証券会社の安全性|倒産リスクと資産を守る仕組みを解説

証券会社の安全性|倒産リスクと資産を守る仕組みを解説

証券会社に資産を預けることに不安を感じていませんか。

特にネット証券は店舗がないため「本当に安全なのか」「倒産したらどうなるのか」と心配になるのは当然です。

結論から言うと、証券会社には法律で定められた分別管理制度があり、万が一倒産しても顧客の資産は保護される仕組みになっています。さらに投資者保護基金により、1,000万円まで補償される制度も整備されています。

この記事では、証券会社の安全性を守る仕組みから、実際の倒産事例、自分でできるセキュリティ対策まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

安心して投資を始めるために、証券会社の安全性について正しく理解しましょう。

この記事の要約
  • 証券会社が倒産しても顧客資産は分別管理により保護される
  • 投資者保護基金により1,000万円まで補償される制度がある
  • 自己資本規制比率や格付けで証券会社の財務健全性を判断できる
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

証券会社の安全性|資産は守られる仕組みがある

証券会社に預けた資産は、法律によって厳格に保護されています。金融商品取引法では、証券会社が顧客の資産と自社の資産を分けて管理する「分別管理」が義務付けられているため、万が一証券会社が倒産しても顧客の資産は守られる仕組みになっています。

さらに、分別管理が適切に行われていなかった場合でも、投資者保護基金により1,000万円まで補償されます。これにより、投資初心者の方でも安心して証券会社を利用できる環境が整っています。

証券会社が倒産しても資産は保護されますが、投資判断による損失は自己責任となります。

ただし、投資そのもののリスク(株価の下落による損失など)と証券会社の倒産リスクは別物です。

分別管理とは?|顧客資産と証券会社の資産を分けて保管

分別管理とは、証券会社が顧客から預かった資産(株式、投資信託、現金など)と、証券会社自身の資産を明確に分けて管理する制度です。金融商品取引法第四十三条の二により、すべての証券会社に義務付けられています

具体的には、顧客の株式や投資信託は証券保管振替機構(ほふり)に預託され、証券会社の資産とは別に管理されます。現金についても、信託銀行などに信託財産として分別保管されるため、証券会社の経営状態に関わらず顧客の資産は保護されます。

分別管理の仕組み

顧客の株式・投資信託:証券保管振替機構(ほふり)に預託

顧客の現金:信託銀行に信託財産として保管

証券会社の資産:完全に分離して管理

この仕組みにより、証券会社が倒産した場合でも、顧客の資産は差し押さえの対象にならず、全額返還される仕組みになっています。分別管理は金融庁による定期的な検査でチェックされており、違反した場合は業務停止命令などの厳しい処分が下されます。

投資者保護基金による補償|1,000万円まで返還される

投資者保護基金は、証券会社が倒産し、分別管理が適切に行われていなかった場合に、顧客1人あたり1,000万円まで補償する制度です。日本証券業協会に加盟するすべての証券会社は、この基金への加入が義務付けられています。

補償の対象となるのは、証券会社が破綻した際に顧客に返還できなかった金銭や有価証券です。たとえば、分別管理が不十分で顧客資産の一部が不足していた場合でも、1,000万円までは投資者保護基金から補償されます。

補償を受けるためには、破綻した証券会社の管財人または投資者保護基金に申請する必要があります。申請後、審査を経て補償金が支払われるまでには通常3~6か月程度かかりますが、過去の事例では適切に補償が実施されています。

1,000万円を超える資産を保有している場合、超過分については補償の対象外となるため、複数の証券会社に資産を分散することも検討すべきです。

投資リスクと証券会社リスクは別物

投資初心者の方がよく混同するのが、「投資リスク」と「証券会社リスク」の違いです。

投資リスクとは、株価の下落や為替変動により資産が減少するリスクを指します。一方、証券会社リスクとは、証券会社が倒産することで資産が返還されないリスクです。

リスクの種類 内容 保護の有無
投資リスク 株価下落・為替変動による損失 保護されない(自己責任)
証券会社リスク 証券会社の倒産による資産喪失 保護される(分別管理・投資者保護基金)

分別管理制度により、証券会社が倒産しても顧客の資産は保護されるため、証券会社リスクは極めて低く抑えられています。しかし、投資そのもののリスクは別問題であり、株価が下落すれば資産は減少します。

つまり、安全性の高い証券会社を選んでも、投資判断が適切でなければ損失が発生する可能性があります。証券会社選びと投資判断は別々に考え、それぞれに対して適切な対策を講じることが重要です。

証券会社が倒産したらどうなる?|過去の事例から学ぶ

証券会社の倒産は現実に起こり得るリスクですが、過去の事例を見ると、顧客資産は適切に保護されてきました。日本では1997年に山一證券、1998年に三洋証券が経営破綻しましたが、いずれも顧客資産は全額返還されています。

これらの事例から、分別管理制度が機能していることが実証されています。ただし、倒産から資産返還までには一定の期間がかかるため、その間は資産の売買ができなくなる点には注意が必要です。

過去の倒産事例を理解することで、証券会社の安全性を冷静に判断し、万が一の事態にも適切に対応できるようになります。

山一證券の倒産|顧客資産は全額返還された

山一證券は1997年11月に自主廃業を発表し、戦後最大の証券会社破綻として大きな衝撃を与えました。当時、約260万人の顧客を抱えていましたが、分別管理制度により顧客資産は全額保護されました。

破綻後、顧客の株式や投資信託は他の証券会社に移管され、現金も順次返還されました。移管手続きには数か月を要しましたが、最終的にすべての顧客資産が返還されています。

この事例は、大手証券会社であっても経営破綻のリスクがあること、そして分別管理制度が機能することを示す重要な教訓となりました。

山一證券の破綻後、金融庁は証券会社への監督を強化し、投資者保護の仕組みがさらに整備されました。顧客からは「資産が戻ってくるまで不安だった」という声もありましたが、制度が適切に機能したことで、証券業界全体への信頼が維持されました。

三洋証券の倒産|分別管理制度導入前の事例

三洋証券は1997年11月に経営破綻しましたが、この時点では分別管理制度が完全には整備されていませんでした。そのため、一部の顧客資産の返還に時間がかかり、投資者保護基金による補償が実施されました。

三洋証券の破綻を受けて、1998年に投資者保護基金制度が正式に発足し、証券会社の破綻時に顧客を保護する仕組みが強化されました。この事例は、制度整備の重要性を示すものとなりました。

現在では分別管理が法律で義務化され、投資者保護基金も整備されているため、三洋証券のような事態が再発するリスクは大幅に低減しています。

倒産から資産返還までの流れ

証券会社が倒産した場合、以下の流れで顧客資産が返還されます。

1.証券会社の破綻が公表され、金融庁が業務停止命令を発令
2.管財人が選任され、顧客資産の調査・確認が開始される
3.顧客に対して資産移管または返還の手続き案内が送付される
4.他の証券会社への資産移管、または現金での返還が実施される
5.分別管理が不十分だった場合、投資者保護基金による補償手続きが開始される

通常、資産返還までには3~6か月程度かかりますが、その間は資産の売買ができなくなります。そのため、複数の証券会社に資産を分散しておくことで、一部の資産が凍結されても他の口座で取引を継続できるメリットがあります。

投資者保護基金の補償プロセスと期間

投資者保護基金による補償は、証券会社が破綻し、分別管理が適切に行われていなかった場合に実施されます。補償を受けるためには、破綻した証券会社の管財人または投資者保護基金に申請書を提出する必要があります。

申請後、投資者保護基金が顧客資産の不足額を調査し、補償額を決定します。補償金の支払いまでには通常3~6か月程度かかりますが、過去の事例では適切に補償が実施されています。

補償上限は1人あたり1,000万円であり、超過分については返還されない可能性があります。

証券会社の安全性をチェックする5つのポイント

証券会社を選ぶ際には、手数料やサービス内容だけでなく、安全性も重要な判断基準です。安全性を確認するためには、金融庁への登録状況、分別管理の実施、財務健全性、格付け評価、行政処分歴の5つのポイントをチェックすることが重要です。

これらの情報は、各証券会社の公式サイトや金融庁のウェブサイトで確認できます。特に初めて証券会社を選ぶ場合は、これらのポイントを一つずつ確認し、信頼できる証券会社を選ぶようにしましょう。

以下では、それぞれのポイントについて具体的な確認方法と判断基準を解説します。

金融庁への登録|必ず確認すべき基本条件

証券会社を利用する前に、必ず金融庁に登録されているかを確認しましょう。金融商品取引法により、証券業を営むためには金融庁への登録が義務付けられており、無登録業者は違法です。

金融庁のウェブサイトには「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」が公開されており、ここで証券会社の登録状況を確認できます。登録番号や登録年月日も記載されているため、信頼性の判断材料になります。

正規の証券会社であれば、公式サイトに金融庁の登録番号が明記されています。

分別管理と投資者保護基金への加入

証券会社が分別管理を実施しているか、投資者保護基金に加入しているかを確認することも重要です。これらは法律で義務付けられているため、正規の証券会社であれば必ず対応しています。

各証券会社の公式サイトには「投資者保護」や「分別管理」に関するページがあり、そこで詳細を確認できます。また、日本投資者保護基金のウェブサイトには会員一覧が掲載されており、加入状況を確認できます。

もし分別管理や投資者保護基金への加入が明記されていない場合は、その証券会社の利用は避けるべきです。

財務健全性|自己資本規制比率をチェック

証券会社の財務健全性を判断する重要な指標が「自己資本規制比率」です。これは、証券会社が保有する自己資本が、リスク相当額に対してどの程度あるかを示す比率で、金融商品取引法により120%以上を維持することが義務付けられています

一般的に、自己資本規制比率が200%以上であれば財務的に健全とされ、300%を超えていれば非常に安定した経営状態と判断できます。各証券会社の決算短信やIRページで確認できるため、口座開設前にチェックしておきましょう。

自己資本規制比率の目安

120%以上:法律で義務付けられた最低水準

200%以上:財務的に健全

300%以上:非常に安定した経営状態

自己資本規制比率が低い証券会社は、経営が不安定である可能性があります。特に120%に近い水準の場合は、経営状態を注視する必要があります。大手証券会社の多くは300%以上を維持しているため、これを一つの目安にするとよいでしょう。

格付け評価|第三者機関による信用度

格付け機関による評価も、証券会社の信用度を判断する有効な指標です。S&P、ムーディーズ、格付投資情報センター(R&I)などの格付け機関は、証券会社の財務状況や経営の安定性を評価し、格付けを公表しています。

格付けは通常、AAA(トリプルエー)が最高評価で、BBB以上が「投資適格」とされます。A以上の格付けを持つ証券会社は、財務的に安定しており、倒産リスクが低いと判断できます。

ただし、格付けは過去の実績に基づく評価であり、将来の安全性を保証するものではありません。定期的にチェックすることが重要です。

行政処分歴|過去のコンプライアンス状況

金融庁による行政処分歴を確認することで、証券会社のコンプライアンス体制を判断できます。行政処分とは、法令違反や不適切な業務運営があった場合に、金融庁が業務改善命令や業務停止命令を出すものです。

金融庁のウェブサイトには「行政処分」のページがあり、過去の処分歴を検索できます。過去5年以内に重大な処分を受けている証券会社は、コンプライアンス意識が低い可能性があるため注意が必要です。

ただし、軽微な処分であれば、その後の改善状況を確認することも重要です。処分を受けた後に再発防止策を講じ、業務体制を改善している証券会社であれば、現在は問題ない場合もあります。

安全性チェックリスト

  • 金融庁への登録があるか
  • 分別管理を実施しているか
  • 投資者保護基金に加入しているか
  • 自己資本規制比率が200%以上か
  • 格付けがA以上か
  • 過去5年以内に重大な行政処分を受けていないか

ネット証券は危険?|店舗型証券との違いを比較

ネット証券に対して「店舗がないから不安」「対面でないと信用できない」と感じる方は少なくありません。しかし、ネット証券と店舗型証券の安全性には本質的な違いはなく、どちらも同じ法律により顧客資産が保護されています

ネット証券の最大の特徴は、店舗運営コストを削減することで、手数料を低く抑えている点です。一方、店舗型証券は対面での相談ができる安心感がありますが、その分手数料は高めに設定されています。

以下では、ネット証券と店舗型証券の仕組みの違い、安全性の比較、それぞれに向いている人について詳しく解説します。

ネット証券と店舗型証券の仕組みの違い

ネット証券と店舗型証券の最も大きな違いは、取引の方法とサポート体制です。ネット証券はインターネット上で口座開設から取引までを完結できるため、時間や場所を選ばずに利用できます。一方、店舗型証券は対面での相談が可能で、担当者が投資のアドバイスをしてくれます。

項目 ネット証券 店舗型証券
取引方法 インターネット 店舗・電話・インターネット
手数料 低い(無料~数百円) 高い(数千円~)
対面サポート なし あり
口座開設 オンライン完結 店舗来店または郵送
営業時間 24時間(取引は市場時間) 店舗営業時間内

ネット証券は手数料が安く、自分のペースで投資できるメリットがありますが、すべて自己判断で行う必要があります。店舗型証券は手数料が高い代わりに、担当者のアドバイスを受けられる安心感があります。

安全性に違いはあるのか?

結論から言うと、ネット証券と店舗型証券の安全性に本質的な違いはありません。どちらも金融商品取引法により分別管理が義務付けられており、投資者保護基金にも加入しています。

ネット証券が不安視される理由の一つは「店舗がないこと」ですが、店舗の有無は顧客資産の保護とは関係ありません。むしろ、ネット証券の多くは大手金融グループの傘下にあり、財務基盤は非常に安定しています。

たとえば、SBI証券はSBIホールディングスの傘下、楽天証券は楽天グループの傘下にあり、いずれも上場企業です。財務健全性や格付けも高く、倒産リスクは極めて低いと言えます。

一方、セキュリティ面では、ネット証券の方が不正アクセスやフィッシング詐欺のリスクがあります。しかし、二段階認証や生体認証などのセキュリティ対策が充実しており、利用者側も適切な対策を講じれば、リスクは大幅に軽減できます。

ネット証券が向いている人・店舗型が向いている人

ネット証券と店舗型証券のどちらを選ぶかは、投資スタイルやサポートの必要性によって異なります。以下の表を参考に、自分に合った証券会社を選びましょう。

特徴 ネット証券が向いている人 店舗型証券が向いている人
投資経験 自分で情報収集・判断できる 投資初心者で相談したい
手数料 手数料を抑えたい 手数料より安心感を重視
取引頻度 頻繁に取引する 長期保有中心
サポート 自分で調べられる 対面で相談したい
時間 好きな時間に取引したい 営業時間内に来店できる

ネット証券は手数料の安さと利便性が魅力ですが、すべて自己判断で行う必要があります。店舗型証券は手数料が高い代わりに、担当者のサポートを受けられる安心感があります。自分の投資スタイルに合わせて選ぶことが重要です。

セキュリティリスクで気をつけたい5つのこと

ネット証券を利用する際には、証券会社の倒産リスクよりも、セキュリティリスクの方が現実的な脅威となります。不正アクセス、個人情報漏洩、フィッシング詐欺、システム障害、操作ミスなど、さまざまなリスクが存在します。

これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることで、安全にネット証券を利用できます。以下では、特に注意すべき5つのセキュリティリスクについて詳しく解説します。

不正アクセス・不正出金のリスク

不正アクセスとは、第三者が不正にログインし、勝手に取引や出金を行うリスクです。パスワードが漏洩したり、フィッシング詐欺で入力情報が盗まれたりすることで発生します。

不正アクセスを防ぐためには、二段階認証を必ず設定し、パスワードを複雑にすることが重要です。また、ログイン履歴を定期的にチェックし、身に覚えのないアクセスがあればすぐに証券会社に連絡しましょう。

多くの証券会社では、不正アクセスによる被害に対して一定の補償制度を設けていますが、利用者側の過失(パスワードの使い回し、二段階認証の未設定など)がある場合は補償されないこともあります。

個人情報漏洩のリスク

証券会社には氏名、住所、銀行口座情報、マイナンバーなど、重要な個人情報が登録されています。これらの情報が漏洩すると、なりすまし被害や詐欺に遭うリスクがあります。

証券会社側も厳重なセキュリティ対策を講じていますが、利用者側も公共のWi-Fiでログインしない、不審なメールのリンクをクリックしないなどの対策が必要です。

ウイルス感染・フィッシング詐欺

フィッシング詐欺とは、証券会社を装った偽のメールやSMSを送り、偽サイトに誘導してログイン情報を盗む手口です。近年、証券会社を装ったフィッシング詐欺が増加しており、注意が必要です。

証券会社からのメールやSMSに記載されたリンクは、安易にクリックせず、公式サイトを直接ブラウザで開いてログインするようにしましょう。また、ウイルス対策ソフトを最新の状態に保つことも重要です。

フィッシング詐欺の被害に遭った場合、すぐにパスワードを変更し、証券会社と警察に連絡することが重要です。

通信環境・システム障害のリスク

ネット証券はインターネット環境に依存するため、通信障害やシステム障害が発生すると、取引ができなくなるリスクがあります。特に、相場が急変している時にシステム障害が発生すると、売買機会を逃す可能性があります。

システム障害は証券会社側の問題であり、利用者側では防ぐことはできません。しかし、複数の証券会社に口座を持つことで、一つの証券会社でシステム障害が発生しても、他の口座で取引を継続できます

また、証券会社のシステム障害発生状況は、日本証券業協会のウェブサイトで公開されているため、口座開設前に確認しておくとよいでしょう。

操作ミスによる誤発注

ネット証券では、すべての取引を自分で入力するため、操作ミスによる誤発注のリスクがあります。たとえば、「100株」のつもりが「10,000株」と入力してしまったり、「買い」と「売り」を間違えたりするケースです。

誤発注を防ぐためには、注文内容を確認する画面で必ず再チェックし、落ち着いて操作することが重要です。また、成行注文ではなく指値注文を使うことで、想定外の価格で約定するリスクを減らせます。

誤発注を防ぐポイント

  • 注文前に銘柄コード、株数、価格を再確認する
  • 成行注文は慎重に使用する
  • 注文後に約定状況を確認する
  • 慣れるまでは少額で取引する

自分でできるセキュリティ対策6つ

セキュリティリスクを軽減するためには、証券会社任せにせず、利用者自身も対策を講じることが重要です。二段階認証の設定、パスワード管理、ウイルス対策、公共Wi-Fiの回避、不審なメールへの警戒、取引履歴のチェックの6つの対策を実践することで、安全にネット証券を利用できます。

以下では、それぞれの対策について具体的な方法を解説します。

二段階認証・生体認証を必ず設定する

二段階認証は、パスワードに加えて、スマートフォンに送信されるワンタイムパスワードや認証アプリを使ってログインする仕組みです。これにより、パスワードが漏洩しても不正ログインを防げます。

多くのネット証券では、二段階認証や生体認証(指紋認証、顔認証)に対応しています。設定は数分で完了するため、口座開設後すぐに設定しておきましょう。

二段階認証を設定していない場合、不正アクセスによる被害の補償を受けられないこともあります。

パスワードは複雑に・使い回さない

パスワードは、英数字と記号を組み合わせた複雑なものにし、他のサイトと使い回さないことが重要です。簡単なパスワードや、誕生日などの推測しやすいパスワードは避けましょう。

パスワード管理ツールを使うと、複雑なパスワードを自動生成し、安全に保管できます。また、定期的にパスワードを変更することで、セキュリティをさらに高められます。

ウイルス対策ソフトを最新に保つ

ウイルス対策ソフトは、パソコンやスマートフォンをウイルスやマルウェアから守る重要なツールです。ウイルスに感染すると、ログイン情報が盗まれたり、不正な操作をされたりするリスクがあります。

ウイルス対策ソフトは常に最新の状態に保ち、定期的にスキャンを実行しましょう。無料のウイルス対策ソフトもありますが、有料版の方が機能が充実しており、より安全です。

公共Wi-Fiでの取引は避ける

公共のWi-Fi(カフェ、空港、ホテルなど)は、通信内容が傍受されるリスクがあるため、ネット証券へのログインや取引は避けるべきです。自宅のWi-Fiや、スマートフォンのモバイル回線を使うようにしましょう。

どうしても公共Wi-Fiを使う必要がある場合は、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使うことで、通信内容を暗号化し、安全性を高められます。

不審なメール・SMSのリンクをクリックしない

証券会社を装ったフィッシング詐欺のメールやSMSが増えています。これらのメールには偽のログインページへのリンクが含まれており、クリックすると個人情報が盗まれるリスクがあります。

証券会社からのメールやSMSに記載されたリンクは、安易にクリックせず、公式サイトを直接ブラウザで開いてログインするようにしましょう。また、証券会社が電話やメールでパスワードを尋ねることは絶対にないため、そのような連絡があった場合は詐欺を疑いましょう。

取引履歴を定期的にチェックする

不正アクセスや誤発注を早期に発見するためには、取引履歴を定期的にチェックすることが重要です。身に覚えのない取引や出金があった場合は、すぐに証券会社に連絡しましょう。

取引履歴チェックのポイント

  • 週に1回はログインして取引履歴を確認する
  • ログイン履歴もチェックし、不審なアクセスがないか確認する
  • メール通知機能を活用し、取引があったらすぐに通知を受け取る
  • 不審な取引を発見したら、すぐにパスワードを変更し、証券会社に連絡する

証券会社の財務健全性ランキング|数値で見る安全性

証券会社の安全性を客観的に判断するためには、財務健全性を示す数値指標を確認することが有効です。特に、自己資本規制比率と格付け評価は、証券会社の経営状態を判断する重要な指標です。

以下では、自己資本規制比率の見方、主要証券会社の比較、格付け評価の見方について詳しく解説します。

自己資本規制比率とは?|200%以上が健全の目安

自己資本規制比率とは、証券会社が保有する自己資本が、リスク相当額に対してどの程度あるかを示す比率です。金融商品取引法により、証券会社は120%以上を維持することが義務付けられています

一般的に、自己資本規制比率が200%以上であれば財務的に健全とされ、300%を超えていれば非常に安定した経営状態と判断できます。この比率が高いほど、経営の安定性が高く、倒産リスクが低いと言えます。

自己資本規制比率は、各証券会社の決算短信やIRページで確認できます。口座開設前にチェックしておくことで、より安全な証券会社を選ぶことができます。

ただし、自己資本規制比率は過去の財務状況を示すものであり、将来の安全性を保証するものではありません。定期的にチェックし、経営状態の変化に注意を払うことが重要です。

主要証券会社の自己資本規制比率一覧

以下は、主要なネット証券の自己資本規制比率の目安です(2024年時点の公開情報に基づく)。

証券会社 自己資本規制比率(目安) 評価
SBI証券 300%以上 非常に安定
楽天証券 300%以上 非常に安定
マネックス証券 250%以上 安定
松井証券 400%以上 非常に安定
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 200%以上 安定

この表から、主要なネット証券はいずれも200%以上の自己資本規制比率を維持しており、財務的に安定していることが分かります。特に松井証券は400%以上と非常に高い水準を維持しています。

格付け評価の見方|A以上が望ましい

格付け評価は、S&P、ムーディーズ、格付投資情報センター(R&I)などの第三者機関が、証券会社の財務状況や経営の安定性を評価したものです。格付けは通常、AAA(トリプルエー)が最高評価で、BBB以上が「投資適格」とされます。

A以上の格付けを持つ証券会社は、財務的に安定しており、倒産リスクが低いと判断できます。格付けは各証券会社の公式サイトやIRページで確認できるほか、格付け機関のウェブサイトでも公開されています。

ただし、格付けは過去の実績に基づく評価であり、将来の安全性を保証するものではありません。定期的に格付けの変更がないかチェックし、経営状態の変化に注意を払うことが重要です。

1,000万円を超える資産はどうする?|複数口座での分散戦略

投資者保護基金の補償上限は1人あたり1,000万円です。そのため、1,000万円を超える資産を保有している場合、証券会社が倒産した際に超過分が返還されないリスクがあります。

このリスクを軽減するためには、複数の証券会社に資産を分散することが有効です。以下では、投資者保護基金の上限を超える場合の対応策、複数口座のメリット、用途別の使い分け例について解説します。

投資者保護基金は1,000万円まで|超える分はどうなる?

投資者保護基金による補償は、1人あたり1,000万円が上限です。証券会社が倒産し、分別管理が適切に行われていなかった場合、1,000万円を超える資産については補償されない可能性があります。

ただし、分別管理が適切に行われていれば、資産額に関わらず全額返還されます。投資者保護基金はあくまで「分別管理が不十分だった場合の補償制度」であり、通常は資産全額が保護されます。

それでも、万が一のリスクに備えて、1,000万円を超える資産を保有している場合は、複数の証券会社に分散することを検討すべきです。

複数の証券会社に口座を持つメリット

複数の証券会社に口座を持つことで、以下のメリットがあります。

複数口座のメリット

  • 投資者保護基金の補償上限(1,000万円)を超える資産を保護できる
  • 一つの証券会社でシステム障害が発生しても、他の口座で取引を継続できる
  • 各証券会社の強みを活かした使い分けができる(手数料、商品ラインナップ、ツールなど)
  • キャンペーンや特典を複数の証券会社で受けられる

複数口座を持つことで、リスク分散だけでなく、投資の選択肢が広がるメリットもあります。

用途別の使い分け例|NISA・特定口座・一般口座

複数の証券会社を用途別に使い分けることで、効率的な資産運用が可能になります。以下は、用途別の使い分け例です。

用途 証券会社の選び方 具体例
NISA(つみたて投資枠) 投資信託の取扱本数が多く、ポイント還元がある SBI証券楽天証券
NISA(成長投資枠) 個別株の取引手数料が安い SBI証券、楽天証券
米国株投資 米国株の取扱銘柄が多く、手数料が安い SBI証券、マネックス証券
IPO投資 IPOの取扱実績が多い SMBC日興証券、野村證券
高額資産の保管 財務健全性が高く、格付けが高い 三菱UFJモルガン・スタンレー証券野村證券

このように、用途に応じて証券会社を使い分けることで、それぞれの強みを活かした効率的な資産運用が可能になります。

安全性の高いおすすめの証券会社5社

ここでは、安全性の観点から信頼できる証券会社を5社紹介します。いずれも自己資本規制比率が高く、大手金融グループの傘下にあるため、財務基盤が安定しています。

証券会社選びの参考にしてください。

SBI証券|業界最大手・口座数No.1の安心感

SBI証券の画像
項目 内容
口座数 約15,000,000口座 ※2025年11月25日時点(SBIネオモバイル証券など含む)
取引手数料 【スタンダードプラン(1注文ごと)】 取引金額に関係なく0円【アクティブプラン(1日定額制)】 1日100万円以下の取引:0円※現物取引・信用取引・単元未満株(S株)もすべて対象です。
NISA対応
つみたて投資枠取扱銘柄数 〇(259銘柄)※2025年3月3日時点
成長投資枠対象商品 国内株 / 外国株 / 投資信託(約1,329銘柄 ※2025年3月3日時点)
投資信託 約2,550本 ※2025年3月3日時点
外国株 8カ国/米国株式(5,000銘柄)
取引ツール(PC) HYPER SBI 2 / HYPER SBI / SBI CFDトレーダー
スマホアプリ SBI証券 株アプリ / 米国株アプリ / かんたん積立 / HYPER FX / HYPER 先物 / HYPER CFD
提携銀行口座 SBI新生銀行 / 住信SBIネット銀行
ポイント投資・付与 Pontaポイント / dポイント / Vポイント(クレカ積立)
口座開設スピード 最短 翌営業日

SBI証券は、口座数約1,500万を誇る業界最大手のネット証券です(出典:SBI証券公式サイト、2024年時点)。SBIホールディングスの傘下にあり、自己資本規制比率は300%以上と非常に安定しています。

SBI証券の特徴

取扱商品数が多く、投資信託約2,600本、米国株約5,000銘柄

手数料が原則無料

IPO年間78銘柄(2024年実績)

複数のポイントに対応(Vポイント、Pontaポイント、dポイント等)

セキュリティ面でも、二段階認証や生体認証に対応しており、安全性の高い取引環境が整っています。

楽天証券|楽天グループの安定基盤

楽天証券LP画像
項目 内容
口座数 約12,000,000口座 ※2025年1月時点
取引手数料 【ゼロコース】 国内株式(現物・信用):0円 かぶミニ®(単元未満株):0円 投資信託:0円 ※ゼロコース選択時。 ※一部、スプレッドや信託財産留保額が発生する場合があります。
NISA対応 〇(新NISA対応)
つみたて投資枠取扱銘柄数 263銘柄 ※2025年4月24日時点
成長投資枠対象商品 国内株式 / 外国株式 / 投資信託(約1,345銘柄)
投資信託 約2,550本 ※2025年4月24日時点
外国株 6カ国/米国株式(約4,500銘柄)
取引ツール(PC) マーケットスピード / マーケットスピード II / 楽天MT4
スマホアプリ iSPEED / iSPEED for iPad / iSPEED FX / iSPEED 先物
提携銀行口座 楽天銀行(マネーブリッジ)
ポイント投資・付与 楽天ポイント(投資信託 / 国内株式 / 米国株式<円貨決済>)
口座開設スピード 最短 翌営業日

楽天証券は、楽天グループの傘下にあるネット証券で、口座数約1,200万を誇ります(出典:楽天証券公式サイト、2024年時点)。自己資本規制比率は300%以上と安定しており、財務健全性も高い水準を維持しています。

楽天証券の特徴

楽天ポイントを使った投資ができる

投資信託約2,550本、米国株約4,500銘柄

取引ツール「MARKET SPEED Ⅱ」が高機能

楽天経済圏を活用している方に最適

楽天経済圏を活用している方にとって利便性が高い証券会社です。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券|メガバンク系の信頼性

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のLP画像
項目 内容
口座数(残あり口座) 約105.3万口座
※2025年3月末時点
取引手数料 【国内株式】
約定代金 × 最大1.265%(税込)
※最低手数料2,750円(税込)

【米国株式】
約定代金 × 0.495%(税込)
※最低手数料22米ドル(税込)

※手数料は取引チャネルや銘柄により異なります。
NISA対応 〇(新NISA:つみたて投資枠・成長投資枠ともに対応)
つみたて投資枠取扱銘柄数 29銘柄
※2025年時点
成長投資枠対象商品 国内株式(約4,000銘柄) / 米国株式 / 投資信託(約285本)
投資信託 約4,054本
※2025年7月時点
外国株 米国株:約4,500銘柄
その他外国株:取扱限定的
取引ツール(PC) オンライントレード(WEB)
専用取引アプリ(PC版)
スマホアプリ 三菱UFJモルガン・スタンレー証券アプリ(iOS / Android対応)
提携銀行口座 三菱UFJ銀行(即時入出金サービス対応)
ポイント投資・付与 なし(ポイント投資制度は未対応)
口座開設スピード 通常2〜3営業日
※オンライン申込後、書類提出状況により変動

三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下にある証券会社で、口座数約1,800万を誇ります。メガバンク系証券として、財務基盤が非常に安定しており、自己資本規制比率も200%以上を維持しています。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の特徴

店舗とネット取引の両方に対応

対面での相談が可能

IPOの取扱実績も年間21銘柄(2024年実績)

投資初心者で対面サポートを受けたい方におすすめ

野村證券|老舗大手証券の実績

野村証券のLP画像
項目 内容
口座数約550万口座
取引手数料現物取引:152円~78,571円
信用取引:1注文あたり524円
投資信託約900本
ミニ株(単元未満株)対応(まめ株)
※詳細不明
NISA対応対応(つみたて投資枠・成長投資枠)
外国株4カ国
米国株:約850銘柄
IPO取扱実績年間46銘柄(2024年実績)
IPO主幹事件数年間16社(2024年実績)
ポイントサービス野村ポイント
口座開設スピード最短5営業日
取引ツール(PC)Webアプリ
スマホアプリWebアプリ

野村證券は、日本を代表する老舗証券会社で、口座数約550万を誇ります。長年の実績と信頼性があり、格付けも高い水準を維持しています。

野村證券の特徴

店舗型証券だがオンライン取引にも対応

IPOの取扱実績は年間46銘柄(2024年実績)

主幹事実績は年間16社と業界トップクラス

高額資産を保有している方や対面サポートを重視する方におすすめ

SMBC日興証券|三井住友FGの傘下

SMBC日興証券のLP画像
項目 内容
口座数約400万口座
取引手数料ダイレクトコース:137円~27,500円
総合コース:1,925円〜192,500円
投資信託約1,000本
ミニ株(単元未満株)非対応
NISA対応対応(つみたて投資枠・成長投資枠)
外国株2カ国以上
米国株:約2,200銘柄
IPO取扱実績年間52銘柄(2024年実績)
IPO主幹事件数年間22社(2024年実績)
ポイントサービスVポイント / dポイント
口座開設スピード最短即日
取引ツール(PC)パワートレーダー / BRiSK
スマホアプリSMBC日興証券アプリ

SMBC日興証券は、三井住友フィナンシャルグループの傘下にある証券会社で、口座数約400万を誇ります。メガバンク系証券として、財務基盤が安定しており、信頼性の高い証券会社です。

SMBC日興証券の特徴

IPOの取扱実績は年間52銘柄(2024年実績)

主幹事実績は年間22社と業界トップクラス

店舗とネット取引の両方に対応

ダイレクトコースを選べば手数料を抑えられる

IPO投資に力を入れたい方におすすめです。

証券会社 特徴 自己資本規制比率 おすすめポイント
SBI証券 業界最大手 300%以上 取扱商品数が多く、手数料も安い
楽天証券 楽天ポイント投資 300%以上 楽天経済圏を活用できる
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 メガバンク系 200%以上 対面サポートが充実
野村證券 老舗大手証券 非公開 IPO主幹事実績が多い
SMBC日興証券 三井住友FG傘下 非公開 IPO取扱実績が多い

まとめ

証券会社の安全性は、法律で定められた分別管理制度と投資者保護基金により、しっかりと守られています。万が一証券会社が倒産しても、顧客の資産は保護され、1,000万円までは投資者保護基金により補償されます。

ネット証券と店舗型証券の安全性に本質的な違いはなく、どちらも同じ法律により保護されています。ネット証券は手数料が安く利便性が高い一方、セキュリティ対策は利用者自身も講じる必要があります。二段階認証の設定、パスワード管理、ウイルス対策などを徹底しましょう。

証券会社を選ぶ際には、金融庁への登録、分別管理の実施、自己資本規制比率、格付け評価、行政処分歴の5つのポイントをチェックすることが重要です。特に自己資本規制比率が200%以上、格付けがA以上の証券会社を選ぶと安心です。

1,000万円を超える資産を保有している場合は、複数の証券会社に資産を分散することで、投資者保護基金の補償上限を超えるリスクを軽減できます。用途別に証券会社を使い分けることで、それぞれの強みを活かした効率的な資産運用が可能になります。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。詳しくは各証券会社にご確認ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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