NISAとは?新制度の仕組みと始め方をわかりやすく解説

NISAとは?新制度の仕組みと始め方をわかりやすく解説

老後の資金が心配、でも投資は難しそう。

そんな悩みを抱えている方にこそ知ってほしいのが、NISAという制度です。

NISAは投資で得た利益が非課税になる制度で、2024年から大幅に使いやすくなりました。

非課税保有限度額が1,800万円に拡大され、非課税期間も無期限になったことで、長期的な資産形成がしやすくなっています。

この記事では、NISAの基本的な仕組みから2024年の新制度の変更点、実際の始め方まで、投資初心者の方にもわかりやすく解説します。

自分に合った活用法を見つけて、将来に向けた資産づくりを始めましょう。

この記事の要約
  • NISAは投資の利益が非課税になる制度で、2024年から非課税保有限度額1,800万円、非課税期間無期限に拡大
  • つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用でき、自分のスタイルに合わせた投資が可能
  • 証券会社を選んで口座開設し、投資信託や株式を購入するだけで始められる
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

NISAとは|投資の利益が非課税になる制度

NISA(ニーサ)は、少額投資非課税制度の愛称です。通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、売却して得た利益や受け取った配当には約20%の税金がかかります。しかし、NISA口座を通じて投資をすると、これらの利益が非課税になるのが最大の特徴です。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

2024年1月からは新しいNISA制度がスタートし、非課税で投資できる金額や期間が大幅に拡大されました。これにより、より多くの方が長期的な資産形成に取り組みやすくなっています。

NISAの基本的な仕組み

NISAの仕組みはシンプルです。証券会社や銀行でNISA口座を開設し、その口座で投資信託や株式を購入します。NISA口座で保有している金融商品から得られる配当金や売却益は、すべて非課税となります。

2024年からの新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの投資枠が設けられました。つみたて投資枠は年間120万円まで、成長投資枠は年間240万円まで投資でき、合計で年間360万円の非課税投資が可能です。

また、生涯で投資できる非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)となっています。

金融庁:新しいNISA

NISA口座は1人1口座のみ開設でき、複数の金融機関で同時に持つことはできません。ただし、年単位で金融機関を変更することは可能です。

非課税のメリットを具体例で解説

非課税のメリットは、実際の数字で見るとわかりやすくなります。たとえば、投資信託に100万円を投資して、10年後に150万円になったとしましょう。この場合、利益は50万円です。

通常の課税口座で投資していた場合、この50万円の利益に対して約20%の税金がかかるため、約10万円が税金として差し引かれます。手元に残るのは40万円です。しかし、NISA口座で投資していれば、この10万円の税金がかからず、50万円すべてが手元に残ります。

長期的に投資を続けると、この差はさらに大きくなります。たとえば、毎月3万円を20年間積み立てて、年平均5%で運用できたと仮定すると、投資元本720万円が約1,233万円になります。利益は約513万円で、課税口座なら約103万円が税金として引かれますが、NISA口座ならこの金額がまるまる手元に残るのです。

このように、NISAを活用することで、資産形成の効率が大きく向上します。特に長期投資を前提とする場合、非課税メリットの効果は非常に大きくなります。

2024年からの新NISA|何が変わった?

2024年1月から始まった新NISAは、旧制度から大きく進化しました。制度が恒久化され、非課税保有期間が無期限になったことで、より使いやすい制度になっています。ここでは、旧制度との主な違いを4つのポイントに分けて解説します。

金融庁:新しいNISA

制度が恒久化|いつまでも使える

旧NISAでは、一般NISAは2023年まで、つみたてNISAは2042年までと、口座開設期間に期限がありました。このため、制度が延長されるかどうかが投資家にとって不安要素となっていました。

新NISAでは口座開設期間が恒久化され、期限がなくなりました。これにより、将来のライフイベントや老後に向けて資金の準備を始めたいタイミングで、いつでも口座を開設して投資を始めることができます。

制度が途中で終了する心配がないため、長期的な視点で安心して資産形成に取り組めるようになりました。

非課税保有期間が無期限に

旧制度では、一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間という非課税保有期間の制限がありました。この期間が終了すると、保有している金融商品を売却するか、課税口座に移管する必要がありました。

新NISAでは、非課税保有期間が無期限になりました。つまり、NISA口座で購入した金融商品を、いつまでも非課税で保有し続けることができます。売却のタイミングを自分で自由に決められるため、市場の状況や自身のライフプランに合わせた柔軟な運用が可能になりました。

年間投資枠が大幅アップ

旧制度では、一般NISAの年間投資枠は120万円、つみたてNISAは40万円でした。そして、どちらか一方しか選択できませんでした。

新NISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円となり、合計で年間360万円まで投資できるようになりました。旧制度と比べて、年間投資枠が大幅に拡大されたことで、より多くの資金を非課税で運用できます。投資資金に余裕がある方や、まとまった資金を投資したい方にとって、使い勝手が大きく向上しました。

2つの投資枠を併用できる

旧制度では、一般NISAとつみたてNISAのどちらか一方しか選択できませんでした。このため、「積立投資をしながら個別株にも投資したい」といったニーズに応えることができませんでした。

新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できるようになりました。たとえば、つみたて投資枠で毎月コツコツと投資信託を積み立てながら、成長投資枠で興味のある企業の株式に投資したり、ボーナスでまとまった金額を投資したりすることが可能です。投資スタイルの自由度が大きく高まり、個人のニーズに合わせた柔軟な資産形成ができるようになりました。

つみたて投資枠と成長投資枠の違い|どう使い分ける?

新NISAの2つの投資枠は、それぞれ異なる特徴を持っています。自分に合った使い方を見つけるためには、まずそれぞれの違いを理解することが大切です。ここでは、つみたて投資枠と成長投資枠の特徴と使い分けのポイントを解説します。

つみたて投資枠の特徴

つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資による資産形成を目的とした投資枠です。年間投資枠は120万円で、毎月決まった金額を自動的に投資する積立方式に限定されています。

投資対象は、金融庁が定める基準を満たした投資信託とETF(上場投資信託)に限られます。具体的には、信託契約期間が無期限または20年以上、運用管理費用が一定水準以下、毎月分配型でないことなどの条件を満たした商品のみが対象です。これらの基準により、長期投資に適した商品が厳選されているため、投資初心者でも安心して選ぶことができます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

積立投資では、毎月一定額を投資することで、価格が高いときは少なく、安いときは多く購入できます。この効果は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、一度にまとめて購入するよりも平均購入単価を抑える効果が期待できます。

市場のタイミングを計る必要がないため、投資経験が少ない方でも始めやすいのが特徴です。

成長投資枠の特徴

成長投資枠は、つみたて投資枠よりも自由度の高い投資枠です。年間投資枠は240万円で、投資信託だけでなく上場株式にも投資できます。また、積立投資だけでなく、好きなタイミングで一括購入することも可能です。

投資対象は、つみたて投資枠の対象商品に加えて、国内外の上場株式、ETF、REITなど幅広い商品が含まれます。ただし、安定的な資産形成というNISAの目的に沿って、整理・監理銘柄、信託期間20年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託などは除外されています。

成長投資枠は、投資経験がある方や、個別株に投資したい方、まとまった資金を一括で投資したい方に適しています。市場の状況を見ながら、より柔軟な投資判断ができるのが特徴です。

非課税保有限度額1,800万円のうち、成長投資枠で使えるのは1,200万円までです。残りの600万円分は、つみたて投資枠を活用する必要があります。もちろん、つみたて投資枠だけで1,800万円すべてを使うこともできます。

2つの枠を組み合わせる方法

つみたて投資枠と成長投資枠を併用することで、より効果的な資産形成が可能になります。ここでは、具体的な組み合わせ方法を3つ紹介します。

おすすめの組み合わせパターン

1. 基本は積立、追加投資で成長投資枠を活用

2. 積立と個別株投資を両立

3. 成長投資枠だけを使う

1. 基本は積立、追加投資で成長投資枠を活用

つみたて投資枠で毎月コツコツと投資信託を積み立てながら、ボーナス時や相場が下がったタイミングで成長投資枠を使って追加投資をする方法です。たとえば、つみたて投資枠で毎月5万円を積み立て、ボーナス月に成長投資枠で15万円を一括投資すれば、年間120万円の投資が可能です。

2. 積立と個別株投資を両立

つみたて投資枠で投資信託を積み立てながら、成長投資枠で興味のある企業の株式に投資する方法です。投資信託で分散投資をしつつ、応援したい企業の株式を保有することで、配当金や株主優待も楽しめます。

3. 成長投資枠だけを使う

投資経験が豊富で、個別株を中心に運用したい方は、成長投資枠だけを使うこともできます。ただし、成長投資枠の上限は1,200万円なので、非課税保有限度額を最大限活用したい場合は、つみたて投資枠も併用する必要があります。

自分に合った使い方を見つけるコツ

どの投資枠をどのように使うかは、自分の投資経験、リスク許容度、投資資金によって変わってきます。投資初心者の方や、リスクを抑えながら資産形成をしたい方は、まずつみたて投資枠から始めるのがおすすめです。

投資経験がある方や、個別株に興味がある方は、成長投資枠を積極的に活用しましょう。また、投資資金に余裕がある方は、両方の枠を併用することで、年間360万円の非課税投資枠を最大限活用できます。

重要なのは、無理に非課税枠を使い切る必要はないということです。自分の資産状況に見合った金額で、目的に合わせて活用することが、長期的な資産形成の成功につながります。

NISAを始める3つのステップ|口座開設から運用まで

NISAを始めるには、証券会社を選び、口座を開設し、投資する商品を選ぶという3つのステップが必要です。ここでは、それぞれのステップを詳しく解説します。

STEP1:証券会社を選ぶ

NISA口座は、証券会社や銀行などの金融機関で開設できます。金融機関によって、取扱商品の種類、手数料、サービス内容が異なるため、自分に合った金融機関を選ぶことが大切です。

証券会社選びの4つのポイント

1. 取扱商品の豊富さ

2. 手数料の安さ

3. ポイントサービス

4. 使いやすさとサポート体制

1つ目は、取扱商品の豊富さです。投資信託の本数が多いほど、自分に合った商品を見つけやすくなります。特につみたて投資枠では、金融庁の基準を満たした投資信託の中から選ぶことになるため、取扱本数が多い証券会社がおすすめです。

2つ目は、手数料の安さです。多くのネット証券では、NISA口座での株式売買手数料が無料になっています。また、投資信託の購入時手数料も無料(ノーロード)の商品が増えています。長期投資では手数料の差が大きな影響を与えるため、手数料が安い証券会社を選びましょう。

3つ目は、ポイントサービスです。一部の証券会社では、投資信託の保有残高に応じてポイントが貯まったり、クレジットカードで積立投資をするとポイントが付与されたりするサービスがあります。これらのポイントは、投資に再利用したり、日常の買い物に使ったりできるため、実質的なリターンの向上につながります。

4つ目は、使いやすさとサポート体制です。スマートフォンアプリの使いやすさ、投資情報の充実度、カスタマーサポートの質なども重要なポイントです。特に投資初心者の方は、サポート体制が充実している証券会社を選ぶと安心です。

STEP2:NISA口座を開設する

証券会社を選んだら、NISA口座を開設します。まだ証券総合口座を持っていない場合は、証券総合口座とNISA口座を同時に申し込むことができます。すでに証券総合口座を持っている場合は、NISA口座のみを申し込みます。

1. 証券会社の公式サイトから申し込み
2. 申込フォームに必要事項を入力
3. 本人確認書類とマイナンバー確認書類を提出
4. 審査完了後、口座開設完了

まず、証券会社の公式サイトから口座開設を申し込みます。多くの証券会社では、オンラインで手続きが完結します。本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)とマイナンバー確認書類を準備しましょう。

次に、申込フォームに必要事項を入力します。氏名、住所、生年月日、職業などの基本情報と、投資経験や投資目的などを入力します。NISA口座の開設も希望する場合は、該当欄にチェックを入れます。

本人確認書類とマイナンバー確認書類を提出します。スマートフォンで撮影してアップロードする方法が一般的です。一部の証券会社では、マイナンバーカードを使ったオンライン本人確認に対応しており、この場合は最短即日で口座開設が完了します。

証券会社による審査が完了すると、NISA口座が開設されます。税務署での確認が必要なため、通常は申込から1〜2週間程度かかります。口座開設が完了すると、メールや郵送で通知が届きます。

STEP3:投資する商品を選んで買う

NISA口座が開設されたら、いよいよ投資を始めます。つみたて投資枠と成長投資枠のどちらを使うか、どの商品に投資するかを決めましょう。

つみたて投資枠で投資する場合

つみたて投資枠では、投資信託を選び、毎月の積立金額を設定します。投資信託は、運用方針や投資対象によってさまざまな種類があります。投資初心者の方は、国内外の株式や債券に幅広く分散投資するバランス型ファンドや、日経平均株価やS&P500などの指数に連動するインデックスファンドから始めるのがおすすめです。

積立金額は、月々100円から設定できる証券会社が多くあります。無理のない金額から始めて、慣れてきたら徐々に増額していくとよいでしょう。一度設定すれば、毎月自動的に買付が行われるため、手間がかかりません。

成長投資枠で投資する場合

成長投資枠では、投資信託だけでなく、個別株にも投資できます。投資信託を選ぶ場合は、つみたて投資枠の対象商品に加えて、より幅広い商品から選べます。個別株を選ぶ場合は、企業の業績や将来性を調べて、応援したい企業を選びましょう。

成長投資枠では、積立投資も一括投資も可能です。積立投資を設定すれば、つみたて投資枠と同じように毎月自動的に買付が行われます。一括投資をする場合は、好きなタイミングで注文を出します。

投資を始める前に、各商品の目論見書や企業情報をよく確認しましょう。リスクやコストを理解した上で、自分の投資目的やリスク許容度に合った商品を選ぶことが大切です。

年代別|NISAのおすすめ活用法

NISAの活用法は、年代やライフステージによって変わってきます。ここでは、年代別におすすめの活用法を紹介します。自分の状況に合わせて、参考にしてください。

20代|時間を味方につけた長期投資
投資期間を長く取れることが最大の強みです。複利効果を最大限に活かせます。
30代|ライフイベントと資産形成の両立
結婚・出産・住宅購入など大きなイベントに備えながら、老後資金の準備も開始。
40代|教育費と老後資金の計画的準備
教育費がピークを迎える時期。老後資金の準備も本格化させる必要があります。
50代以上|退職金を活用した効率運用
退職金の一部を活用し、非課税枠を最大限活用した運用を検討。

20代|少額から長期投資を始める

20代は、投資期間を長く取れることが最大の強みです。時間を味方につけることで、複利効果を最大限に活かすことができます。まずは少額から始めて、投資に慣れることを優先しましょう。

つみたて投資枠で、月々1万円〜3万円程度の積立投資から始めるのがおすすめです。たとえば、月3万円を30年間、年平均5%で運用できた場合、投資元本1,080万円が約2,497万円になります。時間をかけることで、大きな資産を築くことができるのです。

20代のうちは、収入が少なく貯蓄に回せる金額も限られているかもしれません。しかし、少額でも早く始めることが重要です。給料が上がったタイミングで、積立金額を増やしていきましょう。また、ボーナスが出たときには、成長投資枠を使って追加投資をするのも効果的です。

30代|家族のライフイベントに備える

30代は、結婚や出産、マイホームの購入など、大きなライフイベントが重なる時期です。これらのイベントに備えながら、老後資金の準備も始める必要があります。

つみたて投資枠で、月々3万円〜5万円程度の積立投資を継続しましょう。教育資金や住宅購入の頭金など、近い将来に使う予定のあるお金は、NISAではなく預貯金で準備することをおすすめします。NISAは、10年以上先に使う予定のお金を運用するのに適しています。

子どもの教育資金を準備したい場合は、子どもが大学に入学する18年後を目標に、積立投資を続けるとよいでしょう。また、余裕資金があれば、成長投資枠を使って個別株に投資し、配当金や株主優待を楽しむのもおすすめです。

40代|教育資金と老後資金を両立

40代は、子どもの教育費がピークを迎える一方で、老後資金の準備も本格化させる必要がある時期です。両方のバランスを取りながら、計画的に資産形成を進めましょう。

つみたて投資枠で、月々5万円〜10万円程度の積立投資を目指しましょう。40代から始めても、60歳までに20年間あります。月5万円を20年間、年平均5%で運用できた場合、投資元本1,200万円が約2,055万円になります。

教育費の支出が終わったタイミングで、積立金額を大幅に増やすことができれば、老後資金の準備を加速させることができます。また、退職金の一部をNISAで運用することも検討しましょう。成長投資枠を使えば、まとまった金額を一括で投資することも可能です。

50代以上|退職金を活用した運用

50代以上は、退職が近づき、退職金を受け取るタイミングも見えてきます。退職金の一部をNISAで運用することで、老後の生活資金を効率的に準備できます。

つみたて投資枠と成長投資枠を併用して、年間360万円の非課税投資枠を最大限活用しましょう。たとえば、つみたて投資枠で月10万円(年間120万円)、成長投資枠で年間240万円を投資すれば、5年間で1,800万円の非課税保有限度額に到達します。

退職金を一括で投資する場合は、一度にすべてを投資するのではなく、数年に分けて投資するのがおすすめです。市場の変動リスクを抑えながら、非課税枠を効率的に活用できます。また、60歳以降も働き続ける場合は、給与収入から積立投資を継続することもできます。

50代以上の方は、投資期間が短くなるため、リスクを抑えた運用を心がけましょう。株式100%のファンドではなく、債券を組み入れたバランス型ファンドを選ぶなど、安定性を重視した商品選びが大切です。

NISAで気をつけたい5つのこと

NISAは非課税というメリットがある一方で、いくつかの注意点もあります。ここでは、NISA口座を使う上で知っておくべき5つの注意点を解説します。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

元本割れのリスクがある

NISAは非課税という税制優遇がありますが、投資である以上、元本割れのリスクがあります。投資信託や株式の価格は、市場の状況によって変動します。購入した価格よりも下がることもあり、その場合は損失が発生します。

特に短期間で大きなリターンを期待して投資をすると、市場の変動に一喜一憂してしまい、損失が出たときに慌てて売却してしまうことがあります。NISAは長期投資を前提とした制度ですので、短期的な価格変動に惑わされず、長期的な視点で保有し続けることが大切です。

損益通算ができない

NISA口座での投資は、損益通算ができません。損益通算とは、投資で利益が出た場合に、他の投資で生じた損失と相殺することで、課税対象となる利益を小さくする仕組みです。

通常の課税口座(特定口座や一般口座)では、複数の取引で損失と利益を相殺できますが、NISA口座での損失は、他の口座の利益と相殺することができません。また、NISA口座での損失は、翌年以降に繰り越すこともできません。

このため、NISA口座では、損失を出さないことが重要です。長期的に成長が期待できる商品を選び、じっくりと保有し続けることで、このリスクを軽減できます。

年間投資枠の再利用に注意

新NISAでは、売却した分の非課税保有限度額を翌年以降に再利用できるようになりました。ただし、年間投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)は、その年に使い切ったら、翌年まで復活しません。

たとえば、1月に成長投資枠で240万円分の株式を購入し、6月にすべて売却したとします。この場合、売却した240万円分の非課税保有限度額は翌年以降に復活しますが、その年の成長投資枠はもう使えません。短期的な売買を繰り返すと、年間投資枠をすぐに使い切ってしまう可能性があるため、注意が必要です。

金融機関は1人1口座まで

NISA口座は、1人につき1口座しか開設できません。複数の金融機関で同時にNISA口座を持つことはできません。つみたて投資枠と成長投資枠で別々の金融機関を選ぶこともできません。

金融機関を変更することは可能ですが、変更を希望する年の9月末までに手続きを完了する必要があります。また、その年にすでに金融商品を購入していた場合、変更できるのは翌年の投資分からです。

金融機関を選ぶ際は、取扱商品、手数料、サービス内容をよく比較して、長く使い続けられる金融機関を選ぶことが大切です。

短期売買には向いていない

NISAは、長期的な資産形成を目的とした制度です。短期的な売買を繰り返すと、年間投資枠をすぐに使い切ってしまい、非課税メリットを十分に活かせません。また、売買のたびに取引コストがかかるため、リターンが減少してしまいます。

NISAを活用する際は、10年以上の長期保有を前提に、じっくりと資産を育てる姿勢が大切です。短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けましょう。

NISAとiDeCoを比較|どちらを選ぶべき?

NISAと並んで、税制優遇がある制度としてiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。どちらも資産形成に有効な制度ですが、それぞれ特徴が異なります。ここでは、NISAとiDeCoの違いと、どちらを選ぶべきかを解説します。

NISAとiDeCoの違い

項目 NISA iDeCo
目的 資産形成全般 老後資金の準備
年間投資枠 つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円 月額1.2万円〜6.8万円(職業により異なる)
非課税保有限度額 1,800万円 なし
税制優遇 運用益が非課税 掛金が全額所得控除、運用益が非課税、受取時に控除あり
引き出し いつでも可能 原則60歳まで不可
投資対象 投資信託、株式、ETFなど 投資信託、定期預金、保険
手数料 金融機関による(多くは無料) 加入時・運用時・受取時に手数料

最も大きな違いは、iDeCoは掛金が全額所得控除の対象になることです。たとえば、年収500万円の会社員が月2万円(年間24万円)をiDeCoに拠出した場合、所得税と住民税を合わせて年間約4.8万円の税金が軽減されます。これは、NISAにはないメリットです。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

一方、iDeCoは原則60歳まで引き出せないという制約があります。NISAはいつでも売却して現金化できるため、教育資金や住宅購入資金など、老後以外の目的にも使えます。

NISAが向いている人

NISAがおすすめの人

老後資金だけでなく、さまざまな目的で資産形成をしたい方

個別株に投資したい方

まとまった金額を一括で投資したい方

NISAは、以下のような方に向いています。まず、老後資金だけでなく、教育資金や住宅購入資金など、さまざまな目的で資産形成をしたい方です。NISAはいつでも引き出せるため、柔軟に使えます。

次に、個別株に投資したい方です。iDeCoでは個別株に投資できませんが、NISAの成長投資枠では個別株に投資できます。応援したい企業の株式を保有したい方や、配当金や株主優待を楽しみたい方に適しています。

また、まとまった金額を一括で投資したい方にも向いています。NISAの成長投資枠では、年間240万円まで一括投資が可能です。退職金やボーナスなど、まとまった資金を運用したい場合に便利です。

iDeCoが向いている人

iDeCoがおすすめの人

所得税・住民税の負担を軽減したい方

老後資金の準備に専念したい方

自己管理が苦手な方

iDeCoは、以下のような方に向いています。まず、所得税・住民税の負担を軽減したい方です。iDeCoの掛金は全額所得控除の対象になるため、税金の還付を受けられます。所得が高い方ほど、節税効果が大きくなります。

次に、老後資金の準備に専念したい方です。iDeCoは60歳まで引き出せないため、確実に老後資金を準備できます。途中で使ってしまう心配がないため、計画的に資産を積み立てられます。

また、自己管理が苦手な方にも向いています。iDeCoは強制的に積み立てが続くため、自分で貯蓄するのが苦手な方でも、着実に資産を形成できます。

理想的なのは、NISAとiDeCoの両方を活用することです。iDeCoで老後資金を準備しながら、NISAで教育資金や住宅購入資金を準備するなど、目的に応じて使い分けることで、より効率的な資産形成が可能になります。ただし、両方を活用する場合は、毎月の拠出額が無理のない範囲になるよう、計画的に進めましょう。

よくある質問

よくある質問
NISAはいくらから始められる?

NISAは、金融機関によって異なりますが、月々100円から始められます。多くのネット証券では、投資信託の積立投資を100円から設定できるため、投資初心者の方でも気軽に始められます。まずは少額から始めて、慣れてきたら徐々に金額を増やしていくのがおすすめです。

旧NISAの資産はどうなる?

2023年までに旧NISA(一般NISAやつみたてNISA)で購入した資産は、新NISAとは別枠で非課税期間が終了するまで保有し続けることができます。一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間の非課税期間が適用されます。ただし、旧NISAから新NISAへのロールオーバー(移管)はできません。非課税期間が終了したら、課税口座に移管するか、売却するかを選択します。

途中で売却してもいい?

NISA口座で保有している金融商品は、いつでも売却できます。売却した分の非課税保有限度額は、翌年以降に復活するため、再度投資することが可能です。ただし、年間投資枠は復活しないため、短期的な売買を繰り返すと、年間投資枠をすぐに使い切ってしまう可能性があります。長期保有を前提に投資することをおすすめします。

証券会社は途中で変更できる?

NISA口座を開設している金融機関は、年単位で変更できます。変更を希望する年の9月末までに、現在の金融機関で変更手続きを行います。ただし、その年にすでに金融商品を購入していた場合、変更できるのは翌年の投資分からです。また、変更前の金融機関で保有している資産は、変更後の金融機関に移管できません。そのまま変更前の金融機関で保有し続けることになります。

確定申告は必要?

NISA口座で得た利益は非課税のため、確定申告は不要です。ただし、NISA口座以外の課税口座(特定口座や一般口座)で取引をしている場合は、その分については確定申告が必要になる場合があります。特定口座(源泉徴収あり)を選択していれば、証券会社が自動的に税金を源泉徴収してくれるため、確定申告は不要です。

海外に住んでいても使える?

NISA口座を開設できるのは、日本に住所がある居住者のみです。海外転勤などで非居住者となる場合、出国時にNISA口座は廃止されます。NISA口座で保有している資産は、課税口座(特定口座または一般口座)に移管されます。帰国後、再度居住者となった場合は、改めてNISA口座を開設できます。

未成年でも始められる?

NISAを利用できるのは、口座を開設する年の1月1日時点で18歳以上の方です。未成年の方は、NISA口座を開設できません。なお、2023年までは未成年向けのジュニアNISAがありましたが、2023年12月末で新規投資が終了しました。

複数の証券会社で口座を持てる?

NISA口座は、1人につき1口座しか開設できません。複数の証券会社で同時にNISA口座を持つことはできません。ただし、年単位で金融機関を変更することは可能です。変更した場合、複数の金融機関にNISA口座が存在することになりますが、その年に買付ができるのは1つの金融機関のみです。

まとめ

NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度で、長期的な資産形成に非常に有効です。2024年から始まった新NISAでは、非課税保有限度額が1,800万円に拡大され、非課税期間も無期限になりました。つみたて投資枠と成長投資枠を併用できるようになったことで、自分の投資スタイルに合わせた柔軟な運用が可能になっています。

NISAを始めるには、まず証券会社を選び、NISA口座を開設します。取扱商品、手数料、サービス内容を比較して、自分に合った証券会社を選びましょう。口座開設後は、つみたて投資枠で投資信託を積み立てたり、成長投資枠で個別株に投資したりできます。投資初心者の方は、少額から始めて、徐々に金額を増やしていくのがおすすめです。

年代やライフステージに応じて、NISAの活用法は変わってきます。20代は少額から長期投資を始め、30代は家族のライフイベントに備えながら資産形成を続け、40代は教育資金と老後資金を両立させ、50代以上は退職金を活用した運用を検討しましょう。自分の状況に合わせて、計画的に資産形成を進めることが大切です。

NISAには元本割れのリスクや損益通算ができないなどの注意点もあります。これらを理解した上で、長期的な視点で投資を続けることが成功のカギです。また、NISAとiDeCoを併用することで、より効率的な資産形成が可能になります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選びましょう。

投資には元本割れのリスクがあります。ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。最新の制度内容や詳細については、金融庁や各証券会社の公式サイトでご確認ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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