日本証券金融とは|事業内容と株式投資の魅力を解説

証券会社に資産を預けて投資を始めたいけれど、もし証券会社が破綻したらどうなるのか不安に感じていませんか。
実は、証券会社が破綻しても、あなたの資産は二重の保護制度によって守られています。
日本では、分別管理制度と投資者保護基金という2つの仕組みで、投資家の資産を保護しています。
投資者保護基金は、万が一証券会社が分別管理義務に違反した場合、1人あたり1,000万円まで補償します。
この記事では、証券会社の資産保護の仕組みから、実際の破綻事例、1,000万円を超える資産を持つ場合の対策まで、詳しく解説します。
投資を始める前に知っておくべき投資者保護の仕組みを、正確に理解しましょう。
目次
証券会社に預けた資産は、原則として全額返還されます。これは、証券会社が法律で義務付けられている「分別管理」を行っているためです。
証券会社は、お客さまからお預かりした金銭や株式、債券、投資信託などの有価証券を、証券会社自身が持っている金銭や有価証券などの資産とはきちんと区分して管理することが法律上義務付けられています。
この仕組みにより、証券会社が破綻しても、あなたの資産は証券会社の財産とは別に管理されているため、確実に返還されます。
さらに、万が一分別管理に不備があった場合でも、日本投資者保護基金が補償を行います。
日本投資者保護基金は、破綻した証券会社が分別管理の義務に違反したことによって、お客さまが返還を受けられなかった金銭・有価証券について、お一人あたり合計1,000万円までを上限に、金銭で補償を行います。
つまり、証券会社に預けた資産は、分別管理制度と投資者保護基金制度という二重の保護によって守られているのです。
ただし、注意すべき点があります。
有価証券の価格が値下がりしたとしても、証券会社が分別管理していれば当基金は補償を行いません。
投資者保護基金が補償するのは、あくまで証券会社の破綻による資産の返還不能分であり、投資の値下がり損失ではありません。
1998年に日本投資者保護基金が設立されて以来、実際に顧客に対して補償を行ったのは2件のみです。これは、ほとんどの証券会社が分別管理を適切に実施しており、破綻時でも顧客資産が返還されていることを示しています。
投資者保護基金とは?
投資者保護基金は、証券会社が破綻した際に、投資家の資産を保護するために設けられた制度です。金融商品取引法に基づいて設立された法人で、国内で営業するすべての証券会社に加入が義務付けられています。
当基金は、会員である証券会社の経営破綻によりお客さまの資産の返還が困難であると認められる場合に、証券会社に預けた資産の返還を求める一般のお客さまに対して補償を行うこと等により投資者の保護を図り、もって証券取引に対する信頼性を維持することを目的としています。
投資者保護基金の主な役割は、分別管理制度を補完するセーフティネットとして機能することです。証券会社が法律で義務付けられた分別管理を適切に行っている限り、顧客資産は全額返還されます。しかし、何らかの理由で分別管理に不備があり、資産の返還が困難になった場合に、投資者保護基金が補償を行います。
投資者保護基金の仕組み
証券会社に顧客資産の分別管理義務を課し、証券会社の財産とお客さまからお預かりした資産との区別を徹底させることにより、証券会社が経営破綻等により業務を行わないこととなった場合に、お客さまからお預かりした資産の確実かつ円滑な返還を実現することとし、仮に、このような分別管理義務に違反していたような場合に、これを補完するセーフティネットとしての役割を果たすものとして、投資者保護基金が設けられました。
投資者保護基金の財源は、会員である証券会社からの負担金によって賄われています。投資者保護資金の残高は、2024会計年度末に、およそ584億円に達しました。現在、投資者保護資金は500億円以上あるため、2003年度以降は負担金の徴収は行われていません。
投資者保護基金の補償限度額は、1人あたり1,000万円です。この金額は、返還を受けられなかった金銭と有価証券の価値を合計したものです。
返還を受けられなかったお客さまの資産が有価証券である場合であっても、有価証券ではなく金銭で補償します。この時の有価証券の補償額は、当該有価証券が取引所上場銘柄である場合には、日本投資者保護基金が補償を行うことを新聞紙上などで公告を行った日の最終価格で計算します。
重要なポイントは、補償されるのは「破綻時の時価」であるということです。例えば、100万円で購入した株式が破綻時に50万円に値下がりしていた場合、補償されるのは50万円です。値下がり分の50万円は補償対象外です。
複数の証券会社に口座を持っている場合、それぞれの証券会社ごとに1,000万円まで補償されます。
仮にお取引をしている複数の証券会社が破綻した場合には、破綻した証券会社ごとに、お一人あたり合計1,000万円までを上限に、金銭で補償を行います。
なお、証券会社に対して債務を負っている場合(例えば、信用取引で代金を立て替えてもらっている場合など)は、その債務額が補償額から差し引かれます。
投資者保護基金による補償が発動されるのは、非常に限定的な状況です。補償が行われるのは、以下の条件をすべて満たした場合のみです。
分別管理の状態が不十分であったり、決済など必要な手続が未了な状態で証券会社が破綻してしまったりするなどのケースにおいては、何らかの理由で顧客資産の完全な返還が行われないことが考えられます。
具体的な発動ケースの一つに、「信託のタイムラグ」があります。
信託のタイムラグの例
例えば、ある証券会社では、毎週月曜日に顧客からの預り金残高の総額を算定し、水曜日に算定額に沿うように信託していたとする。月曜日に預り金が1000万円から1500万円に増えたため、水曜日に信託金の不足分として500万円を追加で信託する予定が、火曜日に破綻してしまった場合、信託金は500万円不足した状態で破産したことになる。この場合は証券会社から顧客に対し完全な返還ができないため、日本投資者保護基金が不足分を補償することになる。
また、何らかの理由で顧客の有価証券が証券会社の資産と混在して管理されていた場合や、海外で保管されていたために返還に時間がかかる場合なども、補償の対象となることがあります。
ただし、分別管理が適切に行われていれば、証券会社が破綻しても投資者保護基金の補償は発動されません。 顧客資産は全額返還されるため、基金による補償は不要となるのです。
分別管理とは?
分別管理とは、証券会社が顧客から預かった資産を、証券会社自身の財産とは明確に区分して管理する制度です。金融商品取引法によってすべての証券会社に義務付けられており、投資者保護の最も基本的な仕組みです。
お客様が証券会社に預けられた大切なお金や有価証券を、証券会社の資産とは厳格に区分して管理する制度です。万が一、証券会社が破綻した場合であっても、お客様の資産が全額保護される仕組みです。
分別管理の方法は、金銭と有価証券で異なります。顧客から預かった金銭については、証券会社は「顧客分別金」として信託銀行に信託することが義務付けられています。
株式などを買うために証券会社に預けていたお金については、同じ金額を証券会社が「顧客分別金」として、信託銀行に信託しており、証券会社が破綻しても全額返還されるようなしくみになっています。
一方、株式や債券などの有価証券については、証券保管振替機構(ほふり)に預託され、帳簿上で証券会社の資産と顧客の資産が明確に区分されています。投資信託の場合は、販売会社である証券会社とは別に、信託銀行が資産を管理しているため、証券会社が破綻しても影響はありません。
分別管理が適切に行われている限り、証券会社が破綻しても顧客の資産は全額返還されます。 これが投資者保護の第一の防御線です。
証券会社は、顧客分別金の信託額を定期的に確認し、不足が生じた場合には追加信託を行う義務があります。多くの証券会社では、法令で求められる額を上回る金額を信託することで、より高い安全性を確保しています。
証券保管振替機構(通称:ほふり)は、株式や債券などの有価証券を電子的に管理する機関です。証券会社を通じて購入した株式や債券は、ほふりの振替口座で管理されています。
証券会社を通じて購入した株式や債券は、保管振替機関である証券保管振替機構(ほふり)の振替口座で電子的に管理されています。したがって、証券会社が破綻したとしても、ほふりで管理されている証券に影響はありません。
ほふりの仕組みにより、株式や債券は物理的な券面ではなく、電子データとして管理されています。各投資家の保有株式数や債券の額面は、ほふりの帳簿に記録されており、証券会社の資産とは完全に分離されています。
このため、証券会社が破綻しても、あなたが保有する株式や債券の所有権は保護されます。破綻した証券会社から別の証券会社に口座を移管することで、引き続き株式や債券を保有し続けることができます。
ほふりによる電子管理は、証券会社の破綻リスクから投資家を守る重要な仕組みです。 株主としての権利(配当金の受取や株主総会での議決権など)も、証券会社の破綻に関わらず保護されます。
分別管理が適切に行われているかどうかを確認するため、多くの証券会社は外部監査法人による監査を受けています。これは法令で義務付けられているものではありませんが、顧客に対する信頼性を高めるために自主的に実施されています。
当社は、2025年3月31日現在において、当社が法令を遵守して顧客資産を分別管理していたことを表明する「分別管理の法令遵守に関する経営者報告書」を作成し、また、EY新日本有限責任監査法人より顧客資産の分別管理に関する監査を受け「独立した監査法人の分別管理の法令遵守に関する保証報告書」を受領しました。
外部監査では、顧客分別金の信託額が適切か、有価証券の分別管理が正しく行われているか、帳簿記録が正確かなどが確認されます。監査報告書は、日本証券業協会の自主規制規則に基づいて公表されることもあります。
投資家は、証券会社の公式サイトで分別管理に関する情報を確認することができます。多くの証券会社は、「分別管理について」「顧客資産の保全」といったページで、分別管理の実施状況や外部監査の結果を公開しています。
外部監査による第三者のチェックは、分別管理制度の信頼性を高める重要な要素です。 証券会社を選ぶ際には、分別管理の実施状況や外部監査の有無も確認ポイントの一つとなります。
補償される資産と対象外の取引
投資者保護基金による補償には、対象となる資産・取引と対象外のものがあります。一般的な株式や債券、投資信託の取引は補償対象ですが、一部の専門的な取引は対象外となります。
投資者保護基金の補償対象となるのは、一般投資家が証券会社に預けている以下の資産です。
基本的に株式、債券、投資信託への投資であれば、分別管理に問題があったときには補償されると考えて問題ありません。
これらは、一般投資家が日常的に取引する金融商品であり、投資者保護基金の補償対象となります。
NISA口座やiDeCo口座で保有している資産も、投資者保護基金の補償対象です。 非課税制度を利用しているかどうかは、補償の対象・対象外には影響しません。
また、ネット証券と対面証券で補償制度に違いはありません。国内で営業するすべての証券会社は、投資者保護基金への加入が法律で義務付けられているため、証券会社の形態に関わらず同じ保護を受けられます。
一方、以下の取引や資産は、投資者保護基金の補償対象外となります。
店頭デリバティブ取引(有価証券関連デリバティブを除く)、マネックス・ゴールド取引は、投資者保護基金の補償の対象外となっています。
これらは、一般投資家よりもプロ的・投機的な色彩が強い取引と位置付けられています。
ただし、補償対象外の取引であっても、分別管理が適切に行われていれば、証券会社の破綻時に資産は返還されます。投資者保護基金の補償対象ではないというだけで、分別管理制度による保護は受けられます。
信用取引や先物取引の未決済建玉の評価益が補償対象外である点には注意が必要です。 決済されていない取引の含み益は、補償の対象とはなりません。
投資者保護基金が補償するのは、あくまで「証券会社の破綻により返還を受けられなくなった資産」です。投資の値下がり損失は、補償の対象外です。
投資者保護基金制度にいう『投資者保護』とは、証券会社が破綻した際に分別管理に問題があった場合の補償を指しており、投資での損失などをカバーするものではありません。基金の補償額は証券会社が返還できなくなった資産を破綻時の時価で計算して算出した額なので、例えば100万円で購入した金融商品が10万円に値下がりした時点で証券会社が破綻した場合、基金が補償するのは10万円です。
この仕組みの理由は、投資者保護基金の目的が「投資のリスクを補償すること」ではなく、「証券会社の破綻から顧客資産を守ること」にあるためです。投資には本来リスクが伴い、値下がりによる損失は投資家自身が負うべきものです。
同様に、以下のケースも補償対象外です。
有価証券の発行体が破綻等したために有価証券が無価値になったり、債務不履行により元利金の支払いが行われなくなった場合も、証券会社が分別管理していれば当基金は補償を行いません。
企業の倒産による株式の無価値化や、債券の債務不履行も補償対象外です。
投資者保護基金は、証券会社の破綻リスクから守る仕組みであり、投資そのもののリスクを補償するものではありません。 この違いを正しく理解することが重要です。
銀行のペイオフと何が違う?
証券会社の投資者保護基金と、銀行のペイオフ(預金保険制度)は、どちらも金融機関の破綻から顧客を守る仕組みですが、その内容には重要な違いがあります。
銀行のペイオフ(預金保険制度)は、銀行が破綻した場合に、預金者1人あたり元本1,000万円とその利息までを保護する制度です。預金保険機構が補償を行い、普通預金、定期預金、貯蓄預金などが対象となります。
ペイオフの特徴は、「元本1,000万円までとその利息」が保護対象であることです。1,000万円を超える預金については、破綻した銀行の財産状況に応じて配当されるため、全額が返還されるとは限りません。
また、決済用預金(無利息、要求払い、決済サービスを提供できる預金)については、全額が保護されます。これは、企業の決済機能を守るための特例措置です。
外貨預金や譲渡性預金は、預金保険制度の対象外です。銀行で購入した投資信託や保険商品も、預金ではないため対象外となります。
銀行のペイオフと証券会社の投資者保護基金には、以下のような違いがあります。
| 項目 | 銀行のペイオフ | 証券会社の投資者保護基金 |
| 補償限度額 | 元本1,000万円とその利息 | 1人あたり1,000万円 |
| 補償対象 | 普通預金、定期預金など | 株式、債券、投資信託、預り金 |
| 補償の前提 | 銀行が破綻した場合 | 証券会社が破綻し、かつ分別管理に不備があった場合 |
| 元本保証 | 預金は元本保証 | 有価証券は元本保証なし(破綻時の時価で補償) |
| 値下がり損失 | 該当なし(預金は元本保証) | 補償対象外 |
| 分別管理 | 該当なし | 分別管理が第一の保護 |
最も大きな違いは、証券会社の場合、分別管理が適切に行われていれば、破綻しても資産は全額返還されることです。
お客さまが証券会社に1,000万円以上の資産を預けてい場合でも、分別管理がきちんと行われていれば、お客さまに返還することができます。
一方、銀行のペイオフでは、1,000万円を超える預金は保護されず、破綻した銀行の財産から配当を受けることになります。証券会社の場合、分別管理により1,000万円を超える資産も原則として全額返還されるため、より手厚い保護と言えます。
ただし、証券会社に預けた有価証券は、市場価格の変動により値下がりするリスクがあります。投資者保護基金が補償するのは破綻時の時価であり、購入時の価格ではありません。
銀行預金と証券会社の資産保護は、それぞれ異なる特徴があり、単純に「どちらが安全」とは言えません。
銀行預金の特徴は、元本が保証されていることです。1,000万円までの預金とその利息は、銀行が破綻しても確実に保護されます。ただし、預金金利は低く、資産を増やす効果は限定的です。
証券会社の資産保護の特徴は、分別管理により1,000万円を超える資産も原則として全額返還されることです。ただし、有価証券は市場価格の変動により値下がりするリスクがあり、元本は保証されていません。
安全性を重視するなら銀行預金、資産を増やすことを目指すなら証券投資という使い分けが基本です。 多くの専門家は、生活資金や緊急予備資金は銀行預金に、余裕資金は証券投資に振り向けることを推奨しています。
また、リスクを分散するために、銀行預金と証券投資の両方を組み合わせることも有効な戦略です。すべての資産を一つの金融機関や一つの資産クラスに集中させるのではなく、複数に分散することで、リスクを軽減できます。
過去の証券会社破綻事例
日本投資者保護基金が設立されて以来、実際に補償が行われた事例は2件のみです。これらの事例を詳しく見ることで、投資者保護基金の仕組みが実際にどのように機能したかを理解できます。
南証券は、群馬県前橋市を拠点とする地場証券でした。基金は補償を行う旨の公告を行い、約59億円の補償を1,363名に対して行いました。その後の債権回収により、基金の実質負担額は約35億円でした。
南証券の破綻は、札幌支店において「ミナミハイイールドボンド」という高利回り社債の販売に関連して発生しました。顧客から預かった資金を適切に分別管理せず、会社の運転資金に流用していたことが発覚し、2000年3月に関東財務局から登録取消の行政処分を受けました。
この事例では、当時は1人あたり1,000万円の補償上限額が設けられていなかったため、補償金総額が約35億円と高額になりました。現在の制度では、1人あたり1,000万円が上限となっています。
南証券の元社長は、顧客資産の流用などの罪で懲役11年の実刑判決を受けました。この事例は、分別管理義務違反が重大な犯罪であることを示しています。
丸大証券は、東京都中央区に本拠を置く証券会社でした。
同証券は分別管理が必要な顧客資金3億1000万円のうち2億円分について運転資金などに流用しており、返還不能に陥った。基金の補償額は1人当たり最大1000万円。数人は損失額が1000万円を超えるため、損失が発生する見込みだ。基金による補償は2000年に経営破綻した南証券以来、2度目。
丸大証券は2012年3月に自己破産を申請し、同月26日に破産手続き開始決定を受けました。顧客からの預り資産を不正に流用していたとして、金融商品取引業の登録取消処分を受けました。
この事例では、元社長と元役員、元経理担当社員の3名が金融商品取引法違反容疑で逮捕されました。顧客の預かり金約3億円を信託銀行に信託せず、銀行からの借入金の返済に充てていたことが発覚しました。
2012年度 丸大証券の顧客に対する補償 補償金総額約1億7200万円。丸大証券が分別していた1億1,000万円を預け入れ資金の額に応じて公平に配分し、投資者保護基金がそれでも足りない分を穴埋めしました。
丸大証券の事例では、1人あたり1,000万円の補償上限が適用され、数人の顧客は損失が発生しました。 これは、1,000万円を超える資産を1社に集中させるリスクを示しています。
投資者保護基金による補償は、以下のようなプロセスで行われます。
補償プロセスには数ヶ月を要しますが、投資者保護基金は迅速な補償を心がけています。 丸大証券の事例では、破産申請から約2ヶ月後には補償の支払いが開始されました。
1,000万円を超える資産はどうする?
投資資産が1,000万円を超える場合、投資者保護基金の補償限度額を超えてしまいます。万が一の証券会社破綻に備えて、資産を複数の証券会社に分散することが有効な対策となります。
複数の証券会社に資産を分散する最大のメリットは、投資者保護基金の補償を最大限に活用できることです。
仮にお取引をしている複数の証券会社が破綻した場合には、破綻した証券会社ごとに、お一人あたり合計1,000万円までを上限に、金銭で補償を行います。
例えば、3,000万円の資産を持っている場合、1社に集中させると、万が一その証券会社が破綻し分別管理に不備があった場合、1,000万円を超える部分は補償されません。しかし、3社に1,000万円ずつ分散すれば、それぞれの証券会社で1,000万円まで補償されるため、合計3,000万円まで保護されます。
また、複数の証券会社を利用することで、各社の特徴を活かした投資が可能になります。例えば、A証券は米国株に強い、B証券はIPOに強い、C証券は投資信託の品揃えが豊富、といった形で使い分けることができます。
システム障害やサーバーダウンのリスク分散にもなります。 1社のシステムに障害が発生しても、他の証券会社で取引を継続できるため、投資機会を逃すリスクを軽減できます。
ただし、実際には分別管理が適切に行われている限り、1,000万円を超える資産も全額返還されます。
お客さまが証券会社に1,000万円以上の資産を預けてい場合でも、分別管理がきちんと行われていれば、お客さまに返還することができます。
複数口座への分散は、あくまで万が一の分別管理不備に備えた対策です。
複数の証券会社に資産を分散する際の具体的な方法を、ステップごとに解説します。
NISA口座は1人1口座しか開設できないため、NISA口座の資産は移管できません。 NISA口座以外の課税口座(特定口座・一般口座)で分散投資を行います。
また、頻繁に取引する資産は、使い慣れた証券会社に集約し、長期保有する資産を別の証券会社に分散するという方法も有効です。管理の手間を減らしながら、リスク分散を実現できます。
複数の証券会社に資産を分散することには、いくつかの注意点とデメリットもあります。
第一に、管理の手間が増えることです。複数の証券会社に口座を持つと、それぞれのログインID・パスワードを管理し、各社から送られてくる報告書を確認する必要があります。資産全体の把握も複雑になります。
第二に、各社で口座管理料が発生する場合があることです。ネット証券の多くは口座管理料が無料ですが、一部の対面証券では口座管理料が発生することがあります。複数口座を持つことでコストが増える可能性があります。
第三に、各社で最低投資金額や手数料体系が異なることです。資産を分散しすぎると、各証券会社での投資額が少額になり、手数料の割合が高くなる可能性があります。
過度な分散は避け、2〜3社程度に留めることが現実的です。 管理の手間とリスク分散のバランスを考えて、適切な分散先の数を決めましょう。
また、証券会社の選定では、財務健全性や経営状況も確認することが重要です。格付け機関による格付けや、自己資本規制比率などの財務指標を参考にして、信頼できる証券会社を選びましょう。
証券会社の安全性を確認する方法
証券会社を選ぶ際には、投資者保護基金への加入だけでなく、経営の健全性や分別管理の実施状況など、複数の観点から安全性を確認することが重要です。
国内で営業するすべての証券会社は、法律により投資者保護基金への加入が義務付けられています。
日本国内で本店、支店や営業所がある証券会社はもちろんのこと、インターネット取引専業の証券会社も、投資者保護基金への加入が法律上義務付けられています。
投資者保護基金への加入状況は、以下の方法で確認できます。
ネット証券と対面証券で保護制度に違いはありません。 すべての証券会社が同じ投資者保護基金に加入しており、同じ保護を受けられます。
分別管理が適切に行われているかを確認するため、外部監査法人による監査の実施状況をチェックすることも有効です。
多くの証券会社は、自主的に外部監査法人による分別管理監査を受けています。監査報告書は、証券会社の公式サイトで公表されることがあります。「分別管理」「顧客資産の保全」「外部監査」などのキーワードで検索してみましょう。
日本証券業協会の自主規制規則に基づき、分別管理の法令遵守に関する経営者報告書と、独立した監査法人の保証報告書を公表している証券会社もあります。これらの報告書が公表されていることは、分別管理が適切に行われている証拠となります。
外部監査を受けている証券会社は、分別管理に対する意識が高いと評価できます。 証券会社を選ぶ際の判断材料の一つとして、外部監査の有無を確認しましょう。
証券会社の経営状況を確認することで、破綻リスクを事前に評価できます。以下の方法で経営状況をチェックしましょう。
複数の指標を総合的に評価して、証券会社の安全性を判断することが重要です。 一つの指標だけで判断するのではなく、多角的に検証しましょう。
証券会社の安全性を確認するための10項目のチェックリストを作成しました。証券会社を選ぶ際の参考にしてください。
すべての項目を満たす必要はありませんが、多くの項目をクリアしている証券会社ほど安全性が高いと評価できます。 特に、金融庁への登録、投資者保護基金への加入、分別管理の実施は、必須の確認項目です。
また、証券会社の公式サイトで「会社情報」「投資者保護」「分別管理」などのページを確認し、透明性の高い情報開示が行われているかもチェックしましょう。情報開示に積極的な証券会社は、顧客に対する誠実さの表れと言えます。
よくある質問(Q&A)
証券会社の資産保護に関して、投資家からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
はい、NISA口座やiDeCo口座で保有している資産も、投資者保護基金の補償対象です。非課税制度を利用しているかどうかは、補償の対象・対象外には影響しません。
NISA口座で保有している株式や投資信託は、証券保管振替機構(ほふり)や信託銀行で分別管理されています。証券会社が破綻しても、NISA口座の資産は全額返還されます。万が一分別管理に不備があった場合でも、投資者保護基金が1人あたり1,000万円まで補償します。
iDeCo口座の資産についても同様です。iDeCoの資産は、運営管理機関である証券会社とは別に、記録関連運営管理機関や資産管理機関で管理されているため、証券会社の破綻の影響を受けません。
いいえ、ネット証券と対面証券で保護制度に違いはありません。国内で営業するすべての証券会社は、法律により投資者保護基金への加入が義務付けられており、同じ保護を受けられます。
日本国内で本店、支店や営業所がある証券会社はもちろんのこと、インターネット取引専業の証券会社も、投資者保護基金への加入が法律上義務付けられています。
分別管理義務も、すべての証券会社に等しく課されています。
ネット証券だから安全性が低い、対面証券だから安全性が高いということはありません。重要なのは、各証券会社が分別管理を適切に実施しているかどうかです。
はい、日本国内で営業する外資系証券会社も、日本投資者保護基金に加入しています。日本で証券業を営むためには、金融庁への登録と投資者保護基金への加入が法律で義務付けられているためです。
例えば、過去にはリーマン・ブラザーズ証券など、外資系証券会社も投資者保護基金の会員でした。国内証券会社と外資系証券会社で、保護制度に違いはありません。
ただし、海外の証券会社に直接口座を開設した場合は、日本投資者保護基金の補償対象外となります。日本国内に支店や営業所がある証券会社のみが、日本投資者保護基金の会員となります。
複数の証券会社が同時に破綻した場合でも、それぞれの証券会社ごとに1人あたり1,000万円まで補償されます。
複数の証券会社が同時に破綻した場合でも同様です。
例えば、A証券に1,000万円、B証券に1,000万円、C証券に1,000万円を預けていて、3社が同時に破綻し分別管理に不備があった場合、合計3,000万円まで補償を受けられます。
ただし、投資者保護基金の資金には限りがあります。投資者保護資金の残高は、2024会計年度末に、およそ584億円に達しました。大規模な証券会社が複数同時に破綻した場合、補償資金が不足する可能性も理論上は考えられます。しかし、そのような事態は極めて稀であり、現実的には想定しにくい状況です。
証券口座の資産は、相続財産として相続人に引き継がれます。被相続人(亡くなった方)の証券口座の資産は、相続手続きを経て、相続人の口座に移管されるか、現金化されて分配されます。
相続手続きの流れは、以下のとおりです。第一に、証券会社に被相続人の死亡を連絡します。第二に、相続人全員で遺産分割協議を行い、証券資産をどのように分配するか決定します。第三に、証券会社に必要書類(戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書など)を提出します。第四に、証券会社が手続きを行い、資産が相続人に移管されます。
相続時に証券会社が破綻していた場合でも、分別管理により資産は保護されているため、相続手続きを進めることができます。ただし、破産管財人との調整が必要になるため、通常よりも時間がかかる可能性があります。
海外の証券会社に直接口座を開設した場合、日本投資者保護基金の補償対象外となります。日本国内に支店や営業所がない海外証券会社は、日本投資者保護基金の会員ではないためです。
海外証券会社の場合、その国の投資者保護制度が適用されます。例えば、米国の証券会社であればSIPC(Securities Investor Protection Corporation)、英国の証券会社であればFSCS(Financial Services Compensation Scheme)などの保護制度があります。
海外証券会社を利用する場合は、その国の投資者保護制度の内容を事前に確認することが重要です。補償限度額や補償対象となる資産・取引が、日本とは異なる場合があります。
分別管理が適切に行われていれば、証券会社が破綻しても資産は返還されますが、手続きには一定の時間がかかります。破産管財人が資産状況を確認し、顧客ごとの返還額を確定させる必要があるためです。
通常、数週間から数ヶ月程度の期間を要します。株式や債券は、破綻した証券会社から別の証券会社に口座を移管することで、引き続き保有できます。金銭については、破産管財人から返還されます。
投資者保護基金による補償が必要な場合は、さらに時間がかかります。丸大証券の事例では、破産申請から約2ヶ月後に補償の支払いが開始されました。ただし、投資者保護基金は迅速な補償を心がけており、できるだけ早く顧客に補償を届けるよう努めています。
証券会社が破綻した場合は、証券会社や破産管財人、投資者保護基金からの連絡をよく確認し、指示に従って手続きを進めることが重要です。
証券会社に預けた資産は、分別管理制度と投資者保護基金制度という二重の保護によって守られています。分別管理が適切に行われている限り、証券会社が破綻しても資産は全額返還されます。万が一分別管理に不備があった場合でも、投資者保護基金が1人あたり1,000万円まで補償します。
投資者保護基金が設立されて以来、実際に補償が行われた事例は2件のみであり、ほとんどの証券会社が分別管理を適切に実施していることが分かります。ネット証券と対面証券で保護制度に違いはなく、すべての証券会社が同じ保護を受けられます。
1,000万円を超える資産を持つ場合は、複数の証券会社に分散することで、投資者保護基金の補償を最大限に活用できます。ただし、過度な分散は管理の手間を増やすため、2〜3社程度に留めることが現実的です。
証券会社を選ぶ際には、投資者保護基金への加入、分別管理の実施、外部監査の有無、自己資本規制比率、格付けなど、複数の観点から安全性を確認しましょう。情報開示に積極的な証券会社は、顧客に対する誠実さの表れと言えます。
なお、投資者保護基金が補償するのは、証券会社の破綻による資産の返還不能分であり、投資の値下がり損失ではありません。投資には元本割れのリスクがあります。ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。詳しくは、日本投資者保護基金や各証券会社の公式サイトでご確認いただくか、専門家にご相談ください。
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