NISAとiDeCoの違いを比較|選び方と併用のポイント

NISAとiDeCoの違いを比較|選び方と併用のポイント

「NISAとiDeCoって何が違うの?」と迷っている方は多いのではないでしょうか。

どちらも税制優遇を受けながら資産形成ができる制度ですが、引き出しの自由度や税制メリットの内容が大きく異なります。

この記事では、NISAとiDeCoの違いを一覧表でわかりやすく比較し、あなたに合った選び方を解説します。

老後資金を準備したい方、住宅購入や教育資金を貯めたい方、それぞれの目的に応じた最適な活用方法がわかります。

併用のメリットや具体的なシミュレーションも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事の要約
  • NISAはいつでも引き出せる柔軟性が魅力、iDeCoは原則60歳まで引き出せない代わりに税制優遇が手厚い
  • NISAの非課税保有限度額は1,800万円、iDeCoは職業別に拠出限度額が異なる(自営業者は月6.8万円、会社員は月2.3万円など)
  • 両制度は併用可能で、老後資金はiDeCo、ライフイベント資金はNISAと使い分けるのがおすすめ
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

NISAとiDeCoの違いを比較|一覧表でわかる5つのポイント

NISAとiDeCoは、どちらも投資で得た利益が非課税になる制度ですが、その目的や仕組みには大きな違いがあります。まずは両制度の主な違いを一覧表で確認しましょう。

項目 NISA iDeCo
制度の目的 安定的な資産形成 老後資金の準備(私的年金)
対象年齢 18歳以上 20歳以上65歳未満(国民年金加入者)
年間投資上限額 つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=合計360万円 職業別に異なる(月5,000円~6.8万円)
非課税保有限度額 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで) 総額の限度なし(年間上限の範囲内で長期積立可能)
非課税期間 無期限 受取まで非課税(最長75歳まで運用可能)
税制優遇 運用益が非課税 ①掛金全額が所得控除 ②運用益が非課税 ③受取時に控除あり
資金の引き出し いつでも可能 原則60歳まで不可
投資対象 投資信託、国内外株式、ETF、REITなど 投資信託、定期預金、保険商品
手数料 金融機関により異なる(口座管理手数料は基本無料) 加入時・運用時に手数料あり(月171円~)

NISAは柔軟性が高く、いつでも資金を引き出せるのが最大の特徴です。一方、iDeCoは60歳まで引き出せない制約がある代わりに、掛金が全額所得控除になるなど税制優遇が手厚い制度となっています。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

どちらを選ぶかは、資金を使う目的や引き出すタイミングによって判断するのがポイントです。老後資金を準備したい方はiDeCo、住宅購入や教育資金など60歳より前に使う予定がある方はNISAが向いています。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

NISAとは|特徴とメリット・デメリット

NISAは「少額投資非課税制度」として、2014年に始まった税制優遇制度です。投資で得た利益に通常かかる20.315%の税金が非課税になるため、効率的に資産を増やせるのが魅力です。

2024年からは制度が大幅に拡充され、「新NISA」としてさらに使いやすくなりました。ここでは、NISAの基本的な仕組みと2024年からの変更点、メリット・デメリットを詳しく解説します。

NISAの基本的なしくみ

NISAは、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託で得た売却益や配当金には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で運用すればこれらの税金が一切かかりません。

NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの投資枠があります。つみたて投資枠は年間120万円まで、金融庁が定める基準を満たした投資信託を積立方式で購入できます。成長投資枠は年間240万円まで、投資信託に加えて国内外の株式やETF、REITなども購入可能です。

2つの投資枠は併用できるため、年間で最大360万円まで非課税で投資できます。また、生涯にわたって非課税で保有できる限度額は1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)と設定されています。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

2024年からの新NISA制度の変更点

2024年1月から始まった新NISAでは、旧制度から大きく改善された点が3つあります。まず、非課税保有期間が無期限になりました。旧制度では一般NISAが5年、つみたてNISAが20年という期限がありましたが、新NISAでは期限を気にせず長期投資が可能です。

次に、年間投資枠が大幅に拡大されました。旧制度では一般NISAが120万円、つみたてNISAが40万円でしたが、新NISAではつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円となり、併用で年間360万円まで投資できます。

さらに、非課税保有限度額の再利用が可能になりました。保有商品を売却すると、翌年以降に購入時の金額分の非課税枠が復活し、再び投資できるようになります。これにより、ライフステージの変化に応じて柔軟に資産を管理できるようになりました。

金融庁:新しいNISA

NISAのメリット

NISAの主なメリットは以下の通りです。

  • 運用益が非課税:売却益や配当金にかかる20.315%の税金が非課税になる
  • いつでも引き出せる:資金が必要なときにすぐに売却して現金化できる
  • 非課税期間が無期限:期限を気にせず長期投資が可能
  • 年間投資枠が大きい:年間最大360万円まで非課税で投資できる
  • 投資対象が幅広い:投資信託、株式、ETF、REITなど多様な商品に投資可能
  • 少額から始められる:金融機関によっては月100円から積立投資が可能

特に、いつでも引き出せる柔軟性は、住宅購入や教育資金など、老後より前に使う予定がある資金の運用に適しています。また、投資初心者でも始めやすい制度設計になっている点も大きな魅力です。

NISAのデメリット・注意点

NISAには以下のようなデメリットや注意点もあります。

NISAの注意点

  • 元本割れのリスクがある:投資商品の価格変動により損失が出る可能性がある
  • 損益通算ができない:他の口座との損益を合算して税金計算ができない
  • 繰越控除ができない:損失を翌年以降に繰り越せない
  • 所得控除がない:iDeCoのような掛金の所得控除はない
  • 年間投資枠は繰り越せない:使い切れなかった枠は翌年に持ち越せない

特に注意したいのは、NISA口座で損失が出た場合、他の課税口座の利益と相殺できない点です。また、NISAには掛金の所得控除がないため、所得税や住民税の軽減効果はありません。税制優遇を最大限活用したい場合は、iDeCoとの併用も検討しましょう。

iDeCoとは|特徴とメリット・デメリット

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金に上乗せして老後資金を準備するための私的年金制度です。自分で掛金を拠出し、運用商品を選んで資産を増やし、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。

iDeCoの最大の特徴は、掛金が全額所得控除の対象になるなど、税制優遇が非常に手厚い点です。ここでは、iDeCoの基本的な仕組みとメリット・デメリットを詳しく解説します。

iDeCoの基本的なしくみ

iDeCoは、国民年金や厚生年金に加入している20歳以上65歳未満の方が利用できる制度です。毎月5,000円以上の掛金を拠出し、自分で選んだ運用商品(投資信託、定期預金、保険商品など)で運用します。

掛金の上限額は職業や企業年金の加入状況によって異なります。自営業者・フリーランスは月6.8万円(年81.6万円)、企業年金のない会社員は月2.3万円(年27.6万円)、企業年金のある会社員や公務員は月2万円(年24万円)、専業主婦(夫)は月2.3万円(年27.6万円)が上限です。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

iDeCoで積み立てた資産は原則として60歳まで引き出せません。これは老後資金を確実に準備するための制度設計であり、途中で引き出せないことで長期的な資産形成を促す仕組みになっています。受取は60歳から75歳の間に開始し、年金形式または一時金、あるいは両方の組み合わせで受け取ることができます。

iDeCoのメリット

iDeCoには3つの大きな税制優遇があります。

  • 掛金が全額所得控除:拠出した掛金がすべて所得から差し引かれ、所得税・住民税が軽減される
  • 運用益が非課税:運用で得た利益に税金がかからない
  • 受取時にも控除:年金で受け取る場合は公的年金等控除、一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用される

特に、掛金全額が所得控除になるメリットは大きく、例えば年収500万円の会社員が月2万円(年24万円)を拠出した場合、所得税率10%・住民税率10%として年間約4.8万円の税負担が軽減されます。30年間継続すれば、合計144万円もの節税効果が得られます。

また、運用益が非課税になる点もNISAと共通のメリットです。通常の課税口座では運用益に20.315%の税金がかかりますが、iDeCoではこの税金が一切かかりません。長期運用による複利効果と合わせて、効率的に資産を増やせます。

受取時にも公的年金等控除や退職所得控除が適用されるため、税負担を抑えながら老後資金を受け取ることができます。拠出時・運用時・受取時の3段階で税制優遇を受けられるのは、iDeCo最大の魅力です。

iDeCoのデメリット・注意点

iDeCoには以下のようなデメリットや注意点があります。

iDeCoの注意点

  • 60歳まで引き出せない:原則として中途解約や引き出しができない
  • 手数料がかかる:加入時に2,829円、運用中は月171円~の手数料が必要
  • 受取時に課税される可能性:控除額を超える部分には税金がかかる
  • 元本割れのリスク:投資信託で運用する場合は価格変動リスクがある
  • 職業別に上限額が異なる:企業年金の有無で拠出できる金額が変わる
  • 確定申告・年末調整が必要:所得控除を受けるには手続きが必要

最も注意すべきは、60歳まで原則として引き出せない点です。住宅購入や教育資金など、60歳より前に使う予定がある資金をiDeCoで運用するのは避けましょう。また、iDeCoには加入時・運用時に手数料がかかるため、少額の拠出では手数料負担が相対的に大きくなる点にも注意が必要です。

掛金の所得控除を受けるには、会社員は年末調整、自営業者は確定申告での申請が必要です。手続きを忘れると税制優遇を受けられないため、忘れずに申請しましょう。

税制優遇の違い|NISAとiDeCoどちらがお得?

NISAとiDeCoの最も大きな違いは、税制優遇の内容です。どちらも運用益が非課税になる点は共通していますが、iDeCoには掛金の所得控除と受取時の控除という追加のメリットがあります。

ここでは、それぞれの税制優遇を具体的な計算例とともに詳しく解説します。

運用益の非課税(NISA・iDeCo共通)

NISAとiDeCoに共通する税制優遇が、運用益の非課税です。通常、株式や投資信託で得た売却益や配当金には20.315%の税金がかかりますが、NISA・iDeCo口座で運用すればこの税金が一切かかりません。

例えば、100万円を投資して150万円に増えた場合、利益は50万円です。通常の課税口座では約10万円(50万円×20.315%)の税金がかかりますが、NISA・iDeCo口座なら税金がかからず、50万円すべてを受け取れます。

国税庁:株式等の譲渡所得等の課税

長期運用では複利効果により資産が大きく増える可能性があるため、運用益の非課税メリットも大きくなります。20年、30年と運用を続けることで、税制優遇の効果を最大限に活かせます。

所得控除のメリット(iDeCoのみ)

iDeCo最大のメリットが、掛金全額が所得控除の対象になる点です。拠出した掛金は、その年の所得から差し引かれるため、所得税と住民税が軽減されます。NISAにはこの所得控除がありません。

具体的な節税額を計算してみましょう。年収500万円の会社員(所得税率10%、住民税率10%)が、iDeCoに月2万円(年24万円)を拠出した場合、所得税は2.4万円、住民税は2.4万円、合計4.8万円の税負担が軽減されます。

これを30年間続けた場合、節税額の合計は144万円にもなります。さらに、この節税分を再投資すれば、複利効果でさらに資産を増やすことも可能です。所得税率が高い方ほど節税効果も大きくなるため、高所得者ほどiDeCoのメリットを享受できます。

ただし、所得控除を受けるには年末調整(会社員)または確定申告(自営業者)での申請が必要です。手続きを忘れると控除を受けられないため、必ず申請しましょう。

受取時の税制優遇(iDeCoのみ)

iDeCoには、受取時にも税制優遇があります。年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用され、一定額まで税金がかかりません。

退職所得控除は、勤続年数(iDeCoの場合は加入期間)に応じて控除額が決まります。加入期間20年以下の場合は「40万円×加入年数」、20年超の場合は「800万円+70万円×(加入年数-20年)」が控除額です。例えば、30年間加入した場合の控除額は1,500万円となります。

年金形式で受け取る場合は、公的年金等控除が適用されます。65歳未満は年60万円まで、65歳以上は年110万円までが非課税です。ただし、公的年金や企業年金と合算されるため、受取額が多い場合は課税される可能性があります。

受取時の税制優遇を最大限活用するには、受取方法や受取時期を工夫することが重要です。退職金や公的年金の受取時期と調整することで、税負担を最小限に抑えられます。

資金の引き出しルール|いつ使えるお金なのか

NISAとiDeCoの大きな違いの一つが、資金の引き出しルールです。この違いを理解しておかないと、必要なときに資金を使えないという事態になりかねません。

ここでは、それぞれの引き出しルールを詳しく解説します。

NISAはいつでも引き出せる

NISAの最大の特徴は、資金をいつでも自由に引き出せる点です。保有している投資信託や株式を売却すれば、数営業日後に現金を受け取ることができます。引き出しに年齢制限や回数制限はなく、必要なときにいつでも現金化できます。

例えば、住宅購入の頭金が必要になった、子どもの教育費が必要になった、急な医療費が発生したなど、予期せぬ出費があった場合でも、NISA口座の資産を売却して対応できます。この柔軟性は、老後より前に使う予定がある資金の運用に適しています。

また、2024年からの新NISAでは、売却した商品の購入時の金額分の非課税枠が翌年以降に復活し、再利用できるようになりました。例えば、100万円で購入した投資信託を売却すれば、翌年に再び100万円分の非課税枠が使えるようになります。ただし、年間投資枠(360万円)を超えて投資することはできません。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

iDeCoは原則60歳まで引き出せない

iDeCoは老後資金を準備するための制度であるため、原則として60歳になるまで資金を引き出すことができません。これは、途中で引き出して使ってしまわないよう、老後資金を確実に準備するための制度設計です。

60歳から資金を受け取るには、iDeCoへの加入期間が10年以上必要です。加入期間が10年未満の場合、受取開始年齢が以下のように繰り下がります。

  • 加入期間8年以上10年未満:61歳から受取可能
  • 加入期間6年以上8年未満:62歳から受取可能
  • 加入期間4年以上6年未満:63歳から受取可能
  • 加入期間2年以上4年未満:64歳から受取可能
  • 加入期間1月以上2年未満:65歳から受取可能

60歳で受け取るには、50歳未満で加入する必要があります。50歳以降に加入すると、受取開始年齢が繰り下がる点に注意しましょう。また、受取開始は60歳から75歳の間に行う必要があり、75歳を超えても受取手続きをしなかった場合は、自動的に一時金として受け取ることになります。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

なお、iDeCoには例外的に60歳より前に引き出せるケースもありますが、非常に限定的です。加入者が死亡した場合や高度障害状態になった場合など、特別な事情がある場合に限られます。通常の生活費や住宅購入、教育資金などの目的では引き出せないため、iDeCoで運用する資金は60歳まで使わない余裕資金に限定しましょう。

投資上限額の違い|職業別の拠出限度額

NISAとiDeCoでは、年間に投資できる上限額が大きく異なります。特にiDeCoは職業や企業年金の加入状況によって拠出限度額が細かく設定されているため、自分がいくらまで拠出できるのかを正確に把握することが重要です。

ここでは、それぞれの投資上限額を詳しく解説します。

NISAの投資上限額

NISAの年間投資上限額は、職業や年齢に関係なくすべての人が同じです。つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円で、両方を併用すれば年間最大360万円まで非課税で投資できます。

また、生涯にわたって非課税で保有できる限度額(非課税保有限度額)は1,800万円です。ただし、成長投資枠のみで投資する場合は1,200万円が上限となります。つみたて投資枠と成長投資枠を併用すれば、1,800万円の枠をすべて活用できます。

年間投資枠は毎年リセットされ、使い切れなかった枠を翌年に繰り越すことはできません。例えば、2024年につみたて投資枠で80万円しか投資しなかった場合、残りの40万円を2025年に繰り越すことはできず、2025年の年間投資枠は120万円のままです。

金融庁:新しいNISA

iDeCoの拠出限度額(職業別)

iDeCoの拠出限度額は、職業や企業年金の加入状況によって以下のように異なります。2024年12月の制度改正により、企業年金加入者や公務員の上限額が引き上げられました。

職業・加入状況 月額上限 年額上限
自営業者・フリーランス・学生(国民年金第1号被保険者) 6.8万円 81.6万円
企業年金のない会社員 2.3万円 27.6万円
企業型DCのみ加入している会社員 2.0万円 24.0万円
確定給付企業年金(DB)に加入している会社員 2.0万円 24.0万円
企業型DCとDBの両方に加入している会社員 2.0万円 24.0万円
公務員 2.0万円 24.0万円
専業主婦(夫)(国民年金第3号被保険者) 2.3万円 27.6万円

自営業者・フリーランスの拠出限度額が最も高く、月6.8万円(年81.6万円)です。これは、自営業者には厚生年金がなく、老後資金を自分で準備する必要があるためです。ただし、国民年金基金や国民年金付加保険料と合算しての上限額となる点に注意しましょう。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

会社員の場合、企業年金の有無によって上限額が異なります。企業年金のない会社員は月2.3万円まで拠出できますが、企業型DCや確定給付企業年金(DB)に加入している場合は月2.0万円が上限です。2024年12月の制度改正により、企業年金加入者や公務員の上限額が月1.2万円から2.0万円に引き上げられました。

また、企業型DCとiDeCoを併用する場合、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金を合算して月5.5万円が上限となります。企業型DCの掛金が多い場合、iDeCoに拠出できる金額が少なくなる、あるいは拠出できなくなる可能性がある点に注意が必要です。

NISAとiDeCoの選び方|目的別の判断基準

NISAとiDeCoのどちらを選ぶべきか、あるいは両方を併用すべきかは、資金を使う目的やライフプランによって異なります。ここでは、目的別に具体的な選び方を解説します。

老後資金を準備したい場合

老後資金を準備することが主な目的であれば、iDeCoを優先するのがおすすめです。iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税、受取時にも控除が適用されるため、税制優遇が非常に手厚い制度です。

例えば、年収500万円の会社員が30歳から60歳までの30年間、月2万円(年24万円)をiDeCoで積み立てた場合、掛金総額は720万円です。これに加えて、所得控除による節税額が年4.8万円×30年=144万円となり、実質的な負担は576万円で済みます。

さらに、運用益が非課税になるため、年3%で運用できた場合、60歳時点の資産は約1,165万円になります。通常の課税口座で同じ運用をした場合と比べて、約100万円以上の差が出る計算です。

老後資金を確実に準備したい方、所得控除で節税したい方は、まずiDeCoから始めましょう。ただし、60歳まで引き出せない制約があるため、生活費や緊急時の資金は別に確保しておくことが重要です。

住宅購入・教育資金など近い将来の資金を準備したい場合

住宅購入の頭金、子どもの教育資金、車の購入資金など、60歳より前に使う予定がある資金を準備したい場合は、NISAが適しています。NISAはいつでも引き出せるため、必要なタイミングで資金を使えます。

例えば、30歳から10年後の40歳で住宅を購入する予定がある場合、iDeCoで積み立てると60歳まで引き出せないため使えません。この場合はNISAで積み立てることで、必要なタイミングで売却して頭金に充てることができます。

NISAのつみたて投資枠を活用すれば、月10万円(年120万円)まで積立投資が可能です。10年間で1,200万円を積み立てられ、運用益も非課税になるため、効率的に資金を準備できます。

また、成長投資枠を併用すれば、ボーナス時にまとまった金額を投資することも可能です。ライフイベントに合わせて柔軟に資金を準備したい方は、NISAを優先しましょう。

所得控除で節税したい場合

所得税や住民税の負担を軽減したい方は、iDeCoが最適です。iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となるため、拠出した金額がそのまま所得から差し引かれ、税負担が軽減されます。

特に、所得税率が高い方ほど節税効果も大きくなります。例えば、年収800万円の会社員(所得税率20%、住民税率10%)が月2万円(年24万円)を拠出した場合、年間約7.2万円の税負担が軽減されます。30年間で216万円もの節税効果が得られます。

NISAには掛金の所得控除がないため、節税を重視する方はiDeCoを優先しましょう。ただし、iDeCoには60歳まで引き出せない制約があるため、生活費や緊急時の資金を確保したうえで、余裕資金で拠出することが重要です。

投資初心者で少額から始めたい場合

投資初心者で少額から始めたい方は、NISAから始めるのがおすすめです。NISAは金融機関によっては月100円から積立投資ができ、いつでも引き出せるため、初心者でも始めやすい制度です。

また、NISAのつみたて投資枠で購入できる投資信託は、金融庁が定める基準を満たした長期・積立・分散投資に適した商品に限定されています。投資初心者でも安心して選べる商品ラインナップとなっているため、商品選びに迷うこともありません。

まずはNISAで少額から投資を始めて、投資に慣れてきたらiDeCoも併用するという方法もあります。投資経験を積みながら、自分に合った運用方法を見つけていきましょう。

NISAとiDeCoの併用について|メリットと注意点

NISAとiDeCoは併用が可能です。両制度にはそれぞれ異なるメリットがあるため、併用することで税制優遇を最大限に活用できます。ここでは、併用のメリットと具体的なシミュレーション、注意点を解説します。

併用は可能|それぞれのメリットを活かせる

NISAとiDeCoは、どちらか一方を選ぶ必要はなく、両方を併用することができます。併用することで、それぞれの制度のメリットを組み合わせて活用できます。

例えば、老後資金はiDeCoで準備し、住宅購入や教育資金などのライフイベント資金はNISAで準備するという使い分けが可能です。iDeCoで所得控除のメリットを享受しながら、NISAでいつでも引き出せる柔軟性も確保できます。

併用することで、税制優遇を最大限に活用しながら、ライフステージに応じた柔軟な資産形成が可能になります。資金に余裕がある方は、両制度を併用することを検討しましょう。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

併用時の具体的なシミュレーション

NISAとiDeCoを併用した場合の具体的なシミュレーションを見てみましょう。30歳の会社員(年収500万円、企業年金なし)が、iDeCoに月2万円、NISAに月3万円を積み立てた場合を想定します。

iDeCo(月2万円×30年間)
60歳時点で約1,165万円。掛金総額720万円、所得控除による節税額144万円、実質負担576万円。運用益約445万円が非課税。
NISA(月3万円×30年間)
資産は約1,748万円。掛金総額1,080万円、運用益約668万円が非課税。
併用の合計効果
60歳時点の資産約2,913万円、運用益約1,113万円が非課税、iDeCo所得控除144万円を加えると税制優遇総額約1,257万円。

併用することで、60歳時点の資産は約2,913万円となり、運用益約1,113万円がすべて非課税になります。さらに、iDeCoの所得控除による節税額144万円を加えると、税制優遇の総額は約1,257万円にもなります。

併用する際の注意点

NISAとiDeCoを併用する際の注意点は以下の通りです。

併用時の注意点

  • 生活費を圧迫しない範囲で拠出する:無理な積立は続かない
  • 緊急時の資金を別に確保する:iDeCoは60歳まで引き出せないため、生活防衛資金は別に用意する
  • iDeCoの手数料を考慮する:少額の拠出では手数料負担が大きくなる
  • 受取時の税金も考慮する:iDeCoの受取時には控除額を超える部分に課税される可能性がある
  • ライフプランに応じて配分を調整する:住宅購入や教育資金の予定に応じてNISAとiDeCoの配分を見直す

特に重要なのは、生活費を圧迫しない範囲で拠出することです。無理な積立は続かず、途中で拠出を停止せざるを得なくなります。また、iDeCoは60歳まで引き出せないため、生活防衛資金(生活費6ヶ月分程度)は別に確保しておきましょう。

よくある質問(Q&A)

よくある質問(Q&A)
NISAとiDeCoはどちらを優先すべき?

資金を使う目的によって優先順位が異なります。老後資金を準備したい方、所得控除で節税したい方はiDeCoを優先しましょう。住宅購入や教育資金など60歳より前に使う予定がある方、投資初心者で少額から始めたい方はNISAを優先するのがおすすめです。資金に余裕がある方は、両制度を併用することで税制優遇を最大限に活用できます。

転職・退職したらiDeCoはどうなる?

転職した場合、iDeCoは継続できます。ただし、転職先の企業年金の加入状況によって拠出限度額が変わる可能性があるため、変更手続きが必要です。退職して自営業者になった場合は、拠出限度額が月6.8万円に増えます。専業主婦(夫)になった場合は、月2.3万円まで拠出できます。転職・退職時には、金融機関に連絡して必要な手続きを行いましょう。

元本割れのリスクはどれくらい?

NISAもiDeCoも、投資信託で運用する場合は価格変動により元本割れのリスクがあります。ただし、長期・積立・分散投資を行うことで、リスクを軽減できます。金融庁の資料によると、国内外の株式・債券に分散投資し、20年間積立投資を行った場合、運用成果は年率2~8%の範囲に収まる可能性が高いとされています。短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点で運用することが重要です。

確定申告や年末調整は必要?

NISAは確定申告や年末調整は不要です。NISA口座で得た利益は非課税のため、申告の必要がありません。一方、iDeCoの掛金の所得控除を受けるには、会社員は年末調整、自営業者は確定申告での申請が必要です。会社員の場合、毎年10月頃に国民年金基金連合会から送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」を年末調整時に提出します。手続きを忘れると控除を受けられないため、必ず申請しましょう。

途中で制度を変更できる?

NISAとiDeCoは別々の制度のため、どちらか一方を選ぶ必要はありません。NISAで運用しながらiDeCoを始めることも、その逆も可能です。ただし、iDeCoの掛金額は年1回しか変更できません。また、一度拠出した掛金は60歳まで引き出せないため、慎重に判断しましょう。NISAは売却していつでも引き出せるため、柔軟に対応できます。

どの金融機関で始めるのがおすすめ?

金融機関を選ぶ際は、手数料、商品ラインナップ、サポート体制を比較しましょう。NISAの場合、SBI証券や楽天証券などの大手ネット証券は、取扱商品が豊富で手数料も低い傾向があります。iDeCoの場合、運営管理手数料が無料の金融機関を選ぶことで、コストを抑えられます。また、投資初心者の方は、サポート体制が充実している金融機関を選ぶと安心です。複数の金融機関を比較して、自分に合ったところを選びましょう。

まとめ

NISAとiDeCoは、どちらも税制優遇を受けながら資産形成ができる制度ですが、その特徴や目的は大きく異なります。NISAはいつでも引き出せる柔軟性が魅力で、住宅購入や教育資金など60歳より前に使う予定がある資金の運用に適しています。一方、iDeCoは60歳まで引き出せない制約がある代わりに、掛金の所得控除など税制優遇が非常に手厚く、老後資金の準備に最適です。

どちらを選ぶかは、資金を使う目的やライフプランによって異なります。老後資金を準備したい方、所得控除で節税したい方はiDeCoを優先しましょう。住宅購入や教育資金など近い将来の資金を準備したい方、投資初心者で少額から始めたい方はNISAを優先するのがおすすめです。

また、NISAとiDeCoは併用が可能です。老後資金はiDeCoで、ライフイベント資金はNISAでと使い分けることで、それぞれのメリットを最大限に活用できます。資金に余裕がある方は、両制度の併用を検討しましょう。

投資には元本割れのリスクがあります。ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。詳しくは各証券会社・金融機関にご確認ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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