会社設立のミチシルベ

「moomoo証券って、元々ひびき証券だったの？」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

2022年にひびき証券がmoomoo証券へ商号変更されたことで、老舗証券会社がどうなったのか気になっている方も少なくありません。

特に中国系企業による買収と聞くと、「本当に大丈夫？」「資産は安全なの？」と不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、ひびき証券の買収の経緯から、moomoo証券の信頼性、そして既存顧客への影響まで、公式情報に基づいて詳しく解説します。

買収の事実確認から投資判断のポイントまで、知っておきたい情報をすべてお伝えします。

ひびき証券の買収とは？｜moomoo証券への変更の経緯

ひびき証券は、大正9年（1920年）に設立された老舗証券会社です。100年以上の歴史を持つ同社は、2022年に米国NASDAQ上場企業であるFutu Holdings Limitedによって買収され、moomoo証券株式会社へと商号変更されました。

この買収は、日本の証券業界における外資参入の重要な事例として注目を集めています。

2022年10月にmoomoo証券へ商号変更

日本証券業協会の公式発表によると、ひびき証券株式会社は2022年9月20日付でmoomoo証券株式会社へ商号を変更しました。

この変更は、Futu Holdings Limitedによる買収に伴うもので、正式な手続きを経て実施されています。商号変更後も、金融庁への登録番号（関東財務局長（金商）第3335号）は継続されており、法的には同一の法人として事業を継続しています。

日本証券業協会:会員の商号の変更について

商号変更の背景には、Futuグループが展開するグローバルブランド「moomoo」への統一という戦略があります。

香港ではFutu（富途）のブランド名で、それ以外の国ではmoomooのブランド名でサービスを提供しており、日本もこの国際展開の一環として位置づけられています。

買収を行ったFutu Holdings Limitedとは

Futu Holdings Limited（富途控股有限公司）は、2012年に香港で設立されたフィンテック企業です。

2019年3月8日に米国NASDAQ市場に上場（ティッカーシンボル：FUTU）しており、国際的な規制・監督下で事業を展開しています。

Futu Holdings Limited:About Us

同社の最大の特徴は、中国のIT大手テンセント（Tencent）が出資していることです。

創業者の李華氏はテンセントの元従業員であり、テンセントとの強い結びつきを持っています。全世界で2,800万人以上のユーザーを抱え、香港、米国、シンガポール、オーストラリア、日本、カナダ、マレーシア、ニュージーランドの8か国で証券サービスを提供しています。

買収の背景と目的

Futu Holdings Limitedがひびき証券を買収した主な目的は、日本市場への本格参入です。

日本で証券業を営むには金融庁の認可が必要であり、新規に免許を取得するには時間とコストがかかります。既存の証券会社を買収することで、これらのプロセスを大幅に短縮できるメリットがあります。

moomoo証券の伊澤フランシスコ代表取締役社長は、日本を「最も力を入れていく市場」と位置づけています。

日本は世界第3位の経済大国でありながら、個人の金融資産の多くが預貯金に偏っているという特徴があります。政府も「貯蓄から投資へ」の流れを推進しており、新NISAの導入など投資環境の整備が進んでいます。

ひびき証券100年の歴史｜老舗証券会社の歩み

ひびき証券の歴史を振り返ることで、この買収の意味がより深く理解できます。

100年以上にわたる歩みの中で、同社がどのような変遷を経て買収に至ったのかを見ていきましょう。

大正9年創業からの歩み

ひびき証券は、大正2年（1913年）に創業し、大正9年（1920年）に正式に設立された証券会社です。

設立当初から大阪に本店を置き、関西圏を中心に事業を展開してきました。戦前・戦後の激動の時代を乗り越え、高度経済成長期には多くの個人投資家に株式投資の機会を提供してきました。

昭和から平成にかけては、地域密着型の証券会社として、顧客一人ひとりに寄り添った資産運用アドバイスを提供することを強みとしていました。

大手証券会社とは異なり、中小企業のオーナーや地域の資産家など、特定の顧客層に対して質の高いコンサルティングサービスを展開していたのが特徴です。

地域密着型証券会社としての実績

ひびき証券は、大阪本店のほか東京に支店と分室を持つ体制で営業していました。

取引業務は、株式・債券・投資信託の委託売買を中心に、私募ファンド運用やアドバイザリー業務も手がけていました。

2012年には楽天証券と戦略的協力関係を結び、両社が共同出資して「ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社」を設立しました。

この際、ひびき証券は自己勘定ディーリングに特化し、リテール証券営業事業はひびきFAに実質的に承継されています。

楽天証券:ひびき証券との業務提携について

この業務提携により、ひびき証券が1913年の創業以来行ってきた資産運用アドバイスのノウハウと、楽天証券の幅広い商品ラインアップが融合する形となりました。

買収に至った経営状況

ひびき証券が買収に至った具体的な経営状況については、公開情報が限られています。

ただし、近年の証券業界全体の動向として、ネット証券の台頭により対面営業を主体とする中小証券会社の経営環境は厳しさを増していました。

2012年の楽天証券との業務提携により、リテール営業部門を分離した後、ひびき証券は自己勘定ディーリング（自社の資金で株式等を売買する業務）に特化していました。

しかし、この事業モデルでは規模の拡大に限界があり、新たな成長戦略が必要な状況だったと考えられます。

moomoo証券は怪しくない？｜信頼性を確認する5つのポイント

「moomoo証券は怪しいのでは？」という声を耳にすることがあります。

新しいサービスであることや、親会社が中国系企業であることから、不安を感じる方もいるでしょう。ここでは、moomoo証券の信頼性を客観的に確認できる5つのポイントを解説します。

金融庁登録業者として正式に認可

moomoo証券は、金融庁に正式に登録された金融商品取引業者です。

登録番号は「関東財務局長（金商）第3335号」で、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、投資運用業の免許を保有しています。

moomoo証券:会社情報

親会社はNASDAQ上場企業

moomoo証券の親会社であるFutu Holdings Limitedは、米国NASDAQ市場に上場している企業です（ティッカーシンボル：FUTU）。

NASDAQ上場企業は、米国証券取引委員会（SEC）の厳格な開示規制に従う必要があり、四半期ごとに財務諸表を公開しています。

2023年通期の業績では、売上高12億8,100万ドル、調整後純利益5億8,510万ドルを記録し、前年比でそれぞれ31.4%、45.9%の成長を達成しています。

日本証券業協会への正式加盟

moomoo証券は、日本証券業協会（JSDA）および一般社団法人日本投資顧問業協会に加盟しています。

日本証券業協会は、証券会社の自主規制機関として、業界のルールや慣行を定め、会員の業務を監督する役割を担っています。

協会に加盟することで、業界共通の倫理規定や自主規制ルールを遵守する義務が生じます。

また、顧客からの苦情や紛争が発生した場合、協会のあっせん制度を利用できるなど、投資家保護の仕組みも整備されています。

投資者保護基金による資産保護

moomoo証券は、日本投資者保護基金に加入しています。

これは、すべての金融商品取引業者に対して金融商品取引法で義務付けられている制度です。

moomoo証券:お客様の資産の取り扱い

テンセント出資と世界2800万人の利用実績

Futu Holdings Limitedには、中国のIT大手テンセント（Tencent Holdings）が出資しています。

テンセントは、WeChat（微信）やQQなどのSNSサービス、ゲーム事業などを手がける世界的なIT企業で、時価総額は数十兆円規模に達します。

テンセントのような大手企業が出資しているということは、Futuグループの事業モデルや成長性が評価されていることを意味します。

買収の詳細｜金額・条件・プロセス

ひびき証券の買収について、公開されている情報を基に、その詳細を確認していきます。

買収金額や条件、承認プロセスなど、M&Aの実態を理解することで、この買収の意味がより明確になります。

買収金額と買収条件（公開情報）

ひびき証券の買収金額については、Futu Holdings Limitedおよびmoomoo証券から具体的な金額は公表されていません。

非上場企業の買収案件では、買収金額を非開示とするケースも多く、今回もその例に該当します。

金融庁の審査と承認プロセス

証券会社の買収には、金融庁の審査と承認が必要です。

金融商品取引業者の株主が変更される場合、特に外国法人が主要株主となる場合には、事前の届出や認可が求められます。

金融庁は、買収者の財務健全性、法令遵守体制、経営陣の適格性などを審査します。

特に外資系企業の場合は、本国での規制状況や事業実績、日本での事業計画なども詳細に確認されます。Futu Holdings LimitedはNASDAQ上場企業であり、米国SECの監督下にあることから、一定の信頼性が認められたと考えられます。

商号変更までのスケジュール

ひびき証券からmoomoo証券への商号変更は、2022年9月20日付で実施されました。

日本証券業協会への届出も同日付で行われており、正式な手続きを経て変更が完了しています。

このような段階的な展開は、日本市場への慎重なアプローチを示しています。

旧ひびき証券の顧客はどうなった？｜買収後の影響

ひびき証券で口座を持っていた顧客や、同社と取引があった方々にとって、買収後の影響は最も気になるポイントでしょう。

既存顧客への対応がどのように行われたのか、詳しく見ていきます。

既存口座・資産の取り扱い

ひびき証券からmoomoo証券への商号変更は、法人格としては同一のため、既存の口座や資産はそのまま引き継がれています。

顧客が保有していた株式、債券、投資信託などの資産は、商号変更後もmoomoo証券の口座に継続して保管されています。

サービス内容の変更点

moomoo証券への移行に伴い、サービス内容には大きな変化がありました。

旧ひびき証券は、対面営業を主体とした地域密着型の証券会社でしたが、moomoo証券はオンライン専業の証券会社として事業を展開しています。

顧客サポート体制の変化

moomoo証券は、24時間365日対応のライブチャットサポートを提供しています。

これは、従来の対面営業や電話サポート中心だった旧ひびき証券とは大きく異なるアプローチです。

オンライン証券の強みは、時間や場所を問わずサポートを受けられることです。

アプリ内のチャット機能を使えば、深夜や休日でも質問や相談ができます。一方で、対面での相談を重視していた顧客にとっては、このようなオンライン中心のサポート体制に不便を感じるケースもあったでしょう。

moomoo証券のメリット・デメリット｜利用前に知っておきたいこと

moomoo証券を実際に利用する際のメリットとデメリットを、客観的に整理します。

どのような投資家に向いているのか、注意すべき点は何かを理解しておくことが大切です。

メリット｜米国株手数料の安さと高機能アプリ

moomoo証券の最大のメリットは、米国株取引の手数料が業界最安水準であることです。

約定代金の0.132%（税込）という手数料率は、SBI証券や楽天証券の0.495%と比べて約3分の1と圧倒的に安くなっています。米国株投資を中心に考えている投資家にとっては、大きなコスト削減につながります。

moomooアプリの高機能性も大きな魅力です。

AI機能による株価予想や銘柄分析も提供されており、ウォーレン・バフェットなど著名投資家の売買動向をリアルタイムで確認できる機能は、他の証券会社にはない独自の強みです。

デメリット｜投資信託の取扱なしと情報量の多さ

一方で、moomoo証券にはいくつかのデメリットもあります。

最も大きいのは、投資信託の取扱いがないことです。新NISAのつみたて投資枠を利用したい場合、投資信託での積立投資が一般的ですが、moomoo証券では対応していません（2025年12月時点）。

どんな人に向いている？

moomoo証券は、以下のような投資家に特に向いています。

逆に、投資信託での長期積立投資を中心に考えている方や、対面でのサポートを重視する方には、他の証券会社の方が適しているでしょう。

日本の証券業界における外資買収のトレンド

ひびき証券の買収を、日本の証券業界全体の文脈で理解することも重要です。

外資系企業による日本市場参入のトレンドと、その意味を考えてみましょう。

外資系証券会社の日本市場参入状況

日本の証券業界では、古くから外資系企業の存在がありました。

ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、メリルリンチ（現BofA証券）など、欧米の大手投資銀行は、主に法人向けの引受業務やM&Aアドバイザリー業務で日本市場に参入してきました。

一方、個人投資家向けのリテール証券業務では、外資系企業の参入は限定的でした。

日本の証券業界は、野村證券、大和証券、SMBC日興証券などの大手証券会社と、SBI証券、楽天証券などのネット証券が市場を寡占しており、新規参入のハードルが高い状況が続いていました。

ひびき証券買収の業界内での位置づけ

ひびき証券の買収は、アジアのフィンテック企業が日本のリテール証券市場に本格参入した重要な事例です。

これまで欧米企業の参入が中心だった中で、香港を拠点とするFutuグループの参入は、アジア域内での競争激化を示唆しています。

Futuグループの強みは、アジア市場での豊富な実績です。

香港やシンガポールでは既に高いシェアを獲得しており、アジアの投資家のニーズや行動パターンを深く理解しています。この知見を日本市場でも活かすことで、既存の証券会社とは異なる価値を提供できる可能性があります。

今後の証券業界の展望

moomoo証券のような外資系フィンテック企業の参入は、日本の証券業界に変化をもたらす可能性があります。

競争の激化により、既存の証券会社も手数料の引き下げやサービスの改善を迫られるでしょう。実際、近年は多くのネット証券が日本株の売買手数料を無料化するなど、競争が激しくなっています。

また、投資情報の提供方法も変化していくと考えられます。

従来は有料だったプロ向けの分析ツールやデータが、無料で提供されるようになれば、個人投資家の投資判断の質が向上する可能性があります。

よくある質問（Q&A）

まとめ

ひびき証券の買収は、大正9年設立の老舗証券会社が、米国NASDAQ上場企業であるFutu Holdings Limitedに買収され、2022年9月にmoomoo証券へと生まれ変わった重要な事例です。

100年以上の歴史を持つ証券会社が外資系フィンテック企業の傘下に入ることで、日本の証券業界に新しい風を吹き込んでいます。

moomoo証券の信頼性については、金融庁への正式登録、NASDAQ上場企業の子会社であること、日本証券業協会への加盟、投資者保護基金による資産保護、そしてテンセント出資と世界2,800万人の利用実績という5つのポイントから確認できます。

中国系企業という点で不安を感じる方もいるかもしれませんが、日本の法律に基づいて適切に運営されており、顧客資産や個人情報も厳格に保護されています。

moomoo証券のメリットは、米国株取引の手数料が業界最安水準であること、日本株の売買手数料が完全無料であること、そして高機能なmoomooアプリを無料で利用できることです。

一方、デメリットとしては、投資信託の取扱いがないこと、クレジットカード積立ができないこと、情報量が多く初心者には複雑に感じられることなどがあります。米国株投資を中心に考えている方や、情報収集と分析を重視する中級者以上の投資家に特に適したサービスと言えるでしょう。

日本の証券業界では、外資系フィンテック企業の参入が今後も増加すると予想されます。

競争の激化により、投資家にとっては選択肢が増え、サービスの質も向上していくでしょう。ただし、それぞれの証券会社の特徴やリスクを理解して選択することが重要です。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。証券会社を選ぶ際は、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。詳しくは各証券会社の公式サイトでご確認いただくか、専門家にご相談されることをおすすめします。