米国株式配当貴族とは|25年連続増配の魅力と始め方

米国株式配当貴族とは|25年連続増配の魅力と始め方

「米国株に投資したいけど、どの銘柄を選べばいいか分からない」と悩んでいませんか。

米国株式配当貴族は、25年以上連続で増配を続けている優良企業で構成される指数で、安定した配当収入と長期的な資産成長を両立できる投資先として注目されています。

この記事では、配当貴族の仕組みやメリット・デメリット、具体的な投資方法まで初心者にも分かりやすく解説します。配当貴族への投資を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事の要約
  • 配当貴族は25年以上連続増配の優良企業で構成される指数
  • S&P500を上回るパフォーマンスと不況時の安定性が魅力
  • 投資信託・ETF・個別株の3つの方法で投資可能
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

米国株式配当貴族とは|25年以上連続増配の優良企業

米国株式配当貴族は、長期にわたって安定した配当を提供し続ける優良企業の集まりです。この指数に採用されるには厳しい条件をクリアする必要があり、投資家にとって信頼性の高い投資先として知られています。

S&P500配当貴族指数の定義

S&P500配当貴族指数は、S&P Dow Jones Indicesが算出・公表している株価指数です。S&P500構成銘柄の中から、25年以上連続で配当を増やし続けている企業のみを選定しています。

S&P Dow Jones Indices:S&P 500 Dividend Aristocrats

この指数は単なる高配当株の集まりではなく、長期的な業績の安定性と株主還元への強いコミットメントを示す企業で構成されています。25年という期間には、リーマンショックやITバブル崩壊など複数の経済危機が含まれており、それらを乗り越えて増配を続けてきた実績は企業の底力を証明しています。

配当貴族指数は1989年に設定され、長期投資家にとって重要なベンチマークとして活用されています。構成銘柄は年1回見直しが行われ、条件を満たさなくなった企業は除外され、新たに条件を満たした企業が追加されます。

採用条件は4つ

S&P500配当貴族指数への採用には、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

配当貴族の採用条件

1. S&P500指数の構成銘柄であること

2. 25年以上連続で配当を増やし続けていること

3. 1日の平均売買代金が300万ドル以上であること

4. 時価総額が30億ドル以上であること

1つ目は、S&P500指数の構成銘柄であることです。これにより、一定以上の時価総額と流動性を持つ大型株に限定されます。S&P500自体が米国を代表する500社で構成されているため、配当貴族はその中でもさらに厳選された企業群と言えます。

2つ目は、25年以上連続で配当を増やし続けていることです。この条件が最も重要で、配当貴族の名前の由来にもなっています。単に配当を維持するだけでなく、毎年増配している必要があるため、継続的な利益成長が求められます。

3つ目は、1日の平均売買代金が300万ドル以上であることです。これにより、十分な流動性が確保され、機関投資家も安心して投資できる銘柄に限定されます。流動性が高いと、必要なときにスムーズに売買できるメリットがあります。

4つ目は、時価総額が30億ドル以上であることです。一定規模以上の企業に限定することで、安定性と信頼性を担保しています。これらの条件により、配当貴族は約60〜70銘柄程度に絞り込まれています。

配当貴族と配当王の違い

配当貴族と似た概念に「配当王(Dividend Kings)」があります。配当王は50年以上連続で増配を続けている企業を指し、配当貴族よりもさらに厳しい基準です。

配当王に該当する企業は約30〜40社程度と、配当貴族よりも少なくなります。代表的な配当王には、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やコカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどがあり、これらは配当貴族にも含まれています。

配当貴族と配当王の主な違いは、連続増配年数の長さです。配当王の方がより長期間の実績を持つため、さらに安定性が高いと言えますが、銘柄数が限られるため分散投資の観点では配当貴族の方が優れています。

また、配当貴族はS&P500構成銘柄に限定されていますが、配当王にはその制限がありません。投資信託やETFで投資する場合、配当貴族を対象とした商品の方が圧倒的に多く、選択肢が豊富です。

配当貴族の5つの魅力|安定配当と成長性を両立

配当貴族への投資には、長期的な資産形成において重要な5つのメリットがあります。安定性と成長性を兼ね備えた特徴を持っており、初心者から経験豊富な投資家まで幅広く支持されています。

25年以上の増配実績がある

配当貴族の最大の魅力は、四半世紀以上にわたって増配を続けてきた実績です。この長期間には、リーマンショック(2008年)、ITバブル崩壊(2000年代初頭)、コロナショック(2020年)など、複数の経済危機が含まれています。

これらの困難な時期を乗り越えて増配を継続できたということは、企業の収益力の高さとビジネスモデルの強固さを証明しています。一時的な業績悪化があっても配当を維持・増額できる財務体質を持っており、株主還元への強いコミットメントがあることが分かります。

増配は企業の成長を示す重要な指標でもあります。配当を増やすには継続的な利益成長が必要であり、増配を続けている企業は将来的にも成長が期待できます。また、経営陣が株主価値を重視している姿勢の表れでもあり、長期投資家にとって安心できる要素です。

不況時にも強い安定性

配当貴族は、経済危機や市場の暴落時にも比較的安定したパフォーマンスを示す傾向があります。過去のデータを見ると、リーマンショック時やコロナショック時において、S&P500指数よりも下落率が小さかったことが確認されています。

この安定性の理由は、配当貴族の多くが生活必需品セクターやヘルスケアセクターなど、景気変動の影響を受けにくい業種に属しているためです。

食品、飲料、日用品、医薬品などは、不況時でも需要が大きく減少しません。また、長期間増配を続けてきた企業は、保守的な財務戦略を取っていることが多く、過度な借入や無理な事業拡大を避ける傾向があります。

これにより、経済危機時でも倒産リスクが低く、安定した経営を維持できます。ディフェンシブな投資先として、ポートフォリオのリスク分散に貢献します。

S&P500を上回るパフォーマンス

配当貴族指数は、長期的にS&P500指数を上回るパフォーマンスを示してきました。過去20年間のデータを見ると、配当貴族指数の年平均リターンはS&P500指数を約1〜2%上回っています。

このアウトパフォーマンスの要因は、配当再投資効果と銘柄選定の質の高さにあります。配当を受け取ってそのまま再投資することで、複利効果が働き、長期的なリターンが向上します。また、25年以上増配を続けられる企業は、優れたビジネスモデルと経営力を持っているため、株価上昇も期待できます。

特に、市場が低迷している時期には配当貴族の優位性が顕著に現れます。株価が下落しても配当収入があるため、トータルリターンの下落を抑えることができます。一方、市場が好調な時期にも、質の高い企業で構成されているため、十分な値上がり益を享受できます。

生活必需品セクターが多く分散が効いている

配当貴族は、複数のセクターに分散されており、特定の業種に偏っていません。生活必需品、ヘルスケア、資本財、金融など、さまざまな業種の優良企業が含まれています。

中でも生活必需品セクターの比率が高く、全体の約25〜30%を占めています。このセクターには、プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラ、ウォルマートなど、誰もが知る大企業が含まれています。生活必需品は景気変動の影響を受けにくく、安定した収益を生み出します。

資本財セクターも約20%程度を占めており、産業機械や建設資材などの企業が含まれます。また、ヘルスケアセクターには製薬会社や医療機器メーカーが含まれ、高齢化社会において長期的な成長が期待できます。

このように、異なる特性を持つセクターに分散されているため、特定の業種の不振がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。

配当再投資で複利効果が期待できる

配当貴族への投資では、受け取った配当を再投資することで複利効果を最大化できます。配当利回りは平均2〜3%程度ですが、これを再投資し続けることで、長期的には大きな資産形成につながります。

例えば、年率2.5%の配当を毎年再投資した場合、10年後には元本の約28%に相当する配当収入が累積します。20年後には約64%、30年後には約111%と、時間が経つほど複利効果が大きくなります。これに株価上昇分を加えると、トータルリターンはさらに高まります。

投資信託で配当貴族に投資する場合、多くの商品では配当が自動的に再投資される仕組みになっています。これにより、手間をかけずに複利効果を享受できます。

また、新NISAの成長投資枠を利用すれば、配当収入も非課税となるため、税金の負担なく効率的に資産を増やせます。配当再投資は、市場が下落している時期にも有効です。株価が安い時に配当で追加購入できるため、平均購入単価を下げることができます。

配当貴族で気をつけたい4つのこと

配当貴族への投資には多くのメリットがありますが、リスクやデメリットも存在します。投資判断を行う前に、以下の4つの注意点を理解しておくことが重要です。

元本割れのリスクがある

配当貴族への投資は、株式投資である以上、元本割れのリスクから逃れることはできません。25年以上増配を続けている優良企業であっても、株価が下落する可能性は常にあります。

特に、市場全体が大きく下落する局面では、配当貴族も影響を受けます。リーマンショック時には、配当貴族指数も約40%下落しました。S&P500指数よりは下落率が小さかったものの、大きな含み損を抱える可能性があることは認識しておく必要があります。

また、個別の企業が業績不振に陥った場合、その銘柄の株価は大きく下落します。配当貴族から除外される銘柄も年に数社発生しており、すべての構成銘柄が永続的に安定しているわけではありません。

為替変動の影響を受ける

米国株式配当貴族への投資は、為替変動の影響を大きく受けます。投資信託やETFは米ドル建てで運用されているため、円高になると円換算での評価額が目減りします。

例えば、1ドル=150円の時に投資して、1ドル=130円の円高になった場合、米ドルベースでは変わらなくても、円換算では約13%の損失が発生します。逆に円安になれば為替差益が得られますが、為替の動きを予測することは困難です。

為替リスクを軽減したい場合は、為替ヘッジ付きの投資信託を選ぶ選択肢もあります。ただし、為替ヘッジにはコストがかかるため、信託報酬が高くなる傾向があります。また、長期的には円安傾向が続く可能性もあり、為替ヘッジをすることで為替差益を逃す可能性もあります。

配当金に二重課税がかかる

米国株式の配当金には、米国と日本の二重課税が適用されます。まず米国で10%の源泉徴収が行われ、その後日本でも約20%の税金がかかります。実質的な税負担は約28%となり、配当利回りが目減りします。

例えば、配当利回りが3%の場合、二重課税後の実質利回りは約2.16%に低下します。高配当株と比較すると、この税負担の影響は無視できません。ただし、確定申告で外国税額控除を申請すれば、米国で徴収された税金の一部を取り戻すことができます。

外国税額控除の手続きは複雑で、すべての投資家が恩恵を受けられるわけではありません。所得税額が少ない場合は、控除できる金額も限られます。また、特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、確定申告をしないと外国税額控除を受けられません。

国税庁:外国税額控除

高配当株ではない

配当貴族は「増配」を重視した指数であり、必ずしも高い配当利回りを提供するわけではありません。平均配当利回りは2〜3%程度で、高配当株と呼ばれる4〜5%以上の利回りを持つ銘柄と比較すると低くなります。

配当貴族の企業は、配当だけでなく事業成長にも資金を投じているため、配当性向(利益のうち配当に回す割合)は比較的低めです。これは長期的な成長を重視する戦略であり、将来的な増配余地を残しています。

配当収入を重視する投資家にとっては、配当貴族の利回りは物足りないと感じるかもしれません。しかし、長期的には毎年の増配により、投資時の利回りは徐々に上昇していきます。10年、20年と保有し続けることで、当初の投資額に対する配当利回り(YOC: Yield on Cost)は大きく向上します。

配当貴族の構成銘柄|どんな企業が入っている?

配当貴族指数には、誰もが知る米国の優良企業が多数含まれています。具体的な構成銘柄を知ることで、この指数の特徴や安定性をより深く理解できます。

時価総額上位5社

配当貴族指数の時価総額上位5社は、以下のような企業で構成されています(2024年時点)。

時価総額上位5社の特徴

1位:エクソンモービル – 世界最大級の総合エネルギー企業(連続増配40年超)

2位:ジョンソン・エンド・ジョンソン – 医薬品・医療機器大手(連続増配60年超)

3位:プロクター・アンド・ギャンブル – 日用品グローバルリーダー(連続増配60年超)

4位:コカ・コーラ – 世界最大の飲料メーカー(連続増配60年超)

5位:ペプシコ – 飲料・スナック菓子大手(連続増配50年超)

1位はエクソンモービル(Exxon Mobil)です。世界最大級の総合エネルギー企業で、石油・天然ガスの探査から精製、販売まで一貫して手掛けています。連続増配年数は40年を超えており、配当王にも該当します。

2位はジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)です。医薬品、医療機器、ヘルスケア製品を扱う世界的企業で、連続増配年数は60年以上に達しています。バンドエイドやタイレノールなど、消費者向け製品も多く、景気変動の影響を受けにくい事業構造です。

3位はプロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)です。洗剤、シャンプー、紙おむつなど、日用品のグローバルリーダーで、連続増配年数は60年を超えています。世界中で使われるブランドを多数保有しており、安定した収益基盤を持っています。

業種別の構成比率

配当貴族指数は、複数のセクターにバランスよく分散されています。主なセクター別の構成比率は以下の通りです。

生活必需品セクター(約25〜30%)
食品、飲料、日用品、小売など景気変動に強い企業群
資本財セクター(約20%)
産業機械、建設資材、航空宇宙など経済成長に連動
ヘルスケアセクター(約15%)
製薬会社、医療機器メーカーなど高齢化社会で成長
金融セクター(約15%)
銀行、保険会社など金利環境の影響を受けやすい

生活必需品セクターが最も大きく、全体の約25〜30%を占めています。このセクターには、食品、飲料、日用品、小売などの企業が含まれます。景気変動の影響を受けにくく、安定した収益を生み出すことが特徴です。

その他、エネルギー、公益事業、情報技術、一般消費財などのセクターも含まれており、特定の業種に偏らないバランスの取れた構成となっています。

連続増配年数トップ5

配当貴族の中でも、特に長期間増配を続けている企業を紹介します。これらの企業は配当王にも該当し、驚異的な増配実績を持っています。

1位はアメリカン・ステイツ・ウォーター(American States Water)で、連続増配年数は約70年に達しています。カリフォルニア州を中心に水道事業を展開しており、規制産業として安定した収益を生み出しています。

2位はドーバー(Dover)で、連続増配年数は約68年です。産業機械や精密部品を製造する企業で、多様な事業ポートフォリオを持っています。

3位はノースウェスト・ナチュラル・ガス(Northwest Natural Gas)で、連続増配年数は約67年です。天然ガスの供給事業を行う公益企業で、安定した需要と規制による収益保護が増配を支えています。

これらの企業は、半世紀以上にわたって増配を続けており、その実績は企業の強固なビジネスモデルと経営力を証明しています。配当貴族に投資することで、こうした超優良企業に分散投資できることが大きな魅力です。

S&P500との比較|パフォーマンスの違いは?

配当貴族への投資を検討する際、S&P500指数との違いを理解することは重要です。両者のパフォーマンスを比較することで、配当貴族の特徴がより明確になります。

長期リターンの比較

過去20年間のデータを見ると、配当貴族指数はS&P500指数を上回るパフォーマンスを示してきました。年平均リターンでは、配当貴族指数が約10〜11%、S&P500指数が約9〜10%と、配当貴族が1〜2%程度上回っています。

この差は、配当再投資効果と銘柄選定の質の高さによるものです。配当貴族は配当利回りが2〜3%あり、これを再投資することで複利効果が働きます。また、25年以上増配を続けられる企業は、優れたビジネスモデルと経営力を持っているため、株価上昇も期待できます。

特に、2000年代初頭のITバブル崩壊後や、2008年のリーマンショック後の回復局面では、配当貴族のアウトパフォーマンスが顕著でした。市場が低迷している時期に配当収入があることで、トータルリターンの下落を抑えることができました。

暴落時の下落率の違い

配当貴族の大きな特徴は、市場暴落時の下落率がS&P500よりも小さい傾向があることです。過去の主要な暴落局面を見ると、この特性が明確に表れています。

リーマンショック(2008年)では、S&P500指数が約50%下落したのに対し、配当貴族指数の下落率は約40%でした。約10%ポイントの差があり、暴落時の損失を軽減できました。

コロナショック(2020年3月)でも同様の傾向が見られました。S&P500指数が約34%下落した一方、配当貴族指数の下落率は約30%でした。

この下落耐性は、長期投資家にとって重要なメリットです。暴落時に大きな損失を被ると、精神的な負担が大きく、狼狽売りをしてしまう可能性があります。配当貴族は下落率が比較的小さいため、冷静に保有を続けやすく、長期投資を継続しやすくなります。

配当利回りの比較

配当利回りについては、配当貴族指数がS&P500指数を上回っています。配当貴族の平均配当利回りは約2.5〜3%であるのに対し、S&P500指数の平均配当利回りは約1.5〜2%です。

この差は、配当貴族が配当重視の企業で構成されているためです。25年以上増配を続けている企業は、株主還元を重視する経営方針を持っており、配当性向も比較的高めです。

配当利回りの差は、インカム収入を重視する投資家にとって重要です。配当貴族は毎年安定した配当収入を提供するため、老後の生活資金や定期的なキャッシュフローを求める投資家に適しています。

配当貴族に投資する3つの方法

配当貴族への投資には、主に3つの方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、投資家の目的や経験に応じて選択することが重要です。

投資信託で投資する

投資信託は、配当貴族に投資する最も手軽な方法です。少額から始められ、自動的に分散投資ができるため、初心者にも適しています。日本の証券会社で購入できる投資信託が複数あり、つみたて投資にも対応しています。

投資信託のメリットは、専門家が運用を代行してくれることです。配当貴族指数に連動するように銘柄を選定し、リバランスも自動的に行われます。

また、100円や1,000円といった少額から投資できる点も大きな魅力です。まとまった資金がなくても、毎月少しずつ積み立てることで、長期的に資産を形成できます。新NISAのつみたて投資枠や成長投資枠を活用すれば、非課税で運用できるメリットもあります。

一方、投資信託には信託報酬というコストがかかります。配当貴族を対象とした投資信託の信託報酬は、年率0.3〜0.6%程度です。長期保有する場合、このコストが積み重なるため、信託報酬の低い商品を選ぶことが重要です。

ETF(NOBL)で投資する

配当貴族に投資するETF(上場投資信託)として、最も有名なのが「ProShares S&P 500 Dividend Aristocrats ETF」(ティッカー:NOBL)です。このETFは、S&P500配当貴族指数に連動するように設計されており、米国市場で取引されています。

NOBLのメリットは、信託報酬が年率0.35%と比較的低いことです。投資信託よりもコストを抑えられるため、長期保有する場合に有利です。また、株式と同じようにリアルタイムで売買できるため、市場の動きに応じて柔軟に取引できます。

さらに、NOBLは四半期ごとに配当を分配します。配当収入を定期的に受け取りたい投資家にとって、魅力的な選択肢です。配当利回りは約2.5〜3%程度で、安定したインカムゲインが期待できます。

一方、NOBLは米国市場で取引されるため、米ドルで購入する必要があります。為替手数料がかかるほか、為替変動のリスクも負います。

個別株で投資する

配当貴族の構成銘柄に直接投資する方法もあります。プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど、個別の銘柄を選んで購入することで、自分好みのポートフォリオを構築できます。

個別株投資のメリットは、銘柄選定の自由度が高いことです。特定の業種や企業に集中投資したり、配当利回りの高い銘柄を選んだりすることができます。また、信託報酬のようなコストがかからないため、長期的にはコスト面で有利です。

さらに、個別株は配当金を直接受け取れるため、インカムゲインを重視する投資家に適しています。四半期ごとに配当が支払われる米国株が多く、定期的なキャッシュフローを得られます。

一方、個別株投資にはリスクも伴います。特定の銘柄に集中投資すると、その企業の業績悪化や不祥事が発生した場合、大きな損失を被る可能性があります。分散投資を行うには、複数の銘柄を購入する必要があり、まとまった資金が必要です。

おすすめの投資信託5選|信託報酬と特徴を比較

配当貴族に投資できる投資信託の中から、特におすすめの5本を紹介します。信託報酬や特徴を比較して、自分に合った商品を選びましょう。

野村インデックスファンド・米国株式配当貴族

野村アセットマネジメントが運用する、配当貴族指数に連動するインデックスファンドです。信託報酬は年率0.55%(税込)で、配当貴族を対象とした投資信託の中では標準的な水準です。

この商品の特徴

大手運用会社の安心感

主要ネット証券で購入可能

新NISA成長投資枠対応

為替ヘッジはなしで、米ドルベースの資産価値がそのまま反映されます。円安になれば為替差益が得られますが、円高になると為替差損が発生します。長期的に円安傾向が続くと予想する投資家に適しています。

SMT米国株配当貴族インデックス・オープン

三井住友トラスト・アセットマネジメントが運用する、配当貴族指数に連動するインデックスファンドです。信託報酬は年率0.605%(税込)で、やや高めの設定です。

この商品の特徴は、三井住友信託銀行グループの運用会社が手掛けている点です。信頼性の高い運用会社として知られており、長期的な資産形成に適しています。決算は年1回で、分配金は原則として再投資されます。

米国株式配当貴族(年4回決算型)

年4回決算を行い、分配金を受け取れるタイプの投資信託です。運用会社や信託報酬は商品によって異なりますが、一般的に年率0.5〜0.7%程度です。

この商品の特徴は、四半期ごとに分配金を受け取れることです。定期的なインカムゲインを求める投資家に適しており、年金生活者や配当収入を生活費に充てたい方に向いています。

ただし、分配金を受け取ると複利効果が減少するため、長期的な資産形成を目指す場合は再投資型の方が有利です。

為替ヘッジあり型の選択肢

為替リスクを軽減したい投資家向けに、為替ヘッジありの投資信託も存在します。これらの商品は、米ドルと円の為替変動の影響を抑える仕組みを持っています。

為替ヘッジありの商品のメリットは、円高による損失を回避できることです。米ドルベースでのリターンがそのまま円建てのリターンに近い形で反映されます。為替変動を気にせず、配当貴族の株価パフォーマンスに集中できます。

一方、為替ヘッジにはコストがかかるため、信託報酬は為替ヘッジなし型よりも0.1〜0.3%程度高くなります。また、円安になった場合の為替差益を逃すことになります。

どの投資信託を選ぶべきか

投資信託を選ぶ際は、以下のポイントを考慮しましょう。

  • 信託報酬の低さ – 長期保有する場合、年率0.5%台の商品がおすすめ
  • 純資産総額の大きさ – 数十億円以上の規模がある商品を選ぶ
  • 分配金の方針 – 長期資産形成なら再投資型、定期収入なら年4回決算型
  • 為替ヘッジの有無 – リスク許容度に応じて選択
  • 購入可能な証券会社 – 自分の口座で取り扱いがあるか確認

配当貴族の始め方|口座開設から購入まで5ステップ

配当貴族への投資を始めるには、証券口座の開設から商品の購入まで、いくつかのステップを踏む必要があります。初心者でも分かりやすいように、具体的な手順を解説します。

証券会社を選ぶ

まず、証券会社を選びます。配当貴族に投資するには、米国株や投資信託を取り扱っている証券会社が必要です。主要なネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)であれば、配当貴族関連の商品を購入できます。

証券会社を選ぶ際のポイントは、取扱商品の豊富さ、手数料の安さ、使いやすさです。SBI証券は投資信託の取扱本数が最も多く、楽天証券は楽天ポイントを活用できるメリットがあります。マネックス証券は米国株取引に強みがあります。

口座開設の申し込みをする

証券会社を決めたら、公式サイトから口座開設の申し込みを行います。多くの証券会社では、オンラインで完結する口座開設が可能です。

申し込みフォームに、氏名、住所、生年月日、職業、年収などの基本情報を入力します。また、特定口座(源泉徴収あり・なし)やNISA口座の開設も同時に申し込めます。

特定口座(源泉徴収あり)を選ぶと、確定申告が不要になるため、初心者におすすめです。新NISAを活用したい場合は、NISA口座も同時に開設しましょう。

本人確認とマイナンバー登録

口座開設には、本人確認書類とマイナンバーの提出が必要です。マイナンバーカードを持っている場合は、スマホで撮影してアップロードするだけで手続きが完了します。

マイナンバーカードがない場合は、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類と、マイナンバー通知カードまたはマイナンバーが記載された住民票を提出します。

本人確認が完了すると、証券会社から口座開設完了の通知が届きます。最短で翌営業日、通常は数日から1週間程度で口座が開設されます。

入金する

口座開設が完了したら、投資資金を入金します。証券口座への入金方法は、銀行振込、即時入金サービス、ATM入金などがあります。

即時入金サービスを利用すると、提携銀行からリアルタイムで入金でき、手数料も無料です。主要なネット証券は、メガバンクやネット銀行と提携しており、即時入金が便利です。

入金額は、自分の投資計画に応じて決めましょう。投資信託であれば、100円や1,000円といった少額から始められます。まずは少額で始めて、慣れてきたら徐々に投資額を増やすのが安全です。

投資信託を購入する

入金が完了したら、配当貴族に投資する投資信託を購入します。証券会社のサイトやアプリで、「米国株式配当貴族」などのキーワードで商品を検索しましょう。

購入する商品が決まったら、購入金額または口数を入力します。一括購入(スポット購入)と積立購入の2つの方法があります。一括購入は、今すぐまとまった金額を投資する方法です。積立購入は、毎月一定額を自動的に購入する方法で、ドルコスト平均法の効果が得られます。

新NISAを活用する場合は、つみたて投資枠または成長投資枠を選択します。つみたて投資枠は年間120万円まで、成長投資枠は年間240万円まで非課税で投資できます。

購入内容を確認したら、注文を確定します。投資信託は、注文した日の翌営業日以降に基準価額が確定し、購入が完了します。購入後は、定期的に運用状況を確認し、長期的に保有を続けることが大切です。

配当金はいくらもらえる?|投資額別シミュレーション

配当貴族に投資した場合、実際にどのくらいの配当金が受け取れるのか、具体的な金額をシミュレーションしてみましょう。投資額別に試算することで、配当収入のイメージが明確になります。

月1万円投資した場合

毎月1万円ずつ配当貴族の投資信託を積み立てた場合、年間の投資額は12万円です。配当利回りを2.5%と仮定すると、1年目の配当金は約3,000円となります。

5年間継続すると、累計投資額は60万円になります。この時点での年間配当金は約15,000円です。さらに、毎年3%ずつ増配されると仮定すると、実際の配当金はもう少し多くなります。

10年間継続すると、累計投資額は120万円になります。配当利回り2.5%で計算すると、年間配当金は約30,000円です。月額に換算すると約2,500円の配当収入が得られます。

20年間継続すると、累計投資額は240万円になります。年間配当金は約60,000円、月額約5,000円の配当収入です。長期的に積み立てを続けることで、安定した配当収入が得られるようになります。

月3万円投資した場合

毎月3万円ずつ投資した場合、年間の投資額は36万円です。配当利回り2.5%で計算すると、1年目の配当金は約9,000円となります。

5年間継続すると、累計投資額は180万円になります。年間配当金は約45,000円、月額約3,750円です。この時点で、ちょっとしたお小遣い程度の配当収入が得られます。

10年間継続すると、累計投資額は360万円になります。年間配当金は約90,000円、月額約7,500円です。増配効果を考慮すると、年間配当金は10万円を超える可能性もあります。

20年間継続すると、累計投資額は720万円になります。年間配当金は約180,000円、月額約15,000円です。この水準になると、配当収入が生活費の一部を賄えるようになります。

月5万円投資した場合

毎月5万円ずつ投資した場合、年間の投資額は60万円です。配当利回り2.5%で計算すると、1年目の配当金は約15,000円となります。

5年間継続すると、累計投資額は300万円になります。年間配当金は約75,000円、月額約6,250円です。この段階で、配当収入が実感できるようになります。

10年間継続すると、累計投資額は600万円になります。年間配当金は約150,000円、月額約12,500円です。増配効果を考慮すると、年間配当金は18万円程度になる可能性もあります。

20年間継続すると、累計投資額は1,200万円になります。年間配当金は約300,000円、月額約25,000円です。この水準になると、配当収入だけで生活費のかなりの部分を賄えるようになります。

配当金の受取方法と税金

配当金の受取方法は、投資信託の種類によって異なります。分配金を出すタイプの投資信託では、決算日に分配金が支払われます。分配金を再投資するタイプでは、自動的に再投資されるため、複利効果が得られます。

配当金には税金がかかります。米国株式の配当金には、米国で10%、日本で約20%の二重課税が適用されます。ただし、新NISAの成長投資枠で投資した場合、日本の税金は非課税となります。

米国の10%は引かれますが、日本の約20%が非課税になるメリットは大きいです。外国税額控除を利用すれば、米国で徴収された税金の一部を取り戻すことができます。

金融庁:NISA特設ウェブサイト

よくある質問

よくある質問
新NISAで配当貴族に投資できますか?

はい、新NISAで配当貴族に投資できます。配当貴族を対象とした投資信託の多くは、新NISAの成長投資枠で購入可能です。年間240万円まで非課税で投資でき、配当金や売却益にかかる税金が免除されます。長期的な資産形成を目指す場合、新NISAを活用することで税制面のメリットを最大限享受できます。

つみたてNISA対象ですか?

配当貴族を対象とした投資信託は、つみたてNISA(新NISAのつみたて投資枠)の対象外となっている商品が多いです。つみたてNISAの対象商品は、金融庁が定める基準を満たす必要があり、配当貴族のような特定のテーマ型商品は対象外となることがあります。つみたて投資枠で投資したい場合は、S&P500や全米株式など、より広範な指数に連動する商品を選ぶ必要があります。

iDeCoで購入できますか?

iDeCo(個人型確定拠出年金)で配当貴族に投資できるかは、加入している運営管理機関(金融機関)の商品ラインナップによります。一部の金融機関では、配当貴族を対象とした投資信託を取り扱っていますが、すべての金融機関で購入できるわけではありません。iDeCoで投資したい場合は、事前に商品ラインナップを確認しましょう。

最低投資金額はいくらですか?

投資信託で配当貴族に投資する場合、最低投資金額は証券会社によって異なりますが、多くのネット証券では100円から購入できます。SBI証券や楽天証券では、100円から積立投資が可能です。まとまった資金がなくても、少額から始められるため、初心者でも気軽に投資を始められます。

配当金の再投資は自動でできますか?

投資信託で配当貴族に投資する場合、多くの商品では配当金が自動的に再投資されます。分配金を出さないタイプの投資信託では、配当金はファンド内で再投資され、基準価額に反映されます。一方、分配金を出すタイプの投資信託では、受け取った分配金を自分で再投資する必要があります。自動再投資を希望する場合は、分配金を出さないタイプの商品を選びましょう。

外国税額控除は受けられますか?

はい、外国税額控除を受けることができます。米国株式の配当金には米国で10%の源泉徴収が行われますが、確定申告で外国税額控除を申請すれば、一部を取り戻せます。ただし、手続きが複雑であり、所得税額が少ない場合は控除できる金額も限られます。新NISAで投資すれば、日本の税金が非課税となるため、外国税額控除の手続きをしなくても税制面でのメリットが得られます。

構成銘柄はいつ変更されますか?

S&P500配当貴族指数の構成銘柄は、年1回見直しが行われます。通常、1月末または2月初旬に変更が実施されます。25年以上の連続増配という条件を満たさなくなった企業は除外され、新たに条件を満たした企業が追加されます。年によって変更される銘柄数は異なりますが、通常は数社程度です。投資信託やETFで投資している場合、この変更は自動的に反映されるため、投資家が個別に対応する必要はありません。

まとめ

米国株式配当貴族は、25年以上連続で増配を続けている優良企業で構成される指数です。長期的な安定性と成長性を兼ね備えており、初心者から経験豊富な投資家まで幅広く支持されています。

配当貴族の最大の魅力は、不況時にも強い安定性と、S&P500を上回るパフォーマンスです。生活必需品やヘルスケアなど、景気変動の影響を受けにくいセクターが多く含まれており、暴落時の下落率も比較的小さい傾向があります。配当再投資による複利効果も大きく、長期的な資産形成に適しています。

一方、元本割れのリスクや為替変動の影響、配当金への二重課税といった注意点もあります。また、高配当株と比べると配当利回りは低めですが、長期的な増配により投資時の利回りは徐々に向上します。

配当貴族への投資方法は、投資信託、ETF、個別株の3つがあります。初心者には、少額から始められる投資信託がおすすめです。新NISAを活用すれば、税制面でのメリットも享受できます。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。詳しくは各証券会社の公式サイトをご確認ください。

厚生労働省:iDeCo公式サイト

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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