新NISA1800万円を超えたらどうなる?その後の運用方法を解説

新NISA1800万円を超えたらどうなる?その後の運用方法を解説

新NISAで投資を続けていると「1800万円の上限に達したらどうなるんだろう」と不安に感じることはありませんか。

結論から言うと、1800万円を超えた分は課税口座での運用に切り替わりますが、すでに投資した分の運用益は引き続き非課税のまま保有できます。

この記事では、新NISAの1800万円を超えた後の具体的な対処法や、非課税枠の再利用方法、課税口座での税金計算まで詳しく解説します。

到達までの期間シミュレーションや、超過後の賢い運用方法も紹介しているので、長期的な資産形成の参考にしてください。

1800万円という大きな目標に向けて、正しい知識を身につけて計画的に投資を進めていきましょう。

この記事の要約
  • 1800万円を超えた分は課税口座での運用になるが、既存の運用益は非課税のまま
  • 非課税枠の再利用(簿価残高方式)を活用すれば、売却後に枠が復活する
  • 課税口座での利益には20.315%の税金がかかるため、NISA枠の活用が重要
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

新NISAで1800万円を超えたらどうなる?

新NISAの生涯非課税限度額である1800万円を超えて投資しようとした場合、その超過分は自動的に課税口座(特定口座または一般口座)での買付に切り替わります。

NISA口座での買付はできなくなりますが、すでにNISA口座で保有している資産には何の影響もありません。

つまり、1800万円の枠を使い切った後も投資自体は続けられますし、NISA口座内の資産は引き続き非課税のメリットを享受できるのです。

ここでは、1800万円を超えた場合の具体的な変化について詳しく見ていきましょう。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

課税口座での運用に切り替わる

1800万円の非課税枠を使い切ると、それ以降の新規投資は課税口座での取引となります。

多くの証券会社では、NISA口座の非課税枠が上限に達すると、自動的に課税口座(特定口座)での買付に切り替わる仕組みになっています。

課税口座で得た利益(値上がり益や配当金)には、20.315%の税金がかかります。例えば、課税口座で10万円の利益が出た場合、約2万円が税金として差し引かれ、手元に残るのは約8万円です。

NISA口座なら10万円がそのまま手元に残るため、この差は長期投資では大きな違いになります。

ただし、課税口座での運用が必ずしも悪いわけではありません。すでに1800万円という大きな資産をNISA口座で非課税運用できているのですから、追加投資分は課税口座で行いながら、全体としてバランスの取れたポートフォリオを構築することが大切です。

運用益は引き続き非課税のまま

1800万円の上限に達した後も、NISA口座内で保有している資産の運用益は引き続き非課税です。

これは非常に重要なポイントで、多くの人が誤解しやすい部分でもあります。

1800万円という上限は「投資元本(簿価)」の上限であり、運用益の上限ではありません。例えば、1800万円を投資して、その資産が2000万円、3000万円と増えても、その増えた分(運用益)には一切税金がかかりません。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

つまり、1800万円を投資した後、30年間保有して5000万円に増えたとしても、その5000万円すべてが非課税で受け取れます。

長期投資の複利効果を最大限に活かせるのが、新NISAの大きな魅力と言えるでしょう。この非課税メリットは、NISA口座内の資産を保有し続ける限り永続します。

新NISAの1800万円とは?基本の仕組みを理解しよう

新NISAの「1800万円」という数字は、制度を理解する上で最も重要なポイントです。

この金額は「生涯非課税限度額」と呼ばれ、一生涯でNISA口座に投資できる元本の上限を示しています。

ただし、この1800万円には年間投資枠や成長投資枠の上限など、いくつかの細かいルールがあります。ここでは、1800万円の仕組みを正確に理解するために、制度の基本を詳しく解説していきます。

正しく理解することで、より効率的にNISA制度を活用できるようになります。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

生涯非課税限度額1800万円の仕組み

生涯非課税限度額1800万円とは、NISA口座で一生涯に投資できる元本の合計額です。

2024年から始まった新NISA制度では、この1800万円の枠内であれば、投資で得た利益に対して税金が一切かかりません。

重要なのは、この1800万円は「投資元本(簿価)」の上限であって、運用益の上限ではないという点です。例えば、1800万円を投資してその資産が3000万円に増えても、3000万円すべてが非課税で保有できます。

運用益がいくら増えても、1800万円の枠を超えることはありません。

また、この1800万円の枠は「簿価残高方式」で管理されます。つまり、保有している資産を売却すると、その売却した分の投資元本(簿価)が枠として復活し、再度投資できるようになります。

この再利用の仕組みについては、後ほど詳しく解説します。

年間投資枠は最大360万円

新NISAでは、1年間に投資できる金額に上限が設けられています。

年間投資枠は最大360万円で、これは「つみたて投資枠」120万円と「成長投資枠」240万円を合わせた金額です。

つまり、1800万円の生涯非課税限度額があっても、1年目に一気に1800万円を投資することはできません。最短でも5年間かけて投資する必要があります(年間360万円×5年=1800万円)。

この年間投資枠は毎年1月1日にリセットされ、使い切れなかった分は翌年に繰り越せません。

ただし、非課税枠を再利用する場合(売却して枠が復活した場合)は、年間投資枠の範囲内であれば何度でも投資できます。例えば、1月に120万円投資して3月に売却した場合、その120万円分の枠が復活するため、年間投資枠の範囲内でさらに120万円を投資することが可能です。

成長投資枠は1200万円まで

1800万円の生涯非課税限度額のうち、成長投資枠で投資できるのは最大1200万円までです。

つまり、1800万円すべてを成長投資枠で使うことはできず、残りの600万円はつみたて投資枠で投資する必要があります。

成長投資枠では、個別株やETF、REITなど幅広い商品に投資できるため、より自由度の高い運用が可能です。一方、つみたて投資枠は金融庁が定めた基準を満たす投資信託に限定されており、長期・積立・分散投資に適した商品が対象となっています。

この1200万円という上限があるため、1800万円の枠を最大限活用するには、成長投資枠とつみたて投資枠を組み合わせた戦略が必要です。

例えば、成長投資枠で1200万円を個別株やETFに投資し、つみたて投資枠で600万円を投資信託に積み立てるといった使い方が考えられます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

1800万円に到達するまでの期間はどれくらい?

1800万円という金額は、投資初心者にとっては非常に大きな目標に感じられるかもしれません。

しかし、毎月の積立額によって到達までの期間は大きく変わります。ここでは、月々の積立額別に1800万円に到達するまでの期間を計算してみました。

ご自身の投資可能な金額と照らし合わせて、どのくらいのペースで資産形成を進められるか確認してみてください。

なお、以下のシミュレーションは運用益を考慮せず、純粋な積立額のみで計算しています。実際には運用益が加わるため、到達時期はさらに早まる可能性があります。

月3万円積立の場合(50年)

月3万円を積み立てる場合、年間の投資額は36万円です。

1800万円に到達するには、単純計算で50年かかります(1800万円÷36万円=50年)。20代から始めれば70代で到達する計算です。

この積立ペースは、投資初心者や収入がまだ少ない若年層に適しています。長期間かけてゆっくりと資産を積み上げていくスタイルで、リスクを抑えながら着実に資産形成ができます。

また、運用益が加わることで、実際の到達時期は40年前後に短縮される可能性もあります。

月5万円積立の場合(30年)

月5万円を積み立てる場合、年間の投資額は60万円です。

1800万円に到達するには30年かかります(1800万円÷60万円=30年)。30代から始めれば60代で到達する計算です。

この積立ペースは、ある程度収入が安定してきた30代〜40代の方に現実的な金額と言えるでしょう。

老後資金の準備として、定年までに1800万円の枠を使い切ることを目指せます。運用益を考慮すれば、25年前後で到達する可能性もあります。

月10万円積立の場合(15年)

月10万円を積み立てる場合、年間の投資額は120万円です。

1800万円に到達するには15年かかります(1800万円÷120万円=15年)。40代から始めても50代で到達できる計算です。

この積立ペースは、年間のつみたて投資枠120万円をフルに活用する形になります。収入に余裕がある方や、共働き世帯で世帯収入が高い方に適しています。

運用益を加えれば、12〜13年程度で到達する可能性もあり、比較的短期間で大きな非課税資産を築けます。

月30万円積立の場合(5年)

月30万円を積み立てる場合、年間の投資額は360万円です。

これは新NISAの年間投資枠の上限いっぱいの金額で、最短の5年で1800万円に到達します(1800万円÷360万円=5年)。

この積立ペースは、まとまった資金がある方や、高収入の方に適しています。退職金や相続などでまとまった資金を得た場合、5年間で計画的にNISA口座に移していくことで、最短で非課税枠を使い切ることができます。

ただし、年間360万円を投資するには、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の両方を活用する必要があります。

1800万円を使い切った場合のシミュレーション5パターン

1800万円を投資した場合、運用期間によってどのくらいの資産になるのでしょうか。

ここでは、年利5%で運用した場合のシミュレーションを5つのパターンで紹介します。

なお、これはあくまで試算であり、実際の運用成果を保証するものではありません。投資には元本割れのリスクがあることを理解した上で、参考情報としてご覧ください。

金融庁:資産運用シミュレーション

5年で使い切る場合(年間360万円)

年間360万円ずつ5年間投資して1800万円を使い切る場合、5年後の資産は約1976万円になります(年利5%で計算)。

投資元本1800万円に対して、約176万円の運用益が非課税で得られる計算です。

この方法は、まとまった資金がある方が最短で非課税枠を埋めたい場合に適しています。ただし、5年間という短期間で投資するため、市場の変動リスクを受けやすい点には注意が必要です。

投資タイミングを分散するため、毎月30万円ずつ積み立てる方法も検討すると良いでしょう。

10年で使い切る場合(年間180万円)

年間180万円ずつ10年間投資して1800万円を使い切る場合、10年後の資産は約2330万円になります(年利5%で計算)。

投資元本1800万円に対して、約530万円の運用益が非課税で得られる計算です。

この方法は、つみたて投資枠120万円と成長投資枠60万円を組み合わせることで実現できます。10年という期間は、市場の短期的な変動を平準化しつつ、ある程度の期間で資産形成を完了できるバランスの良い選択肢と言えます。

40代から始めれば50代で1800万円の枠を使い切れます。

15年で使い切る場合(年間120万円)

年間120万円ずつ15年間投資して1800万円を使い切る場合、15年後の資産は約2687万円になります(年利5%で計算)。

投資元本1800万円に対して、約887万円の運用益が非課税で得られる計算です。

この方法は、つみたて投資枠120万円をフルに活用する形になります。成長投資枠は使わず、投資信託のみで運用するため、初心者でも取り組みやすい方法です。

15年という期間は、長期投資のメリットを享受しつつ、現役世代のうちに資産形成を完了できる現実的な期間と言えるでしょう。

20年で使い切る場合(年間90万円)

年間90万円ずつ20年間投資して1800万円を使い切る場合、20年後の資産は約3098万円になります(年利5%で計算)。

投資元本1800万円に対して、約1298万円の運用益が非課税で得られる計算です。

この方法は、月7.5万円程度の積立で実現できるため、30代の方が老後資金の準備として取り組むのに適しています。

20年という期間は、市場の変動リスクを十分に分散でき、長期投資の複利効果を実感できる期間です。運用益が投資元本の70%以上になる可能性があり、非課税メリットを大きく享受できます。

30年で使い切る場合(年間60万円)

年間60万円ずつ30年間投資して1800万円を使い切る場合、30年後の資産は約4161万円になります(年利5%で計算)。

投資元本1800万円に対して、約2361万円の運用益が非課税で得られる計算です。

この方法は、月5万円の積立で実現できるため、20代から投資を始める方に適しています。30年という長期間により、複利効果が最大限に発揮され、運用益が投資元本を上回る可能性が高くなります。

若いうちから始めることで、時間を味方につけた資産形成が可能です。この期間であれば、多少の市場変動があっても長期的には回復する可能性が高いと言えます。

1800万円を超えた後の運用方法3つ

1800万円の非課税枠を使い切った後も、資産運用を続けたい方は多いでしょう。

ここでは、1800万円を超えた後に選択できる3つの運用方法を紹介します。

それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、ご自身の投資目的やライフプランに合わせて最適な方法を選択してください。複数の方法を組み合わせることも可能です。

非課税枠の再利用を活用する

新NISAでは、保有している資産を売却すると、その売却した分の投資元本(簿価)が非課税枠として復活します。

これを「非課税枠の再利用」と呼び、簿価残高方式で管理されています。

例えば、1800万円の枠を使い切った後、保有している資産のうち300万円分(簿価)を売却すると、その300万円分の枠が復活します。復活した枠は、年間投資枠の範囲内(年間最大360万円)で再度投資に使えます。

ただし、売却した年に復活した枠を使い切れなくても、翌年以降も引き続き使用できます。

この方法は、ポートフォリオのリバランスや、より成長性の高い銘柄への乗り換えを行いながら、常に1800万円分の資産をNISA口座で非課税運用し続けたい方に適しています。

売却と再投資を繰り返すことで、生涯にわたって非課税メリットを最大限に活用できます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

課税口座(特定口座・一般口座)で追加投資する

1800万円の枠を使い切った後、さらに投資を続けたい場合は、課税口座での追加投資を検討しましょう。

課税口座には「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」の3種類があります。

多くの方におすすめなのは「特定口座(源泉徴収あり)」です。この口座では、証券会社が自動的に税金を計算して源泉徴収してくれるため、確定申告が不要になります。

利益が出た場合は20.315%の税金が差し引かれますが、手続きの手間がかからないのが大きなメリットです。

一方、「特定口座(源泉徴収なし)」や「一般口座」では、自分で確定申告を行う必要があります。ただし、年間の利益が20万円以下であれば確定申告が不要になる場合もあるため、少額投資の方はこちらを選ぶメリットもあります。

課税口座での投資は、NISA口座とは別に資産を分散する意味でも有効な選択肢です。

そのまま長期保有を続ける

1800万円の枠を使い切った後、新たに投資をせず、NISA口座内の資産をそのまま長期保有し続けるという選択肢もあります。

この方法は、特に追加投資の余力がない方や、すでに十分な資産を築いた方に適しています。

NISA口座内の資産は、保有し続ける限り運用益が非課税です。1800万円が2000万円、3000万円と増えても、その増えた分には一切税金がかかりません。

配当金や分配金も非課税で受け取れるため、長期保有することで複利効果を最大限に活かせます。

この方法は、リバランスや売買の手間がかからず、シンプルに資産を増やし続けられるのがメリットです。特に、優良な投資信託や高配当株を保有している場合は、売却せずに長期保有することで安定したリターンが期待できます。

「何もしない」という選択も、立派な投資戦略の一つです。

非課税枠の再利用とは?簿価残高方式を分かりやすく解説

非課税枠の再利用とは?簿価残高方式を分かりやすく解説

新NISAの大きな特徴の一つが「非課税枠の再利用」です。

旧NISAでは、一度投資した枠は売却しても復活しませんでしたが、新NISAでは売却すると枠が復活する仕組みになっています。

この仕組みを理解することで、より柔軟な資産運用が可能になります。ここでは、非課税枠の再利用の仕組みである「簿価残高方式」について、具体例を交えながら詳しく解説します。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

売却すると非課税枠が復活する仕組み

新NISAでは、保有している資産を売却すると、その売却した分の「投資元本(簿価)」が非課税枠として復活します。

これを「簿価残高方式」と呼びます。

重要なのは、復活するのは「売却時の時価」ではなく「購入時の簿価」である点です。例えば、100万円で購入した株が150万円に値上がりして売却した場合、復活する非課税枠は100万円です。逆に、100万円で購入した株が50万円に値下がりして売却した場合も、復活する非課税枠は100万円です。

つまり、利益が出ても損失が出ても、復活する枠は常に「購入時の簿価」で計算されます。

復活した非課税枠は、年間投資枠(年間最大360万円)の範囲内で再度投資に使えます。ただし、売却した年に復活した枠をすべて使い切る必要はなく、翌年以降も引き続き使用できます。

この仕組みにより、ポートフォリオの見直しや銘柄の入れ替えを行いながら、常に1800万円分の資産を非課税で運用し続けることが可能です。

非課税枠再利用の具体例

具体的な例で非課税枠の再利用を見てみましょう。

Aさんは新NISAで1800万円の枠を使い切り、その資産が2000万円に増えたとします。この時点で非課税枠の残りは0円です。

Aさんは、保有している資産のうち、購入時の簿価が300万円分(現在の時価は350万円)を売却しました。すると、売却した分の簿価300万円が非課税枠として復活します。

Aさんの非課税枠は、0円から300万円に戻りました。

Aさんは、復活した300万円の枠を使って、別の投資信託を購入しました。この時、年間投資枠(年間最大360万円)の範囲内であれば、復活した300万円をすぐに再投資できます。

このように、売却と再投資を繰り返すことで、常に1800万円分の資産をNISA口座で非課税運用し続けることができます。ポートフォリオのリバランスや銘柄の入れ替えを行いながら、非課税メリットを最大限に活用できるのが新NISAの大きな魅力です。

課税口座での投資はどれくらい税金がかかる?

1800万円の非課税枠を使い切った後、課税口座で追加投資を行う場合、どのくらいの税金がかかるのでしょうか。

ここでは、課税口座での税率や具体的な税金計算の方法、口座の種類による違いについて詳しく解説します。

税金の仕組みを理解することで、NISA口座の非課税メリットの大きさを改めて実感できるでしょう。また、課税口座での投資を検討する際の参考にしてください。

国税庁:株式等の譲渡所得等の課税

課税口座の税率は20.315%

課税口座で得た利益(譲渡益や配当金)には、一律20.315%の税金がかかります。

この税率の内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%(所得税の2.1%)、住民税5%です。

NISA口座では利益に対して税金が一切かからないため、この20.315%の差は長期投資では非常に大きな違いになります。

例えば、100万円の利益が出た場合、NISA口座なら100万円がそのまま手元に残りますが、課税口座では約79万7千円しか残りません。約20万3千円が税金として差し引かれるのです。

この税率は、利益の金額に関わらず一律です。少額の利益でも、多額の利益でも、税率は20.315%で変わりません。

ただし、特定口座(源泉徴収あり)を選択している場合は、証券会社が自動的に税金を計算して源泉徴収してくれるため、確定申告の手間は不要です。

100万円利益が出た場合の税金計算例

具体的な例で税金の計算を見てみましょう。

課税口座で株式を購入し、100万円の利益が出た場合、税金は以下のように計算されます。

利益100万円に対して、税率20.315%を掛けます
100万円×20.315%=203,150円が税金として差し引かれます
手元に残るのは、100万円-203,150円=796,850円です

NISA口座で同じ100万円の利益が出た場合、税金は0円なので、100万円がそのまま手元に残ります。

つまり、NISA口座と課税口座では、203,150円もの差が生まれるのです。

この差額は、投資期間が長くなり、利益が大きくなるほど拡大します。例えば、1000万円の利益が出た場合、税金は約203万円にもなります。

このように、非課税メリットは長期投資において非常に大きな効果を発揮します。

特定口座と一般口座の違い

課税口座には「特定口座」と「一般口座」の2種類があります。

特定口座はさらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」に分かれます。それぞれの違いを理解して、自分に合った口座を選びましょう。

特定口座(源泉徴収あり)
証券会社が自動的に税金を計算して源泉徴収してくれるため、確定申告が不要です。利益が出るたびに自動的に税金が差し引かれるため、手続きの手間がかかりません。多くの投資家におすすめの口座タイプです。
特定口座(源泉徴収なし)
証券会社が年間取引報告書を作成してくれますが、税金の源泉徴収は行われません。自分で確定申告を行う必要がありますが、年間の利益が20万円以下の場合は確定申告が不要になる場合もあります。
一般口座
年間取引報告書も作成されないため、自分で取引の記録を管理し、確定申告を行う必要があります。手間がかかるため、あまり選ばれない口座タイプです。

基本的には「特定口座(源泉徴収あり)」を選択するのが最も手軽で安心です。

1800万円超過で気をつけたい5つのこと

1800万円の非課税枠を使い切る際や、その後の運用において、知っておくべき重要な注意点があります。

ここでは、多くの投資家が見落としがちなポイントを5つ紹介します。

これらの注意点を理解しておくことで、非課税枠の管理ミスを防ぎ、より効率的にNISA制度を活用できます。特に、1800万円に近づいてきた方は、事前に確認しておくことをおすすめします。

運用益が1800万円を超えても非課税は継続

多くの方が誤解しやすいポイントですが、1800万円という上限は「投資元本(簿価)」の上限であり、運用益の上限ではありません。

つまり、1800万円を投資した資産が2000万円、3000万円と増えても、その増えた分(運用益)には一切税金がかかりません。

例えば、1800万円を投資して30年間保有し、その資産が5000万円に増えたとします。この場合、5000万円すべてが非課税で保有でき、売却時も税金はかかりません。運用益が3200万円になっても、その全額が非課税です。

この仕組みを理解していないと、「運用益が出て1800万円を超えたら課税されるのでは」と不安になる方もいますが、その心配は不要です。

NISA口座内の資産は、どれだけ増えても非課税のまま保有できます。長期投資の複利効果を最大限に活かすためにも、この点をしっかり理解しておきましょう。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

年末の投資タイミングは受渡日に注意

年間投資枠(年間最大360万円)は、毎年1月1日にリセットされます。

そのため、年末ギリギリに投資する場合は「受渡日」に注意が必要です。株式や投資信託の購入は、注文日ではなく「受渡日」が基準になります。

受渡日とは、購入代金の決済が完了し、実際に株式や投資信託が口座に入る日のことです。株式の場合は約定日の2営業日後、投資信託の場合は商品によって異なりますが、通常は約定日の数営業日後が受渡日になります。

例えば、12月29日に株式を購入した場合、受渡日は年明けの1月になる可能性があります。その場合、その投資は翌年の年間投資枠を使うことになります。

年末に投資枠を使い切りたい場合は、12月中旬までに投資を完了させることをおすすめします。証券会社によっては、年間投資枠の使用状況を確認できる機能があるので、活用すると良いでしょう。

1800万円到達後の配当金・分配金も非課税

1800万円の非課税枠を使い切った後も、NISA口座内で保有している株式や投資信託から受け取る配当金・分配金は引き続き非課税です。

これは非常に重要なポイントで、長期保有のメリットを大きく高めます。

例えば、1800万円を高配当株や分配金のある投資信託に投資した場合、配当利回りが3%であれば年間54万円の配当金・分配金が得られます。通常であれば、この54万円に対して約11万円の税金がかかりますが、NISA口座内であれば54万円がそのまま手元に残ります。

この配当金・分配金を再投資する場合、非課税枠に空きがあれば再投資できますが、1800万円を使い切っている場合は課税口座での再投資になります。

ただし、配当金・分配金を受け取るだけであれば、何年経っても非課税のまま受け取り続けられます。高配当株や分配金のある投資信託を長期保有することで、安定した非課税収入を得られるのは大きなメリットです。

証券会社の超過防止アラート機能を活用

1800万円の非課税枠を超えて投資してしまうと、超過分は自動的に課税口座での買付になります。

意図せず課税口座で投資してしまうことを防ぐため、多くの証券会社では「超過防止アラート機能」を提供しています。

この機能は、NISA口座の非課税枠の残高が少なくなった際に通知してくれたり、非課税枠を超える注文を出した際に警告を表示してくれたりします。

例えば、SBI証券や楽天証券では、NISA口座の投資可能額をリアルタイムで確認できる機能があり、超過しそうな場合は注文時に警告が表示されます。

1800万円に近づいてきたら、定期的に非課税枠の残高を確認し、計画的に投資を進めることが大切です。証券会社のアプリやウェブサイトで簡単に確認できるので、投資前に必ずチェックする習慣をつけましょう。

超過防止アラート機能を活用することで、意図しない課税口座での投資を防ぎ、非課税メリットを最大限に活用できます。

旧NISAとの併用時は合算しない

2023年までの旧NISA(一般NISA・つみたてNISA)と、2024年からの新NISAは、別々の制度として扱われます。

旧NISAで保有している資産は、新NISAの1800万円の枠には含まれません。つまり、旧NISAと新NISAの非課税枠は合算されないのです。

例えば、旧NISAで600万円を投資していても、新NISAでは別途1800万円の枠が使えます。旧NISAで保有している資産は、非課税期間が終了するまで(一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間)引き続き非課税で保有できます。

ただし、旧NISAから新NISAへのロールオーバー(移管)はできません。旧NISAの非課税期間が終了した後は、課税口座に移管するか、売却して新NISAで再投資するかを選択する必要があります。

旧NISAと新NISAを併用している方は、それぞれの非課税期間や枠の残高を別々に管理することが重要です。証券会社の管理画面で、旧NISAと新NISAの残高を分けて確認できるので、定期的にチェックしましょう。

NISAにおすすめの証券会社3社

新NISAで1800万円の非課税枠を最大限活用するには、自分に合った証券会社を選ぶことが重要です。

ここでは、NISA口座の開設におすすめの証券会社を3社紹介します。

それぞれの証券会社には独自の強みがあるため、取扱商品数、手数料、ポイントサービス、使いやすさなどを比較して、ご自身の投資スタイルに合った証券会社を選んでください。

SBI証券|取扱商品数No.1で選択肢が豊富

SBI証券の画像
項目 内容
口座数 約15,000,000口座 ※2025年11月25日時点(SBIネオモバイル証券など含む)
取引手数料 【スタンダードプラン(1注文ごと)】 取引金額に関係なく0円【アクティブプラン(1日定額制)】 1日100万円以下の取引:0円※現物取引・信用取引・単元未満株(S株)もすべて対象です。
NISA対応
つみたて投資枠取扱銘柄数 〇(259銘柄)※2025年3月3日時点
成長投資枠対象商品 国内株 / 外国株 / 投資信託(約1,329銘柄 ※2025年3月3日時点)
投資信託 約2,550本 ※2025年3月3日時点
外国株 8カ国/米国株式(5,000銘柄)
取引ツール(PC) HYPER SBI 2 / HYPER SBI / SBI CFDトレーダー
スマホアプリ SBI証券 株アプリ / 米国株アプリ / かんたん積立 / HYPER FX / HYPER 先物 / HYPER CFD
提携銀行口座 SBI新生銀行 / 住信SBIネット銀行
ポイント投資・付与 Pontaポイント / dポイント / Vポイント(クレカ積立)
口座開設スピード 最短 翌営業日

SBI証券は、国内最大手のネット証券で、口座数は約1500万を超えています。

最大の特徴は、取扱商品数の豊富さです。投資信託は約2,600本、米国株は約5,000銘柄、外国株は8カ国と、業界トップクラスの品揃えを誇ります。

SBI証券の特徴

NISA口座では、現物取引・信用取引ともに手数料が原則無料

Vポイント、Pontaポイント、dポイント、JALポイント、PayPayポイントの5種類から選べる

IPO取扱実績が年間78銘柄(2024年実績)と業界トップクラス

投資信託の保有残高に応じてポイントが貯まり、そのポイントで投資信託を購入することもできます。

つみたて投資枠対象の投資信託は約271本あり、初心者から上級者まで幅広い投資家に対応しています。取引ツールも充実しており、PC版の「HYPER SBI 2」やスマホアプリなど、多彩なツールが無料で利用できます。

商品の選択肢を重視する方や、ポイント投資を活用したい方に特におすすめです。

楽天証券|楽天ポイントが貯まる・使える

楽天証券LP画像
項目 内容
口座数 約12,000,000口座 ※2025年1月時点
取引手数料 【ゼロコース】 国内株式(現物・信用):0円 かぶミニ®(単元未満株):0円 投資信託:0円 ※ゼロコース選択時。 ※一部、スプレッドや信託財産留保額が発生する場合があります。
NISA対応 〇(新NISA対応)
つみたて投資枠取扱銘柄数 263銘柄 ※2025年4月24日時点
成長投資枠対象商品 国内株式 / 外国株式 / 投資信託(約1,345銘柄)
投資信託 約2,550本 ※2025年4月24日時点
外国株 6カ国/米国株式(約4,500銘柄)
取引ツール(PC) マーケットスピード / マーケットスピード II / 楽天MT4
スマホアプリ iSPEED / iSPEED for iPad / iSPEED FX / iSPEED 先物
提携銀行口座 楽天銀行(マネーブリッジ)
ポイント投資・付与 楽天ポイント(投資信託 / 国内株式 / 米国株式<円貨決済>)
口座開設スピード 最短 翌営業日

楽天証券は、楽天経済圏を活用したい方に最適な証券会社です。

口座数は約1,200万を超え、SBI証券に次ぐ規模を誇ります。最大の魅力は、楽天ポイントが貯まる・使えることです。

投資信託の保有残高に応じて楽天ポイントが貯まり、そのポイントで投資信託や株式を購入できます。

楽天証券の特徴

NISA口座では、現物取引が原則無料

投資信託は約2,550本、米国株は約4,500銘柄と商品ラインナップも充実

取引ツール「MARKET SPEED Ⅱ」は高機能でありながら無料

つみたて投資枠対象の投資信託は約200本あり、初心者でも選びやすいラインナップです。

スマホアプリの「iSPEED」も使いやすく、初心者から上級者まで満足できる機能を備えています。IPOの取扱実績は年間56銘柄(2024年実績)と豊富です。

楽天市場や楽天カードを利用している方は、ポイントを効率的に貯めて投資に活用できるため、特におすすめです。楽天経済圏をフル活用することで、投資とポイント還元の両方のメリットを享受できます。

マネックス証券|米国株投資に強い

マネックス証券のLP画像
項目 内容
口座数 約2,700,000口座 ※2025年2月時点
取引手数料 【取引毎手数料コース】
  • 5万円以下:55円(税込)

  • 5万超~10万円以下:99円

  • 10万超~20万円以下:115円

  • 20万超~50万円以下:275円

  • 50万超~100万円以下:535円

  • 100万超~150万円以下:640円

  • 150万超~3,000万円以下:1,013円

  • 3,000万円超:1,070円

NISA対応 〇(日本株・米国株・中国株・投資信託の売買手数料が無料)
つみたて投資枠取扱銘柄数 〇(銘柄数は公式サイトで確認)
成長投資枠対象商品 国内株 / 米国株 / 中国株 / 投資信託(約1,750本以上)
投資信託 約1,800本(購入時手数料すべて無料)
外国株 2カ国/米国株:約5,000銘柄以上(2025年1月27日時点)
取引ツール(PC) マネックストレーダー / 銘柄スカウター
スマホアプリ マネックス証券アプリ / 米国株アプリ / 投信アプリ
提携銀行口座 マネックス証券専用銀行口座(詳細は公式サイトで確認)
ポイント投資・付与 マネックスポイント / dポイント(投資信託の積立に利用可能)
口座開設スピード オンライン申込で最短翌営業日

マネックス証券は、米国株投資に力を入れている証券会社です。

口座数は約270万で、米国株の取扱銘柄数は約5,000と業界トップクラスです。米国株の取引手数料も競争力があり、為替手数料も業界最低水準のため、米国株投資を中心に考えている方に最適です。

マネックス証券の特徴

投資信託は約1,800本、つみたて投資枠対象は約217本

IPOの取扱実績は年間54銘柄(2024年実績)

マネックスポイントとdポイントが貯まる

取引ツールは「マネックストレーダー」など17種類のPC版ツールと、15種類のスマホアプリがあり、多彩な投資スタイルに対応しています。

米国株の情報提供も充実しており、米国株投資に関するレポートやセミナーも豊富です。米国株を中心にグローバル投資を行いたい方や、海外ETFに投資したい方には特におすすめです。

口座開設は最短2営業日で完了します。

まとめ

新NISAの1800万円を超えた場合、超過分は課税口座での運用に切り替わりますが、すでにNISA口座で保有している資産の運用益は引き続き非課税のまま保有できます。

1800万円という上限は投資元本(簿価)の上限であり、運用益がいくら増えても非課税メリットは継続します。

1800万円を超えた後の運用方法としては、非課税枠の再利用を活用する方法、課税口座で追加投資する方法、そのまま長期保有を続ける方法の3つがあります。

非課税枠の再利用では、売却した分の簿価が枠として復活するため、ポートフォリオのリバランスを行いながら常に1800万円分の資産を非課税運用できます。

課税口座での投資では、利益に対して20.315%の税金がかかるため、NISA口座の非課税メリットの大きさを改めて実感できるでしょう。

1800万円に到達するまでの期間は、月々の積立額によって5年から50年と大きく異なります。ご自身の投資可能な金額に応じて、無理のないペースで資産形成を進めることが大切です。

1800万円超過時の注意点として、運用益は非課税のまま継続すること、年末の投資タイミングは受渡日に注意すること、配当金・分配金も非課税で受け取れること、証券会社の超過防止アラート機能を活用すること、旧NISAとは別枠であることを理解しておきましょう。

これらのポイントを押さえることで、非課税枠を効率的に活用できます。

NISA口座の開設には、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの大手ネット証券がおすすめです。それぞれの証券会社には独自の強みがあるため、取扱商品数、手数料、ポイントサービス、使いやすさなどを比較して、ご自身の投資スタイルに合った証券会社を選んでください。

投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて慎重にご検討ください。不明な点や複雑な税務処理については、専門家にご相談されることをおすすめします。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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