大和証券グループ本社の株価|配当・優待と投資判断のポイント

キオクシアホールディングスのIPOが2024年12月18日に実施され、公募価格1,455円に対して初値1,440円と公募割れでスタートしました。
2024年最大級のIPOとして注目を集めたキオクシアですが、公募価格が仮条件の上限で決まらず、投資家の慎重姿勢が浮き彫りになりました。
この記事では、キオクシアIPOの基本情報から初値の分析、申込方法、証券会社の選び方まで、IPO投資に必要な情報を網羅的に解説します。
2020年の上場延期から再挑戦となった今回のIPOは、半導体業界の現状とNAND型フラッシュメモリ市場の動向を映す重要な案件でした。
すでに上場済みですが、今後のIPO投資の参考として、キオクシアの事例から学べるポイントをお伝えします。
目次
キオクシアIPOとは?基本情報と上場スケジュール
キオクシアホールディングスは、NAND型フラッシュメモリの開発・製造・販売を手がける半導体メーカーです。2024年12月18日に東京証券取引所プライム市場へ上場し、東京メトロに次ぐ2024年第2位の大型IPOとなりました。
キオクシアは、1987年に世界で初めてNAND型フラッシュメモリを発明した東芝メモリ(現キオクシア)を前身とする企業です。NAND型フラッシュメモリは、スマートフォンやパソコン、データセンターなどで使用される記憶媒体で、電源を切ってもデータが消えない「不揮発性」が特徴なんです。
同社は3次元フラッシュメモリ技術「BiCS FLASH」を開発し、現在は第8世代の218層積層技術を量産しています。製造合弁契約を結ぶWestern Digitalグループと合わせたフラッシュメモリのビット生産量は、世界シェア約31%(2024年4-6月期)を占める世界最大級の規模です。
主な製品は、SSD(ソリッドステートドライブ)、スマートフォン向けメモリ、データセンター向けストレージなど。AI市場の拡大により、データセンター向けSSDの需要が伸長しています。
キオクシアIPOのスケジュールは、承認前提出方式(S-1方式)が採用されたことで、通常のIPOより短期間で進行しました。仮条件は2024年12月2日に1,390円~1,520円と決定され、需要状況によっては1,112円~1,824円の範囲で公開価格を決定する可能性も示されていました。
仮条件の上限1,520円には届かず、投資家の慎重な姿勢が表れる結果となりました。証券会社によってスケジュールが異なる場合があるため、申込時は各証券会社の情報を必ず確認する必要があります。
楽天証券のように後期抽選型を採用する証券会社では、同一資金で複数回抽選を受けられる仕組みもあります。
キオクシアIPOの公募規模は、オーバーアロットメント(追加売出)を含めて約1,150億円と大型案件でした。公開株数は82,733,900株で、このうち海外募集分を除いた国内募集分は49,640,300株。売買単位が100株のため、当選本数は496,403枚と非常に多く、当選確率は比較的高い部類に入ります。
公開価格1,455円ベースの想定時価総額は約7,493億円でした。これは当初目標の1.5兆円を大きく下回る水準で、2020年の上場延期時の想定時価総額1.8兆円からも半分以下に縮小しています。初値1,440円での時価総額は約7,763億円、終値1,601円では約8,630億円となりました。
当選本数が496,403枚と非常に多かったため、IPOとしては当選確率が高い部類に入りました。
吸収金額の大きさと時価総額の下方修正は、IPO市場での需給バランスに影響を与え、公募割れリスクの一因となったと考えられます。
初値予想と投資判断
キオクシアIPOの初値予想は、IPO専門サイトの多くが「公募価格前後~やや上」という慎重な見方を示していました。実際の初値は1,440円と公募価格を15円(約1%)下回る公募割れとなりましたが、その後買いが入り終値は1,601円(公募価格比+10%)まで回復しています。
初値予想が慎重だった主な根拠は、公募価格が仮条件の上限で決まらなかったことです。仮条件の上限価格で公開価格が決まらないIPOは、機関投資家からの需要が想定より弱く、公募割れのリスクが高まる傾向があります。実際、キオクシアのブックビルディングでは、総需要株式数が公開株式数を上回ったものの、供給を満たす程度の需要にとどまったとされています。
また、公開規模1,150億円という大型案件であることも、初値の上値を重くする要因でした。大型IPOは小型IPOに比べて初値騰落率が小さくなる傾向があり、短期的な利益を狙う投資家の参加意欲を抑制します。
公開価格ベースのPERは約2.7倍と、競合企業のPER5倍前後に比べて割安水準にあったことは、プラス材料として評価されていました。
ただし、通期業績予想が開示されておらず四半期予想のみだったため、株価評価の難しさも指摘されていました。
キオクシアIPOのプラス材料として、まず市況回復による業績改善が挙げられます。2025年3月期の中間利益は過去最高の1,760億円を記録し、AI市場の拡大によるデータセンター向けSSD需要の伸長が業績を押し上げました。
キオクシアIPOのプラス材料
✓ 業績回復:2025年3月期中間利益が過去最高の1,760億円
✓ 技術力:世界初のNAND型フラッシュメモリ発明企業としての先行優位性
✓ 市場シェア:Western Digitalとの合弁で世界シェア約31%を確保
✓ AI需要:データセンター向けSSD需要の伸長
✓ S-1方式:日本初の承認前提出方式採用で柔軟な上場時期選択が可能
技術面では、世界初のNAND型フラッシュメモリ発明企業としての技術力と、3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」での先行優位性があります。第8世代は積層数が競合より少ないにもかかわらず、チップ面積を20%小さくできる技術力を示しました。
また、S-1方式(承認前提出方式)を日本で初めて採用したIPOという特殊性も注目されました。この方式により、市況を見ながら上場時期を選択できる柔軟性が生まれ、企業側にとって有利なタイミングでの上場が可能になります。
最大の懸念点は、NAND型フラッシュメモリ専業であることによる市況変動リスクです。半導体メモリ市場は需給バランスにより販売価格が大きく変動し、業績が周期的に上下するサイクルがあります。実際、2024年3月期は2期連続赤字と苦戦しており、市況悪化時の業績下振れリスクは無視できません。
2020年の上場延期から時価総額が半減したことも、マーケットの評価が厳しいことを示しています。当初目標の1.5兆円に対し、今回は約7,500億円規模での上場となり、企業価値の見直しが行われました。
さらに、PC・スマートフォン向け需要が顧客の在庫高水準により弱含んでおり、短期的な需要回復には時間を要する見込みです。グローバルオファリング(海外販売)の比率が65.7%と高く、国内投資家向けの供給が限定的だったことも、需給面でのマイナス要因でした。
キオクシアIPOは、実際に公募割れが発生しました。公募価格1,455円に対し初値1,440円と約1%下回る結果となり、IPO専門サイトの多くが事前に指摘していた公募割れリスクが現実のものとなっています。
公募割れの主な要因は、公募価格が仮条件上限で決まらなかったこと、大型案件による需給の緩さ、半導体市況への不透明感などが複合的に作用したと考えられます。ただし、初値での公募割れ幅は限定的で、その後は個人投資家の買いが入り、終値では公募価格を10%上回る1,601円まで回復しました。
公募割れリスクを事前に察知するポイントとして、仮条件の決定状況が重要です。仮条件の上限価格で公開価格が決まらない場合、機関投資家からの需要が弱いことを示し、公募割れリスクが高まります。
また、大型案件や業績の変動が大きい業種では、慎重な投資判断が求められます。
S-1方式とは?通常のIPOとの違いと投資家への影響
キオクシアIPOでは、日本で初めて「S-1方式(承認前提出方式)」が採用されました。この方式は、従来のIPOプロセスとは異なる特徴を持ち、企業側と投資家側の両方に影響を与えます。
S-1方式とは、東京証券取引所が上場を承認する前に、金融庁に有価証券届出書を提出する方式です。従来の日本のIPOでは、まず東証の上場承認を得てから金融庁に届出書を提出していましたが、S-1方式ではこの順序が逆転します。
この方式により、上場承認から上場日までのスケジュールを約10日短縮できるんです。キオクシアの場合、2024年11月22日に上場承認を得て、12月18日に上場と、約1ヶ月弱のスピード上場を実現しました。
企業側は、2024年12月~2025年6月の間で上場時期を選択でき、市況を見ながら最適なタイミングで上場できる柔軟性を得られます。
S-1方式では、機関投資家からの事前ヒアリングを実施し、需要を把握した上で仮条件を設定します。このため、市場の受容性を確認してから上場プロセスを進められるメリットがあります。
通常のIPOとS-1方式の最大の違いは、上場スケジュールの柔軟性です。従来方式では、上場承認後は原則として予定通りに上場を進める必要がありましたが、S-1方式では企業が市況を見ながら上場時期を選択できます。
| 項目 | 通常のIPO | S-1方式 |
| 届出書提出タイミング | 上場承認後 | 上場承認前 |
| 上場時期の柔軟性 | 固定的 | 選択可能(6ヶ月間) |
| 上場承認から上場日までの期間 | 約1ヶ月半 | 約1ヶ月 |
| 投資家の情報開示 | 上場承認後 | 上場承認前から可能 |
また、届出書提出のタイミングも異なります。S-1方式では上場承認前に金融庁への届出を行うため、投資家は上場承認前から企業情報を確認できるようになります。これにより、情報開示の透明性が高まる効果も期待されています。
スケジュール面では、上場承認から上場日までの期間が通常より短縮されます。投資家にとっては、ブックビルディング期間から上場日までの期間が短くなり、資金拘束期間も短縮されるメリットがあります。
投資家にとってのメリットは、まず資金拘束期間の短縮です。S-1方式ではスケジュールが短縮されるため、申込から上場までの期間が短くなり、資金効率が向上します。また、企業が市況を見て上場時期を選択できることで、市況が良好なタイミングでの上場となる可能性が高まり、初値パフォーマンスの向上も期待できます。
企業側が有利なタイミングを選んで上場できるため、投資家側からすると「企業に都合の良い条件での上場」となるリスクがあります。キオクシアの場合、AI需要による市況回復を見計らって最速での上場を選択しましたが、公募価格が仮条件上限に届かず、市場の評価は慎重でした。
また、S-1方式はまだ日本では実績が少なく、今後の運用状況を見極める必要があります。キオクシアが初の適用例となったため、この結果が今後のS-1方式IPOの評価に影響を与える可能性があります。投資判断においては、通常のIPO以上に企業の選択理由や市況分析が重要になるでしょう。
キオクシアIPOに申し込める証券会社5社
キオクシアIPOは、主幹事証券を含む複数の証券会社で申込が可能でした。主幹事証券や引受幹事証券は配分数が多く、当選確率が高まる傾向があります。ここでは、特に配分が多いと見られる主要5社を紹介します。

SBI証券は、キオクシアIPOの主幹事証券の一つで、国内最大級の配分数が期待できる証券会社です。口座数約1,500万と国内最多を誇り、IPO取扱実績も年間78銘柄(2024年実績)と豊富なんです。
SBI証券の特徴
✓ 主幹事証券として圧倒的な配分数
✓ IPOチャレンジポイント制度で当選確率アップ
✓ NISA口座でのIPO申込対応
✓ 年間78銘柄のIPO取扱実績(2024年)
SBI証券のIPO抽選方式は、個人投資家向けに70%をポイント制度による優遇抽選、30%を完全平等抽選で配分しています。IPOチャレンジポイントを貯めることで、当選確率を上げられる仕組みが特徴です。落選するたびにポイントが貯まり、次回以降の申込でポイントを使用することで優先的に当選できます。
キオクシアIPOのような大型案件では、主幹事証券の配分数が圧倒的に多いため、SBI証券での申込は必須と言えるでしょう。

SMBC日興証券も、キオクシアIPOの主幹事証券として大きな配分を持っています。IPO取扱実績は年間52銘柄、主幹事実績は年間22社(2024年実績)と、主幹事としての実績が非常に豊富です。
SMBC日興証券の特徴
✓ 主幹事証券として豊富な配分
✓ ダイレクトコースで完全平等抽選(10%)
✓ 口座開設が最短即日で可能
✓ 主幹事実績年間22社(2024年)
SMBC日興証券のIPO抽選方式は、ダイレクトコース(オンライン取引)では10%が完全平等抽選、残りが営業部門での裁量配分となります。店頭取引中心の総合コースでは、担当者との取引実績に応じて配分される仕組みです。
ダイレクトコースでは、1口座1票の完全平等抽選のため、資金力に関係なく当選チャンスがあります。大型IPOでは主幹事証券の配分が全体の7~8割を占めることもあるため、SMBC日興証券での申込も重要度が高いと言えます。

野村證券は、キオクシアIPOの引受幹事証券として参加しています。日本最大手の証券会社として、IPO取扱実績は年間46銘柄、主幹事実績は年間16社(2024年実績)と、主幹事としての実績も豊富です。
野村證券のIPO抽選方式は、オンライン取引では完全平等抽選が採用されています。店頭取引では、担当者との取引実績や預かり資産に応じた配分も行われるため、大口顧客には有利な面があります。
引受幹事証券としての配分は主幹事ほど多くはありませんが、大手証券としての信頼性と安定したサービスが魅力です。口座開設には最短5営業日程度かかるため、IPO申込を検討する場合は早めの準備が必要になります。

楽天証券は、キオクシアIPOの引受幹事証券として参加し、ネット証券としての配分が期待できます。IPO取扱実績は年間56銘柄(2024年実績)と、ネット証券の中では上位の実績を持っています。
楽天証券の特徴
✓ 後期抽選型で同一資金を使い回せる
✓ 完全平等抽選(1口座1票)
✓ 楽天ポイントで投資可能
✓ 口座開設が最短翌営業日
楽天証券の特徴は、後期抽選型を採用している点です。購入申込期間の最終日にIPO抽選を行うため、手順を踏めば同一資金で他の証券会社と楽天証券の2回抽選を受けることが可能なんです。これにより、資金効率を高めながら当選確率を上げられます。
IPO抽選方式は完全平等抽選で、1口座1票の公平な抽選が行われます。楽天ポイントを使った投資も可能で、ポイントで投資信託を購入するなど、楽天経済圏を活用している方には使いやすい証券会社です。

マネックス証券は、キオクシアIPOの引受幹事証券として参加し、完全平等抽選を採用していることが最大の特徴です。IPO取扱実績は年間54銘柄(2024年実績)と、ネット証券の中では豊富な実績を持っています。
マネックス証券の特徴
✓ 100%完全平等抽選(資金力不問)
✓ IPO申込時の資金拘束なし(一部除く)
✓ 1口座1票の公平な抽選
✓ 口座開設が最短2営業日
マネックス証券のIPO抽選方式は、100%完全平等抽選です。資金力や取引実績に関係なく、すべての申込者が平等に抽選されるため、初心者や少額投資家にも当選チャンスがあります。1口座1票の抽選方式で、申込株数が多くても当選確率は変わりません。
また、マネックス証券はIPO申込時の資金拘束がなく、当選後に入金すればよい仕組みを採用しています(一部銘柄を除く)。これにより、資金効率を高めながら複数のIPOに申し込むことが可能です。
IPO当選確率を上げるには、複数の証券会社から申し込むことが基本戦略です。特に主幹事証券(SBI証券・SMBC日興証券)は配分数が多いため、必ず申し込むべきでしょう。
また、完全平等抽選を採用する証券会社(マネックス証券・楽天証券・松井証券など)は、資金力に関係なく当選チャンスがあるため、初心者にもおすすめです。後期抽選型の楽天証券を活用すれば、同一資金で複数回抽選を受けられ、資金効率も向上します。
IPO申込の手順
IPOに申し込むには、証券口座の開設から始まり、ブックビルディング、抽選、購入申込という一連の手順を踏む必要があります。初めての方でも分かりやすく、各ステップを解説します。
IPOに申し込むには、まず証券口座を開設する必要があります。ネット証券なら、スマートフォンやパソコンから24時間いつでも申込が可能です。口座開設には、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)とマイナンバーが必要になります。
最近では、マイナンバーカードを使った「eKYC(電子本人確認)」に対応している証券会社も多く、最短即日~翌営業日で口座開設が完了するんです。
口座開設が完了したら、ログインIDとパスワードが発行されます。初回ログイン後、取引パスワードを設定し、銀行口座を登録すれば取引開始の準備が整います。IPO申込には事前に資金を入金しておく必要がある証券会社が多いため、申込前に必要資金を確認して入金しましょう。
IPO申込は、ブックビルディング(需要申告)期間中に行います。証券会社のサイトにログインし、IPO銘柄一覧から申込したい銘柄を選択します。キオクシアの場合、仮条件1,390円~1,520円の範囲で希望価格を入力するか、「成行」を選択します。
希望価格を入力する場合は、仮条件の上限価格以上を入力するのが一般的です。上限価格未満を入力すると、公開価格が希望価格を上回った場合に抽選対象外となってしまうためです。「成行」を選択すれば、どの価格で決まっても抽選対象となります。
申込株数は、100株単位(1単元)から指定できます。キオクシアの場合、仮条件上限1,520円×100株=152,000円が必要資金の目安でした。申込内容を確認し、取引パスワードを入力して申込を完了します。申込後は、ブックビルディング期間中であれば取消や変更も可能です。
IPO当選確率を上げる最も効果的な方法は、複数の証券会社から申し込むことです。各証券会社の配分は独立しているため、申込数を増やせば当選確率も比例して上がります。特に、主幹事証券2社(SBI証券・SMBC日興証券)と、完全平等抽選の証券会社3~5社に申し込むのが基本戦略です。
資金効率を考えると、後期抽選型の楽天証券を活用するのがおすすめです。他の証券会社で抽選が終わった後に楽天証券の抽選が行われるため、同じ資金を使い回して複数回抽選を受けられます。また、マネックス証券のように申込時に資金拘束がない証券会社を活用すれば、さらに多くのIPOに申し込めます。
家族の口座を活用する方法もあります。配偶者や成人した子供の口座を開設し、それぞれの名義で申し込めば、当選確率は人数分だけ増加します。
抽選結果は、公開価格決定日の翌営業日に各証券会社のサイトで確認できます。当選した場合、購入申込期間中に購入の意思表示を行う必要があります。この手続きを忘れると、当選が無効になってしまうため注意が必要です。
購入申込時には、公開価格×株数分の資金が必要です。キオクシアの場合、公開価格1,455円×100株=145,500円が必要でした。証券会社によっては、申込時に既に資金が拘束されている場合と、当選後に入金する場合があります。
マネックス証券のように当選後入金の証券会社では、当選確認後に速やかに入金しましょう。購入申込を完了すると、上場日に株式が口座に入庫されます。
上場日の朝9時から売却注文を出すことができ、初値で売却するか保有を続けるかを選択できます。初値売却の場合は、成行注文で売却すれば初値で約定する可能性が高いです。
キオクシアの投資判断には、企業の業績推移と競争力の分析が欠かせません。NAND型フラッシュメモリ市場の動向と、同社の財務状況、競合との比較を見ていきましょう。
キオクシアの業績は、半導体メモリ市況の影響を大きく受けて変動しています。2023年3月期と2024年3月期は2期連続で赤字となり、市況悪化の影響が顕著に表れました。顧客の在庫水準上昇と需給バランスの急激な悪化により、販売価格が大幅に下落したことが主因です。
しかし、2025年3月期は市況が回復に転じ、業績も大きく改善しています。2025年3月期の中間利益は過去最高の1,760億円を記録し、黒字転換を果たしました。AI市場の拡大によるデータセンター向けSSD需要の伸長が、業績回復の原動力となっています。
2025年3月期第3四半期(2024年10-12月)の業績予想は、売上収益4,300億円~4,800億円(前四半期比0.2%減~10.6%減)、営業利益980億円~1,380億円(同17.0%減~41.1%減)と、減収減益が見込まれています。PC・スマートフォン向け需要の季節的要因と顧客の在庫調整により、短期的には弱含む状況が続く見通しです。
NAND型フラッシュメモリ市場は、中長期的には拡大が予想されています。世界における生成データ量は、2023年から2028年まで年平均成長率24.4%で成長し、2028年には394ゼタバイトまで伸長する見込みです。AI、クラウド、5G、IoTなどの普及により、大容量メモリの需要は今後も増加が見込まれます。
特に生成AIの普及拡大は、データセンター向けSSD需要を大きく押し上げています。AI学習や推論、検索拡張生成(RAG)に必要なデータ取り込みを支えるNANDフラッシュメモリとSSDは、新たなAIユースケースに合わせたソリューション開発が進んでいます。
一方で、NAND市況は周期的な変動があり、需給バランスの悪化時には販売価格が大幅に下落するリスクがあります。2022年後半から2024年前半にかけての市況悪化では、フラッシュメモリ製造業者各社が減産と投資抑制を実施し、需給バランスの改善を図りました。足元では販売単価の上昇率が緩やかになっており、市況の先行きには不透明感も残ります。
キオクシアは、米Western Digital(ウエスタンデジタル)グループと製造合弁契約を締結し、共同出資する製造合弁会社3社を設立しています。両社は、合弁事業を通じて四日市工場と北上工場の生産能力合計の約80%を共有し、キオクシアが残りの約20%を単独で所有する体制です。
製造合弁会社3社が所有する生産能力の各半分(上記2工場の生産能力合計の各約40%)が両社に割り当てられており、キオクシアは2工場の運営を行い、製造ノウハウを有しています。キオクシアは製造合弁会社3社の議決権の50.1%を所有し、資産、負債、収益、費用の50%を連結財務諸表に計上しています。
この合弁事業により、両社合わせたフラッシュメモリのビット生産量は世界最大級の約31%(2024年4-6月期)のシェアを確保しています。規模の経済によるコスト競争力が、キオクシアの強みの一つです。
ただし、2023年10月にWestern Digitalとの経営統合交渉が頓挫しており、今後の関係性には注視が必要でしょう。
NAND型フラッシュメモリ市場では、韓国のサムスン電子が世界シェア1位、SKハイニックスが2位、キオクシアが3位という構図です。サムスン電子は、NAND以外にもDRAMやシステムLSIなど幅広い半導体製品を手がける総合半導体メーカーで、規模とブランド力で優位に立っています。
SKハイニックスは、AI向けHBM(高帯域幅メモリ)で先行しており、エヌビディア向け供給で業績を大きく伸ばしています。NAND事業では、2021年にインテルのNAND事業を買収し、シェアを拡大しました。
| 企業名 | 強み | 弱み |
| サムスン電子 | 総合半導体メーカーとして規模とブランド力が圧倒的 | NAND単体では市況変動の影響を受ける |
| SKハイニックス | AI向けHBMで先行、エヌビディア向け供給で業績好調 | NAND事業は買収による拡大 |
| キオクシア | 世界初のNAND発明企業としての技術力、BiCS FLASH技術 | NAND専業で市況変動リスクが高い |
キオクシアの強みは、NAND型フラッシュメモリ専業としての技術力と、日本発の技術開発力です。1987年に世界初のNAND型フラッシュメモリを発明したパイオニアとして、3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」や、CBA(CMOS directly Bonded to Array)技術など、独自技術を持っています。第8世代は積層数が競合より少ないにもかかわらず、チップ面積を20%小さくできる技術力を示しました。
ただし、NAND専業であることは、市況変動リスクの高さにもつながります。競合がDRAMなど他の製品でリスク分散できるのに対し、キオクシアはNAND市況の影響を直接受けやすい構造です。今後は、NAND一辺倒からの脱却と、新しいメモリ技術の開発が中長期的な課題となるでしょう。
2020年の上場延期から今回の上場まで
キオクシアは、2020年10月に一度上場承認を得ながら、直前で上場を延期した経緯があります。それから約4年を経て、2024年12月に再び上場を果たしましたが、その間に何が変わったのでしょうか。
2020年9月28日、キオクシアは10月6日に予定していた上場を延期すると発表しました。延期の理由として、メモリ市況の悪化と新型コロナウイルス禍の影響が挙げられています。当時、NAND型フラッシュメモリの需給バランスが悪化し、販売価格の下落が続いていました。
また、報道によると、上場時の目標とする時価総額1.5兆円に届かなかったことが上場延期の理由とされています。2020年の仮条件は2,800円~3,500円で、公開規模は2,600億円~3,300億円程度と、今回の倍以上の規模が想定されていました。しかし、機関投資家からの需要が想定に届かず、目標時価総額での上場が困難と判断されたようです。
さらに、2020年時点では米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの影響で、半導体市場全体に不透明感が漂っていました。こうした外部環境の悪化も、上場延期の判断に影響を与えたと考えられます。
今回の上場では、想定時価総額が約7,493億円と、当初目標の1.5兆円から半減しました。2020年の仮条件上限3,500円に対し、今回の公開価格1,455円は約6割の水準です。この大幅な下方修正は、市場環境の変化と企業価値の再評価を反映しています。
時価総額の下方修正は、投資家にとっては割安な価格で購入できる機会となる一方、企業価値が低く評価されていることも意味します。公開価格ベースのPERは約2.7倍と、競合企業のPER5倍前後に比べて割安水準でしたが、それでも公募価格が仮条件上限に届かず、市場の評価は慎重でした。
時価総額の下方修正により、公開規模も約1,150億円と、2020年の半分以下に縮小しています。これにより需給バランスは改善したものの、大型案件であることに変わりはなく、初値形成には重石となりました。
企業側としては、妥協した価格設定という印象を持たざるを得ない状況だったと言えるでしょう。
今回の上場では、いくつかの改善ポイントがありました。まず、業績が回復傾向にあることです。2025年3月期の中間利益は過去最高の1,760億円を記録し、AI市場の拡大によるデータセンター向けSSD需要が業績を押し上げています。2020年時点では市況悪化局面でしたが、今回は市況回復のタイミングを捉えた上場となりました。
また、S-1方式(承認前提出方式)の採用により、上場時期を柔軟に選択できるようになったことも改善点です。2024年12月~2025年6月の間で上場時期を選べる中、市況回復を見計らって最速の12月を選択しました。企業側にとって有利なタイミングでの上場が可能になったことは、大きな進歩と言えます。
さらに、北上工場の第2製造棟(K2棟)が2024年7月に完成し、2025年秋から稼働予定であることも、生産能力拡大の観点からプラス材料です。第8世代の218層3次元NANDフラッシュメモリを生産し、AI需要に対応する体制が整いつつあります。
ただし、Western Digitalとの経営統合が頓挫したことや、NAND専業であることのリスクは依然として残っており、中長期的な成長戦略には課題も残ります。
上場後の株価予想と長期保有の是非
キオクシアは初値1,440円(公募割れ)でスタートしましたが、その後1,601円まで回復しました。上場後の株価はどのように推移するのか、初値売りと長期保有のどちらが有利かを考察します。
キオクシアIPOでは、初値1,440円で売却した場合、100株あたり1,500円の損失(手数料除く)となりました。一方、終値1,601円まで保有した場合は、100株あたり14,600円の利益となり、初値売りより大きな利益を得られた計算です。
| 戦略 | メリット | デメリット |
| 初値売り | 確実に利益(損失)を確定、上場後のリスク回避 | 初値後の株価上昇の恩恵を受けられない |
| 長期保有 | 企業の成長による株価上昇の恩恵、配当収入 | 株価下落リスク、市況変動の影響 |
初値売りのメリットは、確実に利益(または損失)を確定できることです。IPO投資の基本戦略は初値売りで、上場後の株価変動リスクを避けられます。キオクシアのように公募割れした場合でも、損失を限定できる点は重要です。
長期保有のメリットは、企業の成長による株価上昇の恩恵を受けられることです。キオクシアの場合、AI需要の拡大によるNAND市場の成長が期待でき、中長期的な株価上昇の可能性があります。
キオクシアの上場後の値動きシナリオとして、いくつかのパターンが考えられます。まず、ポジティブシナリオは、AI需要の拡大が続き、データセンター向けSSD需要が堅調に推移するケースです。このシナリオでは、業績の安定的な成長が期待でき、株価も緩やかな上昇トレンドを描く可能性があります。
ネガティブシナリオは、NAND市況が再び悪化し、販売価格の下落が進むケースです。PC・スマートフォン向け需要の低迷が長期化し、在庫調整が進まない場合、業績の下振れリスクが高まります。このシナリオでは、株価は公開価格を下回る水準で推移する可能性もあります。
中立シナリオは、市況の緩やかな回復と調整を繰り返しながら、横ばい圏で推移するケースです。AI需要は堅調だが、PC・スマホ向けは低迷という二極化が続く場合、業績は安定と変動を繰り返し、株価もレンジ相場となる可能性があります。いずれのシナリオでも、四半期ごとの業績発表と市況動向を注視する必要があるでしょう。
長期投資の観点から、キオクシアには一定の魅力があります。まず、NAND型フラッシュメモリ市場の中長期的な成長が見込まれることです。生成データ量は年平均成長率24.4%で拡大が予想され、AI、クラウド、5G、IoTの普及により、大容量メモリの需要は増加が見込まれます。
長期投資としての魅力
✓ NAND市場の中長期的な成長(年平均成長率24.4%)
✓ 世界初のNAND発明企業としての技術力
✓ 次世代技術(第9世代、第10世代)の開発進行中
✓ 公開価格ベースのPER約2.7倍と割安水準
技術面では、世界初のNAND型フラッシュメモリ発明企業としての技術力と、3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」での先行優位性があります。次世代の第9世代、第10世代の開発も進んでおり、2030~31年には1,000層超えのNANDを量産化する計画です。技術革新による競争力維持が期待できます。
また、公開価格ベースのPER約2.7倍は、競合企業のPER5倍前後に比べて割安水準です。市況回復が本格化すれば、バリュエーションの見直しによる株価上昇の余地もあります。
ただし、NAND専業であることによる市況変動リスク、競合との競争激化、Western Digitalとの関係性など、リスク要因も存在します。長期投資を検討する場合は、これらのリスクを十分に理解した上で、分散投資の一環として位置づけるのが賢明でしょう。
キオクシアIPOの申込に必要な資金は、仮条件の上限価格1,520円×100株=152,000円が目安でした。最終的な公開価格は1,455円に決定したため、実際の購入には145,500円が必要でした。証券会社によっては、申込時に仮条件上限価格分の資金を入金しておく必要があります。
複数の証券会社から申し込む場合、各証券会社の口座にそれぞれ資金を入金する必要があります。ただし、マネックス証券のように申込時に資金拘束がない証券会社や、楽天証券のように後期抽選型を採用する証券会社を活用すれば、同じ資金を使い回すことも可能です。
複数の証券会社からIPOに申し込むことは、全く問題ありません。むしろ、当選確率を上げるための基本戦略として推奨されています。各証券会社の配分は独立しているため、複数社に申し込むことで当選チャンスが増えます。
ただし、複数社で当選した場合、すべての当選分を購入する資金が必要になります。資金が不足する場合は、一部の当選を辞退することも可能ですが、証券会社によってはペナルティが課される場合があります。申込時は購入可能な範囲で申し込むことが大切です。
キオクシアIPOの当選確率は、公開株数が49,640,300株(国内分)と非常に多かったため、通常のIPOより高かったと考えられます。売買単位100株で計算すると、当選本数は496,403枚となり、かなり当たりやすい部類に入ります。
ただし、具体的な当選確率は証券会社や申込者数によって異なります。主幹事証券(SBI証券・SMBC日興証券)は配分数が多いため、当選確率が高い傾向があります。完全平等抽選を採用する証券会社では、資金力に関係なく平等に抽選されるため、初心者にもチャンスがあります。
ブックビルディング期間中であれば、IPO申込のキャンセルや変更が可能です。証券会社のサイトにログインし、申込内容の取消や希望価格の変更ができます。ブックビルディング期間が終了すると、キャンセルはできなくなります。
抽選後、当選した場合の購入申込期間中にキャンセル(購入辞退)することも可能です。ただし、証券会社によってはペナルティが課される場合があります。購入辞退を検討する場合は、各証券会社のルールを事前に確認しておくことが重要です。
NISA口座でIPO株を購入することは可能です。多くの証券会社がNISA口座でのIPO申込に対応しており、当選した場合はNISA枠で購入できます。NISA口座で購入したIPO株の売却益は非課税となるため、通常の課税口座(特定口座・一般口座)で購入するより税制面で有利です。
ただし、NISA口座は1人1口座しか開設できないため、複数の証券会社でNISA口座を使い分けることはできません。また、年間の非課税投資枠(成長投資枠240万円)があり、IPO株の購入がこの枠を消費します。
上場日に必ずIPO株を売却する必要はありません。売却するかどうかは、投資家自身の判断で決められます。IPO投資の基本戦略は初値売りですが、企業の成長性に期待して長期保有を選択することも可能です。
初値売りのメリットは、確実に利益(または損失)を確定できることです。一方、長期保有のメリットは、企業の成長による株価上昇の恩恵を受けられることです。どちらを選択するかは、投資目的やリスク許容度によって異なります。
資金拘束期間は、証券会社によって異なります。多くの証券会社では、ブックビルディング申込時から上場日まで資金が拘束されます。キオクシアの場合、ブックビルディング期間が12月4日~9日、上場日が12月18日だったため、約2週間程度の資金拘束期間がありました。
ただし、マネックス証券のように申込時に資金拘束がなく、当選後に入金すればよい証券会社もあります。また、楽天証券は後期抽選型のため、購入申込期間の最終日に抽選が行われ、資金拘束期間が短くなります。
キオクシアIPOは、2024年最大級の案件として注目を集めましたが、公募価格1,455円に対して初値1,440円と公募割れでスタートしました。公募価格が仮条件の上限で決まらなかったことが、公募割れリスクの兆候として表れた形です。
ただし、初値後は個人投資家の買いが入り、終値は1,601円まで回復しました。公開価格ベースのPER約2.7倍という割安水準と、AI需要の拡大によるNAND市場の成長期待が、買い材料として評価されたと考えられます。
IPO投資で当選確率を上げるには、主幹事証券(SBI証券・SMBC日興証券)を中心に、複数の証券会社から申し込むことが基本戦略です。完全平等抽選を採用する証券会社や、後期抽選型の楽天証券を活用することで、資金効率を高めながら当選チャンスを増やせます。
キオクシアの中長期的な投資価値は、NAND型フラッシュメモリ市場の成長と、同社の技術力に依存します。AI、クラウド、5G、IoTの普及により大容量メモリの需要は拡大が見込まれますが、半導体市況の変動リスクや競合との競争激化など、リスク要因も存在します。
なお、投資には元本割れのリスクがあります。IPO投資においても、公募割れにより損失が発生する可能性があることを理解した上で、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。
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