公務員のiDeCo完全ガイド|節税効果と始め方

公務員のiDeCo完全ガイド|節税効果と始め方

公務員として働いているあなたは、老後の年金や退職金について不安を感じていませんか。

2024年12月からiDeCoの掛金上限が月2万円に引き上げられ、公務員にとってより魅力的な制度になりました。

この記事では、公務員がiDeCoを活用して効率的に老後資金を準備する方法を、節税効果のシミュレーションや具体的な始め方とともに解説します。

共済年金の廃止や退職金の減少といった現実を踏まえ、今からできる資産形成の選択肢を一緒に考えていきましょう。

この記事を読めば、あなたに合ったiDeCoの活用方法が見つかるはずです。

この記事の要約
  • 公務員のiDeCo掛金上限は2024年12月から月2万円(年24万円)に引き上げられ、節税効果が大幅アップ
  • 掛金全額が所得控除、運用益非課税、受取時も控除の3つの税制メリットで効率的に老後資金を準備できる
  • 共済年金廃止と退職金減少の現状を踏まえ、20代から50代まで年齢別の最適な活用戦略を実践することが重要
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

公務員がiDeCoに加入するメリットは?

公務員がiDeCoに加入する最大のメリットは、3つの税制優遇を活用しながら老後資金を効率的に準備できることです。

掛金の全額が所得控除の対象となり、運用益も非課税、さらに受取時にも控除が適用されます。2024年12月からは掛金上限が月2万円に引き上げられ、年間24万円まで積み立てられるようになりました。

iDeCoは税制優遇を最大限に活用できる、公務員にとって最も効率的な老後資金準備の制度です

掛金が全額所得控除になる

iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税と住民税の負担を軽減できます。

例えば年収600万円の公務員が月2万円(年24万円)を拠出すると、年間約7万2,000円の税負担が軽減されます。

これは掛金の約30%に相当する節税効果です。年収が高いほど所得税率も高くなるため、節税メリットはさらに大きくなります。

通常の貯金では得られないこの節税効果が、iDeCoの最大の魅力と言えるでしょう。

運用益が非課税で増える

通常の金融商品で運用益が出ると、20.315%の税金(所得税・住民税・復興特別所得税)がかかります。

しかしiDeCoで運用した利益は全額非課税となり、その利益をそのまま再投資できます。例えば100万円の運用益が出た場合、課税口座では約80万円しか手元に残りませんが、iDeCoなら100万円全額を次の運用に回せます。

この非課税効果は長期運用で複利効果を最大化し、資産の成長を加速させる重要な要素です。

受取時も税制優遇がある

iDeCoの資産を受け取る際にも税制優遇があります。

年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」が適用されます。

例えば一時金で受け取る場合、加入期間が20年以下なら年40万円、20年超なら年70万円の控除が受けられます。30年間加入していれば1,500万円まで非課税で受け取れる計算になります。

受取方法は状況に応じて選択できるため、最も税負担の少ない方法を選ぶことができます。

定年延長で65歳まで積立可能

公務員の定年延長に伴い、iDeCoも65歳まで掛金を拠出できるようになりました。

従来は60歳までが上限でしたが、2022年5月の制度改正で65歳未満まで加入期間が延長されています。50代から始めても10年以上の運用期間を確保でき、定年延長を活かした長期的な資産形成が可能です。

60歳以降も公務員として働き続ける場合、給与から掛金を拠出しながら所得控除のメリットも享受できます。

公務員のiDeCo掛金上限額|2024年12月改正後

2024年12月の制度改正により、公務員のiDeCo掛金上限額が大幅に引き上げられました。

従来は月額1.2万円(年14.4万円)でしたが、新制度では月額2万円(年24万円)まで拠出できるようになっています。この改正は公務員の老後資金準備をより充実させるための重要な変更です。

月額2万円に引き上げ

公務員のiDeCo掛金上限額は、2024年12月1日から月額2万円(年間24万円)に引き上げられました。

これは従来の月額1.2万円から約1.7倍の増額となります。改正の背景には、企業年金制度に加入している会社員との公平性を図る目的があります。

計算式は「月額5.5万円-(企業型DCの事業主掛金額+DB等の他制度掛金相当額)」で、公務員の場合は共済掛金相当額が8,000円と公示されたため、上限の2万円まで拠出可能となりました。

この引き上げにより、年間の節税効果も大幅に向上しています。

厚生労働省「2024年12月から、iDeCoの拠出限度額が1.2万円→2万円になります」

上限が2万円以下になる条件

基本的に公務員は月2万円まで拠出できますが、一部のケースでは上限が2万円以下になることがあります。

これは「月額5.5万円-(企業型DCの事業主掛金額+DB等の他制度掛金相当額)」という計算式に基づくためです。公務員には企業型DCはありませんが、年金払い退職給付という制度があり、この掛金相当額が3.5万円を超えると、計算上のiDeCo上限額が2万円を下回る可能性があります。

ただし実際には、国家公務員・地方公務員共済組合の共済掛金相当額は8,000円と設定されているため、ほとんどの公務員は月2万円まで拠出できます。

年間の掛金上限は24万円

月額2万円の掛金上限は、年間では24万円となります。従来の年14.4万円から9.6万円の増額です。

掛金は月5,000円から1,000円単位で自由に設定でき、年1回(12月分から翌年11月分の間)変更できます。ライフイベントや家計状況に応じて柔軟に調整可能です。

毎月コツコツと積み立てることで、ドルコスト平均法による価格変動リスクの軽減効果も期待できます。

公務員がiDeCoを始めるべき3つの理由

公務員を取り巻く環境は大きく変化しており、かつての「公務員なら老後は安泰」という時代ではなくなっています。

共済年金の廃止、退職金の減少、そして老後資金2,000万円問題など、公務員も自分で老後資金を準備する必要性が高まっています。ここでは公務員がiDeCoを始めるべき具体的な理由を見ていきましょう。

共済年金の廃止で年金が減った

2015年10月に共済年金と厚生年金が一元化され、公務員の年金制度が大きく変わりました。

それまで公務員には「職域加算」という上乗せ給付がありましたが、一元化により廃止されています。新たに「年金払い退職給付」が導入されましたが、給付水準は職域加算の約2分の1程度に減少しました。

この制度変更により、公務員の老後に受け取れる年金総額は以前より減少しています。会社員と同等の年金制度になったことで、公務員も自助努力による老後資金準備が不可欠になったのです。

退職金が年々減っている

公務員の退職金は2016年頃から減少傾向が続いています。

地方公務員と国家公務員のいずれも定年退職金の平均額は減少しており、将来的に受け取れる退職金額の見通しがしにくい状況です。退職金は会社員も減少傾向にあり、公務員と会社員の格差をなくす動きが今後も続けば、公務員の退職金額はさらに低下する可能性があります。

例えば国家公務員の定年退職金は年度による波もあり、安定した金額を期待することが難しくなっています。「公務員であれば老後も安泰」という認識は過去のものとなり、iDeCoなどを活用して自分で老後資金を積み立てる公務員が年々増加しているのが現状です。

老後資金2,000万円問題への対策

2019年に話題となった「老後資金2,000万円問題」は、公務員にとっても無関係ではありません。

金融庁の報告書によれば、夫65歳以上・妻60歳以上の無職世帯では、公的年金だけでは毎月約5万円の赤字が発生し、30年間で約2,000万円の資産取り崩しが必要とされています。

共済年金の廃止と退職金の減少を考えると、公務員も同様の状況に直面する可能性が高いでしょう。iDeCoは月2万円を30年間積み立てると元本だけで720万円、年利3%で運用できれば約1,160万円になります。

この金額は老後資金2,000万円の半分以上をカバーできる計算です。早い段階からiDeCoで資産形成を始めることで、老後資金問題への具体的な対策となります。

公務員のiDeCo節税効果シミュレーション

iDeCoの最大の魅力は税制優遇による節税効果です。

ここでは公務員の年収別に、具体的な節税額をシミュレーションします。掛金を月2万円(年24万円)拠出した場合、年収によってどれだけの税負担が軽減されるのか見ていきましょう。

年収400万円の場合

年収400万円の公務員が月2万円(年24万円)をiDeCoで積み立てた場合、所得税率は10%、住民税率は10%として、年間の節税額は約4万8,000円となります。

内訳は所得税が約2万4,000円、住民税が2万4,000円の軽減です。30年間継続すると累計で約144万円の節税効果が得られます。

月2万円の拠出で実質的な負担は約1万6,000円程度となり、税制優遇を活かしながら効率的に老後資金を準備できます。年収400万円の場合、所得控除による節税効果は掛金の約20%に相当し、貯金するよりも圧倒的に有利です。

年収600万円の場合

年収600万円の公務員が月2万円(年24万円)を拠出すると、所得税率は20%、住民税率は10%として、年間の節税額は約7万2,000円になります。

所得税が約4万8,000円、住民税が2万4,000円の軽減です。30年間では累計約216万円の節税効果となり、年収400万円のケースと比べて大幅に増加します。

月2万円の拠出で実質負担は約1万4,000円程度となり、約30%の税制優遇を受けながら資産形成ができます。年収が高いほど所得税率も高くなるため、iDeCoの節税メリットをより大きく享受できるのが特徴です。

年収800万円の場合

年収800万円の公務員が月2万円(年24万円)を拠出した場合、所得税率は23%、住民税率は10%として、年間の節税額は約7万9,200円となります。

所得税が約5万5,200円、住民税が2万4,000円の軽減です。30年間の累計では約237万6,000円の節税効果が得られます。

月2万円の拠出に対して実質負担は約1万3,000円程度となり、約33%の税制優遇を受けられる計算です。年収800万円クラスでは所得税率が高いため、iDeCoの掛金全額所得控除のメリットが最大限に活かされます。

節税しながら老後資金を準備できる点で、高年収の公務員ほどiDeCoの活用価値が高いと言えるでしょう。

30年間の節税効果

30年間iDeCoを継続した場合の節税効果を総合的に見てみましょう。

年収400万円で約144万円、年収600万円で約216万円、年収800万円で約237万6,000円の税負担軽減となります。これは掛金の所得控除による効果のみで、運用益の非課税効果は含まれていません。

仮に年利3%で運用できた場合、30年間の運用益は約440万円となり、通常なら約89万円の税金がかかりますが、iDeCoでは全額非課税です。さらに受取時の退職所得控除(30年加入で1,500万円まで非課税)も活用できます。

これらを合計すると、トータルの税制優遇効果は300万円から400万円以上になる可能性があります。長期間続けるほど複利効果と税制優遇のメリットが大きくなるため、早めに始めることが重要です。

公務員の年齢別iDeCo活用戦略

iDeCoの最適な活用方法は年齢によって異なります。

20代は少額から長期運用、30代はライフイベントとの両立、40代は節税効果の最大化、50代は定年延長を活かす戦略が有効です。ここでは年齢別の具体的な活用方法を解説します。

20代|少額から始めて長期運用
月5,000円〜1万円程度から開始し、複利効果を最大限活用。株式中心の積極的な運用で長期的な成長を目指す
30代|ライフイベントと両立
結婚・住宅購入・子育てとバランスを取りながら月1万円〜1万5,000円を拠出。株式と債券のバランス型運用を選択
40代|節税効果を最大化
収入がピークに近づく時期。月2万円の上限まで拠出し、年間7〜8万円の節税効果を実現
50代|定年延長を活かす
65歳まで拠出可能。55歳から始めても10年間の積立期間を確保し、安定資産の比率を徐々に高める

20代|少額から始めて長期運用

20代の公務員は、まず月5,000円から1万円程度の少額でiDeCoを始めることをおすすめします。

30代から始める場合と比べて10年以上長く運用できるため、複利効果を最大限に活かせます。例えば25歳から月1万円を年利3%で運用すると、65歳時点で約930万円になります。

20代は給与水準がまだ低く、住宅購入や結婚資金など他の支出も多いため、無理のない金額で継続することが大切です。運用商品は株式中心の積極的なポートフォリオを選択し、長期的な成長を目指しましょう。

若いうちは一時的な価格下落があっても回復する時間が十分にあるため、リスクを取った運用が可能です。30代になって収入が増えたタイミングで掛金を増額していく戦略が効果的です。

30代|ライフイベントと両立

30代は結婚、住宅購入、子育てなどライフイベントが集中する時期です。

iDeCoは60歳まで引き出せないため、これらの支出とのバランスを考える必要があります。住宅ローンの返済や教育資金の準備と並行して、月1万円から1万5,000円程度をiDeCoに回すのが現実的でしょう。

この時期は所得も増えてくるため、節税効果も実感しやすくなります。運用商品は株式と債券のバランス型を選び、リスクとリターンの両立を図ります。

30代後半になり子どもの教育費のピークが見えてきたら、掛金を増額することも検討しましょう。iDeCoの掛金は年1回変更できるため、家計状況に応じて柔軟に調整できます。NISAと併用する場合は、iDeCoを老後資金、NISAを中期的な資金ニーズに使い分けるのが効果的です。

40代|節税効果を最大化

40代は収入がピークに近づき、所得税率も高くなる時期です。

この時期こそiDeCoの節税効果を最大限に活かすべきタイミングと言えます。月2万円の上限まで拠出することで、年間7万円から8万円程度の税負担軽減が期待できます。

子どもの教育費負担が落ち着き始めたら、積極的に掛金を増額しましょう。40代から始めても65歳まで20年以上の運用期間があり、十分な資産形成が可能です。

運用商品は株式の比率を徐々に下げ、債券やバランス型の比重を増やしていくのが一般的です。ただし50代前半まではまだ時間があるため、過度に保守的になる必要はありません。退職金や公的年金の見込み額を確認し、不足分をiDeCoで補う計画を立てることが重要です。

50代|定年延長を活かす

50代の公務員は定年延長により65歳まで働ける環境を活かし、iDeCoを最後まで継続する戦略が有効です。

従来は60歳で定年だったため50代後半からの加入は難しかったですが、現在は65歳まで拠出できるため、55歳から始めても10年間の積立期間を確保できます。

月2万円を10年間積み立てると元本240万円、年利2%で運用できれば約265万円になります。50代は収入が最も高い時期であり、節税効果も最大化できます。

運用商品は受取時期が近づくにつれて、徐々に安定資産の比率を高めていくのが基本です。60歳以降も働き続ける場合は、その間も掛金を拠出しながら所得控除のメリットを享受できます。受取方法(一時金か年金か)も早めに検討し、退職金や公的年金の受取時期と調整することで、税負担を最小化できます。

公務員がiDeCoを始める際の注意点

iDeCoには多くのメリットがある一方で、注意すべき点もあります。

特に60歳まで引き出せない制約、手数料の負担、元本割れのリスク、受取時の税金について正しく理解しておくことが重要です。ここでは公務員がiDeCoを始める前に知っておくべき注意点を解説します。

  • 原則として60歳まで資産を引き出せない(緊急時の対応不可)
  • 加入時・拠出時・受取時に各種手数料が発生(年間2,000円程度〜)
  • 投資信託を選択した場合は運用成績により元本割れの可能性がある
  • 受取時に控除額を超えた部分には税金がかかる場合がある

60歳まで引き出せない

iDeCoの最大の注意点は、原則として60歳まで資産を引き出せないことです。

これは老後資金を確実に準備するための制度設計ですが、急な出費が必要になっても対応できません。結婚資金、住宅購入の頭金、子どもの教育費、病気やケガによる医療費など、人生には予期せぬ支出が発生します。

そのためiDeCoに回す金額は、生活費や緊急予備資金を確保した上での余裕資金に限定すべきです。目安としては生活費の6か月分程度を預貯金で確保し、その上でiDeCoを活用するのが安全です。

掛金の拠出は一時停止できるため、家計が厳しくなったら無理せず停止し、状況が改善したら再開することもできます。ただし停止期間中は所得控除のメリットを受けられない点に注意が必要です。

iDeCoは60歳まで引き出せないため、生活費の6か月分程度の緊急予備資金を確保してから始めましょう

手数料がかかる

iDeCoには加入時から受取時まで各種手数料がかかります。

加入時には国民年金基金連合会に2,829円の手数料が必要です。毎月の掛金拠出時には国民年金基金連合会に105円、事務委託先金融機関に66円の合計171円が必要で、年間では2,052円となります。

これに加えて運営管理機関(金融機関)によっては口座管理手数料がかかる場合があります。公務員の掛金上限は月2万円と他の加入者より低いため、手数料の負担割合が相対的に高くなる点に注意が必要です。

ただし多くのネット証券では口座管理手数料を無料としており、この場合は年間2,052円のみの負担となります。金融機関選びでは手数料の安さも重要な判断基準です。また運用商品の信託報酬(運用管理費用)も長期的にはコストとなるため、低コストのインデックスファンドを選ぶことをおすすめします。

元本割れのリスクがある

iDeCoで投資信託を選択した場合、運用成績によっては元本割れする可能性があります。

特に株式を中心とした商品は価格変動が大きく、一時的に大きな損失を抱えることもあります。ただしiDeCoは長期投資が前提の制度であり、短期的な価格変動に一喜一憂する必要はありません。

過去のデータを見ると、株式や債券への分散投資を20年以上続けた場合、元本割れのリスクは大幅に低下します。リスクを抑えたい場合は定期預金や保険商品といった元本確保型商品を選ぶこともできますが、利回りが低いため手数料負担を考慮すると実質的にマイナスになる可能性もあります。

バランスの取れたポートフォリオを組み、定期的に見直すことがリスク管理の基本です。運用商品は年1回変更できるため、年齢や市場環境に応じて調整していきましょう。

投資信託を選択した場合は元本割れのリスクがあります。長期的な視点で分散投資を心がけましょう

受取時に税金がかかる場合がある

iDeCoの資産を受け取る際、控除額を超えた部分には税金がかかる場合があります。

一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用されますが、加入期間20年以下なら年40万円、20年超なら年70万円の控除となります。例えば30年加入で1,500万円まで非課税ですが、それを超えた部分には税金がかかります。

また公務員の退職金と同じ年に受け取ると合算されるため、控除額を超えやすくなります。年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用されますが、公的年金と合算して一定額を超えると課税されます。

受取方法は一時金、年金、併用の3パターンから選択でき、それぞれ税負担が異なります。退職金の金額、公的年金の受給時期、他の収入などを総合的に考慮し、最も税負担の少ない受取方法を選ぶことが重要です。受取時期が近づいたら税理士やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

iDeCoとNISAはどちらを優先すべき?

iDeCoとNISAはどちらも税制優遇のある資産形成制度ですが、目的や制約が異なります。

公務員がどちらを優先すべきか、あるいは両方を併用すべきか、それぞれの違いと判断基準を解説します。

iDeCoとNISAの違い

iDeCoとNISAの最大の違いは資金の引き出し制約です。

iDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、NISAはいつでも自由に売却して資金を引き出せます。税制面では、iDeCoは掛金が全額所得控除となり所得税・住民税が軽減されますが、NISAには所得控除はありません。

一方でどちらも運用益は非課税です。iDeCoの年間投資上限は公務員の場合24万円ですが、NISAは年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)と大きく、生涯投資枠は1,800万円です。

iDeCoは受取時に控除がありますが、NISAは売却時に税金がかかりません。手数料はiDeCoが年間2,000円程度必要ですが、NISAは基本的に無料です。このようにiDeCoは老後資金専用、NISAは柔軟な資産形成に適しています。

金融庁「NISAとiDeCoの違い」

iDeCoを優先すべき人

iDeCoを優先すべきなのは、老後資金の準備を最優先したい人、所得税・住民税の負担を減らしたい人、60歳まで使う予定のない余裕資金がある人です。

特に年収500万円以上で所得税率が20%以上の公務員は、掛金全額所得控除のメリットが大きいためiDeCoの優先度が高くなります。

また30代後半から40代で子どもの教育費のピークが過ぎ、住宅ローンの返済も順調に進んでいる場合、老後資金準備に集中できるタイミングです。すでに生活費の6か月分程度の緊急予備資金を確保している人も、iDeCoを優先して問題ありません。

60歳までの長期運用を前提に、確実に老後資金を準備したい人にはiDeCoが最適です。節税しながら資産形成できる点で、他の金融商品にはない大きなメリットがあります。

年収500万円以上で老後資金準備を優先したい公務員は、iDeCoの所得控除メリットを最大限活用できます

NISAを優先すべき人

NISAを優先すべきなのは、住宅購入や子どもの教育資金など、60歳より前に使う可能性のある資金を準備したい人、まだ若く将来の資金ニーズが不確定な人、iDeCoの掛金上限24万円では物足りない人です。

20代や30代前半で結婚や住宅購入を控えている場合、60歳まで引き出せないiDeCoよりも、必要な時に引き出せるNISAの方が適しています。またiDeCoの月2万円をすでに拠出している人が、さらに投資額を増やしたい場合はNISAを活用できます。

NISAは年間360万円まで投資できるため、資産形成のスピードを上げたい人には有効です。専業主婦(主夫)など課税所得がない人は、iDeCoの所得控除のメリットを受けられないため、NISAの方が向いています。

柔軟性を重視する人、投資額を大きくしたい人はNISAを優先しましょう。

公務員のiDeCo始め方|5つのステップ

iDeCoを始めるには、金融機関の選択から口座開設、運用商品の選定まで、いくつかのステップを踏む必要があります。

ここでは公務員がiDeCoを始めるための具体的な手順を5つのステップで解説します。2024年12月からは個人払込の場合、事業主証明書が不要になり、手続きが簡素化されています。

金融機関を選ぶ

iDeCoを始める最初のステップは、運営管理機関(金融機関)を選ぶことです。

銀行、証券会社、保険会社など多くの金融機関がiDeCoを取り扱っていますが、選ぶ際のポイントは口座管理手数料、商品ラインナップ、サポート体制の3つです。口座管理手数料は金融機関によって異なり、無料のところもあれば月数百円かかるところもあります。

長期間利用するため、手数料の安さは重要です。商品ラインナップは、低コストのインデックスファンドが充実しているか確認しましょう。特に信託報酬が0.2%以下の商品が複数あるかがポイントです。

サポート体制では、コールセンターの対応時間、Webサイトの使いやすさ、運用商品の情報提供の充実度をチェックします。ネット証券は手数料が安く商品も豊富ですが、対面での相談を希望する場合は銀行や証券会社の店舗がある金融機関を選ぶのも一つの方法です。

金融機関選びの3つのポイント

口座管理手数料が無料または低コスト

信託報酬0.2%以下の商品が複数ある

サポート体制が充実している

必要書類を準備する

金融機関を決めたら、口座開設に必要な書類を準備します。

基本的に必要なのは、個人型年金加入申出書、本人確認書類、基礎年金番号が分かる書類(年金手帳や基礎年金番号通知書)です。本人確認書類は運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどが利用できます。

2024年12月の制度改正により、個人払込を選択する場合、事業主の証明書は不要になりました。これにより勤務先に申請する手間が省け、よりスムーズに加入できるようになっています。

掛金の引き落とし口座の情報(金融機関名、支店名、口座番号)も準備しておきましょう。金融機関によってはマイナンバーの提出を求められる場合もあります。書類に不備があると手続きが遅れるため、事前に金融機関のWebサイトで確認することをおすすめします。

口座開設の申込をする

必要書類が揃ったら、選んだ金融機関でiDeCo口座開設の申込を行います。

申込方法は、Webサイトからのオンライン申込、郵送での申込、店舗での申込の3つがあります。ネット証券ではオンライン申込が主流で、必要事項を入力し本人確認書類をアップロードすれば完了します。

郵送の場合は資料請求をして送られてきた申込書に記入し、必要書類とともに返送します。申込時には掛金額(月5,000円から2万円の範囲で1,000円単位)を決める必要があります。最初は少額から始めて、慣れてきたら増額することも可能です。

申込書類を提出すると、国民年金基金連合会で加入資格の確認が行われます。審査には1か月から2か月程度かかり、問題がなければ個人型年金加入確認通知書が届きます。この通知書が届いたら口座開設完了です。

運用商品を選ぶ

口座開設が完了したら、運用商品を選びます。

iDeCoでは定期預金、保険商品、投資信託の3種類から選択できます。定期預金や保険商品は元本確保型ですが、利回りが低く手数料を考慮すると実質マイナスになる可能性があります。長期的な資産形成を目指すなら投資信託がおすすめです。

投資信託には国内株式、海外株式、国内債券、海外債券、バランス型などがあります。初心者には国内外の株式や債券に分散投資するバランス型ファンドが適しています。

商品選びのポイントは信託報酬の低さです。同じような内容のファンドでも信託報酬が0.1%違うと、長期的には大きな差になります。年齢が若い場合は株式の比率を高めにし、年齢が上がるにつれて債券の比率を増やすのが一般的です。運用商品は年1回変更できるため、最初は慎重になりすぎず、まず始めてみることが大切です。

運用商品は信託報酬0.2%以下の低コストインデックスファンドを選び、年齢に応じて株式と債券の比率を調整しましょう

掛金の引き落とし設定をする

運用商品を選択したら、掛金の引き落とし設定を行います。

掛金の納付方法は個人払込(個人の銀行口座から引き落とし)が一般的です。引き落とし日は毎月26日(金融機関が休業日の場合は翌営業日)で、初回の引き落としは口座開設から1か月から2か月後になります。

例えば4月に申込をした場合、初回引き落としは6月頃になることが多いです。引き落とし口座の残高不足には注意が必要で、残高不足で引き落としができなかった月の掛金は追納できません。

掛金額は年1回(12月分から翌年11月分の間)変更できます。変更を希望する場合は、金融機関のWebサイトや書面で手続きを行います。また掛金の拠出を一時停止することも可能です。停止中は所得控除のメリットを受けられませんが、手数料は引き続き発生する点に注意しましょう。家計状況に応じて柔軟に調整しながら、無理なく継続することが大切です。

よくある質問(Q&A)

公務員のiDeCoに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

加入時期、掛金変更、転職時の扱い、運用商品の選び方、受取方法など、実務的な疑問にお答えします。

公務員はいつからiDeCoに加入できるようになった?

公務員がiDeCoに加入できるようになったのは2017年1月からです。それまでiDeCoは自営業者や企業年金のない会社員に限定されていましたが、制度改正により公務員、専業主婦(主夫)、企業年金のある会社員も加入対象となりました。公務員の加入が認められた背景には、2015年10月の共済年金と厚生年金の一元化があります。職域加算が廃止され、公務員の年金制度が会社員と同等になったことで、自助努力による老後資金準備の必要性が高まりました。2017年の制度改正により、iDeCoは「国民年金に加入している20歳以上65歳未満のほぼすべての人」が利用できる制度となり、公務員の加入者も年々増加しています。

掛金は途中で変更できる?

iDeCoの掛金額は年1回変更できます。変更可能な期間は12月分の掛金から翌年11月分の掛金の間です。例えば2025年1月に変更手続きをすると、2025年12月分(2026年1月引き落とし)から新しい掛金額が適用されます。変更手続きは加入している金融機関のWebサイトまたは書面で行います。掛金額は月5,000円から2万円の範囲で1,000円単位で設定でき、増額も減額も可能です。ライフイベントや家計状況の変化に応じて柔軟に調整できます。また掛金の拠出を一時停止することもでき、停止中は「運用指図者」という扱いになります。停止中は新たな掛金の拠出はありませんが、それまでに積み立てた資産の運用は継続されます。ただし停止中も口座管理手数料は発生し、所得控除のメリットも受けられない点に注意が必要です。

転職したらどうなる?

公務員から民間企業に転職した場合、転職先の企業年金制度によってiDeCoの扱いが変わります。転職先に企業型確定拠出年金(企業型DC)がある場合、iDeCoの資産を企業型DCに移換することも、iDeCoを継続することも選択できます。移換する場合は「加入資格喪失届」を金融機関に提出します。継続する場合は事業所登録など所定の手続きが必要です。転職先に企業年金制度がない場合は、iDeCoをそのまま継続できます。この場合も勤務先の変更に伴う手続きが必要で、「加入者登録事業所変更届」などを提出します。民間企業から公務員に転職した場合も同様に、企業型DCからiDeCoへの移換手続きが必要です。転職時の手続きを怠ると運用指図者扱いになり、新たな掛金の拠出ができなくなるため、転職が決まったら早めに金融機関に相談することをおすすめします。

運用商品は何を選べばいい?

運用商品の選び方は年齢とリスク許容度によって異なります。20代から30代の若い世代は、長期的な成長が期待できる株式中心のポートフォリオがおすすめです。具体的には国内外の株式に投資するインデックスファンドやバランス型ファンド(株式比率70%程度)が適しています。40代は株式と債券を半々程度にしたバランス型、50代は債券の比率を高めた安定型へと徐々にシフトしていくのが一般的です。商品選びで最も重要なのは信託報酬の低さで、同じような内容のファンドなら信託報酬が低い方を選びましょう。目安として信託報酬0.2%以下のインデックスファンドがおすすめです。初心者で商品選びに自信がない場合は、国内外の株式と債券に分散投資するバランス型ファンドを選ぶと良いでしょう。運用商品は年1回変更できるため、最初の選択にこだわりすぎず、運用しながら学んでいく姿勢が大切です。

受取方法は一時金と年金どちらがいい?

受取方法は一時金、年金、併用の3つから選択でき、それぞれメリットとデメリットがあります。一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用され、30年加入なら1,500万円まで非課税です。まとまった資金を一度に受け取れるメリットがありますが、公務員の退職金と同じ年に受け取ると合算されて課税される可能性があります。年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されますが、公的年金と合算して一定額を超えると課税されます。分割して受け取るため、長期的な生活資金として計画的に使えるメリットがあります。併用は一部を一時金、残りを年金として受け取る方法で、両方の控除を活用できます。最適な受取方法は、退職金の金額、公的年金の受給額、他の収入、受取時の税制などによって異なります。受取時期が近づいたら、税理士やファイナンシャルプランナーに相談し、最も税負担の少ない方法を選ぶことをおすすめします。

まとめ

公務員のiDeCoは、2024年12月の制度改正により掛金上限が月2万円(年24万円)に引き上げられ、より魅力的な制度になりました。

掛金全額が所得控除、運用益非課税、受取時の控除という3つの税制優遇を活用することで、効率的に老後資金を準備できます。

共済年金の廃止と退職金の減少という現実を踏まえると、公務員も自助努力による資産形成が不可欠です。20代は少額から長期運用、30代はライフイベントとの両立、40代は節税効果の最大化、50代は定年延長を活かす戦略で、年齢に応じた最適な活用方法を実践しましょう。

iDeCoとNISAの違いを理解し、老後資金はiDeCo、中期的な資金ニーズはNISAと使い分けることで、総合的な資産形成が可能です。金融機関選びでは手数料の安さと商品ラインナップを重視し、運用商品は低コストのインデックスファンドを中心に選ぶことをおすすめします。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。詳しくは各金融機関や専門家にご相談されることをおすすめします。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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