株式会社が支払う税金の種類|個人事業主との違い・節税対策・遅延や滞納で生じる罰則について解説

法人と個人事業主では納税すべき税金の種類に大きな違いがあります。

法人が納める基本的な税金には、法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税、そして消費税があります。

法人は、個人事業主に比べて計上可能な経費の認識範囲が広いため、所得に応じて法人の方が大きな節税額を得られる場合があります。

一般的には、控除額などにより異なりますが、事業所得が800万円以上になったタイミングで、法人化を検討することが推奨されています。

この記事では、法人設立時にかかる税金、株式会社が支払う税金の種類、節税対策方法などを中心に解説していきます。

法人と個人事業主の支払う税金の違い

法人と個人事業主は、納める税金の種類が異なります。税金は一般的に国税と地方税に分かれます。

法人は経費計上範囲が広く、個人事業主よりも節税がしやすいという特徴があります。

個人事業主の所得税は所得に応じた累進課税制度を導入しているため、高い所得になれば税率も比例して高くなります。ひるがえって、法人は、800万円を超える所得に対して法人税率は23.2%に留まります。(※資本金1億円以下)

一般的に、事業所得が800万円以上になると法人化が節税に有利とされていますが、役員報酬の設定により追加の負担が発生する場合もあるため、慎重に検討する必要があります。

法人設立時にかかる税金

株式会社の設立においても費用はかかります、登録免許税だけでなく定款にかかる収入印紙、謄本手数料、認証手数料でおおよそ20万円前後になります

登録免許税は、登記を行う際に支払う税金であり、不動産の売買や会社設立など様々な場面で税金の支払いを要求されます。

また、資本金額によって、認証手数料が30,000円から50,000円の範囲で変動したり、電子定款にすることで収入印紙代の4万円を免除されます。

以下、簡単にまとめていきます。

費用の種類内容
登録免許税資本金額 × 0.7% または 150,000円(どちらか高い方)
定款用の収入印紙代40,000円(※電子定款の場合、不要)
定款の謄本手数料約2,000円(※1ページあたり250円)
定款の認証手数料資本金100万円未満:30,000円
資本金100万円以上300万円未満:40,000円
資本金300万円以上:50,000円

株式会社が支払う税金の種類

株式会社が支払う税金の種類について説明します。
・法人税
・法人住民税
・地方法人税
・法人事業税
・特別法人事業税
・消費税
・事業所税
・印紙税
・源泉所得税
・自動車税・自動車重量税
・固定資産税

法人税

法人の事業活動によって生じた所得に課せられる税金のことで、これは国税に分類されます。この法人税は、個人事業主の所得税に相当します。

課税額は「課税所得×法人税率-控除額」で計算され、課税所得は収益から経費を引いた額のことを指します。

通常の法人税率は23.2%ですが、資本金1億円以下で年800万円以下の所得金額の中小法人に対しては、軽減税率が適用されて税率が15%に引き下げられます。

一方、個人事業主の場合、課税対象となる所得が695万円から899万9,000円の場合、所得税率は23%であり、所得が900万円を超えると法人に比べて税率が高くなります

課税対象となる所得金額税率控除額
1,000円〜194万9,000円5%0円
195万円〜329万9,000円10%9万7,500円
330万円〜694万9,000円20%42万7,500円
695万円〜899万9,000円23%63万6,000円
900万円〜1,799万9,000円33%153万6,000円
1800万円〜3,999万9,000円40%279万6,000円
4000万円〜45%479万6,000円
参照:所得税の税率(国税庁)

また、法人税の納税期限は、通常、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。税理士をつけていたら支払いを忘れることはないと思いますが、法人税を納税しないと明らかな脱税になるので事業年度が終わる前から準備を始め、早めに納めるようにしましょう。

法人住民税

法人住民税は、会社がある住所の都道府県・市町村に対して納める地方税であり、主に行政サービスの費用に充てられます。

法人住民税は、法人税割と均等割から構成されており、法人税割は法人税額に応じて決定し、自治体によって税率が異なります。赤字の場合は支払い不要です。

均等割の場合、法人の黒字または赤字に関わらず、資本金額と従業員数に応じて定額で課されます。

支払額は地域によって異なりますが、一般的には資本金1,000万円以下で従業員が50人以下の法人は、約7万円程度の支払いが求められます。

税率や均等割の詳細が不明な場合は、自治体に問い合わせるか、自治体のホームページで確認するとよいでしょう。

また、法人住民税の納付期限は、法人税と同じく、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。

地方法人税

地方法人税は、法人税と同様に、所得に対して課される国税です。

地域の税収の偏りを緩和し、地方交付税の財源として使われるため、地方税と呼ばれますが、実際は国税です。

税率は10.3%で、法人税額に乗じて計算されます。納付期限は法人税と同じく、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。

法人事業税

地方事業税は、事業を営む都道府県において課される地方税であり、公共サービスや施設の費用を一部負担することを目的としています。

法人の所得が赤字の場合は免除されますが、資本金が1億円を超える会社は免除されません。

資本金が1億円を超える会社は、法人税の所得割だけでなく、所得の有無に関係なく「資本割」と「付加価値割」が課されます。

税額は、所得に法人事業税率を乗じて計算されます

法人事業税率は、法人の種類・課税所得・事業開始年度によって違いがあり、税率は、各都道府県によっても異なるため、自治体に確認する必要があります。

法人事業税の納付期限は、法人税と同じく、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。また、法人事業税は他の法人税とは違い、翌年の経費として計上することもできます。

特別法人事業税

特別法人事業税は、2019年度の税制改正時に採用された税金です。これは、地方法人特別税が廃止され、代わりに導入された税金であり、自治体の財政格差を緩和する目的で、法人事業税の一部を分けて制度化されました。

特別法人事業税は、法人事業税に特別法人事業税率を乗じて計算されます。税率は、法人の種類によって異なり、資本金が1億円以下の普通法人に対して、37%の税率が課せられます。

消費税

消費税は、商品やサービスを消費した消費者にかかる税金であり、その納付は消費税を受け取った事業者が行います。これは間接税であり、納税者と消費者が異なります。

納税の義務は、2年前の売上高が1,000万円を超えた場合など、特定の条件を満たした場合に生じます

ただし、2023年10月に導入されたインボイス制度に伴い、適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、課税事業者と見なされるため、設立2期以内でも免除されませんので注意が必要です。

会社が支払う消費税は、「消費者から受け取った消費税 ー 外部への支払い経費に関連する消費税」の計算で求められます。

消費税の納付期限は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。

前事業年度の消費税額が48万円を超えると、中間申告が必要となります。中間申告の回数や納付額は、金額に応じて定められ、納付期限は対象期間の終了日から2ヶ月以内です。

事業所税

事業所税は人口30万人以上の都市やそれに準ずる地域において、都市環境の整備や改善のために課される税金であり、所得に基づくのではなく、事業所の規模や従業員数によって課税されます

納付する税金は、「資産割+従業者割」の計算で求めることができます。

資産割は、事業所の合計床面積が1000㎡を超える場合に適用され、1㎡につき年額600円で計算されます。

従業者割は、合計従業者数が100名を超える場合に適用され、従業者給与総額の0.25%で計算されます。

また、納付時期は、法人税と同じく、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内とされています。

印紙税

印紙税は、特定の文書を作成する者に課税される税金であり、契約書や領収書、約束手形などがその代表的な対象です。

一部の文書は非課税とされており、例えば5万円未満の領収書や契約書は印紙税が免除されます。

また、クレジットカードで支払った場合の領収書や電子文書で発行した領収書なども非課税となることがあります。

したがって、ペーパーレス化が進む近年において、文書を作成する際には事前に非課税の条件を確認することが大切です。

印紙税となる文書については、国税庁で公表されているこちら(印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで)で確認することができます。

源泉所得税

社員の給与から差し引かれた源泉徴収所得税・住民税は、企業が代わりに納付する税金の1つです。

企業は、毎月の給与から差し引いた所得税を「源泉徴収」として税務署に支払います

源泉徴収される所得税は、「課税所得×税率-税額控除額」の計算式に基づいて算出されます。

納付は原則として毎月の給与支払い後の翌月の10日までに行われますが、源泉所得税の納期の特例の対象である場合は、年に2回(6ヶ月ごと)のペースでの納付が行われます。

毎月の徴収額が確定していないため、年間の収入が確定した後、年末調整が行われます。

自動車税・自動車重量税

自動車重量税は、会社が所有する自動車に対して重量や車種、経過年数などに応じて課税される国税のことです。

普通乗用車や軽自動車など、所有者が車検時に自賠責保険や印紙代とともに支払います。

支払いは、車検証の有効期間分をまとめて行われることが一般的です。

車検は普通乗用車や軽自動車において、新車登録後3年目に初回の検査が行われます。初回の支払いは3年分の車検料になります。

その後、車検は2年ごとに行われ、2年分ずつ支払います。自動車重量税は、自動車の種類や用途、総排気量によって決まり、年間の自動車税がそれに基づいて計算されます。

固定資産税

固定資産税は、企業が所有する土地、建物、または機械などの固定資産に課される税金です。

毎年1月1日に資産の価値が決められ、その評価額に基づいて税率が適用されます。計算された税額は各市町村から納税通知として送付され、納付書を用いて支払います。

通常、納付は年4回(6月、9月、12月、2月)に分けて行われますが、納税者の希望により一括での支払いも可能です。

納税通知は年に一度送付されるため、納付期限を忘れずに確認するようにしましょう。

節税対策方法

法人税は収益・所得が増加すると税金額も増加し、企業経営に負担をかけることがあります。

前年度の利益が高い場合、今年の利益が低いと税金の負担も大きくなります。

法を遵守しつつも、税金を節約するためには課税対象となる所得を減らすことが極めて重要です。

具体的な節税方法として、赤字の繰り越しや未払いの費用の正確な計上、役員報酬の経費計上、不要な在庫の処分などが挙げられます。

赤字があった場合、法人はその欠損金を最大10年間、黒字になった年の所得と相殺できます。

また、未払いの費用を適切に計上することで税金を節約できます。さらに、役員報酬を経費として計上したり、不要な在庫を処分することで効果的な節税が可能です。

納税遅延や申告の怠慢によって生じる罰則

納税遅延や申告の怠慢によって生じる罰則について説明します。
・延滞税が課される
・加算税が追加課税される
・青色申告の取り消し

延滞税が課される

税金の納付期限を過ぎると延滞税が課され、その税率は期限を過ぎてから2ヶ月以内と2ヶ月以上経過した場合で異なります。

期限を過ぎてから2ヶ月以内の場合は年7.3%もしくは延滞税特例基準割合に1%を加えた額が課され、期限を過ぎてから2ヶ月以上経過した場合は年14.6%もしくは延滞税特例基準割合に7.3%を加えた額が課されます

税金の支払いを数ヶ月遅らせただけで、支払額が大幅に増加してしまうことがあります。

法人の税金は元々高額なため、納付期限を守って延滞税を支払うことがないようにしましょう。

加算税が追加課税される

法人税の納付期限を過ぎると延滞税が課されますが、適切な確定申告や決算報告を行わない場合、さらに加算税が追加されます。

加算税には過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税があります。これらは納めるべき税金を適切に申告しなかった場合に課されます。

納税の延滞による加算税は、個人事業主でも同様のリスクがあるため、税務手続きは税理士など専門家に相談のうえ、早めに対応するようにしましょう。

青色申告の取り消し

2期連続で申告期限を過ぎると、会社の青色申告が取り消されます。取り消された場合、1年間は再申請ができず、青色申告による節税対策が利用できなくなります。

具体的な不利益として、欠損金の繰越控除や還付、少額減価償却資産の特例、特別償却、特別控除などの税制優遇措置が失われます

さらに、融資の信用面にも影響を及ぼす可能性があります。

青色申告が取り消されることは会社経営に大きな影響を与えるため、期限内に申告を行うようにしましょう。

まとめ

ここまで、法人設立時にかかる税金、株式会社が支払う税金の種類、節税対策方法などを中心に解説してきました。

本記事が、これから株式会社の設立を検討している方々にとってご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

著 者

SOICO株式会社
共同創業者&代表取締役CEO
茅原 淳一 (かやはら じゅんいち)

慶應義塾大学卒業後、新日本有限責任監査法人にて監査業務に従事。 その後クレディスイス証券株式会社を経て2012年KLab株式会社入社。 KLabでは海外子会社の取締役等を歴任。2016年上場会社として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。 2015年医療系ベンチャーの取締役財務責任者に就任。 2018年よりSOICO株式会社の代表取締役CEOに就任。公認会計士。

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