NISAの仕組みとは?2024年からの新制度をわかりやすく解説

「iDeCoを始めると、実際にどれくらい税金が安くなるの?」
iDeCoは老後資金を準備しながら節税できる制度として注目されていますが、具体的な節税額がわからないと始めにくいですよね。
実は、iDeCoの節税効果は年収や職業によって大きく異なります。
年収500万円の会社員なら年間約4万円、30年間で120万円以上の節税が可能です。
この記事では、年収別・職業別の具体的な節税シミュレーションから、受取時の税金対策まで、iDeCoの節税効果を徹底解説します。
目次
iDeCoの節税効果とは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備しながら税制優遇を受けられる私的年金制度です。国が推進する資産形成制度として、3つの段階で税制メリットが用意されています。
iDeCoの最大の特徴は、拠出時・運用時・受取時のすべての段階で税制優遇が受けられることです。他の金融商品にはない手厚い優遇措置により、効率的な資産形成が可能になります。
iDeCoで最も大きな節税効果が得られるのが、掛金の全額所得控除です。毎月積み立てる掛金が全額、その年の所得から差し引かれるため、所得税と住民税が軽減されます。
例えば、年収500万円の会社員が月2万円(年間24万円)を積み立てた場合、所得税率10%・住民税率10%として、年間約4.8万円の税金が軽減されます。この節税効果は積立を続ける限り毎年受けられるため、長期的には非常に大きな金額になるんです。
掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となり、年末調整または確定申告で申請することで節税効果を受けられます。
通常、投資信託や株式で得た利益には20.315%の税金がかかります。しかし、iDeCoで運用した場合、運用益に対する税金が一切かかりません。
例えば、運用で10万円の利益が出た場合、通常の証券口座では約2万円が税金として差し引かれますが、iDeCoなら10万円全額を再投資に回せます。この差は複利効果により、長期運用すればするほど大きな差となって表れます。
運用益が非課税で再投資できることで、複利効果を最大限に活かせるのがiDeCoの大きな強みです。30年間の長期運用では、この非課税効果だけで数十万円から数百万円の差が生まれることもあります。
iDeCoで積み立てた資産を60歳以降に受け取る際も、税制優遇が用意されています。受取方法は「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3つから選択でき、それぞれ異なる控除が適用されます。
一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用され、勤続年数に応じた控除額が設定されます。年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、一定額まで非課税で受け取れます。
例えば、iDeCoに30年間加入していた場合、退職所得控除額は1,500万円となり、この金額までは税金がかかりません。受取時の税制優遇をしっかり活用することで、手取り額を最大化できます。
年収別・職業別の節税額シミュレーション
iDeCoの節税効果は、年収や職業によって大きく異なります。ここでは、具体的な年収・職業別に、実際にいくら節税できるのかをシミュレーションしていきます。
節税額は「掛金額×(所得税率+住民税率10%)」で計算されます。所得税率は課税所得に応じて5%~45%の7段階に分かれており、年収が高いほど節税効果も大きくなります。
| 年収 | 月額掛金 | 年間節税額 | 30年間の累計節税額 |
| 300万円 | 1万円 | 約1.8万円 | 約54万円 |
| 500万円 | 2万円 | 約4.8万円 | 約144万円 |
| 800万円 | 2万円 | 約6.0万円 | 約180万円 |
| 自営業600万円 | 6.8万円 | 約20.4万円 | 約612万円 |
年収300万円の会社員の場合、課税所得は約130万円程度となり、所得税率は5%が適用されます。企業年金のない会社員は、iDeCoに月額2.3万円まで拠出できます。
月1万円(年間12万円)を積み立てた場合、所得税率5%+住民税率10%=15%として、年間約1.8万円の節税効果が得られます。30年間続けると累計で約54万円の節税になります。
年収300万円の方は、まずは無理のない月5,000円~1万円からスタートし、収入が増えたタイミングで掛金を増額していくのがおすすめです。少額でも早く始めることで、複利効果と節税効果の両方を長期間享受できます。
年収500万円の会社員の場合、課税所得は約240万円程度となり、所得税率は10%が適用されます。企業年金のない会社員は月額2.3万円まで拠出可能です。
月2万円(年間24万円)を積み立てた場合、所得税率10%+住民税率10%=20%として、年間約4.8万円の節税効果が得られます。30年間続けると累計で約144万円の節税になります。
年収500万円は最もiDeCoの恩恵を受けやすい年収帯
掛金上限まで拠出することで、老後資金の準備と節税を両立できます
月2万円の積立は年間24万円ですが、節税効果を考慮すると実質的な負担は約19.2万円
約20%お得に積み立てられる計算です
年収800万円の会社員の場合、課税所得は約490万円程度となり、所得税率は20%が適用されます。企業年金のない会社員は月額2.3万円まで拠出できます。
月2万円(年間24万円)を積み立てた場合、所得税率20%+住民税率10%=30%として、年間約7.2万円の節税効果が得られます。30年間続けると累計で約216万円の節税になります。
高所得者ほど所得税率が高くなるため、iDeCoの節税効果も大きくなります。年収800万円の方は、掛金上限まで拠出することで、効率的に老後資金を準備できます。また、2024年12月の制度改正により、企業年金加入者でも月2万円まで拠出できるようになりました。
自営業やフリーランスの方は、会社員と異なり厚生年金に加入していないため、iDeCoの掛金上限が月額6.8万円(年間81.6万円)と高く設定されています。
年収600万円の自営業者が月6.8万円(年間81.6万円)を積み立てた場合、所得税率20%+住民税率10%=30%として、年間約24.5万円の節税効果が得られます。30年間続けると累計で約735万円の節税になります。
自営業の方は厚生年金がないため、老後資金を自分で準備する必要性が高くなります。iDeCoの高い掛金上限と節税効果を活用することで、効率的に老後資金を準備できます。また、国民年金基金との合算で月額6.8万円が上限となる点に注意が必要です。
公務員の方は、2024年12月の制度改正により、iDeCoの掛金上限が月1.2万円から月2万円に引き上げられました。共済年金に加入しているため、会社員よりも上限が低めに設定されています。
年収500万円の公務員が月2万円(年間24万円)を積み立てた場合、所得税率10%+住民税率10%=20%として、年間約4.8万円の節税効果が得られます。35年間続けると累計で約168万円の節税になります。
公務員の方は退職金制度が充実している場合が多いですが、iDeCoを併用することでさらに老後資金を手厚くできます。2024年12月の改正で掛金が増額されたことで、より効果的な資産形成が可能になりました。
長期運用での累積節税効果
iDeCoの節税効果は、1年だけ見ると数万円程度ですが、長期間積み立てることで累積節税額は非常に大きくなります。ここでは、20年・30年という長期スパンで見た場合の節税効果を具体的に見ていきます。
長期運用の最大のメリットは、毎年の節税効果が積み重なることに加えて、運用益の非課税効果も加わることです。通常の課税口座では運用益に20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでは一切かかりません。
20年間iDeCoに積み立てた場合の節税効果を、年収500万円の会社員(月2万円積立)を例にシミュレーションしてみます。
掛金の所得控除による節税額は、年間4.8万円×20年=96万円となります。さらに、運用益の非課税効果も加わります。仮に年利3%で運用できた場合、20年間の運用益は約160万円となり、通常なら約32万円の税金がかかりますが、iDeCoでは非課税です。
つまり、20年間で掛金の所得控除96万円+運用益の非課税効果32万円=合計約128万円の税制優遇を受けられる計算になります。これは月2万円の積立額の約5年分に相当する金額です。
30年間iDeCoに積み立てた場合、節税効果はさらに大きくなります。同じく年収500万円の会社員(月2万円積立)の例で見てみましょう。
掛金の所得控除による節税額は、年間4.8万円×30年=144万円となります。運用益の非課税効果は、年利3%で運用できた場合、30年間の運用益は約390万円となり、通常なら約79万円の税金がかかりますが、iDeCoでは非課税です。
30年間の累積節税効果
掛金の所得控除:144万円
運用益の非課税効果:79万円
合計:約223万円の税制優遇
これは月2万円の積立額の約9年分に相当し、非常に大きな金額です。長期運用することで、複利効果と税制優遇の相乗効果が最大化されます。
iDeCoの税制メリットを総合的に見ると、掛金の所得控除だけでなく、運用益の非課税効果も非常に大きいことがわかります。特に長期運用では、運用益の非課税効果が節税額全体の3割以上を占めることもあります。
例えば、年収500万円の会社員が月2万円を30年間、年利3%で運用した場合、総資産は約1,160万円になります。このうち掛金元本が720万円、運用益が約440万円です。運用益440万円に通常かかる税金約89万円が非課税となるため、大きな優遇効果があります。
さらに、運用益が非課税で再投資されることで複利効果が高まり、最終的な資産額も大きくなります。課税口座で同じ運用をした場合と比べて、30年後の資産額に100万円以上の差が出ることも珍しくありません。早く始めるほど、この複利効果と非課税効果の恩恵を長く受けられます。
iDeCoで積み立てた資産を60歳以降に受け取る際も、税制優遇が用意されています。ただし、受取方法によって適用される控除が異なるため、自分の状況に合わせた最適な受取方法を選ぶことが重要です。
受取時の税金対策を事前に理解しておくことで、手取り額を最大化できます。特に退職金がある方は、iDeCoとの受取時期を調整することで、さらに節税効果を高められる可能性があります。
iDeCoを一時金で受け取る場合、「退職所得控除」が適用されます。退職所得控除額は、iDeCoに加入していた期間(勤続年数)に応じて計算されます。
退職所得控除額の計算式は以下の通りです。勤続年数20年以下の場合は「40万円×勤続年数」、勤続年数20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となります。
例えば、iDeCoに30年間加入していた場合、退職所得控除額は800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円となります。つまり、iDeCoの受取額が1,500万円以下なら、税金は一切かかりません。さらに、1,500万円を超えた部分も、その半分だけが課税対象となるため、非常に優遇されています。
iDeCoを年金形式で受け取る場合、「公的年金等控除」が適用されます。公的年金等控除額は、年齢と年金収入額に応じて決まります。
65歳未満の場合、年金収入130万円まで控除額は60万円、130万円超410万円以下の場合は「収入金額×25%+27.5万円」となります。65歳以上の場合、年金収入330万円まで控除額は110万円、330万円超410万円以下の場合は「収入金額×25%+27.5万円」となります。
例えば、65歳以上で年金として年間200万円を受け取る場合、公的年金等控除額は110万円となり、課税対象となる雑所得は90万円です。この90万円に対して所得税と住民税がかかりますが、他の所得と合算して計算されます。
iDeCoの受取方法は、「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3つから選べます。どの方法が有利かは、個人の状況によって異なります。
最も税負担を抑えられる受取方法は、個人の状況によって異なります。退職金の有無、公的年金の受給額、他の収入などを総合的に考慮して、税理士やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。一般的には、退職金が少ない方は一時金、公的年金が少ない方は年金形式が有利になる傾向があります。
会社から退職金を受け取る予定がある方は、iDeCoとの受取時期に注意が必要です。退職所得控除は、同じ年に複数の退職金を受け取ると、控除額の調整が必要になるためです。
退職金とiDeCoを同じ年に受け取ると、退職所得控除額が重複適用されず、税負担が増える可能性があります。この問題を避けるには、会社の退職金とiDeCoの受取時期を5年以上空けることが推奨されています。
例えば、60歳で退職金を受け取った場合、iDeCoは65歳以降に受け取ることで、それぞれ独立して退職所得控除を適用できます。ただし、iDeCoは75歳までに受取を開始する必要があるため、計画的に受取時期を決めることが重要です。受取時期の調整だけで、数十万円から数百万円の税負担の差が出ることもあるため、事前にシミュレーションしておきましょう。
NISAやふるさと納税と併用する場合の最適な掛金配分
iDeCoは非常に優れた制度ですが、NISAやふるさと納税など、他の節税・資産形成制度と併用する場合、最適な配分を考える必要があります。それぞれの制度の特徴を理解し、自分に合った組み合わせを見つけましょう。
限られた資金を複数の制度に配分する際は、それぞれのメリット・デメリットを比較し、優先順位をつけることが重要です。年収や家族構成、ライフプランによって最適な配分は異なります。
NISAとiDeCoは、どちらも税制優遇のある資産形成制度ですが、特徴が大きく異なります。NISAは投資で得た利益が非課税になる制度で、2024年からの新NISAでは非課税保有限度額が1,800万円に拡大されました。
iDeCoとNISAの最大の違いは、「いつでも引き出せるか」という点です。NISAはいつでも自由に売却・引き出しができますが、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。また、iDeCoは掛金が所得控除の対象となりますが、NISAにはこの優遇はありません。
| 項目 | iDeCo | NISA |
| 掛金の所得控除 | あり(全額) | なし |
| 運用益の非課税 | あり | あり |
| 引き出し制限 | 60歳まで不可 | いつでも可能 |
| 年間投資上限 | 14.4万~81.6万円 | 360万円 |
| 受取時の課税 | 控除あり | 非課税 |
使い分けの基本は、「老後資金はiDeCo、それ以外の目的はNISA」です。60歳まで使う予定のない資金はiDeCoで節税効果を最大化し、住宅購入や教育資金など途中で使う可能性がある資金はNISAで運用するのが合理的です。
iDeCoとふるさと納税を併用する場合、iDeCoの掛金がふるさと納税の限度額に影響を与える点に注意が必要です。iDeCoの掛金で所得が減るため、ふるさと納税の控除上限額も下がります。
例えば、年収500万円の会社員がiDeCoに加入していない場合、ふるさと納税の控除上限額は約6.1万円です。しかし、月2万円(年間24万円)をiDeCoに拠出すると、課税所得が減るため、ふるさと納税の控除上限額は約5.5万円に下がります。
ただし、これはふるさと納税が損になるという意味ではありません。iDeCoによる節税効果(年間約4.8万円)の方が、ふるさと納税の限度額減少(約6,000円分)よりもはるかに大きいため、トータルでは大きくプラスになります。両制度を併用する場合は、iDeCoの掛金を決めた後で、ふるさと納税の限度額をシミュレーションし直すことをおすすめします。
年収や家族構成によって、iDeCo・NISA・ふるさと納税の最適な配分は異なります。ここでは、年収別のおすすめ配分例を紹介します。
重要なのは、無理のない範囲で継続することです。最初から全ての制度を上限まで使おうとせず、まずはiDeCoを少額から始め、慣れてきたらNISAやふるさと納税を追加していくのが現実的です。家計の状況に応じて、柔軟に配分を調整していきましょう。
年末調整・確定申告での手続き方法
iDeCoの節税効果を実際に受けるには、年末調整または確定申告での手続きが必要です。手続きを忘れると節税効果が受けられないため、必ず申請しましょう。
手続き自体は難しくありませんが、必要書類の準備と提出期限を守ることが重要です。ここでは、会社員と自営業それぞれの手続き方法を詳しく解説します。
会社員の方は、年末調整でiDeCoの掛金を申告することで節税効果を受けられます。手続きに必要な書類は「小規模企業共済等掛金払込証明書」で、毎年10月頃に国民年金基金連合会から郵送されます。
注意点として、10月以降に加入した場合や掛金を変更した場合は、証明書の到着が遅れることがあります。年末調整に間に合わなかった場合でも、翌年の確定申告で控除を受けられるので安心してください。また、電子化に対応している会社では、マイナポータル連携で自動入力できる場合もあります。
自営業やフリーランスの方は、確定申告でiDeCoの掛金を申告します。会社員と同様に「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要です。
確定申告での手続きは、確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、年間掛金額を記入します。払込証明書は確定申告書に添付するか、e-Taxで申告する場合は、証明書の記載内容を入力します(証明書の提出は省略可能ですが、保管は必要です)。
自営業の方は所得控除が多岐にわたるため、iDeCoの掛金控除を忘れがちです。しかし、iDeCoは全額所得控除の対象となるため、必ず申告しましょう。また、自営業の方は国民年金基金との合算で月額6.8万円が上限となるため、両方に加入している場合は合計額が上限を超えないよう注意が必要です。
「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、iDeCoの掛金を証明する重要な書類です。証明書には、その年の1月から9月までに拠出した掛金の合計額と、10月以降の予定額が記載されています。
証明書の見方のポイント
「合計金額」の欄に記載されている金額が、年末調整または確定申告で申告する金額です
この金額は、10月以降も予定通り拠出した場合の年間合計額となります。
もし10月以降に掛金を変更した場合や、拠出を停止した場合は、証明書の金額と実際の拠出額が異なることがあります。その場合は、実際に拠出した金額を申告してください。また、証明書を紛失した場合は、運営管理機関(金融機関)に再発行を依頼できます。再発行には1~2週間かかるため、早めに手続きしましょう。
節税効果が得られないケース
iDeCoは非常に優れた制度ですが、全ての人に節税効果があるわけではありません。所得がない方や、所得控除で課税所得がゼロになる方は、掛金の所得控除による節税効果を受けられません。
ただし、節税効果がなくてもiDeCoにはメリットがあります。ここでは、節税効果が得られないケースと、それでもiDeCoを活用する価値について解説します。
専業主婦(夫)など、所得がない方はiDeCoの掛金を所得控除できないため、拠出時の節税効果はありません。所得税も住民税も支払っていないため、控除しても税金は減らないのです。
例えば、専業主婦が月2万円をiDeCoに拠出しても、年間の節税額はゼロです。会社員の配偶者の所得から控除することもできないため、拠出時のメリットはありません。
ただし、専業主婦でもiDeCoに加入できる制度設計になっているのは、運用益の非課税効果と受取時の控除があるためです。将来働き始めて所得が発生した場合に備えて、早めに加入しておくという選択肢もあります。
所得はあっても、各種所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除など)を差し引いた結果、課税所得がゼロまたはマイナスになる方も、iDeCoの節税効果を受けられません。
例えば、年収103万円以下のパート・アルバイトの方は、給与所得控除55万円+基礎控除48万円で103万円の控除があるため、課税所得がゼロになります。この場合、iDeCoの掛金を追加で控除しても、税金は減りません。
また、医療費控除や住宅ローン控除などで既に課税所得がゼロになっている方も、iDeCoの節税効果は限定的です。このような場合は、NISAなど他の制度を優先した方が良い場合もあります。
節税効果がない場合でも、iDeCoには「運用益の非課税」と「受取時の控除」という2つのメリットがあります。特に長期運用では、運用益の非課税効果が大きくなります。
例えば、専業主婦が月2万円を30年間、年利3%で運用した場合、運用益は約440万円となります。通常の課税口座なら約89万円の税金がかかりますが、iDeCoなら非課税です。また、受取時も退職所得控除が適用されるため、一定額まで非課税で受け取れます。
節税効果がなくても、運用益の非課税効果だけで十分にメリットがあります。ただし、iDeCoは60歳まで引き出せないため、途中で資金が必要になる可能性がある方は、NISAなど柔軟性の高い制度を優先した方が良いでしょう。自分のライフプランに合わせて、最適な制度を選ぶことが重要です。
iDeCoで気をつけたい3つのこと
iDeCoは税制優遇が手厚い優れた制度ですが、注意すべき点もあります。メリットだけでなくデメリットも理解した上で、自分に合っているかを判断することが重要です。
ここでは、iDeCoを始める前に必ず知っておきたい3つの注意点を解説します。これらを理解せずに始めると、後で困る可能性があるため、しっかり確認しましょう。
iDeCoの最大のデメリットは、原則として60歳まで資金を引き出せないことです。どんなに緊急でお金が必要になっても、途中で解約して引き出すことはできません。
例えば、住宅購入の頭金が必要になった、子どもの教育費が予想以上にかかった、病気で医療費が必要になったなど、予期せぬ出費があっても、iDeCoの資金は使えません。掛金の拠出を停止することはできますが、既に積み立てた資金は60歳まで引き出せません。
この制約があるため、iDeCoは「60歳まで絶対に使わない資金」で行うことが鉄則です。生活費の3~6ヶ月分の緊急予備資金を別に確保した上で、余裕資金でiDeCoを始めましょう。無理な金額を設定すると、途中で生活が苦しくなる可能性があります。掛金は年1回変更できるため、状況に応じて減額することも検討しましょう。
iDeCoで運用する商品には、投資信託など価格が変動する商品が含まれます。運用次第では、積み立てた掛金よりも受取額が少なくなる「元本割れ」のリスクがあります。
例えば、株式型の投資信託で運用している場合、市場が大きく下落すると資産価値が減少します。リーマンショックのような金融危機が起きた場合、一時的に資産が半分以下になることもあります。ただし、長期・積立・分散投資を実践すれば、リスクを抑えられます。
元本割れが心配な方は、定期預金や保険など「元本確保型商品」を選ぶこともできます。ただし、元本確保型商品は利回りが低いため、インフレに負けて実質的な資産価値が目減りする可能性があります。自分のリスク許容度に合わせて、適切な商品を選びましょう。
iDeCoには、加入時・運用時・受取時にそれぞれ手数料がかかります。これらの手数料が節税効果を上回ると、トータルでマイナスになる可能性があります。
例えば、所得がなく節税効果がゼロの専業主婦が、運営管理手数料が有料の金融機関で月5,000円を積み立てた場合、年間の手数料が節税効果を上回る可能性があります。このような場合は、NISAなど手数料のかからない制度を優先した方が良いでしょう。
手数料を抑えるポイント
運営管理手数料が無料の金融機関を選ぶこと
SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券は運営管理手数料が無料なので、長期的なコストを大幅に削減できます。また、掛金が少額の場合は、手数料の影響が大きくなるため、ある程度まとまった金額で積み立てることをおすすめします。
iDeCoを始めるのにおすすめの金融機関3社
iDeCoを始める際、どの金融機関を選ぶかは非常に重要です。運営管理手数料、商品ラインナップ、サポート体制などを総合的に比較して、自分に合った金融機関を選びましょう。
ここでは、運営管理手数料が無料で、商品数が豊富な主要ネット証券3社を紹介します。いずれも初心者から上級者まで幅広くおすすめできる金融機関です。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約15,000,000口座 ※2025年11月25日時点(SBIネオモバイル証券など含む) |
| 取引手数料 | 【スタンダードプラン(1注文ごと)】 取引金額に関係なく0円【アクティブプラン(1日定額制)】 1日100万円以下の取引:0円※現物取引・信用取引・単元未満株(S株)もすべて対象です。 |
| NISA対応 | 〇 |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 〇(259銘柄)※2025年3月3日時点 |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株 / 外国株 / 投資信託(約1,329銘柄 ※2025年3月3日時点) |
| 投資信託 | 約2,550本 ※2025年3月3日時点 |
| 外国株 | 8カ国/米国株式(5,000銘柄) |
| 取引ツール(PC) | HYPER SBI 2 / HYPER SBI / SBI CFDトレーダー |
| スマホアプリ | SBI証券 株アプリ / 米国株アプリ / かんたん積立 / HYPER FX / HYPER 先物 / HYPER CFD |
| 提携銀行口座 | SBI新生銀行 / 住信SBIネット銀行 |
| ポイント投資・付与 | Pontaポイント / dポイント / Vポイント(クレカ積立) |
| 口座開設スピード | 最短 翌営業日 |
SBI証券は、iDeCo口座開設数No.1の実績を持つ金融機関です。運営管理手数料が無料で、商品ラインナップが約90本と非常に豊富なのが特徴です。
SBI証券のiDeCoでは、低コストのインデックスファンドから、アクティブファンド、元本確保型商品まで、幅広い商品から選べます。特に「eMAXIS Slim」シリーズなど、業界最低水準の信託報酬の商品が揃っているため、長期運用のコストを抑えられます。
また、Webサイトやアプリが使いやすく、運用状況の確認やスイッチング(商品の変更)が簡単にできます。コールセンターのサポートも充実しており、初心者でも安心して始められます。口座開設数が多く実績があるため、迷ったらSBI証券を選んでおけば間違いありません。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約12,000,000口座 ※2025年1月時点 |
| 取引手数料 | 【ゼロコース】 国内株式(現物・信用):0円 かぶミニ®(単元未満株):0円 投資信託:0円 ※ゼロコース選択時。 ※一部、スプレッドや信託財産留保額が発生する場合があります。 |
| NISA対応 | 〇(新NISA対応) |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 263銘柄 ※2025年4月24日時点 |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株式 / 外国株式 / 投資信託(約1,345銘柄) |
| 投資信託 | 約2,550本 ※2025年4月24日時点 |
| 外国株 | 6カ国/米国株式(約4,500銘柄) |
| 取引ツール(PC) | マーケットスピード / マーケットスピード II / 楽天MT4 |
| スマホアプリ | iSPEED / iSPEED for iPad / iSPEED FX / iSPEED 先物 |
| 提携銀行口座 | 楽天銀行(マネーブリッジ) |
| ポイント投資・付与 | 楽天ポイント(投資信託 / 国内株式 / 米国株式<円貨決済>) |
| 口座開設スピード | 最短 翌営業日 |
楽天証券は、楽天経済圏を活用している方に特におすすめの金融機関です。運営管理手数料が無料で、iDeCoの運用資産に応じて楽天ポイントが貯まるのが大きな特徴です。
楽天証券のiDeCoでは、運用資産10万円ごとに年間24ポイントが貯まります(還元率0.024%)。貯まったポイントは楽天市場での買い物や、楽天モバイルの支払いなどに使えます。また、商品ラインナップも約30本と厳選されており、初心者でも選びやすくなっています。
Webサイトやアプリの使いやすさにも定評があり、資産状況の確認やシミュレーションが簡単にできます。楽天カードや楽天銀行など、他の楽天サービスと連携することで、より便利に活用できます。楽天経済圏をすでに活用している方なら、楽天証券が最適です。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座数 | 約2,700,000口座 ※2025年2月時点 |
| 取引手数料 | 【取引毎手数料コース】
|
| NISA対応 | 〇(日本株・米国株・中国株・投資信託の売買手数料が無料) |
| つみたて投資枠取扱銘柄数 | 〇(銘柄数は公式サイトで確認) |
| 成長投資枠対象商品 | 国内株 / 米国株 / 中国株 / 投資信託(約1,750本以上) |
| 投資信託 | 約1,800本(購入時手数料すべて無料) |
| 外国株 | 2カ国/米国株:約5,000銘柄以上(2025年1月27日時点) |
| 取引ツール(PC) | マネックストレーダー / 銘柄スカウター |
| スマホアプリ | マネックス証券アプリ / 米国株アプリ / 投信アプリ |
| 提携銀行口座 | マネックス証券専用銀行口座(詳細は公式サイトで確認) |
| ポイント投資・付与 | マネックスポイント / dポイント(投資信託の積立に利用可能) |
| 口座開設スピード | オンライン申込で最短翌営業日 |
マネックス証券は、低コストの商品ラインナップに定評がある金融機関です。運営管理手数料が無料で、信託報酬の低いインデックスファンドが充実しています。
マネックス証券のiDeCoでは、「eMAXIS Slim」シリーズや「ニッセイ」シリーズなど、業界最低水準の信託報酬の商品を多数取り揃えています。商品数は約30本と厳選されており、初心者でも迷わず選べます。また、ロボアドバイザーによる商品選択サポートもあり、自分に合った商品を提案してくれます。
コールセンターのサポートが手厚く、平日だけでなく土日も対応しているため、仕事で忙しい方でも相談しやすいのが特徴です。また、運用レポートが充実しており、資産状況を詳しく確認できます。低コストで効率的に運用したい方には、マネックス証券がおすすめです。
iDeCoの節税効果は、掛金を拠出した年から受けられます。例えば、2024年12月に加入して掛金を拠出した場合、2024年分の年末調整または確定申告で所得控除を受けられます。
ただし、掛金の引き落としは加入手続き完了の翌月または翌々月からとなるため、加入時期によっては初年度の拠出額が少なくなります。早く始めるほど、長期的な節税効果も大きくなります。
iDeCoの掛金は、年1回変更できます。変更手続きは、運営管理機関(金融機関)のWebサイトまたは書面で行います。変更は翌月または翌々月から反映されます。
また、掛金の拠出を一時停止することもできます。停止中も口座は維持され、運用は継続されますが、毎月の口座管理手数料はかかります。収入が減った場合や、一時的に資金が必要な場合は、掛金を減額または停止することを検討しましょう。
2022年10月の制度改正により、企業型DC加入者も原則としてiDeCoに加入できるようになりました。ただし、企業型DCの掛金とiDeCoの掛金の合計が、法定の上限額を超えないよう注意が必要です。
企業型DCのみ加入している場合、iDeCoの掛金上限は月2万円です。企業型DCとDB(確定給付企業年金)の両方に加入している場合は、月5.5万円から企業の拠出額を差し引いた額が上限となります(最大月2万円)。詳しくは勤務先の人事部門に確認しましょう。
転職してもiDeCoは継続できます。ただし、転職先の企業年金の状況によって、掛金上限額が変わる場合があります。転職後は、運営管理機関に「加入者登録事業所変更届」を提出する必要があります。
また、企業型DCに加入していた方が退職した場合、企業型DCの資産をiDeCoに移換できます。移換手続きは退職後6ヶ月以内に行う必要があるため、忘れずに手続きしましょう。
運用で損失が出ても、掛金の所得控除による節税効果は確実に受けられます。例えば、年間24万円の掛金で4.8万円の節税効果があれば、実質的な負担は19.2万円です。仮に運用で10%の損失が出ても、元本19.2万円に対して2.4万円の損失なので、通常の投資より損失は小さくなります。
また、iDeCoは長期・積立・分散投資を前提とした制度です。一時的に損失が出ても、長期的には回復する可能性が高いため、短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で運用を続けることが重要です。
受取時の税金は、受取方法や他の退職金の有無によって変わります。退職所得控除や公的年金等控除があるため、通常は税負担は軽くなりますが、退職金が非常に高額な場合や、複数の退職金を同時期に受け取る場合は、税負担が増える可能性があります。
特に注意が必要なのは、会社の退職金とiDeCoを同じ年に受け取る場合です。この場合、退職所得控除が重複適用されず、税負担が増えることがあります。受取時期を5年以上空けることで、それぞれ独立して控除を適用できるため、事前に計画を立てることが重要です。
基本的には、60歳まで使わない資金はiDeCo、途中で使う可能性がある資金はNISAという使い分けがおすすめです。iDeCoは掛金の所得控除があるため、節税効果はiDeCoの方が大きくなります。
ただし、iDeCoは60歳まで引き出せないため、住宅購入や教育資金など、途中で資金が必要になる可能性がある方は、NISAを優先した方が良いでしょう。理想は両方を併用することですが、資金に余裕がない場合は、自分のライフプランに合わせて優先順位を決めましょう。
iDeCoは、掛金の全額所得控除・運用益の非課税・受取時の控除という3つの税制メリットがある、非常に優れた老後資金準備の制度です。年収500万円の会社員が月2万円を30年間積み立てた場合、掛金の所得控除だけで144万円、運用益の非課税効果も含めると200万円以上の税制優遇を受けられます。
節税効果は年収や職業によって異なりますが、長期的に見れば非常に大きな金額になります。特に所得税率が高い方ほど節税効果が大きくなるため、年収が高い方は掛金上限まで拠出することをおすすめします。2024年12月の制度改正により、企業年金加入者や公務員の掛金上限が引き上げられたことで、より多くの方が恩恵を受けられるようになりました。
ただし、iDeCoは60歳まで引き出せない、元本割れのリスクがある、手数料がかかるといった注意点もあります。これらのデメリットを理解した上で、自分に合っているかを判断することが重要です。特に、生活費の3~6ヶ月分の緊急予備資金を確保した上で、余裕資金で始めることが大切です。
iDeCoを始める際は、運営管理手数料が無料で商品ラインナップが豊富なSBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券がおすすめです。自分のライフプランに合わせて掛金額を設定し、長期的な視点で継続することが、老後資金準備の成功につながります。
なお、投資には元本割れのリスクがあります。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、ご自身の資金状況やライフプランをよく考慮した上で、無理のない範囲で始めることをおすすめします。受取時の税金対策など複雑な判断が必要な場合は、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。
この記事のキーワード
キーワードがありません。
この記事を見た方はこんな記事も見ています
この記事と同じキーワードの記事
まだ記事がありません。
キーワードから探す
カンタン1分登録で、気になる資料を無料でお取り寄せ
そんなお悩みをお持ちの方は、まずはお問い合わせください!