめします。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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