専業主婦のiDeCo|メリットと始め方を解説

専業主婦のiDeCo|メリットと始め方を解説

「専業主婦でもiDeCoに加入する意味はあるの?」と疑問に思っていませんか。

iDeCoは掛金が所得控除の対象になることが大きなメリットですが、収入のない専業主婦には所得控除の恩恵がありません。

しかし、運用益が非課税になることや、受取時に税制優遇を受けられることなど、専業主婦でも活用できるメリットがあります。

この記事では、専業主婦がiDeCoを始めるメリットと注意点、NISAとの比較、金融機関の選び方まで詳しく解説します。

自分に合った資産形成の方法を見つけて、老後の備えを始めましょう。

この記事の要約
  • 専業主婦のiDeCoは運用益非課税と受取時の税制優遇がメリット
  • 所得控除が使えないため手数料負けのリスクに注意が必要
  • 60歳まで引き出せないため教育資金とのバランスを考えて判断
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

専業主婦がiDeCoを始めるメリットは?

専業主婦がiDeCoを始める最大のメリットは、運用益が非課税になることと、受取時に税制優遇を受けられることです。

所得控除は受けられませんが、長期的な資産形成には十分なメリットがあります。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

iDeCoは2017年の制度改正により、専業主婦も加入できるようになりました。

2024年8月末時点で約14.8万人の専業主婦(第3号被保険者)が加入しており、年々増加傾向にあります。

運用益が非課税になるため、通常の投資なら20.315%課税されるところ、iDeCoでは全額が自分の資産として残ります。

例えば100万円の利益が出た場合、通常なら約20万円が税金として引かれますが、iDeCoなら100万円全額を受け取れます。

また、受取時には退職所得控除(一時金受取)または公的年金等控除(年金受取)が適用されます。

専業主婦は退職金がなく公的年金の額も少ないため、受給時に課税されずに受け取れる可能性が高いのです。

将来パートや正社員として働く予定がある場合、その時点から掛金の所得控除も活用できるようになります。

今から始めておけば、働き始めたときにより大きな節税効果を得られるでしょう。

iDeCo(イデコ)の仕組みと基本

iDeCoは個人型確定拠出年金とも呼ばれ、自分で老後資金を準備するための私的年金制度です。

毎月一定の掛金を拠出し、自分で運用商品を選んで60歳以降に受け取ります。

iDeCoとは何か

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度です。

任意で加入でき、毎月一定の掛金を支払うことで、60歳以降に「掛金と運用益との合計額」を一時金、年金、または両方の併用で受け取ることができます。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

2017年1月の制度改正により、専業主婦も加入対象となりました。

それまでは自営業者や企業年金のない会社員などに限られていましたが、現在はほぼすべての人が加入できます。

iDeCoの特徴は、掛金の拠出、運用、受取のすべてを自分で行う点です。

金融機関を選び、運用商品を選び、掛金額を決めるなど、自分でコントロールできる制度です。

専業主婦の加入条件と掛金

専業主婦(国民年金第3号被保険者)がiDeCoに加入できる条件は、20歳以上60歳未満であることです。

掛金の上限額は月額23,000円、年額では276,000円となっています。

国民年金基金連合会:iDeCo公式サイト

掛金は月額5,000円から1,000円単位で設定できるため、家計の状況に合わせて無理のない金額から始められます。

年金制度が充実している会社員や公務員と比べると、掛金の枠が多めに確保されています。

掛金の拠出は休止や再開がいつでも可能で、金額も年1回変更できます。

ただし、休止中も口座管理手数料が発生する場合があるため、継続的に拠出できる金額を設定することが大切です。

国民年金に任意加入している場合は、65歳まで加入を延長することも可能です。

長く働く予定がある方は、より長期間iDeCoを活用できます。

3つの税制優遇の仕組み

iDeCoには「拠出時」「運用時」「受取時」の3つの段階で税制優遇があります。

ただし、専業主婦の場合は拠出時の所得控除は受けられません。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

運用時の税制優遇は、運用益が非課税になることです。

通常の投資では利益に対して20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでは一切かかりません。

複利効果により、長期間運用するほど非課税のメリットは大きくなります。

受取時の税制優遇は、一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されることです。

専業主婦は退職金がないため、控除枠を最大限活用できる可能性が高いでしょう。

専業主婦がiDeCoを始める5つのメリット

所得控除が使えない専業主婦でも、iDeCoには5つの具体的なメリットがあります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

運用益が非課税になる

iDeCoの運用益は全額非課税です。

通常の投資では利益に対して20.315%の税金がかかりますが、iDeCoではこの税金が一切かかりません。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

例えば、毎月1万円を25年間、年率3%で運用した場合、元本300万円が約450万円に増える計算になります。この約150万円の運用益に対して、通常なら約30万円の税金がかかりますが、iDeCoなら全額受け取れます。

運用益が非課税で再投資できるため、複利効果がより大きく働きます。

長期間運用するほど、この非課税のメリットは大きくなるのです。

受取時に税制優遇を受けられる

iDeCoの受取時には、一時金受取なら退職所得控除、年金受取なら公的年金等控除が適用されます。

専業主婦は一般的に退職金がなく公的年金の額も少ないため、受給時に課税されずに受け取れる可能性が高いのです。

退職所得控除は、加入年数が20年以下の場合「加入年数×40万円」、20年超の場合「800万円+70万円×(加入年数-20年)」で計算されます。

例えば25年間加入した場合、1,150万円までは非課税で受け取れます。

公的年金等控除は、65歳未満で60万円、65歳以上で110万円の控除が受けられます。

専業主婦の公的年金は国民年金のみで月額約6.8万円(満額の場合)ですから、iDeCoと合わせても控除枠内に収まる可能性が高いでしょう。

老後資金を計画的に準備できる

iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、確実に老後資金を貯められます。

「ついつい使ってしまう」心配がなく、計画的な資産形成が可能です。

専業主婦は厚生年金に加入していないため、将来受け取れる公的年金は国民年金のみです。

2024年度の国民年金満額は月額約6.8万円ですから、これだけでは老後の生活費を賄うのは難しいでしょう。

iDeCoに加入していれば、国民年金にプラスして自分の年金を受け取れます。

少額からでも早く始めることで、時間を味方につけた資産形成ができるのです。

将来働くときに所得控除が使える

現在は専業主婦でも、将来パートや正社員として働く予定がある場合、その時点から掛金の所得控除を活用できます。

例えば月2万円を拠出すれば年間24万円の所得控除となり、所得税と住民税を合わせて年間約3.6万円の節税効果が期待できます。

子育てが一段落してから働き始める方や、扶養範囲を超えて働く予定がある方にとって、今からiDeCoを始めておくことは将来の節税につながります。

掛金の所得控除を使えるのは本人のみです。

国民年金保険料や国民健康保険料は配偶者が支払えば配偶者の所得控除にできますが、iDeCoは本人の所得からしか控除できません。

だからこそ、将来自分が働くときに備えて今から準備しておく価値があるのです。

自分の年金を持てる安心感

iDeCoの口座は一人ひとり明確に区分されて管理されるため、積立金を自分名義の資産として保有できます。

自分名義の資産を準備していれば、不慮の事態にも対応しやすくなります。

「配偶者の退職金と公的年金だけでは老後に不安がある」という方や、「自分自身の年金を持ちたい」という方にとって、iDeCoは心理的な安心感をもたらします。

専業主婦でも資産運用できるという自信がつき、お金の知識を身につけて賢く備えることができるでしょう。

専業主婦がiDeCoを始める前に知っておきたい5つの注意点

iDeCoにはメリットだけでなく、注意すべきデメリットもあります。

加入前に必ず確認しておきましょう。

所得控除のメリットは受けられない

専業主婦で無収入の場合や収入が一定額以下の場合は、そもそも所得税や住民税を払っていないため、掛金の所得控除のメリットを受けることはできません。

これがiDeCo最大のメリットを活用できない点です。

会社員などは収入があり、掛金を納めれば税金が安くなるため、手数料がかかってもメリットを得られやすいです。

しかし専業主婦はそもそも税金がかからない人も多く、所得税や住民税の軽減効果を得られません。

ただし、運用益の非課税や受取時の税制優遇は専業主婦でも活用できます。

所得控除が使えないからといって、iDeCoに意味がないわけではありません。

手数料がかかる

iDeCoは加入時、掛金拠出時、給付時に手数料がかかります。

金融機関によって異なりますが、最も安い金融機関でも月額171円、高いところでは月額600円以上かかります。

専業主婦は所得控除のメリットを受けられないため、手数料の分だけ負担が増えてしまいます。運用益が手数料を上回らなければ、マイナスになる可能性もあるのです。

例えば月額171円の手数料がかかる場合、年間で2,052円の負担となります。

元本保証型の定期預金で運用する場合、利息が手数料を下回る可能性が高いため注意が必要です。

手数料負けを避けるためには、ある程度のリターンが期待できる投資信託での運用を検討するか、掛金を多めに設定して手数料の割合を下げる工夫が必要です。

60歳まで引き出せない

iDeCoは老後資金の積み立てを目的とした制度のため、原則として60歳まで資産を引き出せません。

一定の条件を満たす場合を除いて途中解約はできないのです。

国民年金基金連合会:iDeCo公式サイト

30歳のときに掛けた資金が手元に戻るのは30年後ということになります。

特にまだ若い夫婦の場合、教育資金や住宅資金も備えなくてはいけません。

途中で生活資金が必要になっても、iDeCoを解約することはできません。

急な事故や病気、収入の減少などでお金が必要になった場合に対応できなくなるおそれがあります。

掛金の拠出は休止や再開がいつでも可能ですが、休止中も口座管理手数料が発生します。

生活費に影響が出ない範囲で掛金を設定することが重要です。

元本割れのリスクがある

iDeCoで投資信託を選んだ場合、運用成績によっては元本割れする可能性があります。

価格が変動する商品には投資リスクが伴うのです。

金融庁:投資の基本

ただし、iDeCoは基本的に長期・積立・分散投資を活かせるため、投資リスクを抑えやすい特徴があります。

短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点で資産形成を行うことが大切です。

元本保証型の定期預金や保険商品を選べば元本割れのリスクは避けられますが、利息が少ないため手数料負けする可能性があります。

リスクとリターンのバランスを考えて運用商品を選びましょう。

教育資金・住宅資金とのバランス

専業主婦がiDeCoを始める際は、教育資金や住宅資金など他の資金計画とのバランスを考えることが重要です。

60歳まで引き出せないため、他の資金が不足しないよう注意が必要です。

  • 子どもがまだ小さい場合、今後の教育費がどのくらいかかるかを見積もっておきましょう
  • 大学進学費用だけでも数百万円が必要になります
  • 住宅購入を検討している場合は、頭金や諸費用の準備も必要です

iDeCoに拠出しすぎて、これらの資金が不足しないよう計画的に考えましょう。

iDeCoとは別に、いつでも引き出せる貯蓄や、NISAでの運用も併用することをおすすめします。

柔軟性のある資産と、長期的に固定する資産をバランスよく持つことが大切です。

専業主婦はiDeCoを始めるべき?|判断のポイント

専業主婦がiDeCoを始めるべきかどうかは、個人の状況によって異なります。

以下のポイントを参考に、自分に合っているか判断しましょう。

iDeCoが向いている専業主婦

iDeCoが向いているのは、以下のような専業主婦です

✓ 将来パートや正社員として働く予定がある方

✓ 老後資金を確実に貯めたい方

✓ 教育資金や住宅資金など他の資金計画にめどが立っている方

✓ 配偶者の退職金と公的年金だけでは老後に不安がある方

働き始めたときに掛金の所得控除を活用できるため、今から始めておくメリットがあります。

60歳まで引き出せないことを逆にメリットと捉え、強制的に老後資金を準備できます。

「ついつい使ってしまう」心配がなく、計画的な資産形成が可能です。

iDeCoを見送った方がよい場合

以下のような状況の専業主婦は、iDeCoを見送るか、慎重に検討した方がよいでしょう。

  • 今後も働く予定がなく、所得控除のメリットを活用できない方
  • 教育資金や住宅資金がまだ十分に準備できていない方
  • 月々の家計に余裕がなく、少額しか拠出できない方
  • 投資のリスクを一切取りたくない方で、元本保証型商品のみを選ぶ予定の場合

手数料負けするリスクがあるため、NISAの方が向いている可能性があります。

60歳まで引き出せないため、他の資金が不足する可能性があります。

まずは教育資金や住宅資金を優先し、余裕ができてからiDeCoを検討しましょう。

ライフステージ別の判断基準

年齢やライフステージによっても、iDeCoの向き不向きは変わります。

20代〜30代前半(子どもがまだ小さい場合)
教育資金や住宅資金を優先し、まずはNISAで柔軟に運用することをおすすめします。将来働く予定があれば、その時点でiDeCoを検討しましょう。
30代後半〜40代前半(子どもが小学生以上の場合)
教育費のめどが立ち始める時期です。余裕資金ができたら、NISAとiDeCoの併用を検討してもよいでしょう。
40代後半〜50代(子どもが独立間近または独立済みの場合)
老後資金の準備を本格化する時期です。ただし、50代から始めても間に合うかを慎重に検討しましょう。加入期間が短いと受取時の控除額も少なくなります。

専業主婦のiDeCo|NISAとの比較と使い分け

専業主婦が資産形成を考える際、iDeCoとNISAのどちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。

両者の違いを理解して、自分に合った制度を選びましょう。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

iDeCoとNISAの違い

iDeCoとNISAの主な違いを表で比較してみましょう。

項目 iDeCo NISA
税制優遇 拠出時・運用時・受取時の3段階(専業主婦は拠出時の恩恵なし) 運用時のみ(運用益非課税)
年間投資枠 専業主婦は年額27.6万円まで つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円
引き出し 原則60歳まで不可 いつでも可能
手数料 加入時・拠出時・給付時に発生 多くの金融機関で無料
運用商品 投資信託・定期預金・保険 投資信託・株式(成長投資枠)

NISAは2024年から新制度がスタートし、非課税保有限度額が1,800万円に拡大されました。

つみたて投資枠と成長投資枠を併用でき、より多くの資産を非課税で運用できるようになっています。

iDeCoは掛金の所得控除が大きなメリットですが、専業主婦は所得がないため恩恵を受けられません。

一方、NISAは所得控除はありませんが、いつでも解約できる柔軟性があります。

手数料の面でも、NISAは多くの金融機関で口座管理手数料が無料ですが、iDeCoは最低でも月171円の手数料がかかります。

専業主婦にとっては、この手数料負担が重要な判断材料となります。

専業主婦はどちらを選ぶべきか

専業主婦には、基本的にNISAの方が向いているケースが多いと言えます。最大の理由は、所得控除のメリットを受けられないのに口座管理手数料がかかってしまうからです。

NISAなら手数料がかからず、運用益も非課税になります。

さらに、いつでも解約できるため、急な出費が必要になった場合にも対応できます。

教育資金や住宅資金が必要になったときに柔軟に対応できる点は大きなメリットです。

ただし、将来働く予定がある場合や、60歳まで引き出せないことを逆にメリットと捉える場合は、iDeCoも選択肢になります。

老後資金を確実に貯めたい方には、iDeCoの強制力が役立つでしょう。

また、元本保証型商品で運用したい場合、NISAには定期預金や保険商品がないため、iDeCoの方が選択肢が広がります。

ただし、元本保証型商品は利息が少ないため手数料負けのリスクがあることに注意しましょう。

併用する場合の優先順位

NISAとiDeCoを併用する場合、専業主婦はまずNISAから始めることをおすすめします。

まず、つみたてNISAで月1万円程度から始めて、投資に慣れましょう。

つみたてNISAは金融庁が定める基準を満たす投資信託に限定されているため、初心者でも選びやすいのが特徴です。

家計に余裕ができたら、iDeCoの追加を検討します。

例えば、つみたてNISAで月3万円、iDeCoで月1万円という形で併用すれば、柔軟性と強制力の両方を活かせます。

専業主婦がNISAとiDeCoの両方で運用すると、年間で最大約68万円(NISA120万円、iDeCo27.6万円)まで非課税で投資を行うことができます。

ただし、教育資金や住宅資金とのバランスを考えて、無理のない範囲で始めましょう。

専業主婦のiDeCo|金融機関の選び方

iDeCoを始める際は、金融機関選びが重要です。

手数料や運用商品のラインナップ、サポート体制などを比較して選びましょう。

手数料で選ぶ

iDeCoの手数料は金融機関によって異なります。

最も安い金融機関では月額171円、高いところでは月額600円以上かかります。

手数料の内訳は、国民年金基金連合会に支払う手数料(月105円)、事務委託先金融機関に支払う手数料(月66円)、そして運営管理機関(金融機関)に支払う手数料です。

最初の2つはどの金融機関でも同じですが、運営管理機関の手数料は金融機関によって異なります。

専業主婦は所得控除のメリットを受けられないため、手数料を最小限に抑えることが重要です。

運営管理機関の手数料が無料の金融機関を選べば、月額171円で済みます。

年間で考えると、手数料の差は大きくなります。

月171円なら年間2,052円、月600円なら年間7,200円です。30年間で考えると、約15万円もの差になります。

運用商品の豊富さで選ぶ

金融機関によって、運用できる商品のラインナップが異なります。

投資信託の本数、定期預金の有無、信託報酬の水準などを確認しましょう。

投資信託の本数は、多ければよいというわけではありません。

多すぎると選ぶのが難しくなるため、厳選された20〜30本程度のラインナップがあれば十分です。

信託報酬(運用管理費用)は、投資信託を保有している間ずっとかかるコストです。

同じような運用内容の投資信託なら、信託報酬が低いものを選びましょう。インデックスファンドなら年0.1%〜0.2%程度が目安です。

定期預金や保険商品など、元本保証型商品のラインナップも確認しておきましょう。

リスクを抑えたい方や、ポートフォリオの一部を元本保証型にしたい方には重要なポイントです。

サポート体制で選ぶ

初心者の方は、サポート体制が充実している金融機関を選ぶと安心です。

コールセンター、チャットサポート、対面相談の有無を確認しましょう。

ネット証券は手数料が安い反面、対面でのサポートは受けられません。

電話やチャットでのサポートが充実しているか確認しましょう。

銀行や証券会社の店舗では、対面で相談できる場合があります。

初めての投資で不安が大きい方は、対面サポートがある金融機関を選ぶのも一つの方法です。

また、Webサイトやアプリの使いやすさも重要です。

運用状況の確認や商品の変更がしやすいか、事前に確認しておきましょう。

元本保証型商品の有無で選ぶ

投資のリスクを抑えたい方は、元本保証型商品のラインナップを確認しましょう。

定期預金や保険商品があれば、元本割れのリスクを避けられます。

ただし、元本保証型商品は利息が少ないため、手数料負けする可能性があります。

月額171円の手数料がかかる場合、年間2,052円の利息を上回る必要があります。

定期預金の金利が年0.01%程度の場合、かなりの金額を預けないと手数料を上回る利息を得られません。

元本保証型商品だけで運用する場合は、手数料とのバランスを慎重に検討しましょう。

元本保証型商品と投資信託を組み合わせる方法もあります。

例えば、掛金の半分を定期預金、半分を投資信託にするなど、リスクとリターンのバランスを取ることができます。

専業主婦のiDeCo|運用商品の選び方

iDeCoでは、自分で運用商品を選ぶ必要があります。

初心者向けに、運用商品の選び方を解説します。

定期預金と投資信託の違い

iDeCoの運用商品は、大きく分けて「元本保証型商品(定期預金・保険)」と「投資信託」の2つがあります。

定期預金は、元本が保証される商品です。

満期まで保有すれば元本割れのリスクはありませんが、利息は非常に少ないのが特徴です。

現在の金利水準では年0.01%程度のため、100万円預けても年間100円程度の利息しか得られません。

投資信託は、多数の投資家から集めたお金をまとめて、専門家が株式や債券などに投資する商品です。

元本は保証されませんが、長期的には定期預金より高いリターンが期待できます。

ただし、短期的には価格が変動するため、元本割れするリスクもあります。

iDeCoは長期投資を前提とした制度のため、時間を味方につけられる投資信託の方が向いていると言えます。

ただし、リスクを取りたくない方は、元本保証型商品を選ぶこともできます。

初心者におすすめの商品タイプ

初心者におすすめなのは、バランス型ファンドまたはインデックスファンドです。

初心者向け運用商品の特徴

バランス型ファンド:株式と債券を組み合わせた投資信託。1つの商品で分散投資ができるため、初心者でも選びやすい

インデックスファンド:日経平均株価やS&P500などの指数に連動する投資信託。信託報酬が低く、長期投資に向いている

ターゲットイヤーファンド:受取時期に合わせて自動的に資産配分を調整してくれる投資信託

全世界株式インデックスファンドなら、1つの商品で世界中の株式に分散投資できます。

ターゲットイヤーファンドは、若いうちは株式の比率を高くし、受取時期が近づくにつれて債券の比率を高めていきます。

何も考えずに運用したい方におすすめです。

リスクを抑えた運用方法

リスクを抑えたい方は、以下の方法を検討しましょう。

1. 元本保証型商品と投資信託を組み合わせる
2. 債券の比率が高いバランス型ファンドを選ぶ
3. 少額から始めて徐々に増やす
4. 長期・積立・分散投資を心がける

例えば、掛金の半分を定期預金、半分を投資信託にすることで、リスクとリターンのバランスを取れます。

株式100%のファンドよりリスクが低く、定期預金よりリターンが期待できます。

最初は月5,000円から始めて、投資に慣れたら月1万円、2万円と増やしていけば、リスクを抑えながら運用できます。

毎月一定額を積み立てることで、価格が高いときは少なく、安いときは多く買うことができます(ドルコスト平均法)。

時間を分散することでリスクを抑えられるのです。

専業主婦のiDeCo|加入手続きの流れ

iDeCoの加入手続きは、以下の3つのステップで進めます。

順を追って見ていきましょう。

必要な書類を準備する

iDeCoの加入には、以下の書類が必要です。

必要書類一覧

個人型年金加入申出書
  • 金融機関から取り寄せるか、Webサイトからダウンロード
  • 氏名、住所、基礎年金番号、掛金額などを記入
本人確認書類
  • 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどのコピー
  • 金融機関によっては、オンラインで本人確認できる場合もあります
基礎年金番号がわかる書類
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書

専業主婦の場合、配偶者の勤務先に記入してもらう書類は不要です。

国民年金第3号被保険者であることを証明するため、基礎年金番号が分かる年金手帳や基礎年金番号通知書を用意しておきましょう。

金融機関に申し込む

書類が準備できたら、選んだ金融機関に申し込みます。

申込方法は、郵送またはオンラインです。

オンライン申込に対応している金融機関なら、書類の郵送が不要で、最短で手続きが完了します。

申込書類を提出すると、国民年金基金連合会で審査が行われます。

審査には1〜2ヶ月程度かかります。審査が通ると、口座開設完了の通知が届きます。

口座開設後、掛金の引き落としが始まります。

初回の引き落としは、申込から2〜3ヶ月後になることが多いです。

引き落とし日は金融機関によって異なりますが、毎月26日が一般的です。

運用商品を選ぶ

口座開設後、運用商品を選びます。

金融機関から送られてくる商品一覧を見て、自分に合った商品を選びましょう。

初心者の方は、バランス型ファンドやターゲットイヤーファンドから始めるのがおすすめです。

商品を選んだら、配分を指定します。

1つの商品に100%配分してもよいですし、複数の商品に分散してもよいです。

配分は1%単位で指定でき、合計が100%になるように設定します。

運用商品は後から変更できます。

配分変更(今後の掛金の配分を変える)とスイッチング(既に運用している資産を売却して別の商品に変える)の2つの方法があります。

市場環境や自分の状況に応じて、適宜見直しましょう。

専業主婦のiDeCoでよくある質問

専業主婦がiDeCoを始める際によくある質問をまとめました。

疑問を解消してから始めましょう。

夫の扶養に影響はある?

iDeCoに加入しても、夫の扶養には影響ありません。

掛金は所得控除の対象ですが、これは本人の所得から控除されるものです。

配偶者控除や社会保険の扶養判定には影響しないため、安心して加入できます。

ただし、iDeCoの掛金は本人の所得からしか控除できません。

夫の所得から控除することはできないため、専業主婦が加入しても所得控除のメリットは受けられません。

パートを始めたらどうなる?

パートを始めて収入が発生したら、その時点から掛金の所得控除を活用できます。

例えば年収127万円でiDeCoに月2万円拠出すれば、所得控除により課税所得を103万円以下に抑えることができます。

ただし、社会保険の加入条件(106万円または130万円の壁)には注意が必要です。

勤務先の状況によっては、社会保険に加入する必要が出てくる場合があります。

途中で掛金を変更できる?

掛金の変更は年1回可能です。

掛金額変更届を金融機関に提出すれば、月額5,000円から23,000円の範囲内で1,000円単位で変更できます。

また、掛金の拠出を休止することもできます。

休止中も口座は維持され、それまでに積み立てた資産の運用は継続されます。

ただし、休止中も口座管理手数料が発生するため注意しましょう。

50代から始めても間に合う?

50代から始めても、一定のメリットはあります。

ただし、加入期間が短いと受取時の控除額も少なくなります。

退職所得控除は、加入年数が20年以下の場合「加入年数×40万円」で計算されます。

例えば50歳から10年間加入した場合、控除額は400万円です。

また、iDeCoは加入期間が10年以上ないと60歳から受け取れません。

加入期間が10年未満の場合、受取開始年齢が61歳以降になります。

50代から始める場合は、受取時期を確認しておきましょう。

金融機関は変更できる?

金融機関の変更は可能ですが、手数料と手間がかかります。

変更には4,400円程度の手数料がかかり、手続きに2〜3ヶ月かかります。

また、変更時には一旦すべての運用商品を売却する必要があるため、売却時の市場環境によっては損失が出る可能性もあります。

金融機関は最初から慎重に選ぶことをおすすめします。

手数料、運用商品のラインナップ、サポート体制などを比較して、長く付き合える金融機関を選びましょう。

まとめ

専業主婦がiDeCoを始めるかどうかは、個人の状況によって判断が分かれます。

所得控除のメリットは受けられませんが、運用益が非課税になることや受取時の税制優遇は活用できます。

将来働く予定がある方や、老後資金を確実に貯めたい方にはiDeCoが向いています。

一方、教育資金や住宅資金がまだ準備できていない方や、柔軟に資金を引き出したい方にはNISAの方が向いているでしょう。

iDeCoを始める場合は、手数料が安く運用商品が充実している金融機関を選び、長期・積立・分散投資を心がけましょう。

少額からでも早く始めることで、時間を味方につけた資産形成ができます。

自分のライフプランと照らし合わせて、iDeCoとNISAのどちらが合っているか、または併用するかを検討してください。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、不安な点は金融機関や専門家にご相談ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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