NISAはいくらまで投資できる?上限と最低額を解説

「iDeCoは節税になる」と聞いて加入を検討しているものの、本当に自分にとってメリットがあるのか不安に感じていませんか。
実は、iDeCoは誰にでも節税効果があるわけではなく、収入や家族構成、他の控除の利用状況によっては「節税にならない」「むしろ損をする」ケースも存在します。
特に専業主婦や課税所得が少ない人、住宅ローン控除を利用している人などは、掛金の所得控除を十分に活用できない可能性があります。
また、退職金が多い人は受取時の税金が高額になり、結果的に節税効果が薄れることもあるんです。
この記事では、iDeCoで節税にならない人の特徴を具体的に解説し、年収別のシミュレーションや新NISAとの比較、受取時の税金対策まで詳しくお伝えします。
自分がiDeCoに向いているか判断するための情報を、正確かつ分かりやすくまとめました。
目次
iDeCoで節税にならない人の特徴
iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象となり、多くの人にとって節税メリットがある制度です。
しかし、すべての人が同じように恩恵を受けられるわけではありません。
ここでは、iDeCoで節税効果が薄い、または損をする可能性がある人の特徴を具体的に解説します。
自分が該当するかチェックしてみてください。
iDeCoの最大のメリットは「掛金の全額所得控除」ですが、これは課税所得がある人にのみ有効です。
専業主婦や年収103万円以下のパート主婦など、そもそも所得税・住民税を払っていない人は、所得控除を受けることができません。
例えば、年収100万円のパート主婦がiDeCoに月5,000円(年間6万円)を拠出しても、所得控除による節税額はゼロです。一方で、加入時の手数料2,829円や毎月の口座管理手数料171円(年間2,052円)は必ず発生するため、手数料負けしてしまいます。
ただし、運用益が非課税になるメリットは残るため、長期運用で資産を増やせる可能性はあります。
しかし、60歳まで引き出せない流動性リスクを考えると、新NISAのつみたて投資枠の方が柔軟性が高く、初心者には向いているでしょう。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用している人は、既に所得税・住民税の還付を受けているため、iDeCoの所得控除を十分に活用できない場合があります。
住宅ローン控除は年末の借入残高の0.7%が所得税から控除され、控除しきれない分は住民税からも控除されます。
例えば、年収500万円で借入残高3,000万円の場合、年間21万円の控除が受けられます。
この状態でiDeCoに加入しても、所得税が既にゼロまたは少額になっているため、iDeCoの所得控除による節税効果は限定的です。特に、住宅ローン控除で所得税が全額還付され、住民税からも控除されている人は、iDeCoの追加メリットがほとんどないケースもあります。
ただし、住宅ローン控除は13年間(または10年間)の期限付きです。
控除期間が終了した後はiDeCoの節税効果が最大化されるため、長期的な視点で検討する価値はあります。
iDeCoは拠出時の所得控除だけでなく、受取時にも税制優遇があります。
一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されます。
しかし、会社から多額の退職金を受け取る予定の人は注意が必要です。
退職所得控除は勤続年数に応じて計算されますが、iDeCoと会社の退職金を同じ年に受け取ると、控除枠を共有することになります。
退職金が多い人の注意点
例:勤続30年で退職金2,000万円を受け取る場合
退職所得控除額:1,500万円(800万円+70万円×(30年-20年))
iDeCoの一時金が500万円あると、合計2,500万円から1,500万円を引いた1,000万円の半分(500万円)が課税対象
退職金が多い人は、iDeCoの受取方法を工夫する必要があります。
具体的には、退職金とiDeCoの受取時期をずらす、年金受取を選択する、一時金と年金の併用を検討するなどの戦略が考えられます。
受取時の税金計算は複雑なため、税理士やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
iDeCoには加入時の手数料2,829円、毎月の口座管理手数料171円(国民年金基金連合会105円+信託銀行66円、運営管理機関の手数料は金融機関により異なる)が必ず発生します。
掛金が少ない場合、節税額よりも手数料の方が高くなる「手数料負け」のリスクがあります。
手数料負けの例
年収300万円で所得税率5%、住民税率10%の人が月5,000円(年間6万円)を拠出
節税額:年間9,000円(6万円×15%)
手数料:初年度4,881円(2,829円+171円×12ヶ月)、2年目以降2,052円
実質メリット:初年度4,119円、2年目以降6,948円
しかし、課税所得がさらに少ない場合や、運営管理機関の手数料が高い金融機関を選んだ場合は、手数料負けする可能性があります。
特に、月5,000円の最低掛金で拠出する人は、金融機関選びが非常に重要です。
iDeCoの3つの節税効果
iDeCoには「拠出時」「運用時」「受取時」の3つの段階で税制優遇があります。
これを「3つの節税効果」と呼び、iDeCoの最大のメリットとされています。
ただし、正確には「課税の繰り延べ」という側面もあり、受取時には一定の税金がかかる点を理解しておくことが重要です。
ここでは、各段階の節税効果を詳しく解説します。
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減されます。
これが最も分かりやすく、即効性のある節税効果です。
所得控除とは、課税所得を減らす仕組みです。
例えば、年収500万円で給与所得控除後の所得が356万円の人が、iDeCoに年間24万円(月2万円)を拠出すると、課税所得が332万円に減少します。
この場合の節税額は、所得税率10%、住民税率10%として計算すると、年間4.8万円(24万円×20%)になります。つまり、24万円の拠出で4.8万円が戻ってくるため、実質的な負担は19.2万円です。
節税額は所得税率によって変わります。
所得税率が高い人ほど節税効果が大きく、年収800万円以上の人は所得税率20%+住民税率10%=30%の節税効果が期待できます。
会社員の場合は年末調整で控除を受けられ、自営業者やフリーランスは確定申告で控除を申請します。
控除証明書は国民年金基金連合会から送られてくるため、忘れずに提出しましょう。
iDeCoで運用した投資信託や定期預金の運用益は、非課税で再投資されます。
これは新NISAと同様の仕組みで、長期運用において最も大きなメリットとなります。
通常、投資信託の売却益や分配金には20.315%の税金がかかります。
例えば、100万円の利益が出た場合、約20万円が税金として引かれ、手元に残るのは約80万円です。
しかし、iDeCoでは運用益が非課税のため、100万円がそのまま再投資されます。この差は複利効果により、長期運用になるほど大きくなります。
例えば、毎月2万円を30年間、年利5%で運用した場合、元本720万円に対して運用益は約930万円になります。
通常の課税口座では運用益に約189万円の税金がかかりますが、iDeCoでは非課税のため、この189万円がそのまま資産として残ります。
ただし、iDeCoは60歳まで引き出せないため、この非課税メリットを享受するには長期運用が前提となります。
短期での引き出しを考えている人には向いていません。
iDeCoの資産を受け取る際にも税制優遇があります。
一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されます。
退職所得控除は、iDeCoの加入期間に応じて控除額が決まります。
加入期間20年以下の場合は「40万円×加入年数」、20年超の場合は「800万円+70万円×(加入年数-20年)」で計算されます。
退職所得控除の計算例
30年間加入した場合の退職所得控除額:1,500万円(800万円+70万円×10年)
iDeCoの資産が1,500万円以下であれば、一時金として受け取っても税金はかかりません
年金として受け取る場合は、公的年金等控除が適用されます。
65歳以上で年金収入が110万円以下であれば非課税です。
ただし、公的年金(国民年金・厚生年金)と合算されるため、受取額によっては課税される可能性があります。
受取方法は「一時金のみ」「年金のみ」「一時金と年金の併用」の3つから選べます。
自分の退職金や公的年金の額に応じて、最も税金が少なくなる方法を選ぶことが重要です。
年収別・職業別の節税シミュレーション
iDeCoの節税効果は、年収や職業によって大きく異なります。
ここでは、具体的な年収別・職業別のシミュレーションを通じて、実際にどれくらいの節税効果があるのかを見ていきましょう。
シミュレーションでは、所得税率と住民税率を合わせた節税率を使用し、30年間の長期運用を前提とします。
運用益は年利5%と仮定しますが、実際の運用成績は市場環境により変動します。
年収300万円の会社員(独身・社会保険料控除後)の場合、課税所得は約108万円、所得税率5%+住民税率10%=15%の節税効果が期待できます。
月1万円(年間12万円)を拠出した場合、年間の節税額は1.8万円(12万円×15%)です。
30年間の累計節税額は54万円になります。
年収300万円のシミュレーション結果
30年間で元本360万円が年利5%で約832万円に成長
運用益472万円に対する税金約96万円が非課税
合計メリット:拠出時54万円+運用益非課税96万円=150万円
実質メリット(受取時税金考慮後):約120万円
年収300万円の場合、掛金を増やすと手取り収入が減るため、無理のない範囲で月1万円程度から始めることをおすすめします。
年収500万円の会社員(独身・社会保険料控除後)の場合、課税所得は約256万円、所得税率10%+住民税率10%=20%の節税効果が期待できます。
月2万円(年間24万円)を拠出した場合、年間の節税額は4.8万円(24万円×20%)です。
30年間の累計節税額は144万円になります。
年収500万円のシミュレーション結果
30年間で元本720万円が年利5%で約1,664万円に成長
運用益944万円に対する税金約192万円が非課税
合計メリット:拠出時144万円+運用益非課税192万円=336万円
実質メリット(受取時税金考慮後):約280万円
年収500万円は、iDeCoの節税効果を最も実感しやすい層です。
企業型DCがない会社員の場合、月2.3万円まで拠出できるため、余裕があれば上限まで拠出することをおすすめします。
年収800万円の会社員(独身・社会保険料控除後)の場合、課税所得は約506万円、所得税率20%+住民税率10%=30%の節税効果が期待できます。
月2.3万円(年間27.6万円、企業型DCなしの上限)を拠出した場合、年間の節税額は8.28万円(27.6万円×30%)です。
30年間の累計節税額は248.4万円になります。
年収800万円のシミュレーション結果
30年間で元本828万円が年利5%で約1,914万円に成長
運用益1,086万円に対する税金約221万円が非課税
合計メリット:拠出時248.4万円+運用益非課税221万円=469.4万円
実質メリット(受取時税金考慮後):約400万円
年収800万円以上の高所得者は、所得税率が高いため拠出時の節税効果が非常に大きくなります。
企業型DCとの併用や、配偶者の加入も検討すると、さらに節税効果を高められます。
自営業・フリーランスの場合、掛金の上限が月6.8万円(年間81.6万円)と最も高く、節税効果を最大化できます。
ただし、国民年金基金や付加年金との合算上限であるため注意が必要です。
年収600万円(課税所得約400万円)の自営業者が月6.8万円を拠出した場合、所得税率20%+住民税率10%=30%の節税効果で、年間の節税額は24.48万円(81.6万円×30%)です。
30年間の累計節税額は734.4万円になります。
自営業・フリーランスのシミュレーション結果
30年間で元本2,448万円が年利5%で約5,660万円に成長
運用益3,212万円に対する税金約653万円が非課税
合計メリット:拠出時734.4万円+運用益非課税653万円=1,387.4万円
実質メリット(受取時税金考慮後):約1,200万円
自営業・フリーランスは、会社員と異なり退職金がないため、iDeCoを老後資金の柱として活用することが推奨されます。
ただし、事業の資金繰りとのバランスを考慮し、無理のない掛金設定が重要です。
受取時の税金で損をするケース
iDeCoは拠出時と運用時に大きな税制メリットがありますが、受取時には一定の税金がかかります。
特に、会社からの退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、退職所得控除を共有するため、税金が高額になる可能性があります。
ここでは、受取時の税金計算の仕組みと、損をしないための受取戦略を詳しく解説します。
iDeCoの一時金を受け取る場合、「退職所得控除」が適用されます。
退職所得控除額は、iDeCoの加入期間(拠出年数)に応じて以下のように計算されます。
例えば、25年間加入した場合の退職所得控除額は、800万円+70万円×5年=1,150万円です。
iDeCoの資産が1,150万円以下であれば、一時金として受け取っても税金はかかりません。
退職所得の計算式は「(退職金等の収入金額-退職所得控除額)×1/2」です。
控除額を超えた部分の半分が課税対象となるため、通常の所得と比べて税負担が軽くなる仕組みです。
ただし、この退職所得控除は会社の退職金とiDeCoで共有されます。同じ年に両方を受け取ると、控除枠が重複して使えないため、税金が高くなる可能性があります。
会社の退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、退職所得控除を共有するため、税金が大幅に増える可能性があります。
同じ年に受け取る場合の税金計算例
勤続30年で退職金2,000万円、iDeCoの資産500万円を同じ年に受取
退職所得控除額:1,500万円(800万円+70万円×10年)
合計2,500万円-控除額1,500万円=1,000万円、その半分500万円が課税対象
所得税率20%+住民税率10%=30%として、約150万円の税金
一方、退職金とiDeCoの受取時期を5年以上ずらすと、それぞれ独立して退職所得控除を適用できます。
退職金2,000万円に対して控除額1,500万円、iDeCo500万円に対して控除額1,150万円(25年加入の場合)が適用され、どちらも非課税または低税率で受け取れます。
このように、受取時期の調整だけで数十万円から数百万円の税金を節約できるため、退職金が多い人は事前に受取戦略を立てることが重要です。
iDeCoの資産を年金として受け取る場合、「公的年金等控除」が適用されます。
公的年金等控除は、年金収入に応じて一定額が控除される仕組みです。
65歳以上の場合、年金収入が110万円以下であれば全額非課税です。
110万円を超えると、収入に応じて控除額が決まります。
ただし、公的年金(国民年金・厚生年金)とiDeCoの年金は合算されるため、公的年金が多い人はiDeCoの年金を受け取ると課税される可能性があります。
例えば、公的年金が年間180万円、iDeCoの年金が年間60万円の場合、合計240万円が年金収入となります。
65歳以上の控除額は110万円+(240万円-110万円)×25%=142.5万円で、課税対象は97.5万円です。
年金受取は毎年課税されるため、トータルの税負担は一時金受取より高くなる場合があります。
公的年金が少ない人や、長生きリスクに備えたい人には年金受取が向いていますが、税金計算は複雑なため、専門家に相談することをおすすめします。
iDeCoの受取方法は「一時金のみ」「年金のみ」「一時金と年金の併用」の3つから選べます。
最適な方法は、自分の退職金や公的年金の額、税金の状況によって異なります。
例えば、iDeCoの資産が1,500万円、退職金が1,000万円の場合、iDeCoの一部500万円を一時金で受け取り、残り1,000万円を年金で受け取ると、退職所得控除と公的年金等控除を効率的に活用できます。
受取戦略は個々の状況により最適解が異なるため、税理士やファイナンシャルプランナーに相談し、シミュレーションを行うことが重要です。
手数料で損をしないために
iDeCoには加入時や運用時に様々な手数料がかかります。
手数料は確実に発生するコストであり、長期運用では数十万円の差になることもあります。
ここでは、iDeCoの手数料の仕組みと、手数料負けを避けるための金融機関選びのポイントを解説します。
iDeCoには主に4種類の手数料があります。
それぞれの内容と金額を理解し、トータルコストを把握することが重要です。
| 手数料の種類 | 金額 | 支払先 | 備考 |
| 加入時手数料 | 2,829円 | 国民年金基金連合会 | 初回のみ(全金融機関共通) |
| 口座管理手数料(国民年金基金連合会) | 月105円 | 国民年金基金連合会 | 毎月(全金融機関共通) |
| 口座管理手数料(信託銀行) | 月66円 | 信託銀行 | 毎月(全金融機関共通) |
| 運営管理手数料 | 0円~月数百円 | 金融機関 | 金融機関により異なる |
| 給付手数料 | 1回440円 | 信託銀行 | 受取時(全金融機関共通) |
加入時手数料と給付手数料はどの金融機関でも同じですが、運営管理手数料は金融機関によって大きく異なります。
SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券は運営管理手数料が無料ですが、一部の金融機関では月300円以上かかる場合もあります。
iDeCoの手数料を最小限に抑えるためには、運営管理手数料が無料の金融機関を選ぶことが最も重要です。
主要ネット証券の多くは運営管理手数料を無料にしており、コストを大幅に削減できます。
運営管理手数料が無料の主な金融機関は以下の通りです。
金融機関を選ぶ際は、運営管理手数料だけでなく、投資信託のラインナップや信託報酬(運用コスト)も確認しましょう。
低コストのインデックスファンドが豊富にあるかどうかが重要です。
また、サポート体制やアプリの使いやすさも比較ポイントです。
初心者はコールセンターやオンライン相談が充実している金融機関を選ぶと安心です。
iDeCoの掛金は月5,000円から1,000円単位で設定できます。
しかし、掛金が少ないと手数料負けするリスクがあるため、損益分岐点を把握しておくことが重要です。
運営管理手数料が無料の金融機関の場合、毎月の手数料は171円(国民年金基金連合会105円+信託銀行66円)です。
年間では2,052円になります。
損益分岐点の計算例
月5,000円(年間6万円)を拠出した場合
所得税率5%+住民税率10%=15%の節税効果で、年間の節税額は9,000円
手数料2,052円を引いても、6,948円のメリットがある
しかし、課税所得が少なく所得税率が5%未満の場合や、住宅ローン控除で既に税金が還付されている場合は、節税額が手数料を下回る可能性があります。
損益分岐点の目安は、年間の節税額が手数料(約2,000円)を上回ることです。
所得税率5%+住民税率10%=15%の場合、年間掛金が約1.4万円(月1,200円程度)以上であれば、手数料負けしません。
ただし、運用益の非課税メリットは手数料とは別に享受できるため、長期運用を前提とすれば、少額でも加入する価値はあります。
自分の所得状況と掛金額を照らし合わせて、慎重に判断しましょう。
新NISAとiDeCoどちらを優先すべき?
2024年から新NISA制度が始まり、投資の選択肢が広がりました。
新NISAとiDeCoはどちらも税制優遇がある制度ですが、それぞれ特徴が異なります。
ここでは、新NISAとiDeCoの違いを比較し、どちらを優先すべきか、また併用する場合の戦略を解説します。
新NISAとiDeCoの最大の違いは、税制優遇のタイミングと流動性です。
以下の表で主な違いを比較します。
| 項目 | 新NISA | iDeCo |
| 拠出時の税制優遇 | なし | 掛金の全額所得控除 |
| 運用時の税制優遇 | 運用益非課税 | 運用益非課税 |
| 受取時の税制優遇 | 非課税 | 退職所得控除・公的年金等控除 |
| 年間投資上限 | 360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円) | 14.4万円~81.6万円(職業により異なる) |
| 非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠1,200万円) | なし(掛金上限の範囲内) |
| 引き出し制限 | いつでも引き出し可能 | 原則60歳まで引き出し不可 |
| 投資対象 | 株式・投資信託・ETF | 投資信託・定期預金・保険 |
新NISAは拠出時の税制優遇はありませんが、運用益と受取時が完全非課税です。
一方、iDeCoは拠出時に所得控除があり、即効性のある節税効果が得られます。
流動性の面では、新NISAはいつでも引き出せるため、教育資金や住宅購入など、中期的な目標にも活用できます。
iDeCoは60歳まで引き出せないため、老後資金専用と考えるべきです。
新NISAとiDeCoの大きな違いは、資金の流動性です。
新NISAはいつでも売却・引き出しができるため、急な出費や予定外の資金需要に対応できます。
例えば、子どもの教育資金や住宅購入の頭金、医療費など、60歳より前に資金が必要になる可能性がある人は、新NISAを優先すべきです。
新NISAで資産を形成しておけば、必要なときに非課税で引き出せます。
一方、iDeCoは60歳まで原則引き出せないため、途中で資金が必要になっても対応できません。ただし、この「引き出せない」という制約が、強制的な資産形成につながるメリットもあります。
使いやすさの面では、新NISAの方がシンプルです。
年間投資枠内であれば自由に投資でき、売却後の非課税枠も再利用できます(翌年以降)。
iDeCoは掛金の変更や停止に手続きが必要で、転職時には移換手続きも必要です。
初心者や柔軟性を重視する人は新NISAから始め、余裕ができたらiDeCoを追加するのが現実的な選択です。
新NISAとiDeCoのどちらを優先すべきかは、年収・年齢・ライフステージによって異なります。
以下に、状況別のおすすめ優先順位を示します。
基本的には、流動性が必要な人や低所得者は新NISA優先、節税効果を重視する高所得者はiDeCo優先が適しています。
理想的には両方を併用し、新NISAで中期的な資金、iDeCoで老後資金を準備することです。
iDeCoで気をつけたい5つのデメリット
iDeCoには多くのメリットがありますが、デメリットやリスクも存在します。
加入前にこれらを理解し、自分に合った制度かどうかを慎重に判断することが重要です。
iDeCoの最大のデメリットは、原則60歳まで資金を引き出せないことです。
急な出費や予定外の資金需要が発生しても、iDeCoの資産は利用できません。
例えば、子どもの教育資金、住宅購入の頭金、医療費、失業時の生活費などが必要になった場合でも、iDeCoからは引き出せません。このため、生活防衛資金(3~6ヶ月分の生活費)を別途確保してから、iDeCoに加入することが推奨されます。
また、掛金の拠出を停止することは可能ですが、停止中も口座管理手数料(月171円)は発生し続けます。
長期間停止すると、手数料が積み重なって資産が目減りする可能性があります。
iDeCoで投資信託を選択した場合、運用成績によっては元本割れする可能性があります。
特に、株式中心のファンドは価格変動が大きく、短期的には損失が出ることもあります。
ただし、長期・積立・分散投資を実践すれば、元本割れのリスクは大幅に低減されます。
過去のデータでは、20年以上の長期投資では元本割れの確率が非常に低くなることが示されています。
元本割れが心配な人は、定期預金や保険などの元本確保型商品を選ぶこともできます。
ただし、元本確保型商品は利回りが低く、インフレリスクに対応できない可能性があるため、バランスを考えることが重要です。
iDeCoの掛金は年1回まで変更でき、拠出を停止することも可能です。
しかし、停止中も口座管理手数料(月171円、年間2,052円)が発生し続けるため、長期間停止すると資産が目減りします。
また、掛金を停止すると所得控除のメリットが受けられなくなります。
収入が減った場合や支出が増えた場合は、停止ではなく掛金を最低額(月5,000円)に減額する方が、所得控除のメリットを維持できます。
掛金の変更手続きには1~2ヶ月かかるため、早めに手続きすることが重要です。
転職や退職をした場合、iDeCoの手続きが必要です。
会社員から自営業になった場合は掛金上限が変わるため、変更手続きを行います。
また、企業型DCがある会社に転職した場合、iDeCoを継続できるかどうかは企業型DCの規約によります。
2022年10月の改正で併用が可能になりましたが、企業型DCの掛金によってはiDeCoの掛金上限が制限される場合があります。
手続きを怠ると、自動的に「自動移換」という状態になり、運用が停止して手数料だけが引かれ続けます。転職・退職時は必ず金融機関に連絡し、適切な手続きを行いましょう。
iDeCoの税制優遇は現行の税制に基づいていますが、将来的に税制が改正される可能性があります。
特に、受取時の退職所得控除や公的年金等控除が縮小されると、受取時の税負担が増える可能性があります。
また、所得税率や住民税率が変更されると、拠出時の節税効果も変わります。
ただし、過去の税制改正では既存の加入者に不利益が生じないよう配慮されることが多いため、過度に心配する必要はありません。
税制改正リスクに備えるためには、新NISAとの併用や、受取方法の柔軟な選択(一時金・年金・併用)を検討することが有効です。
iDeCoの始め方と年末調整・確定申告の手続き
iDeCoに加入するには、金融機関で口座を開設し、掛金の設定や運用商品の選択を行います。
また、所得控除を受けるためには、年末調整または確定申告で手続きが必要です。
ここでは、iDeCoの始め方と、控除申請の具体的な手続き方法を解説します。
iDeCoの口座開設は、以下の手順で行います。
会社員の場合、iDeCoの所得控除は年末調整で申請できます。
年末調整の手続きは以下の通りです。
払込証明書を紛失した場合は、国民年金基金連合会または金融機関に連絡して再発行を依頼できます。
自営業者やフリーランス、年末調整を受けられなかった会社員は、確定申告でiDeCoの所得控除を申請します。
手続きは以下の通りです。
確定申告の期限は毎年2月16日~3月15日です。
期限を過ぎても5年以内であれば還付申告が可能ですが、早めに手続きすることをおすすめします。
よくある質問(Q&A)
専業主婦(課税所得がない人)の場合、iDeCoの最大のメリットである「掛金の所得控除」を受けられません。
そのため、節税効果はゼロです。
しかし、運用益が非課税になるメリットは残ります。
長期運用で資産を増やせる可能性があるため、老後資金を準備したい人には一定のメリットがあります。
ただし、60歳まで引き出せない流動性リスクや、手数料がかかる点を考慮すると、新NISAのつみたて投資枠の方が柔軟性が高く、専業主婦には向いているでしょう。
2022年10月の制度改正により、企業型DCとiDeCoの併用が原則可能になりました。
ただし、企業型DCの掛金額によってはiDeCoの掛金上限が制限される場合があります。
例えば、企業型DCのみの場合、iDeCoの掛金上限は月2万円です。
企業型DCと確定給付企業年金(DB)を併用している場合は、iDeCoの掛金上限は月1.2万円です。
併用する場合は、企業型DCの規約を確認し、iDeCoの掛金上限を把握することが重要です。
勤務先の人事部または企業型DCの運営管理機関に問い合わせてください。
iDeCoの掛金は年1回まで変更できます。
変更手続きは金融機関の公式サイトまたは書面で行い、手続きから反映まで1~2ヶ月かかります。
また、掛金の拠出を停止することも可能です。
ただし、停止中も口座管理手数料(月171円)が発生し続けるため、長期間停止すると資産が目減りします。
収入が減った場合や支出が増えた場合は、停止ではなく掛金を最低額(月5,000円)に減額する方が、所得控除のメリットを維持できます。
元本確保型商品(定期預金・保険)を選べば、元本割れのリスクは回避できます。
ただし、利回りが非常に低いため、インフレリスクに対応できない可能性があります。
また、手数料(年間約2,000円)を考慮すると、利回りが手数料を下回る場合は実質的に資産が目減りします。
元本確保型商品は安全性が高い反面、資産を増やす効果は限定的です。
長期運用を前提とするiDeCoでは、株式中心の投資信託を選び、時間分散効果を活用する方が、資産形成に有効です。
リスクが心配な人は、バランス型ファンドを選ぶことをおすすめします。
海外転勤により日本国内に居住しなくなった場合、iDeCoの掛金拠出を継続できません。
拠出を停止し、「運用指図者」として運用のみを継続することになります。
運用指図者の間も口座管理手数料(月171円)が発生し続けます。
帰国後、再度国内に居住すれば、掛金の拠出を再開できます。
海外転勤の可能性がある人は、新NISAとの併用を検討し、流動性を確保しておくことが重要です。
iDeCo加入者が死亡した場合、iDeCoの資産は遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順)に「死亡一時金」として支払われます。
死亡一時金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となりますが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
例えば、法定相続人が3人の場合、1,500万円まで非課税です。
死亡一時金の受取手続きは、遺族が金融機関に連絡して行います。
受取には戸籍謄本などの書類が必要です。
iDeCoは掛金の全額所得控除、運用益の非課税、受取時の税制優遇という3つの節税効果がある優れた制度です。
しかし、誰にでも節税効果があるわけではなく、課税所得が少ない人や住宅ローン控除を利用している人は、所得控除の恩恵を十分に受けられない可能性があります。
また、退職金が多い人は受取時の税金が高額になるリスクがあり、掛金が少ない人は手数料負けする可能性もあります。
自分の年収、家族構成、他の控除の利用状況を確認し、iDeCoが本当に自分に合っているかを慎重に判断することが重要です。
新NISAとの比較では、流動性を重視する人や低所得者は新NISA優先、節税効果を重視する高所得者はiDeCo優先が適しています。
理想的には両方を併用し、新NISAで中期的な資金、iDeCoで老後資金を準備することです。
iDeCoには60歳まで引き出せない流動性リスクや、元本割れのリスク、手続きの複雑さなどのデメリットもあります。
これらを理解した上で、自分のライフプランに合った活用方法を選びましょう。
なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。詳しくは各金融機関・税理士にご確認ください。
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