投資信託は年末調整が必要?確定申告との違いを解説

投資信託は年末調整が必要?確定申告との違いを解説

投資信託を始めた会社員の方が年末調整の時期に「投資信託も年末調整で申告が必要なのか」と疑問に思うことは少なくありません。

結論から言うと、投資信託は年末調整の対象外です。

投資信託の利益は申告分離課税という税制が適用されるため、会社が行う年末調整では処理できません。ただし、口座の種類によっては確定申告が必要になるケースがあります。

この記事では、投資信託と年末調整の関係、確定申告が必要なケースと不要なケース、そして会社員が年末にすべき税務手続きを詳しく解説します。正しい知識を身につけて、適切な税務処理を行いましょう。

この記事の要約
  • 投資信託は年末調整の対象外|確定申告で対応する
  • 特定口座(源泉徴収あり)やNISA口座なら確定申告不要
  • 損益通算や繰越控除で税金を取り戻せる可能性がある
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

投資信託は年末調整の対象外|確定申告との違い

投資信託を始めた会社員の方が年末調整の時期に混乱するのは、年末調整と確定申告の違いを正しく理解していないことが原因です。投資信託は年末調整では処理できず、確定申告が必要になる場合があります。

年末調整とは|会社が行う税金の手続き

年末調整とは、会社が従業員の代わりに行う所得税の精算手続きです。毎月の給与から概算で天引きされた所得税を、年末に正確な税額で計算し直します。

年末調整で対応できるのは、給与所得に関連する控除のみです。具体的には生命保険料控除、地震保険料控除、住宅ローン控除(2年目以降)、扶養控除などが該当します。

会社員にとって年末調整は便利な制度ですが、すべての税金手続きを年末調整で完結できるわけではありません。年末調整で対応できない所得や控除がある場合は、自分で確定申告を行う必要があります。

国税庁:年末調整がよくわかるページ

投資信託は申告分離課税|年末調整では対応できない理由

投資信託の利益(分配金や売却益)は申告分離課税という税制が適用されます。申告分離課税とは、給与所得とは別に税金を計算する仕組みです。税率は一律20.315%(所得税15.315%、住民税5%)と決まっています。

年末調整は給与所得に対する所得税の精算手続きなので、給与所得とは別に課税される投資信託の利益は対象外です。投資信託の税金は、証券口座の種類に応じて源泉徴収されるか、確定申告で納税するかのどちらかになります。

投資信託を保有しているだけでは年末調整書類に記載する必要はありません。年末調整と投資信託は完全に別の税務手続きとして理解しておきましょう。

国税庁:株式・配当・利子と税

年末調整で対応できる投資はiDeCoのみ

投資関連で年末調整の対象になるのは、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金のみです。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となり、給与所得から差し引くことで税金を減らせます。

iDeCoに加入している場合は、国民年金基金連合会から送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」を年末調整書類に添付して会社に提出します。これにより、iDeCoの掛金分の所得控除が自動的に適用されます。

一方、投資信託やNISA、株式投資などは年末調整では対応できません。iDeCoだけが例外的に年末調整で処理できる投資商品だと覚えておきましょう。

国税庁:小規模企業共済等掛金控除

投資信託にかかる税金の基本|仕組みを理解しよう

投資信託の税金を正しく理解するには、どのような利益に対してどのくらいの税金がかかるのかを知る必要があります。投資信託には分配金と売却益の2種類の利益があり、それぞれに課税されます。

税率は一律20.315%|所得税と住民税の内訳

投資信託の利益に対する税率は一律20.315%です。この税率の内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%となっています。給与所得のように累進課税ではなく、利益の金額に関わらず一定の税率が適用されます。

この税率は分配金にも売却益にも同じように適用されます。例えば10万円の利益が出た場合、税金は20,315円(10万円×20.315%)となり、手元に残るのは79,685円です。税率が一律なので計算はシンプルですが、利益が大きくなるほど税額も増えていきます。

金融庁:投資信託の税金

分配金にかかる税金|普通分配金と特別分配金の違い

投資信託の分配金には「普通分配金」と「特別分配金(元本払戻金)」の2種類があります。普通分配金は運用益から支払われる分配金で、20.315%の税金がかかります。一方、特別分配金は元本の一部を払い戻しているだけなので非課税です。

例えば、投資信託を1万円で購入し、分配金として500円を受け取った場合を考えます。分配金受取後の基準価額が1万円以上なら全額が普通分配金(課税対象)です。しかし基準価額が9,700円に下がっていた場合、300円は元本割れを補填する特別分配金(非課税)となり、残りの200円だけが普通分配金(課税対象)になります。

特定口座を利用している場合、証券会社が自動的に普通分配金と特別分配金を区別して税金を計算してくれます。自分で判断する必要はありませんが、仕組みは理解しておきましょう。

売却益(譲渡益)にかかる税金

投資信託を売却して利益が出た場合、その売却益(譲渡益)にも20.315%の税金がかかります。売却益は「売却価格-購入価格-手数料」で計算されます。

例えば100万円で購入した投資信託を120万円で売却した場合、売却益は20万円です。この20万円に対して20.315%の税金(40,630円)がかかり、手元に残る利益は159,370円となります。

売却損が出た場合は税金はかかりません。また、同じ年に他の投資信託や株式で利益が出ていれば、損失と利益を相殺する損益通算ができます。損益通算については後ほど詳しく解説します。

国税庁:株式等の譲渡所得等の申告

確定申告が不要な3つのケース|何もしなくていい人

投資信託を保有していても、確定申告が不要なケースがあります。特定の口座や制度を利用している場合、税金が自動的に処理されるため、自分で確定申告をする必要はありません。

特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合

特定口座(源泉徴収あり)は、証券会社が自動的に税金を計算して源泉徴収してくれる口座です。この口座を利用していれば、分配金や売却益が出ても確定申告は不要です。証券会社が利益から20.315%の税金を天引きして税務署に納付してくれます。

特定口座(源泉徴収あり)のメリット

手間がかからない

年間取引報告書も証券会社が自動作成

会社員で投資の手続きを簡単にしたい方に最適

ただし、年間の利益が少額の場合や、他の口座で損失が出ている場合は、確定申告をすることで税金が戻ってくる可能性があります。確定申告が不要といっても、確定申告をしてはいけないわけではありません。状況に応じて確定申告を選択することもできます。

国税庁:特定口座制度

NISA・つみたてNISA口座で取引している場合

NISA口座(つみたて投資枠・成長投資枠)で購入した投資信託は、利益が非課税になります。分配金も売却益も税金がかからないため、確定申告は一切不要です。

2024年から始まった新NISA制度では、非課税保有限度額が1,800万円に拡大されました。つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円まで投資でき、非課税期間は無期限です。長期的な資産形成を考えるなら、NISA口座を最大限活用することが節税の基本です。

NISA口座は確定申告不要なだけでなく、そもそも課税されないため、税金の心配をせずに投資できます。投資初心者の方は、まずNISA口座から始めることをおすすめします。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

iDeCoを利用している場合|年末調整で対応

iDeCo(個人型確定拠出年金)は投資信託を活用した年金制度ですが、運用益は非課税です。iDeCoで投資信託を運用している間の利益には税金がかからず、確定申告も不要です。

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となり、年末調整で処理します。国民年金基金連合会から送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」を年末調整書類に添付すれば、所得税と住民税が軽減されます。

iDeCoは60歳まで引き出せないという制約があります。老後資金の準備には最適ですが、短期的に使う予定のお金をiDeCoで運用するのは避けましょう。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

確定申告が必要な3つのケース|手続きが必要な人

投資信託で確定申告が必要になるケースもあります。口座の種類や取引状況によっては、自分で確定申告をしなければなりません。該当する方は期限内に手続きを行いましょう。

一般口座で取引している場合

一般口座で投資信託を取引している場合、確定申告が必要です。一般口座では証券会社が税金を源泉徴収しないため、自分で年間の損益を計算し、確定申告で納税しなければなりません。

一般口座のデメリットは、損益計算を自分で行う必要があることです。取引回数が多いと計算が複雑になり、手間がかかります。また、年間取引報告書も自分で作成する必要があります。

現在、ほとんどの証券会社では口座開設時に特定口座を選択できます。一般口座を利用するメリットはほとんどないため、特別な理由がない限り特定口座を選ぶことをおすすめします。

特定口座(源泉徴収なし)で取引している場合

特定口座(源泉徴収なし)は、証券会社が年間取引報告書を作成してくれますが、税金の源泉徴収は行いません。そのため、利益が出た場合は自分で確定申告をして納税する必要があります。

特定口座(源泉徴収なし)を選ぶメリットは、給与所得が2,000万円以下で、投資の利益が年間20万円以下なら確定申告が不要になることです。少額の投資で利益が出ても、20万円以下なら税金を払わなくて済みます。

利益が20万円を超えた場合は確定申告が必要です。また、住民税は20万円以下でも申告が必要になる点に注意しましょう。確定申告の手間を考えると、特定口座(源泉徴収あり)のほうが便利な場合が多いです。

国税庁:給与所得者で確定申告が必要な人

複数の証券口座で損益通算したい場合

複数の証券口座を持っていて、ある口座で利益が出て別の口座で損失が出ている場合、確定申告をすることで損益通算ができます。損益通算とは、利益と損失を相殺して税金を減らす仕組みです。

例えば、A証券の特定口座(源泉徴収あり)で30万円の利益が出て、B証券の特定口座(源泉徴収あり)で10万円の損失が出たとします。それぞれの口座では自動的に税金が計算されますが、確定申告をすることで損益を通算し、実質的な利益20万円に対する税金に調整できます。

損益通算をすることで、A証券で源泉徴収された税金の一部が還付されます。複数の証券口座で取引している方は、確定申告で損益通算を検討しましょう。損益通算の詳細は次のセクションで解説します。

口座の種類で変わる税務処理|自分に合った選び方

証券口座には複数の種類があり、それぞれ税務処理の方法が異なります。自分の投資スタイルや手間の許容度に合わせて、最適な口座を選びましょう。

特定口座(源泉徴収あり)|確定申告不要で手間なし

特定口座(源泉徴収あり)は、証券会社が自動的に税金を計算して源泉徴収する口座です。分配金や売却益が出るたびに20.315%の税金が天引きされ、証券会社が税務署に納付します。投資家は何もする必要がありません。

特定口座(源泉徴収あり)のメリット

確定申告が不要

年間取引報告書も証券会社が作成

会社員で忙しい方や確定申告に不慣れな方に最適

ただし、自動的に源泉徴収されるため、利益が少額でも税金が引かれます。また、複数口座で損益通算したい場合は確定申告が必要です。

日本証券業協会:特定口座制度

特定口座(源泉徴収なし)|確定申告が必要

特定口座(源泉徴収なし)は、証券会社が年間取引報告書を作成しますが、税金の源泉徴収は行いません。利益が出た場合は自分で確定申告をして納税します。

この口座のメリットは、給与所得者で投資の利益が年間20万円以下なら確定申告が不要になることです。少額投資で利益が出ても、20万円以下なら税金を払わずに済みます。ただし、利益が20万円を超えたら確定申告が必要です。

確定申告の手間はかかりますが、年間取引報告書があるため、一般口座よりは計算が楽です。投資の利益が少額で、確定申告をする自信がある方に向いています。

一般口座|自分で損益計算が必要

一般口座は、証券会社が税金の源泉徴収も年間取引報告書の作成も行わない口座です。すべて自分で損益を計算し、確定申告をする必要があります。

一般口座のメリットはほとんどありません。損益計算が複雑で手間がかかるため、特別な理由がない限り選ぶべきではありません。現在ではほとんどの投資家が特定口座を利用しています。

海外の証券会社など、特定口座制度に対応していない場合は一般口座になることがあります。その場合は自分で損益計算と確定申告を行いましょう。

NISA口座|非課税で確定申告不要

NISA口座は、投資で得た利益が非課税になる特別な口座です。分配金も売却益も税金がかからず、確定申告も不要です。2024年から始まった新NISA制度では、非課税保有限度額が1,800万円に拡大されました。

NISA口座の最大のメリットは税金がかからないことです。例えば100万円の利益が出た場合、通常なら20万円以上の税金がかかりますが、NISA口座なら100万円すべてが手元に残ります。長期投資をするなら、NISA口座を最優先で活用しましょう。

NISA口座は1人1口座しか開設できません。また、非課税枠には上限があるため、計画的に利用することが大切です。

金融庁:新しいNISA

損益通算と繰越控除|税金を取り戻す方法

投資で損失が出た場合でも、損益通算や繰越控除を活用することで税金を取り戻せる可能性があります。確定申告をすることで節税できるケースを理解しておきましょう。

損益通算とは|複数口座の損失と利益を相殺

損益通算とは、同じ年の投資の利益と損失を相殺する仕組みです。複数の証券口座を持っている場合、ある口座で利益が出て別の口座で損失が出ていれば、確定申告をすることで相殺できます。

例えば、A証券で50万円の利益が出て、B証券で20万円の損失が出た場合を考えます。それぞれの口座では自動的に税金が計算されますが、確定申告をすることで実質的な利益30万円(50万円-20万円)に対する税金に調整できます。A証券で源泉徴収された税金のうち、20万円×20.315%≒40,630円が還付されます。

損益通算は投資信託だけでなく、株式や債券などの上場有価証券全般で可能です。複数の証券口座で取引している方は、確定申告で損益通算を検討しましょう。

国税庁:上場株式等の損益通算及び繰越控除

繰越控除とは|損失を3年間繰り越せる

繰越控除とは、投資で損失が出た年に確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年間繰り越せる制度です。翌年以降に利益が出た場合、繰り越した損失と相殺して税金を減らせます。

例えば、2024年に50万円の損失が出て確定申告をした場合、この損失を2025年、2026年、2027年の3年間繰り越せます。2025年に30万円の利益が出た場合、繰り越した損失50万円と相殺できるため、2025年の税金はゼロになります。残りの損失20万円はさらに翌年以降に繰り越せます。

繰越控除を利用するには、損失が出た年に確定申告をすることが必須です。また、繰り越す期間中は毎年確定申告を続ける必要があります。手間はかかりますが、大きな損失が出た場合は必ず活用しましょう。

具体例|どのくらい税金が戻る?シミュレーション

損益通算と繰越控除を使うと、どのくらい税金が戻るのか具体例で見てみましょう。

ケース1:損益通算
A証券(特定口座・源泉徴収あり)で100万円の利益、B証券(特定口座・源泉徴収あり)で40万円の損失が出た場合。A証券では100万円×20.315%=203,150円が源泉徴収されます。確定申告で損益通算すると、実質的な利益は60万円(100万円-40万円)なので、税金は121,890円です。還付される税額は203,150円-121,890円=81,260円になります。
ケース2:繰越控除
2024年に80万円の損失、2025年に50万円の利益が出た場合。2024年に確定申告で損失を繰り越し、2025年に損益通算すると、2025年の税金はゼロになります。通常なら50万円×20.315%=101,575円の税金がかかるところ、繰越控除で全額が還付されます。残りの損失30万円は2026年以降に繰り越せます。

このように、損益通算と繰越控除を活用することで、数万円から数十万円の税金を取り戻せる可能性があります。確定申告の手間はかかりますが、節税効果は大きいです。

確定申告の手順|必要書類と記入方法

投資信託で確定申告が必要になった場合、どのように手続きを進めればよいのでしょうか。必要書類の準備から申告書の作成まで、具体的な手順を解説します。

必要書類のチェックリスト

確定申告に必要な書類は以下のとおりです。事前に準備しておきましょう。

  • 特定口座年間取引報告書(証券会社から送られてくる)
  • 源泉徴収票(会社員の場合)
  • マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
  • 還付金を受け取る銀行口座の情報
  • 印鑑(シャチハタ不可)

特定口座年間取引報告書は、証券会社が1月中旬から2月上旬に発行します。電子交付を選択している場合は、証券会社のウェブサイトからダウンロードできます。複数の証券口座がある場合は、すべての口座の年間取引報告書が必要です。

一般口座で取引している場合は、自分で年間の損益を計算した書類を用意します。取引履歴をもとに、売却価格、購入価格、手数料を集計しましょう。

国税庁:確定申告書等作成コーナー

e-Taxで申告する方法|スマホでも可能

e-Taxは国税庁が提供するオンライン申告システムです。パソコンだけでなく、スマートフォンでも確定申告ができます。マイナンバーカードがあれば、自宅から簡単に申告できます。

ステップ1.国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
ステップ2.マイナンバーカードとスマートフォンで本人確認
ステップ3.給与所得、投資の損益、控除額などを入力
ステップ4.内容を確認して送信

特定口座年間取引報告書の内容を入力する際は、「収入金額等」の「株式等の譲渡所得等」の欄に、年間取引報告書に記載された金額を転記します。損益通算や繰越控除を行う場合は、該当する項目を選択して入力します。

すべて入力したら、内容を確認して送信します。還付金がある場合は、指定した銀行口座に1か月程度で振り込まれます。e-Taxなら24時間いつでも申告でき、税務署に行く必要もありません。

確定申告書の記入例|第三表の書き方

投資信託の確定申告では、確定申告書の第三表(分離課税用)を使用します。第三表は株式や投資信託などの譲渡所得を記載する書類です。

第三表の記入例を見てみましょう。まず、「収入金額」の欄に、特定口座年間取引報告書の「譲渡の対価の額」を記入します。次に、「所得金額」の欄に、年間取引報告書の「株式等の譲渡所得等の金額」を記入します。損失がある場合は、損失額をマイナスで記入します。

損益通算を行う場合は、複数の証券口座の損益を合算して記入します。繰越控除を利用する場合は、前年から繰り越した損失額を「前年から繰り越された損失額」の欄に記入します。

第三表の記入が終わったら、第一表(基本情報)と合わせて提出します。不明な点がある場合は、税務署に問い合わせるか、国税庁のウェブサイトで記入例を確認しましょう。

年末年始の税務手続きスケジュール

投資信託に関する税務手続きには、年末年始に注意すべきスケジュールがあります。以下のタイムラインを参考にしてください。

11月~12月:年末調整書類の提出
会社員の方は、11月から12月にかけて年末調整書類を提出します。iDeCoに加入している場合は、小規模企業共済等掛金払込証明書を添付しましょう。投資信託は年末調整の対象外なので、年末調整書類には記載しません。
1月~2月:特定口座年間取引報告書の受取
証券会社から特定口座年間取引報告書が送られてきます。電子交付の場合は、証券会社のウェブサイトからダウンロードします。確定申告が必要な方は、この書類を保管しておきましょう。
2月16日~3月15日:確定申告期間
確定申告の受付期間は毎年2月16日から3月15日までです。この期間内に税務署に申告書を提出するか、e-Taxで申告します。還付申告の場合は、1月から受け付けています。

確定申告を忘れると、無申告加算税や延滞税がかかる可能性があります。期限内に必ず手続きを完了させましょう。

会社員が投資を始めた年の年末にすべきこと

投資を始めた初年度の年末は、何をすればよいのか分からず不安になる方も多いでしょう。会社員が投資を始めた年の年末にすべきことをチェックリスト形式で解説します。

年末調整書類の提出|iDeCoの控除証明書を添付

年末調整の時期になったら、会社から配布される年末調整書類に必要事項を記入して提出します。iDeCoに加入している場合は、国民年金基金連合会から送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付しましょう。

投資信託やNISA、株式投資は年末調整の対象外です。年末調整書類に投資信託の情報を記載する必要はありません。iDeCoだけが年末調整で処理できる投資商品だと覚えておきましょう。

年末調整書類の提出期限は会社によって異なりますが、通常は12月上旬から中旬です。期限に遅れないよう、早めに準備しましょう。

投資信託の口座種類を確認|確定申告が必要か判断

投資信託を購入した証券口座の種類を確認しましょう。特定口座(源泉徴収あり)やNISA口座で取引している場合は、確定申告は不要です。何もする必要はありません。

一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で取引している場合は、翌年の確定申告が必要です。1月から2月にかけて証券会社から送られてくる年間取引報告書を保管しておきましょう。

複数の証券口座を持っている場合は、すべての口座の種類を確認します。損益通算や繰越控除を検討する場合は、各口座の損益状況も把握しておきましょう。

会社に投資がバレるケースとバレないケース

会社員の方の中には、会社に投資をしていることを知られたくないと考える方もいるでしょう。投資が会社にバレるケースとバレないケースを理解しておきましょう。

会社にバレないケース
特定口座(源泉徴収あり)やNISA口座で取引し、確定申告をしない場合は、会社に投資がバレることはありません。税金は証券会社が自動的に処理するため、会社に情報が伝わることはありません。
会社にバレる可能性があるケース
確定申告をすると、投資の利益が住民税に反映されます。住民税は会社の給与から天引き(特別徴収)されるため、会社の経理担当者が住民税額の変動に気づく可能性があります。ただし、住民税額だけでは投資をしているかどうかは分かりません。

確定申告をする際に、住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」に選択すれば、投資の利益分の住民税は自分で納付することになり、会社にバレにくくなります。ただし、自治体によっては普通徴収を認めない場合もあるため、事前に確認しましょう。

よくある質問(Q&A)

投資信託と年末調整に関してよくある質問をまとめました。疑問点がある方は参考にしてください。

投資信託を年末調整で申告しなかったらどうなる?

投資信託は年末調整の対象外なので、年末調整で申告する必要はありません。年末調整書類に投資信託の情報を記載しなくても問題ありません。

ただし、確定申告が必要なケース(一般口座、特定口座・源泉徴収なし、損益通算や繰越控除を希望する場合)で確定申告をしなかった場合は、無申告となり、追徴課税や延滞税がかかる可能性があります。確定申告が必要な方は必ず期限内に手続きを行いましょう。

確定申告を忘れた場合の対処法は?

確定申告の期限(3月15日)を過ぎてしまった場合でも、期限後申告をすることができます。できるだけ早く税務署に相談し、申告書を提出しましょう。

期限後申告の場合、無申告加算税(納税額の5~20%)や延滞税がかかる可能性があります。ただし、期限後でも自主的に申告した場合は、無申告加算税が軽減されることがあります。

還付申告(税金が戻ってくる申告)の場合は、5年以内であればいつでも申告できます。損益通算や繰越控除で税金が戻る場合は、期限を過ぎても申告しましょう。

ふるさと納税と確定申告を併用する際の注意点は?

ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用している場合、確定申告をするとワンストップ特例が無効になります。ふるさと納税の控除を受けるには、確定申告書にふるさと納税の寄附金控除を記載する必要があります。

確定申告をする際は、ふるさと納税の寄附金受領証明書を用意し、「寄附金控除」の欄に寄附金額を記入しましょう。ワンストップ特例を申請していても、確定申告でふるさと納税を記載すれば控除を受けられます。

ふるさと納税と投資信託の確定申告を併用する場合は、両方の控除を忘れずに記載することが大切です。

配当控除を選択すると国民健康保険料が上がる?

投資信託の分配金(配当所得)は、確定申告で総合課税を選択すると配当控除を受けられます。配当控除を利用すると税金が安くなる場合がありますが、総合課税を選択すると所得が増えるため、国民健康保険料が上がる可能性があります。

会社員で社会保険に加入している場合は影響ありませんが、自営業者や退職後の方は注意が必要です。配当控除で節税できる金額と、国民健康保険料の増加額を比較して判断しましょう。

所得税は総合課税、住民税は申告不要制度を選択することで、国民健康保険料の上昇を抑えることもできます。詳しくは税理士に相談することをおすすめします。

税理士に依頼すべきケースは?

投資信託の確定申告は比較的シンプルですが、以下のようなケースでは税理士に依頼することを検討しましょう。

  • 複数の証券口座で複雑な損益通算が必要な場合
  • 投資額が大きく、税額も高額になる場合
  • 配当控除や外国税額控除など、高度な節税対策を検討したい場合
  • 自営業者で事業所得と投資所得を合わせて申告する場合
  • 確定申告に不安があり、専門家のアドバイスが欲しい場合

税理士に依頼する費用は、申告内容の複雑さによって異なりますが、一般的には3万円から10万円程度です。節税効果や手間の削減を考えると、費用対効果が高い場合もあります。

まとめ

投資信託は年末調整の対象外であり、会社が行う年末調整では処理できません。投資信託の利益は申告分離課税が適用されるため、確定申告で対応する必要があります。

特定口座(源泉徴収あり)やNISA口座で取引している場合は、確定申告は不要です。証券会社が自動的に税金を処理してくれるため、手間がかかりません。一方、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で取引している場合は、自分で確定申告をする必要があります。

複数の証券口座で取引している場合は、損益通算や繰越控除を活用することで税金を取り戻せる可能性があります。確定申告の手間はかかりますが、節税効果は大きいです。年間取引報告書を確認し、確定申告が必要かどうか判断しましょう。

会社員が投資を始めた年の年末は、年末調整書類の提出と口座種類の確認を行います。iDeCoに加入している場合は、控除証明書を年末調整書類に添付しましょう。投資信託は年末調整の対象外なので、年末調整書類には記載しません。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。税務手続きについて不明な点がある場合は、税務署や税理士にご相談ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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