証券会社の死亡時手続き|相続の流れと注意点

証券会社の死亡時手続き|相続の流れと注意点

家族が亡くなり、証券会社の口座があることが分かったものの、何から手を付ければいいのか分からず不安を感じていませんか。

証券会社での相続手続きには期限があり、放置すると相続税の申告漏れや追徴課税といったペナルティが発生する可能性があります。

この記事では、故人が利用していた証券会社を調べる方法から、相続手続きの具体的な流れ、注意すべきポイントまでを分かりやすく解説します。

証券保管振替機構(ほふり)の活用方法や、NISA口座の特殊性、専門家への相談タイミングなど、実務で役立つ情報もまとめました。

相続手続きは複雑に感じるかもしれませんが、手順を理解すれば着実に進められます。

この記事を読めば、証券会社の相続手続きに必要な知識が身につき、安心して手続きを進められるようになります。

この記事の要約
  • 証券会社の特定には郵便物・銀行明細・ほふりの開示請求など4つの方法がある
  • 相続手続きは口座凍結→書類準備→遺産分割→名義変更の5ステップで進める
  • NISA口座は相続できず、放置すると相続税申告漏れのリスクがある
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

証券会社の死亡時手続きとは|基本の流れ

証券会社の死亡時手続きとは、故人が保有していた株式や投資信託などの有価証券を、相続人が適切に引き継ぐための一連の手続きです。相続財産に証券口座が含まれる場合、相続税の申告対象となるため、正確な手続きが必要になります。

基本的な流れは、故人の証券口座を特定し、証券会社に連絡して口座を凍結、必要書類を準備して遺産分割協議を行い、最終的に名義変更または現金化を行うという流れです。相続税の申告期限は死亡日から10ヶ月以内のため、早めの対応が求められます。

故人の証券口座はどうなる?

故人が保有していた証券口座は、死亡の事実が証券会社に伝わった時点で取引が停止され、口座が凍結されます。この凍結により、新規の売買注文や出金ができなくなり、保有資産は相続財産として扱われることになります。

口座凍結後も、保有している株式や投資信託の評価額は市場の動きに応じて変動し続けます。配当金や分配金が発生する場合は、証券会社が一時的に預かる形となり、相続手続き完了後に相続人に引き渡されます。

信用取引や先物取引など、期限のある取引を行っていた場合は注意が必要です。これらの取引は損失が拡大する可能性があるため、証券会社に連絡して早急に対応する必要があります。相続人が証券会社に連絡する前に損失が発生した場合でも、その損失は相続財産から差し引かれることになります。

相続手続きの基本的な流れ

証券会社での相続手続きは、まず故人が利用していた証券会社を特定することから始まります。証券会社が判明したら、速やかに連絡して死亡の事実を伝え、口座を凍結してもらいます。この時点で、相続手続きに必要な書類の案内を受けることができます。

次に、戸籍謄本や印鑑証明書などの必要書類を準備します。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行い、誰がどの資産を相続するかを決定します。遺言書がある場合は、その内容に従って手続きを進めることになります。

遺産分割が決まったら、相続人が証券口座を開設し、故人の保有資産を相続人の口座に移す名義変更手続きを行います。または、株式を売却して現金化し、相続人に分配することも可能です。最終的に、相続税の申告と準確定申告を行い、すべての手続きが完了します。

証券会社の相続手続きは、相続税申告の期限(死亡日から10ヶ月以内)を意識しながら進める必要があります。

国税庁:相続税

手続きにかかる期間の目安

証券会社の相続手続きにかかる期間は、証券会社の種類や相続の複雑さによって異なりますが、一般的には1ヶ月から3ヶ月程度が目安です。大手対面証券では担当者が手厚くサポートしてくれるため、手続きがスムーズに進むことが多い一方、ネット証券では書類のやり取りが郵送中心となるため、やや時間がかかる傾向があります。

手続き期間に影響する主な要因は、相続人の数、遺産分割協議の進行状況、必要書類の準備状況などです。相続人が多数いる場合や、海外在住者がいる場合は、書類の準備や署名・押印の調整に時間がかかり、手続きが長期化することがあります。

また、複数の証券会社を利用していた場合は、それぞれの証券会社で個別に手続きが必要となるため、全体の手続き期間はさらに長くなります。相続税の申告期限を考慮すると、死亡後できるだけ早く手続きを開始することが重要です。

故人が利用していた証券会社を調べる4つの方法

相続手続きを進めるためには、まず故人がどの証券会社を利用していたかを特定する必要があります。証券会社が分からないと手続きを開始できないため、この調査は相続手続きの第一歩となります。

証券会社を調べる方法は大きく分けて4つあり、それぞれに特徴があります。自宅での書類探しから、デジタル遺品の調査、銀行明細の確認、そして証券保管振替機構(ほふり)への開示請求まで、段階的に調査を進めることで、漏れなく証券会社を特定できます。

自宅で証券会社の書類や郵便物を探す

最も基本的な方法は、故人の自宅で証券会社からの書類や郵便物を探すことです。証券会社は定期的に取引報告書や残高報告書、配当金の通知などを郵送しているため、これらの書類が見つかれば証券会社を特定できます。

探すべき場所

書斎や寝室の引き出し

ファイルボックスや書類ケース

金庫

証券会社のロゴ入りノベルティグッズ

探すべき場所は、故人の書斎や寝室、リビングの引き出しなどです。特に、ファイルボックスや書類ケース、金庫などに重要書類がまとめて保管されていることが多いため、重点的に確認しましょう。証券会社の封筒には社名が印刷されているため、一目で判別できます。

また、証券会社から送られてくる書類には、口座番号や支店名が記載されているため、これらの情報をメモしておくと、後の手続きがスムーズに進みます。郵便物が見つからない場合でも、証券会社のロゴが入ったノベルティグッズ(カレンダーやボールペンなど)が見つかることもあるため、あきらめずに探してみましょう。

スマホやパソコンから証券会社を特定する

近年はネット証券の利用者が増えているため、故人のスマートフォンやパソコンから証券会社を特定する方法も重要です。デジタル遺品の調査は、紙の書類が残っていない場合でも証券会社を見つけられる可能性があります。

スマホやパソコンにロックがかかっている場合は、家族が知っているパスワードを試すか、端末のメーカーや携帯電話会社に相談して解除方法を確認しましょう。相続手続きのためであれば、適切な書類を提出することで解除できる場合があります。

証券アプリの確認

スマートフォンにインストールされているアプリを確認すると、証券会社のアプリが見つかることがあります。SBI証券、楽天証券、マネックス証券など、主要なネット証券はそれぞれ専用アプリを提供しており、アプリのアイコンから証券会社を特定できます。

アプリが見つかった場合、ログイン情報が分からなくても、アプリの存在自体が証券口座を持っていた証拠となります。証券会社に連絡して相続手続きを開始する際に、「アプリがインストールされていた」と伝えることで、口座の有無を確認してもらえます。

ブラウザの履歴やブックマーク

パソコンやスマートフォンのブラウザ履歴やブックマークを確認すると、証券会社のウェブサイトへのアクセス履歴が見つかることがあります。特に、ログインページがブックマークされている場合は、その証券会社を利用していた可能性が高いです。

主要な証券会社のウェブサイトURLを知っておくと、履歴の中から証券会社を見つけやすくなります。また、ブラウザに保存されたパスワード情報を確認できる場合は、ログイン情報を取得できることもあります。

メールの受信履歴

メールの受信履歴を確認すると、証券会社からの取引報告メールや口座開設完了メール、キャンペーン情報などが見つかることがあります。メールソフトやウェブメールの検索機能を使って、「証券」「口座」「取引」などのキーワードで検索すると効率的です。

証券会社からのメールには、口座番号や取引内容が記載されていることが多いため、相続手続きに必要な情報を得られます。また、メールの送信元アドレスを確認することで、証券会社を特定できます。

銀行の通帳明細から証券会社を見つける

故人の銀行口座の通帳明細を確認すると、証券会社への入金や証券会社からの出金の記録が残っていることがあります。証券口座への入金や、配当金の振込、株式売却代金の入金などの履歴から、利用していた証券会社を推測できます。

通帳の摘要欄には、取引先の名称が省略形で記載されていることが多いため、「SBI」「ラクテン」「マネックス」などの文字列を探します。また、定期的に同じ金額が引き落とされている場合は、積立投資を行っていた可能性があります。

銀行明細から証券会社が特定できたら、その証券会社に直接連絡して口座の有無を確認しましょう。通帳の取引履歴は、相続手続きの際に証券口座の存在を証明する資料としても活用できます。

証券保管振替機構(ほふり)に開示請求する

自宅での書類探しやデジタル遺品の調査でも証券会社が見つからない場合、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求を行うことで、故人が保有していた株式や投資信託を管理している証券会社を調べることができます。ほふりは、日本国内の株式の振替制度を運営する機関で、証券会社を横断して保有証券を調査できる唯一の公的機関です。

ほふりの開示請求は、証券会社が分からない場合の最も確実な調査方法です。相続人であれば誰でも請求でき、故人が保有していた上場株式、投資信託、債券などの情報を一括で取得できます。

ほふりとは

証券保管振替機構(ほふり)は、正式名称を「株式会社証券保管振替機構」といい、日本国内の株式や債券の振替制度を運営する機関です。投資家が保有する有価証券を電子的に管理し、証券会社間の振替や決済を円滑に行う役割を担っています。

ほふりは、全国の証券会社と連携しているため、故人がどの証券会社で口座を開設していたかが分からない場合でも、保有証券の情報を一括で照会できます。この仕組みを利用することで、相続人は漏れなく証券資産を把握できるようになります。

証券保管振替機構:登録済加入者情報の開示請求

開示請求の手順と必要書類

ほふりへの開示請求は、郵送またはオンラインで行うことができます。請求には、故人との相続関係を証明する書類と、請求者の本人確認書類が必要です。具体的には、故人の死亡が記載された戸籍謄本、相続人であることを証明する戸籍謄本、請求者の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードのコピー)などを準備します。

開示請求の流れ

1. 開示請求書のダウンロード
  • ほふりの公式ウェブサイトから開示請求書をダウンロード
2. 必要書類の準備
  • 戸籍謄本、本人確認書類などを準備
3. 郵送またはオンライン申請
  • 必要書類とともにほふりに郵送
4. 開示結果の受領
  • 約2週間程度で開示結果が送られてくる

開示結果には、故人が保有していた証券の種類、銘柄、数量、管理している証券会社名が記載されています。開示請求には手数料がかかり、2025年時点では1件あたり6,050円(税込)です。複数の証券会社で口座を持っていた場合でも、1回の請求で全ての情報を取得できるため、効率的に調査を進められます。開示結果を受け取ったら、記載されている証券会社に順次連絡して相続手続きを開始しましょう。

証券会社での相続手続きの進め方|5つのステップ

証券会社での相続手続きは、決められた順序で進める必要があります。手続きを正しく理解して進めることで、トラブルを避け、スムーズに相続を完了させることができます。

ここでは、証券会社に連絡して口座を凍結するところから、最終的な相続税申告まで、5つのステップに分けて具体的な手続き方法を解説します。各ステップで必要な書類や注意点も併せて確認しましょう。

証券会社に連絡して口座を凍結する

故人が利用していた証券会社が判明したら、できるだけ早く証券会社に連絡して死亡の事実を伝え、口座を凍結してもらいます。口座凍結は、不正な取引を防ぎ、相続財産を保全するための重要な手続きです。

証券会社への連絡は、電話またはウェブサイトの問い合わせフォームから行います。連絡する際には、故人の氏名、生年月日、口座番号(分かる場合)、死亡日を伝えます。口座番号が分からない場合でも、氏名と生年月日で口座を特定してもらえることがあります。

口座凍結後、証券会社から相続手続きの案内書類が送られてきます。この書類には、必要な書類のリスト、手続きの流れ、提出先などが記載されているため、内容をよく確認しましょう。信用取引や先物取引など、期限のある取引がある場合は、早急に対応方法を相談する必要があります。

必要書類を準備する

相続手続きには、故人と相続人の関係を証明する書類や、遺産分割の内容を示す書類など、多くの書類が必要です。証券会社によって必要書類が若干異なる場合がありますが、基本的な書類は共通しています。

書類の準備には時間がかかることが多いため、証券会社から案内が届いたら、すぐに準備を開始しましょう。特に、戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得する必要があり、遠方の場合は郵送請求となるため、時間に余裕を持って手配することが大切です。

戸籍謄本・印鑑証明書など

相続手続きで必ず必要となるのが、戸籍謄本と印鑑証明書です。戸籍謄本は、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍を含む)が必要で、これにより相続人が誰であるかを証明します。相続人全員の現在の戸籍謄本も必要です。

基本的な必要書類

故人の書類
  • 出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 証券口座の取引履歴・残高証明書
相続人の書類
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードのコピー)

印鑑証明書は、相続人全員のものが必要で、発行から3ヶ月以内のものを求められることが一般的です。また、相続人全員の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードのコピー)も準備します。

その他、故人の証券口座の取引履歴や残高証明書を証券会社に請求し、相続財産の評価額を確定させる必要があります。これらの書類は、相続税の申告にも使用するため、複数部取得しておくと便利です。

遺言書がある場合

故人が遺言書を残していた場合、遺言書の内容に従って相続手続きを進めます。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、それぞれ手続きが異なります。

自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認手続きを行う必要があります。検認を受けずに遺言書を開封すると、過料が科される可能性があるため注意が必要です。公正証書遺言の場合は、検認が不要で、そのまま相続手続きに使用できます。

遺言書がある場合、証券会社には遺言書の写しまたは検認済証明書付きの遺言書を提出します。遺言書で証券資産の相続人が指定されている場合は、遺産分割協議は不要となり、手続きが簡略化されます。

遺産分割協議を行う

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを決定します。遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要で、一人でも反対する相続人がいる場合は成立しません。

証券資産の分割方法には、特定の相続人が全ての証券を相続する方法、複数の相続人で銘柄ごとに分ける方法、証券を売却して現金化してから分配する方法などがあります。株価は変動するため、遺産分割協議の時点での評価額と、実際に名義変更や売却を行う時点での評価額が異なることがある点に注意が必要です。

遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による押印が必要で、印鑑証明書とともに証券会社に提出します。遺産分割協議書は、相続税の申告にも使用するため、正確に作成しましょう。

名義変更または売却・換金手続きをする

遺産分割が決まったら、証券資産の名義変更または売却・換金の手続きを行います。どちらの方法を選ぶかは、相続人の投資経験や、証券を保有し続ける意思があるかどうかによって判断します。

名義変更を選ぶ場合は、相続人が証券口座を開設する必要があります。売却・換金を選ぶ場合は、証券会社で株式を売却し、現金化した後に相続人の銀行口座に振り込んでもらいます。どちらの方法でも、相続税の申告は必要です。

相続人が証券口座を開設する

故人の保有していた証券を相続人の名義に変更する場合、相続人が証券口座を開設する必要があります。すでに同じ証券会社に口座を持っている場合は、その口座に証券を移管できますが、口座を持っていない場合は新規に開設します。

証券口座の開設には、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)とマイナンバーが必要です。ネット証券の場合、オンラインで口座開設手続きができ、最短で翌営業日に開設が完了します。対面証券の場合は、店舗に来店して手続きを行うこともできます。

口座開設後、証券会社に相続手続きの書類を提出すると、故人の保有証券が相続人の口座に移管されます。移管には数日から数週間かかることがあるため、余裕を持って手続きを進めましょう。

株式を売却して現金化する

相続人が投資に興味がない場合や、現金で分配したい場合は、証券を売却して現金化することができます。売却手続きは、証券会社に依頼することで行えますが、相続人が証券口座を開設する必要がない場合もあります。

株式を売却する場合、売却のタイミングによって受け取れる金額が変わるため、株価の動向を確認しながら慎重に判断しましょう。また、売却によって利益が出た場合は、譲渡所得税が課税されることがあります。相続税の申告における取得価額は、相続開始日(死亡日)の株価となるため、その後の値上がり益には税金がかかる点に注意が必要です。

売却代金は、証券会社から相続人の銀行口座に振り込まれます。複数の相続人で分配する場合は、遺産分割協議書に基づいて、それぞれの相続人の口座に振り込んでもらうよう証券会社に依頼します。

相続税申告と準確定申告を行う

証券資産の名義変更または売却が完了したら、相続税の申告と準確定申告を行います。相続税の申告は、相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に必要です。

相続税の申告期限は、故人の死亡日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎると、延滞税や加算税が課されるため、早めに準備を進めましょう。相続税の計算は複雑なため、税理士に相談することをおすすめします。

国税庁:相続税の申告と納税

準確定申告は、故人の死亡日までの所得を申告するもので、故人が配当所得や株式の譲渡所得を得ていた場合に必要です。準確定申告の期限は、死亡日の翌日から4ヶ月以内です。特定口座(源泉徴収あり)で取引していた場合は、基本的に準確定申告は不要ですが、損失の繰越控除を受ける場合などは申告が必要になることがあります。

国税庁:準確定申告

上場株式と非上場株式の相続手続きの違い

株式には、証券取引所に上場している上場株式と、上場していない非上場株式(未公開株)があり、相続手続きの方法や評価方法が大きく異なります。故人が保有していた株式の種類によって、必要な手続きや注意点が変わるため、事前に確認しておくことが重要です。

上場株式は証券会社を通じて取引されるため、相続手続きも証券会社で行います。一方、非上場株式は会社が直接管理しているため、発行会社に連絡して手続きを進める必要があります。それぞれの特徴と手続きの違いを理解しましょう。

上場株式の相続手続き

上場株式の相続手続きは、証券会社を通じて行います。故人が保有していた上場株式は、証券会社の口座で管理されているため、証券会社に連絡して相続手続きを開始します。手続きの流れは、前述の「証券会社での相続手続きの進め方」と同じです。

上場株式の大きな特徴は、市場で自由に売買できることです。相続人は、相続した株式をそのまま保有することも、売却して現金化することもできます。また、複数の相続人で株式を分割する場合も、銘柄ごとに柔軟に分けることが可能です。

上場株式の相続では、名義変更の手続きが比較的スムーズに進みます。証券会社が必要書類を案内してくれるため、書類を揃えて提出すれば、数週間程度で名義変更が完了します。相続人が同じ証券会社に口座を持っていれば、手続きはさらに簡単になります。

非上場株式の相続手続き

非上場株式の相続手続きは、株式を発行している会社に直接連絡して行います。非上場株式は証券会社では管理されていないため、会社の株主名簿管理人(信託銀行や証券代行会社)に問い合わせる必要があります。

非上場株式の相続手続きでは、会社の定款や株主間契約を確認する必要があります。非上場会社の中には、株式の譲渡に制限を設けている場合があり、相続人が自由に株式を売却できないことがあります。また、会社の承認が必要な場合もあるため、事前に確認しましょう。

非上場株式は市場で売買できないため、現金化するには会社や他の株主に買い取ってもらう必要があります。買い取り価格は、会社の財務状況や将来性を考慮して決定されますが、上場株式のように明確な市場価格がないため、価格交渉が必要になることがあります。

評価方法の違い

相続税の申告では、相続財産の評価額を正確に算出する必要があり、上場株式と非上場株式では評価方法が大きく異なります。評価方法を理解することで、相続税の申告を正確に行うことができます。

上場株式の評価額は、相続開始日(死亡日)の終値、相続開始日の属する月の終値の月平均額、前月の終値の月平均額、前々月の終値の月平均額のうち、最も低い価額を使用します。この方法により、株価の一時的な変動の影響を軽減し、公平な評価を行うことができます。

国税庁:財産の評価

非上場株式の評価は、会社の規模や株主の持株割合によって、原則的評価方式(類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式)または特例的評価方式(配当還元方式)を使用します。非上場株式の評価は非常に複雑で、専門的な知識が必要となるため、税理士に相談することをおすすめします。

証券口座の相続で気をつけたい5つのポイント

証券口座の相続手続きを進める際には、一般的な相続とは異なる注意点がいくつかあります。これらのポイントを事前に理解しておくことで、トラブルを避け、スムーズに手続きを完了させることができます。

ここでは、証券口座の相続で特に注意すべき5つのポイントを解説します。NISA口座の特殊性や、単元未満株の扱い、信用取引のリスクなど、実務で直面しやすい問題を取り上げます。

相続人が証券口座を開設できない場合がある

故人の保有していた証券を相続するには、相続人が証券口座を開設する必要がありますが、証券会社の審査基準によっては、口座開設が認められないケースがあります。特に、高齢の相続人や、投資経験がない相続人の場合、審査に通らないことがあります。

証券口座の開設には、本人確認や投資経験の確認が行われ、証券会社によっては年齢制限を設けている場合もあります。また、反社会的勢力との関係がないかの確認も行われるため、審査には数日から数週間かかることがあります。

口座開設ができない場合の対処法として、証券を売却して現金化する方法があります。証券会社に依頼すれば、相続人が口座を開設しなくても、証券を売却して現金を受け取ることができます。ただし、売却のタイミングによって受け取れる金額が変わるため、株価の動向を確認しながら慎重に判断しましょう。

単元未満株は株主名簿管理人への連絡が必要

故人が保有していた株式の中に、単元未満株(1単元に満たない株式)が含まれている場合、通常の証券会社での相続手続きとは別に、株主名簿管理人への連絡が必要になることがあります。単元未満株は、証券会社の口座ではなく、特別口座で管理されていることが多いためです。

単元未満株の相続手続きは、株主名簿管理人(信託銀行や証券代行会社)に直接連絡して行います。必要書類は通常の相続手続きと同様ですが、手続きの窓口が異なるため注意が必要です。株主名簿管理人の連絡先は、会社の公式ウェブサイトや株主総会の招集通知に記載されています。

単元未満株は、証券取引所での売買ができないため、現金化するには発行会社に買い取ってもらう必要があります。買取請求は、株主名簿管理人を通じて行い、買取価格は市場価格を基準に決定されます。手続きには時間がかかることがあるため、早めに連絡しましょう。

NISA口座は相続できない

NISA口座(少額投資非課税制度の口座)は、相続の対象外となり、相続人に引き継ぐことができません。故人がNISA口座で保有していた株式や投資信託は、死亡日をもってNISA口座から払い出され、課税口座(一般口座または特定口座)に移管されます。

NISA口座から払い出された後は、通常の課税口座として扱われるため、その後の売却益や配当金には税金がかかります。ただし、故人がNISA口座で保有していた期間中に発生した利益については、非課税のまま相続されます。

NISA口座の非課税メリットは、相続時に失われるため、相続後の運用方針を早めに決定することが重要です。相続人が投資を継続する場合は、自分自身のNISA口座を開設して、新たに投資を始めることを検討しましょう。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

信用取引や先物取引がある場合の緊急対応

故人が信用取引や先物取引など、期限のある取引を行っていた場合、相続手続きとは別に緊急の対応が必要になります。これらの取引は、期限までに決済しないと損失が拡大する可能性があるため、証券会社に連絡して早急に対処する必要があります。

信用取引は、証券会社から資金や株式を借りて取引を行う仕組みで、返済期限があります。期限までに返済しないと、証券会社が強制的に決済(強制決済)を行い、その時点での損益が確定します。相続人は、信用取引による損失も含めて相続することになるため、早めに状況を確認しましょう。

先物取引やオプション取引も同様に、期限があり、損失が拡大するリスクがあります。これらの取引がある場合は、証券会社に連絡して、決済方法や損失の見込み額を確認し、適切な対応を相談しましょう。場合によっては、相続放棄を検討することも必要になります。

配当金や分配金の取扱い

故人が保有していた株式や投資信託から、相続手続き中に配当金や分配金が支払われることがあります。これらの配当金や分配金は、相続財産として扱われ、相続人に引き継がれますが、受け取り方法には注意が必要です。

配当金の受け取り方法には、証券会社の口座で受け取る方法(株式数比例配分方式)、銀行口座で受け取る方法、郵便局で受け取る方法などがあります。故人が株式数比例配分方式を選択していた場合、配当金は証券口座に入金されるため、相続手続きが完了するまで証券会社が預かる形となります。

相続手続き完了後、証券会社から配当金を含めた全ての資産が相続人に引き渡されます。配当金も相続財産として相続税の課税対象となるため、相続税の申告時には配当金の金額も含めて申告する必要があります。配当金の金額は、証券会社が発行する残高証明書に記載されているため、確認しましょう。

証券口座を放置するとどうなる?|3つのリスク

故人の証券口座を放置したまま相続手続きを行わないと、さまざまなリスクが発生します。相続税の申告漏れによる追徴課税や、遺産分割のやり直し、株価変動による財産の目減りなど、放置することで相続人に不利益が生じる可能性があります。

証券口座の相続手続きには期限があり、特に相続税の申告期限(死亡日から10ヶ月以内)を過ぎると、ペナルティが課されます。ここでは、証券口座を放置することで生じる3つの主なリスクを解説します。

相続税申告漏れによる追徴課税・延滞税

証券口座を放置して相続税の申告を行わなかった場合、または申告内容に漏れがあった場合、税務署から追徴課税や延滞税が課されます。相続税の申告期限は死亡日の翌日から10ヶ月以内で、期限を過ぎると延滞税が発生します。

追徴課税には、過少申告加算税、無申告加算税、重加算税などがあり、申告漏れの内容や悪質性によって税率が異なります。無申告加算税は、本来納めるべき税額の15%から20%が加算され、悪質な隠蔽があった場合は重加算税として40%が加算されることもあります。

延滞税は、納付期限の翌日から納付日までの日数に応じて計算され、年率は時期によって変動しますが、2025年時点では年2.4%から8.7%程度です。申告期限を過ぎるほど延滞税が増えていくため、早めに申告することが重要です。証券口座の存在を知らなかった場合でも、相続税の申告義務は免除されないため、注意が必要です。

遺産分割協議のやり直しで家族間トラブル

証券口座の存在を知らずに遺産分割協議を行い、後から証券口座が見つかった場合、遺産分割協議をやり直す必要が生じることがあります。遺産分割協議のやり直しは、相続人全員の合意が必要で、一度成立した遺産分割を覆すことになるため、家族間のトラブルに発展する可能性があります。

特に、証券口座の評価額が高額だった場合、遺産分割の内容が大きく変わることがあります。すでに不動産や現金を相続した相続人と、新たに見つかった証券を相続する相続人との間で、公平性を巡る争いが起きることがあります。

遺産分割協議のやり直しを避けるためには、相続開始後にできるだけ早く、故人の全ての財産を調査することが重要です。証券保管振替機構(ほふり)への開示請求や、銀行の取引履歴の確認など、漏れのない調査を行いましょう。遺産分割協議書には、「後日新たな財産が発見された場合の取り扱い」を記載しておくことで、トラブルを防ぐこともできます。

株価変動による相続財産の目減り

証券口座を放置している間に株価が下落すると、相続財産の価値が目減りする可能性があります。相続税の申告では、相続開始日(死亡日)の株価で評価しますが、実際に名義変更や売却を行う時点での株価が下落していると、相続人が受け取れる金額が減少します。

株価は日々変動するため、放置期間が長くなるほど、株価変動のリスクが高まります。特に、市場全体が下落局面にある場合や、保有銘柄の業績が悪化した場合は、大きな損失が発生することがあります。

株価変動のリスクを避けるためには、相続手続きを早めに開始し、名義変更または売却を速やかに行うことが重要です。相続人が投資に詳しくない場合や、株式を保有し続ける意思がない場合は、早期に売却して現金化することを検討しましょう。ただし、売却のタイミングは慎重に判断する必要があり、必要に応じて証券会社や専門家に相談することをおすすめします。

専門家に相談したほうがいいケース|費用の目安

証券口座の相続手続きは、自分で行うことも可能ですが、相続の内容が複雑な場合や、相続財産が高額な場合は、専門家に相談することをおすすめします。司法書士や税理士などの専門家に依頼することで、手続きの負担を軽減し、ミスを防ぐことができます。

ここでは、専門家に相談したほうがよいケースと、相続手続き代行サービスの費用相場を解説します。専門家への相談タイミングを見極めることで、効率的に相続手続きを進めることができます。

複数の証券会社を利用していた場合

故人が複数の証券会社で口座を開設していた場合、それぞれの証券会社で個別に相続手続きを行う必要があり、手続きが煩雑になります。証券会社ごとに必要書類や手続きの流れが若干異なるため、すべてを自分で管理するのは大変です。

複数の証券会社を利用していた場合、書類の準備や提出、進捗管理が複雑になり、漏れや遅れが発生しやすくなります。また、証券会社ごとに残高証明書を取得し、相続財産の総額を正確に把握する必要があります。

このようなケースでは、司法書士や行政書士に相続手続きの代行を依頼することで、効率的に手続きを進めることができます。専門家は、複数の証券会社との連絡や書類の準備を一括して行い、相続人の負担を大幅に軽減してくれます。

相続財産が高額で相続税申告が複雑な場合

相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要になります。相続財産に証券が含まれる場合、株式の評価方法や、配当金の取扱いなど、専門的な知識が必要となるため、税理士に相談することをおすすめします。

特に、非上場株式を相続する場合や、相続財産に不動産や事業用資産が含まれる場合は、評価方法が非常に複雑になります。相続税の計算ミスは、過少申告加算税や延滞税の原因となるため、正確な申告を行うことが重要です。

税理士に依頼することで、相続税の計算や申告書の作成を正確に行うことができます。また、税理士は節税対策のアドバイスも提供してくれるため、相続税の負担を軽減できる可能性があります。相続税の申告は専門性が高いため、経験豊富な税理士を選ぶことが大切です。

相続人が多数または海外在住者がいる場合

相続人が多数いる場合や、相続人の中に海外在住者がいる場合、遺産分割協議や書類の準備が複雑になります。相続人全員の署名・押印が必要な書類を揃えるには、時間と手間がかかり、連絡調整も大変です。

海外在住者がいる場合、印鑑証明書の代わりにサイン証明書(署名証明書)を取得する必要があり、現地の日本大使館や領事館で手続きを行います。また、海外からの書類の郵送には時間がかかるため、手続き全体が長期化することがあります。

このようなケースでは、司法書士や行政書士に相続手続きの調整を依頼することで、スムーズに進めることができます。専門家は、相続人間の連絡調整や、海外在住者への対応にも慣れているため、安心して任せることができます。

相続手続き代行サービスの費用相場

相続手続き代行サービスの費用は、依頼する専門家の種類や、相続の内容によって異なります。一般的な費用相場は、司法書士による戸籍収集・遺産分割協議書作成が5万円から15万円程度、税理士による相続税申告が相続財産の0.5%から1%程度です。

サービス内容 費用相場
戸籍収集・遺産分割協議書作成(司法書士) 5万円~15万円
相続税申告(税理士) 相続財産の0.5%~1%
包括的な相続手続き代行 10万円~30万円+追加料金

証券会社の相続手続きを含む包括的な相続手続き代行サービスの場合、基本料金として10万円から30万円程度がかかり、相続財産の額や複雑さに応じて追加料金が発生します。複数の証券会社を利用していた場合や、非上場株式が含まれる場合は、追加料金が必要になることがあります。

専門家に依頼する際は、事前に見積もりを取り、費用の内訳を確認しましょう。相続手続きの費用は、相続財産から支払うことができるため、相続人の自己負担を抑えることも可能です。複数の専門家に相談して、費用とサービス内容を比較することをおすすめします。

まとめ

証券会社の死亡時手続きは、故人の証券口座を特定することから始まり、口座凍結、必要書類の準備、遺産分割協議、名義変更または売却、相続税申告という流れで進めます。手続きには期限があり、相続税の申告期限は死亡日から10ヶ月以内のため、早めの対応が重要です。

証券会社を調べる方法には、自宅での書類探し、デジタル遺品の調査、銀行明細の確認、証券保管振替機構(ほふり)への開示請求の4つがあります。ほふりの開示請求は、証券会社が分からない場合の最も確実な方法です。

相続手続きで注意すべきポイントとして、NISA口座は相続できないこと、単元未満株は株主名簿管理人への連絡が必要なこと、信用取引や先物取引がある場合は緊急対応が必要なことなどがあります。これらのポイントを理解しておくことで、トラブルを避けることができます。

証券口座を放置すると、相続税申告漏れによる追徴課税や延滞税、遺産分割協議のやり直しによる家族間トラブル、株価変動による財産の目減りといったリスクが発生します。相続手続きは早めに開始し、計画的に進めることが大切です。

相続の内容が複雑な場合や、相続財産が高額な場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家に依頼することで、手続きの負担を軽減し、正確な申告を行うことができます。

なお、証券投資には株価変動等により元本割れのリスクがあります。相続後の運用や売却のタイミングについては、ご自身の判断と責任で行ってください。相続手続きには期限があります。詳しくは各証券会社・税理士・司法書士にご確認ください。記事の情報は2025年時点のものです。制度変更の可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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