投資信託の約定日とは?申込日・受渡日との違いを解説

投資信託の約定日とは?申込日・受渡日との違いを解説

投資信託を購入する際、「約定日」という言葉を目にして戸惑った経験はありませんか。

約定日は、投資信託の取引が正式に成立する日のことで、この日の基準価額で売買が行われます。

申込日・約定日・受渡日という3つの日付があり、それぞれ意味が異なるため、混同すると思わぬ失敗につながることもあります。

特にNISAの投資枠を使い切りたい場合や、分配金を確実に受け取りたい場合は、約定日の仕組みを正しく理解しておくことが大切です。

この記事では、約定日の基本的な意味から、申込日・受渡日との違い、国内資産と海外資産での約定タイミングの違い、NISAや分配金との関係まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

約定日の仕組みを理解することで、計画的な投資ができるようになり、失敗を避けることができます。

この記事の要約
  • 約定日とは投資信託の取引が正式に成立する日で、この日の基準価額で売買される
  • 申込日・約定日・受渡日の3つの日付を正しく理解することが重要
  • NISAの投資枠や分配金受取には約定日のタイミングが影響する
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

投資信託の約定日とは?基本をおさえよう

投資信託の約定日とは?基本をおさえよう

投資信託を購入・売却する際に必ず関わってくるのが「約定日」です。約定日は投資信託取引の仕組みを理解する上で最も重要な概念の一つですので、まずはその基本的な意味から確認していきましょう。

約定日の意味

約定日(やくじょうび)とは、投資信託の売買注文が正式に成立する日のことです。この日の基準価額で取引が確定し、購入する口数や売却代金が決まります。

投資信託は株式と異なり、注文を出した時点では価格が分からない「ブラインド方式」という仕組みで取引されます。そのため、実際にいくらで購入できたのかは約定日の基準価額が公表されるまで分かりません。

例えば、月曜日の午後3時までに購入申込をした場合、多くの国内株式型投資信託では翌営業日(火曜日)が約定日となります。火曜日の基準価額が1万円だった場合、10万円の購入申込なら10口(10万円÷1万円)を取得できることになります。

約定日は投資信託の種類や販売会社によって異なるため、目論見書や販売会社のウェブサイトで必ず確認することが重要です。

投資信託協会「投資信託の仕組み」

ブラインド方式とは

ブラインド方式とは、投資信託の購入・解約の申込時点では基準価額が分からない状態で注文を出す仕組みのことです。実際の取引価格は約定日の基準価額が確定してから分かります。

なぜこのような仕組みになっているのでしょうか。それは投資家を保護するためです。もし申込時点で価格が分かってしまうと、市場の動きを見て有利なタイミングだけで注文を出す投資家が現れ、長期保有する投資家が不利になってしまいます。

ブラインド方式により、すべての投資家が公平な条件で取引できる環境が整えられています。短期的な値動きを狙った投機的な取引を防ぎ、長期的な資産形成を促す効果もあります。

初めて投資信託を購入する方は、価格が分からないまま注文することに不安を感じるかもしれません。しかし、これは投資家全員の利益を守るための重要な仕組みなのです。

金融庁「投資信託の基礎知識」

約定日はいつ決まるのか

約定日がいつになるかは、投資信託の種類と申込締切時間によって決まります。一般的には、申込締切時間までに注文が完了すれば、その日を「申込日」として数えて約定日が決定されます。

国内の株式や債券に投資する投資信託の場合、多くは申込日の翌営業日が約定日となります。一方、海外の資産に投資する投資信託は、時差や海外市場の休場日の関係で、約定日が申込日から数営業日後になることが一般的です。

申込締切時間は証券会社によって異なりますが、午後3時としている会社が多くなっています。この時間を1分でも過ぎると、翌営業日の申込扱いとなり、約定日も1日ずれることになります。

年末年始や大型連休の前後は、営業日の関係で約定日が通常より遅れることがあります。特にNISAの年間投資枠を使い切りたい場合や、特定の日までに取引を完了させたい場合は、余裕を持って申込を行うことが大切です。

申込日・約定日・受渡日の違いを整理しよう

申込日・約定日・受渡日の違いを整理しよう

投資信託の取引では、申込日・約定日・受渡日という3つの重要な日付が登場します。これらを混同すると、資金計画やNISA枠の管理で失敗する可能性があります。それぞれの違いをしっかり理解しておきましょう。

申込日とは

申込日とは、投資信託の購入または売却の注文を出した日のことです。より正確には、販売会社の申込締切時間までに注文が受け付けられた日を指します。

例えば、証券会社の申込締切時間が午後3時の場合、月曜日の午後2時に注文を出せば月曜日が申込日になります。しかし、午後3時1分に注文を出した場合は、翌営業日の火曜日が申込日として扱われます。

申込日は取引の起点となる重要な日付です。NISA口座で投資信託を購入する場合、申込日ではなく約定日が属する年の投資枠が使われる点に注意が必要です。年末に申込をしても、約定日が年明けになれば翌年の投資枠が消化されることになります。

オンラインで24時間注文できる証券会社でも、申込締切時間を過ぎた注文は翌営業日扱いになります。締切時間は証券会社や投資信託の種類によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。

金融庁「NISA特設ウェブサイト」

約定日とは

約定日は、前述のとおり投資信託の売買が正式に成立する日です。この日の基準価額で取引価格が確定し、購入口数や売却代金が決まります

約定日は投資信託の種類によって申込日から何日後になるかが異なります。国内資産中心の投資信託なら申込日の翌営業日、海外資産中心の投資信託なら申込日から3〜5営業日後が一般的です。

約定日に基準価額が確定することで、初めて「いくらで何口購入できたか」「売却代金がいくらになるか」が分かります。基準価額は通常、約定日の夜に公表されるため、約定日の日中はまだ価格が分からない状態です。

NISAの年間投資枠は約定日を基準に管理されます。また、分配金の権利を得るためにも約定日が重要になります。投資信託の保有期間も約定日から計算されるため、税金の計算にも関わってきます。

受渡日とは

受渡日(うけわたしび)とは、投資信託の購入代金の支払いや売却代金の受取が実際に行われる日のことです。約定日から数えて一定の営業日後に設定されます。

購入の場合、受渡日に証券口座から購入代金が引き落とされます。売却の場合は、受渡日に売却代金が証券口座に入金されます。多くの投資信託では、約定日から4営業日後が受渡日となっています。

例えば、月曜日に購入申込をして火曜日に約定した場合、受渡日は約定日から4営業日後の月曜日になります。この日までに証券口座に購入代金を用意しておく必要があります。

受渡日を理解していないと、資金繰りで困ることがあります。売却代金を受け取って別の投資信託を購入しようとする場合、売却の受渡日を待たないと購入資金が用意できません。計画的な取引のためには、受渡日のタイミングも考慮することが大切です。

3つの日付の関係性

申込日・約定日・受渡日の関係を表で整理すると、以下のようになります。

日付の種類 意味 タイミング 重要性
申込日 注文を出した日 締切時間までに受付 取引の起点
約定日 取引が成立する日 申込日の翌営業日〜数営業日後 価格確定・NISA枠消化・分配金権利
受渡日 代金の受払いが行われる日 約定日から4営業日後(一般的) 資金繰り

この3つの日付の中で最も重要なのは約定日です。約定日に取引価格が確定し、NISA枠が消化され、分配金の権利が発生するからです。申込日は取引の起点として、受渡日は資金管理のために意識する必要があります。

投資信託を購入する際は、申込日だけでなく約定日と受渡日も確認する習慣をつけましょう。特に年末のNISA枠使い切りや、分配金の権利取得を狙う場合は、約定日のタイミングが決定的に重要になります。

約定日と基準価額の関係を知ろう

投資信託の取引価格は「基準価額」によって決まります。約定日と基準価額の関係を正しく理解することで、投資信託の仕組みがより明確になります。

基準価額とは

基準価額とは、投資信託1口(または1万口)あたりの値段のことです。投資信託が保有する株式や債券などの資産の時価総額を、発行済みの総口数で割って計算されます。

例えば、ある投資信託の純資産総額が100億円で、発行済み口数が1億口の場合、基準価額は100円(1万口あたり1万円)となります。保有する資産の価値が上がれば基準価額も上がり、下がれば基準価額も下がります。

基準価額は毎営業日、市場が閉まった後に計算されて公表されます。国内株式中心の投資信託なら夕方から夜にかけて、海外資産中心の投資信託なら翌営業日に公表されることが一般的です。

投資信託を購入する際は、購入金額を基準価額で割ることで購入口数が決まります。10万円で基準価額1万円の投資信託を購入する場合、10口(10万円÷1万円)を取得できます。

投資信託協会「基準価額とは」

約定日の基準価額で取引が成立する

投資信託の取引は、約定日の基準価額で成立します。申込日の基準価額ではなく、約定日の基準価額が適用される点が非常に重要です。

例えば、月曜日に購入申込をして火曜日に約定する投資信託の場合、火曜日の基準価額で購入口数が決まります。月曜日の基準価額が1万円、火曜日の基準価額が1万100円だった場合、10万円の申込で購入できるのは約9.9口(10万円÷1万100円)となります。

このように、申込日と約定日の間に基準価額が変動すると、想定していた口数と実際の購入口数が異なることがあります。これはブラインド方式の特徴であり、すべての投資家に公平な取引機会を提供するための仕組みです。

約定日の基準価額は、約定日の夜に公表されます。そのため、約定日の日中はまだ自分がいくらで購入できたのか分かりません。翌日以降に証券会社のウェブサイトやアプリで確認することになります。

基準価額の更新タイミング

基準価額の更新タイミングは、投資信託が投資する資産の種類によって異なります。このタイミングを理解しておくと、約定日の仕組みがより明確になります。

国内の株式や債券に投資する投資信託の場合、東京証券取引所の取引終了後に基準価額が計算されます。通常は当日の夕方から夜にかけて公表され、遅くとも翌営業日の午前中には確認できます。

海外の株式や債券に投資する投資信託の場合、海外市場の取引終了を待って基準価額が計算されるため、時差の関係で公表が遅れます。米国株に投資する投資信託なら、日本時間の翌営業日の朝以降に前日の基準価額が公表されることが一般的です。

基準価額は土日祝日や年末年始には更新されません。金曜日の基準価額が公表された後、次の更新は週明けの月曜日(月曜日が祝日なら火曜日)になります。長期休暇の前後は、基準価額の更新タイミングにも注意が必要です。

基準価額の更新タイミングを理解することで、約定日にどの時点の価格が適用されるのかが分かります。投資信託の目論見書には基準価額の計算方法と公表時間が記載されているため、購入前に確認しておくとよいでしょう。

国内資産と海外資産で約定日はどう違う?

投資信託が投資する対象によって、約定日のタイミングは大きく異なります。国内資産と海外資産では約定スケジュールに差があるため、購入時には注意が必要です。

国内資産の場合の約定スケジュール

国内の株式や債券を中心に投資する投資信託の場合、約定日は申込日の翌営業日となることが一般的です。これは国内市場の取引が当日中に完了し、基準価額もその日のうちに計算できるためです。

例えば、月曜日の午後3時までに購入申込をした場合、火曜日が約定日となります。火曜日の基準価額で購入口数が確定し、その情報は火曜日の夜から翌水曜日にかけて確認できます。

国内資産中心の投資信託は約定までの期間が短いため、比較的計画的な投資がしやすいという特徴があります。申込から約定まで1営業日しかないため、基準価額の変動リスクも限定的です。

ただし、申込締切時間を過ぎた場合は翌営業日の申込扱いとなり、約定日も1日ずれます。また、年末年始や大型連休の前後は営業日の関係で約定日が遅れることがあるため、余裕を持った申込が必要です。

海外資産の場合の約定スケジュール

海外の株式や債券に投資する投資信託の場合、約定日は申込日から数営業日後になることが一般的です。これは時差や海外市場の営業日の関係で、基準価額の計算に時間がかかるためです。

米国株に投資する投資信託の場合、申込日から3〜4営業日後が約定日となることが多くなっています。欧州株や新興国株に投資する投資信託では、さらに時間がかかることもあります。

例えば、月曜日に米国株投資信託の購入申込をした場合、約定日は木曜日または金曜日になります。この間に為替相場や米国株式市場が大きく変動すると、想定していた基準価額と実際の約定価格に差が生じることがあります。

なぜ海外資産は約定に時間がかかるのか

海外資産への投資で約定に時間がかかる主な理由は、時差と海外市場の営業日です。日本の証券会社が注文を受け付けても、実際の取引は海外市場で行われるため、そのタイムラグが約定日に反映されます。

例えば、米国市場は日本時間の夜から早朝にかけて取引されます。月曜日の日本時間午後3時に申込をしても、米国市場での取引は月曜日の夜(米国時間の月曜日朝)になります。その取引結果を反映した基準価額が計算・公表されるまでに、さらに時間がかかります。

また、海外市場の休場日も約定日に影響します。米国の祝日や欧州の休日には、その国の市場が閉まっているため取引ができません。日本が営業日でも海外が休場の場合、約定日はさらに後ろにずれることになります。

複数の国の資産に投資するグローバル型投資信託の場合、最も遅い市場の取引結果を待って基準価額が計算されるため、約定までの期間がさらに長くなることがあります。投資対象が多様なほど、約定スケジュールは複雑になる傾向があります。

約定日の確認方法

購入しようとする投資信託の約定日を事前に確認する方法はいくつかあります。正確な約定スケジュールを把握しておくことで、計画的な投資が可能になります。

最も確実な方法は、投資信託の目論見書を確認することです。目論見書の「申込みの方法」または「購入・換金の手続き」のセクションに、申込締切時間と約定日の関係が記載されています。

証券会社のウェブサイトでも、各投資信託の約定日情報を確認できます。商品詳細ページや取引ルールのページに、「申込日から何営業日後に約定」といった情報が掲載されています。

証券会社のコールセンターに問い合わせることも有効です。特に年末年始や大型連休前後など、営業日が不規則になる時期は、電話で確認しておくと安心です。

約定日を確認する際は、以下のポイントもチェックしておきましょう。

  • 申込締切時間(証券会社によって異なる)
  • 約定日の計算方法(申込日の翌営業日か、数営業日後か)
  • 海外市場の休場日の影響(米国祝日など)
  • 年末年始・大型連休時の特別スケジュール

NISAの投資枠と約定日の関係で気をつけたいこと

NISA口座で投資信託を購入する場合、約定日のタイミングが年間投資枠の管理に直接影響します。約定日を正しく理解していないと、投資枠を使い切れなかったり、想定外の年の枠が消化されたりすることがあります。

年間投資枠はいつ消化されるのか

NISAの年間投資枠は、申込日ではなく約定日を基準に消化されます。つまり、いつ注文を出したかではなく、いつ取引が成立したかで判断されるということです。

2024年から始まった新NISA制度では、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円となっています。これらの枠は、約定日が属する年に消化されます。

例えば、12月28日に投資信託の購入申込をしても、約定日が翌年1月4日になれば、翌年の投資枠が使われることになります。年末に今年の枠を使い切ろうと思って申込をしても、約定日が年明けになってしまうと、今年の枠は残ったままになってしまいます。

特に海外資産中心の投資信託は約定まで数日かかるため、年末の駆け込み購入では注意が必要です。12月の最終営業日に申込をしても、約定日は年明けになる可能性が高いためです。

金融庁「新しいNISA制度について」

年末の駆け込み購入で失敗しないために

年末にNISAの投資枠を使い切ろうとする場合、約定日のスケジュールを逆算して申込をする必要があります。余裕を持った計画が失敗を防ぐ鍵となります。

国内資産中心の投資信託なら、年内最終営業日の前営業日までに申込をすれば、年内の約定が見込めます。例えば、12月30日が最終営業日なら、12月29日の申込締切時間までに注文を出せば、12月30日に約定する可能性が高くなります。

海外資産中心の投資信託の場合は、さらに余裕を持つ必要があります。約定まで3〜4営業日かかるとすれば、年内最終営業日の4〜5営業日前までに申込を完了させておくべきです。

年末年始は証券会社も休業日が多く、営業日のスケジュールが通常と異なります。証券会社のウェブサイトで年末年始の営業カレンダーを確認し、いつまでに申込をすれば年内約定になるのかを事前に調べておきましょう。

もし年内の投資枠を使い切れなかった場合でも、翌年に繰り越すことはできません。NISAの投資枠は「使い切り」が原則ですので、計画的な投資を心がけることが大切です。

NISA枠の確認方法

現在のNISA投資枠の残高と、約定予定の取引を確認する方法を知っておくと、投資枠の管理がしやすくなります。

ほとんどの証券会社では、NISA口座のページで年間投資枠の利用状況を確認できます。「つみたて投資枠:残り80万円」「成長投資枠:残り200万円」といった形で表示されます。

注文済みだがまだ約定していない取引(約定待ちの取引)も確認しておくことが重要です。約定待ちの取引がある場合、その金額分は投資枠から差し引いて計算する必要があります。

NISA枠を確認する際のチェックポイントは以下のとおりです。

  • つみたて投資枠の利用額と残高
  • 成長投資枠の利用額と残高
  • 約定待ちの取引の有無と金額
  • 年内に約定予定の積立設定の金額

積立投資を設定している場合、今後の引落予定日と約定予定日も確認しておきましょう。年末に近づくと、設定した積立が年内に約定するのか翌年にずれ込むのかを把握しておくことが大切です。

分配金を受け取るために知っておきたい約定日のこと

投資信託の分配金を受け取るためには、決算日の前に保有者として登録されている必要があります。この登録のタイミングにも約定日が関わってきます。

分配金の権利確定日とは

分配金の権利確定日とは、その投資信託を保有していれば分配金を受け取る権利が得られる基準日のことです。多くの投資信託では、決算日が権利確定日となっています。

投資信託は年1回、年2回、毎月など、様々な決算頻度があります。決算日に保有者として登録されていれば、その決算期の分配金を受け取ることができます。

ただし、決算日当日に購入申込をしても、約定日が決算日より後になれば分配金は受け取れません。分配金を確実に受け取るためには、約定日が決算日以前になるように申込をする必要があります。

例えば、ある投資信託の決算日が12月15日で、申込日の翌営業日が約定日だとします。この場合、12月14日の申込締切時間までに購入すれば、12月15日に約定して分配金の権利を得られます。12月15日に申込をした場合は、約定日が12月16日になるため、その回の分配金は受け取れません。

いつまでに購入すれば分配金がもらえるのか

分配金を受け取るための購入タイミングは、投資信託の約定スケジュールによって異なります。決算日から逆算して、いつまでに申込をすればよいかを計算する必要があります。

国内資産中心の投資信託で、申込日の翌営業日が約定日の場合、決算日の前営業日の申込締切時間までに購入すれば分配金を受け取れます。決算日が金曜日なら、木曜日の申込締切時間までに注文を出せばよいことになります。

海外資産中心の投資信託で、約定まで3営業日かかる場合は、決算日の3営業日前までに申込を完了させる必要があります。決算日が金曜日なら、火曜日の申込締切時間までに注文を出す必要があります。

分配金目当てで投資信託を購入する際は、以下の点を確認しておきましょう。

  • 決算日(権利確定日)はいつか
  • 申込日から約定日までの日数
  • 申込締切時間
  • 決算日前後の営業日カレンダー

ただし、分配金を受け取ることだけを目的に投資信託を購入することは、必ずしも有利とは限りません。分配金が支払われると、その分だけ基準価額が下がる「権利落ち」が発生するためです。

権利落ち日に注意しよう

権利落ち日とは、分配金が支払われた後に基準価額が下がる日のことです。分配金は投資信託の資産から支払われるため、分配金の額だけ基準価額が下がるのが一般的です。

例えば、基準価額が1万円の投資信託が100円の分配金を出した場合、権利落ち後の基準価額は9,900円程度になります。分配金100円を受け取っても、保有する投資信託の価値が100円下がるため、トータルの資産額は変わりません。

分配金目当てで決算日直前に購入すると、購入直後に基準価額が下がることになります。さらに、分配金には税金がかかるため(NISA口座を除く)、実質的にはマイナスになることもあります。

長期的な資産形成を目的とする場合、分配金を受け取るよりも、分配金を再投資して複利効果を得る方が有利なことが多くなっています。分配金なしの投資信託や、分配金再投資型の投資信託を選ぶことも検討してみましょう。

分配金と約定日の関係を理解することは重要ですが、分配金の有無だけで投資判断をするのではなく、投資信託の運用方針や手数料、リスクなども総合的に考慮することが大切です。

約定日で失敗しないための5つの注意点

約定日の仕組みを理解していても、実際の取引では思わぬ失敗をすることがあります。ここでは、約定日に関するよくある失敗とその対処法を5つ紹介します。

申込締切時間を過ぎると翌営業日約定になる

最も多い失敗が、申込締切時間を過ぎてしまうことです。締切時間を1分でも過ぎると、翌営業日の申込扱いとなり、約定日も1日ずれてしまいます。

多くの証券会社では午後3時を申込締切時間としていますが、投資信託によっては正午や午後1時といった早い時間に設定されていることもあります。特に海外資産に投資する投資信託は、締切時間が早い傾向があります。

オンラインで24時間注文できるからといって、いつ申込をしても同じ約定日になるわけではありません。夜間や早朝に注文を出した場合、その日の申込締切時間前の注文として扱われるのか、翌営業日の注文として扱われるのかを確認しておく必要があります。

年末のNISA枠使い切りや、分配金の権利取得を狙う場合は、申込締切時間に余裕を持って注文を出すことが重要です。システムトラブルや操作ミスで注文が完了しないリスクも考慮し、締切時間の1時間前には手続きを始めることをおすすめします。

年末年始・大型連休は約定が遅れる

年末年始やゴールデンウィークなどの大型連休の前後は、営業日が少なくなるため約定日が通常より遅れることがあります。特に海外資産に投資する投資信託は、海外市場の休場日も影響するため注意が必要です。

例えば、12月の最終営業日が12月29日の場合、年明けの最初の営業日は1月4日になることがあります。12月28日に購入申込をしても、約定日が1月4日になれば、翌年の投資枠が消化されることになります。

米国市場の休場日(感謝祭、独立記念日など)も、米国株投資信託の約定日に影響します。日本が営業日でも米国が休場の場合、約定日は米国市場の次の営業日まで待つことになります。

大型連休の前後に投資信託を購入する場合は、証券会社のウェブサイトで営業カレンダーを確認し、約定日がいつになるのかを事前に把握しておきましょう。余裕を持った申込スケジュールを組むことが失敗を防ぐ鍵となります。

海外資産は価格変動リスクが大きい

海外資産に投資する投資信託は、申込日から約定日までの期間が長いため、その間の価格変動リスクが大きくなります。為替相場や海外株式市場が大きく動くと、想定していた基準価額と実際の約定価格に大きな差が生じることがあります。

例えば、米国株投資信託を購入する場合、申込から約定まで3〜4営業日かかります。この間に米国株式市場が急落したり、円高が進んだりすると、基準価額が大きく下がる可能性があります。

逆に、市場が上昇すれば基準価額も上がるため、想定より少ない口数しか購入できないこともあります。海外資産への投資では、このような価格変動リスクがあることを理解しておく必要があります。

価格変動リスクを抑えるためには、一度に大きな金額を投資するのではなく、時期を分散して少しずつ投資する「ドルコスト平均法」が有効です。積立投資を活用することで、約定日のタイミングを気にしすぎずに投資を続けることができます。

約定日と受渡日を混同しない

約定日と受渡日を混同すると、資金繰りで困ることがあります。特に、投資信託を売却して別の投資信託を購入しようとする場合は注意が必要です。

約定日は取引が成立する日ですが、実際に代金の受払いが行われるのは受渡日です。売却の約定日から受渡日までは通常4営業日かかるため、売却代金を受け取るまでに時間がかかります。

例えば、月曜日に投資信託Aを売却して火曜日に約定した場合、受渡日は約定日から4営業日後の月曜日になります。この売却代金で投資信託Bを購入しようとしても、月曜日まで資金が用意できないため、すぐには購入できません。

複数の投資信託を乗り換える場合や、売却代金で新たな投資をする場合は、受渡日のスケジュールも考慮して計画を立てる必要があります。急ぎの場合は、別途資金を用意しておくことも検討しましょう。

目論見書で約定ルールを必ず確認する

投資信託の約定ルールは、商品によって異なります。同じ証券会社で購入する場合でも、投資信託ごとに申込締切時間や約定日が違うことがあるため、目論見書で必ず確認することが大切です。

目論見書の「申込みの方法」または「購入・換金の手続き」のセクションに、以下の情報が記載されています。

  • 申込締切時間
  • 約定日(申込日から何営業日後か)
  • 受渡日(約定日から何営業日後か)
  • 基準価額の計算方法と公表時間
  • 海外市場の休場日の影響

目論見書は証券会社のウェブサイトや投資信託の商品ページからダウンロードできます。購入前に必ず確認し、約定スケジュールを理解しておくことで、失敗を防ぐことができます。

分からないことがあれば、証券会社のコールセンターに問い合わせることも有効です。特に初めて購入する投資信託や、海外資産に投資する複雑な商品の場合は、事前に確認しておくと安心です。

証券会社によって約定ルールは違うの?

投資信託の約定ルールは、基本的には各投資信託の運用会社が決めていますが、販売会社である証券会社によって申込締切時間などが異なることがあります。

申込締切時間は証券会社によって異なる

同じ投資信託でも、購入する証券会社によって申込締切時間が異なることがあります。これは、証券会社が独自に締切時間を設定しているためです。

多くの証券会社では午後3時を標準的な締切時間としていますが、一部の証券会社では午後2時や正午など、より早い時間に設定していることがあります。逆に、午後4時や午後5時まで受け付けている証券会社もあります。

締切時間が遅い証券会社を選ぶと、仕事終わりに注文を出せるなど、利便性が高くなります。一方、締切時間が早い証券会社でも、その分早く約定処理が行われる場合があります。

複数の証券会社で投資信託を保有している場合は、それぞれの締切時間を把握しておくことが重要です。証券会社Aでは午後3時までに注文を出せば当日扱いなのに、証券会社Bでは午後2時までという違いがあると、混乱の原因になります。

主要ネット証券の申込締切時間の目安

主要なネット証券の申込締切時間を表で整理すると、以下のようになります。ただし、投資信託によって異なる場合があるため、詳細は各社のウェブサイトで確認してください。

証券会社名 標準的な申込締切時間 特徴
SBI証券 午後3時 一部の投資信託は午後5時まで
楽天証券 午後3時 一部の投資信託は午後3時30分まで
マネックス証券 午後3時 投資信託により異なる
松井証券 午後3時 投資信託により異なる
三菱UFJeスマート証券 午後3時 投資信託により異なる

この表はあくまで目安であり、投資信託の種類や運用会社によって締切時間は異なります。購入前に必ず各証券会社のウェブサイトや商品ページで最新の情報を確認してください。

また、証券会社のシステムメンテナンス時間帯は注文を受け付けていないことがあります。深夜や早朝に注文を出す場合は、メンテナンス時間を避けるようにしましょう。

自分に合った証券会社を選ぶポイント

約定ルールの観点から証券会社を選ぶ際は、以下のポイントを考慮するとよいでしょう。

申込締切時間の遅さは、仕事が忙しい方にとって重要なポイントです。午後5時まで受け付けている証券会社なら、仕事終わりに注文を出すことができます。

約定日情報の分かりやすさも大切です。ウェブサイトやアプリで約定予定日が明確に表示される証券会社を選ぶと、投資枠の管理がしやすくなります。

約定状況の確認しやすさも考慮しましょう。約定待ちの取引や約定済みの取引が見やすく表示される証券会社なら、現在の状況を把握しやすくなります。

NISA枠管理機能が充実している証券会社もおすすめです。NISA投資枠の残高と約定予定の取引が一目で分かる機能があれば、年間投資枠の管理が簡単になります。

証券会社を選ぶ際は、約定ルールだけでなく、手数料、取扱商品数、ポイントサービス、使いやすさなども総合的に考慮することが大切です。自分の投資スタイルに合った証券会社を選ぶことで、快適な投資生活を送ることができます。

よくある質問(Q&A)

約定日に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。疑問の解消にお役立てください。

約定日に価格は確定しますか?

はい、約定日に取引価格が確定します。約定日の基準価額で購入口数や売却代金が決まります。ただし、基準価額の公表は約定日の夜から翌営業日になることが多いため、約定日の日中はまだ価格が分かりません。

国内資産中心の投資信託なら約定日の夜に基準価額が公表されますが、海外資産中心の投資信託では翌営業日以降になることもあります。証券会社のウェブサイトやアプリで、約定結果を確認できるようになるまで待ちましょう。

約定日は変更できますか?

いいえ、約定日は変更できません。約定日は投資信託の運用会社が定めるルールに従って自動的に決まります。申込締切時間までに注文を出せば、そのルールに基づいた約定日で取引が成立します。

約定日を変更したい場合は、注文自体をキャンセルして、改めて希望するタイミングで注文を出し直す必要があります。ただし、約定日が近づいている場合はキャンセルできないこともあるため、早めに手続きをすることが重要です。

約定日と受渡日はどちらが先ですか?

約定日が先で、受渡日は約定日の後になります。約定日に取引が成立し、その数営業日後に代金の受払いが行われる受渡日が来ます。

一般的には、約定日から4営業日後が受渡日となっています。例えば、火曜日に約定した場合、受渡日は月曜日になります。投資信託によって受渡日のタイミングは異なるため、目論見書で確認しておきましょう。

約定日を過ぎたらキャンセルできませんか?

約定日を過ぎた取引はキャンセルできません。約定日に取引が正式に成立しているため、その後にキャンセルすることはできません。

キャンセルが可能なのは、約定日前までです。ただし、証券会社によってキャンセルの締切時間が設定されていることがあります。約定日の前営業日までにキャンセル手続きを完了させる必要がある場合もあるため、早めに対応することが大切です。

約定後に投資方針を変更したい場合は、改めて売却注文を出す必要があります。売却にも約定日と受渡日があるため、資金が必要になるタイミングを考慮して計画を立てましょう。

積立投資の場合、約定日はいつになりますか?

積立投資の約定日は、引落日(買付日)から計算されます。毎月10日に積立設定をしている場合、10日が申込日となり、その翌営業日以降が約定日になります。

例えば、毎月10日に国内株式型投資信託を積立購入する設定の場合、10日に申込が行われ、11日に約定することが一般的です。10日が土日祝日の場合は、翌営業日に申込が行われ、その翌営業日が約定日になります。

積立投資の約定日は、証券会社のウェブサイトやアプリの積立設定ページで確認できます。NISA口座で積立投資をしている場合は、約定日がどの年に属するかを確認し、年間投資枠の管理に役立てましょう。

年末の積立設定は、約定日が年明けにならないよう注意が必要です。12月の最終営業日に近い日を積立日に設定していると、約定日が翌年になる可能性があります。年内の投資枠を使い切りたい場合は、余裕を持った日付に設定することをおすすめします。

まとめ

投資信託の約定日とは、取引が正式に成立する日のことで、この日の基準価額で購入口数や売却代金が決まります。申込日・約定日・受渡日という3つの日付があり、それぞれ意味が異なるため、正しく理解することが大切です。

約定日は投資信託の種類によって異なり、国内資産中心なら申込日の翌営業日、海外資産中心なら数営業日後になることが一般的です。NISAの年間投資枠は約定日を基準に消化されるため、年末の駆け込み購入では約定日のタイミングに注意が必要です。

分配金を受け取るためにも約定日が重要で、決算日以前に約定する必要があります。ただし、分配金を受け取ると基準価額が下がる権利落ちが発生するため、長期投資では分配金再投資型の方が有利なこともあります。

約定日で失敗しないためには、申込締切時間を守ること、年末年始や大型連休の影響を考慮すること、海外資産の価格変動リスクを理解すること、約定日と受渡日を混同しないこと、目論見書で約定ルールを確認することが重要です。

証券会社によって申込締切時間が異なるため、自分の生活スタイルに合った証券会社を選ぶことも大切です。約定日の仕組みを正しく理解することで、計画的な投資ができるようになります。

なお、投資信託への投資には元本割れのリスクがあります。約定日の仕組みを理解した上で、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重に投資判断を行ってください。詳しくは各証券会社や金融機関にご確認いただくことをおすすめします。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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