楽天証券の投資信託|選び方とおすすめ銘柄を解説

iDeCoで長年積み立ててきた資産を受け取るとき、「税金がどのくらいかかるのか」は誰もが気になるポイントです。
受け取り方法によって税額が大きく変わるため、事前にシミュレーションしておくことが大切です。
一時金で受け取るか、年金で受け取るか、それとも併用するか。選択次第で手取り額が数十万円も変わることがあります。
この記事では、iDeCoの受け取り方法ごとの税金計算を具体的なシミュレーションで解説します。
退職金がある場合・ない場合、職業別の最適な受け取り方まで、あなたの状況に合わせた判断ができるようになります。
目次
iDeCoの受け取り方は3つ
iDeCoの受け取り方法は、一時金・年金・併用の3つから選べます。それぞれ適用される税制が異なるため、税負担も大きく変わります。
一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用され、年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。併用する場合は両方の控除を組み合わせて使うことになります。
一時金で受け取る場合、退職所得として課税されます。退職所得控除が適用されるため、控除額が大きく税負担を抑えやすいのが特徴です。
退職所得控除額は加入年数によって決まります。加入年数が20年以下の場合は「40万円×加入年数」、20年超の場合は「800万円+70万円×(加入年数-20年)」で計算します。
例えば、加入年数15年で500万円を受け取る場合、退職所得控除額は600万円(40万円×15年)となり、控除額内に収まるため税金はかかりません。一時金受け取りは、まとまった資金が必要な場合や、退職金がない自営業者に向いています。
年金で受け取る場合、公的年金等の雑所得として課税されます。公的年金等控除が適用されますが、国民年金や厚生年金と合算して課税されるため、控除枠を超えやすい点に注意が必要です。
公的年金等控除額は年齢と年金収入額によって決まります。65歳未満の場合は最低60万円、65歳以上の場合は最低110万円の控除が受けられます。
年金受け取りは毎年所得が発生するため、国民健康保険料や介護保険料が上がる可能性があります。また、確定申告が必要になるケースもあるため、手続きの手間も考慮する必要があります。
長期的に安定した収入が欲しい場合に適した方法です。
一時金と年金を併用する方法もあります。例えば、一部を一時金で受け取って当面の資金を確保し、残りを年金で受け取って長期的な収入源とすることができます。
併用する場合、一時金部分には退職所得控除、年金部分には公的年金等控除がそれぞれ適用されます。ただし、退職所得控除は一時金の受け取り額に応じて使われるため、控除枠を効率的に使うには計算が必要です。
併用のメリットは、両方の控除を活用できることと、資金ニーズに合わせて柔軟に受け取れることです。退職金がある場合や、公的年金が多い場合に、税負担を分散させる手段として有効です。
割合は自由に設定できるため、シミュレーションして最適な配分を見つけることが大切です。
退職所得控除は、一時金で受け取る際に適用される控除制度です。長年の勤務や積立に対する優遇措置として、大きな控除額が設定されています。
この控除を理解することで、一時金受け取りの税負担がどの程度になるかを正確に把握できます。
退職所得控除額は、加入年数によって計算式が異なります。加入年数は1年未満の端数を切り上げて計算します。
基本的な計算式は以下の通りです。加入年数20年以下の場合と20年超の場合で計算方法が変わるため、まず自分の加入年数を確認することが重要です。
退職所得控除を超えた金額については、その2分の1が課税対象となります。つまり、控除後の金額がそのまま課税されるわけではなく、さらに半分になるため、税負担は比較的軽くなります。
加入年数が20年以下の場合、退職所得控除額は「40万円×加入年数」で計算します。ただし、計算結果が80万円未満の場合は、最低額として80万円が保証されます。
例えば、加入年数が10年の場合、退職所得控除額は400万円(40万円×10年)となります。加入年数が1年の場合でも、最低額の80万円が控除されます。この計算式により、比較的短期間の加入でも一定の控除が受けられる仕組みになっています。
加入年数が20年を超える場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×(加入年数-20年)」で計算します。20年を超えた部分については、1年あたり70万円の控除が加算されます。
例えば、加入年数が30年の場合、退職所得控除額は1,500万円[800万円+70万円×(30年-20年)]となります。長期間加入すればするほど控除額が大きくなるため、長期積立のメリットが大きいことがわかります。
加入年数15年で500万円を一時金で受け取る場合の税額を計算してみましょう。
退職所得控除額は600万円(40万円×15年)です。受取額500万円は控除額600万円以内に収まるため、課税対象額は0円となります。したがって、所得税・住民税ともに課税されず、500万円をそのまま受け取ることができます。
このように、退職所得控除額以内であれば税金がかからないため、加入年数と受取額のバランスを事前に確認しておくことが重要です。
加入年数30年で1,500万円を一時金で受け取る場合の税額を計算してみましょう。
退職所得控除額は1,500万円[800万円+70万円×(30年-20年)]です。受取額1,500万円は控除額1,500万円とちょうど同額のため、課税対象額は0円となります。したがって、この場合も税金はかかりません。
もし受取額が1,600万円だった場合、控除額を超える100万円の2分の1である50万円が課税対象となります。この50万円に対して所得税(税率は他の所得と合算して決定)と住民税10%が課税されます。退職所得控除の枠内に収めることで、大きな節税効果が得られることがわかります。
公的年金等控除は、年金で受け取る際に適用される控除制度です。国民年金や厚生年金と同じ扱いで、公的年金等の雑所得として課税されます。
この控除を理解することで、年金受け取りの税負担を正確に把握できます。
公的年金等控除額は、年齢と年金収入額によって決まります。65歳未満と65歳以上で控除額が異なり、年金収入が多いほど控除額も増える仕組みです。
ただし、公的年金等以外の所得(給与所得など)が1,000万円を超える場合や2,000万円を超える場合は、控除額が段階的に減額されます。一般的なケースでは、年金収入のみで判断すれば問題ありません。
65歳未満の場合、公的年金等控除額は以下のように計算します。年金収入が130万円以下の場合は60万円、130万円超410万円以下の場合は「年金収入×25%+27.5万円」となります。
例えば、年金収入が100万円の場合、控除額は60万円です。年金収入が200万円の場合、控除額は77.5万円(200万円×25%+27.5万円)となります。65歳未満は控除額が少ないため、年金受け取りを開始する年齢も考慮する必要があります。
65歳以上の場合、公的年金等控除額は以下のように計算します。年金収入が330万円以下の場合は110万円、330万円超410万円以下の場合は「年金収入×25%+27.5万円」となります。
例えば、年金収入が200万円の場合、控除額は110万円です。年金収入が400万円の場合、控除額は127.5万円(400万円×25%+27.5万円)となります。65歳以上は最低控除額が110万円と大きいため、年金受け取りは65歳以降に開始する方が税負担を抑えやすくなります。
65歳で年間120万円をiDeCoから年金として受け取る場合、他に公的年金がないと仮定すると、公的年金等控除額は110万円です。
課税対象となる雑所得は10万円(120万円-110万円)です。この10万円に対して所得税と住民税が課税されますが、基礎控除48万円があるため、他に所得がなければ所得税はかかりません。住民税は基礎控除43万円があるため、こちらもかからない可能性が高いです。
ただし、国民年金や厚生年金を同時に受け取っている場合は、それらと合算して課税されるため、税額が発生する可能性があります。
70歳で年間200万円をiDeCoから年金として受け取る場合、他に公的年金として年間100万円を受け取っていると仮定すると、合計の年金収入は300万円です。
公的年金等控除額は110万円(年金収入330万円以下の場合)です。課税対象となる雑所得は190万円(300万円-110万円)です。この190万円から基礎控除48万円を差し引いた142万円が課税所得となり、これに対して所得税(税率5%で約7.1万円)と住民税(税率10%で約14.2万円)が課税されます。
このように、公的年金と合算すると税負担が発生するため、年金受け取りを選ぶ際は他の年金収入も考慮する必要があります。
退職金とiDeCoの調整ルール
退職金とiDeCoの一時金を両方受け取る場合、退職所得控除の調整ルールが適用されます。このルールを理解しないと、控除枠を十分に活用できず、税負担が増える可能性があります。
調整ルールには「19年ルール」と「10年ルール」があり、受け取る順序によってどちらが適用されるかが決まります。
19年ルールは、退職金を先に受け取り、その後iDeCoを一時金で受け取る場合に適用されます。退職金を受け取ってから19年以内にiDeCoを受け取ると、iDeCoの退職所得控除額が調整(減額)される仕組みです。
具体的には、退職金受け取り後19年以内にiDeCoを受け取る場合、iDeCoの加入年数から退職金の勤続年数と重複する期間を差し引いて控除額を計算します。例えば、勤続30年で退職金を受け取り、15年後にiDeCo(加入30年)を受け取る場合、iDeCoの控除額計算では加入年数が15年(30年-15年)とみなされます。
19年以上間隔を空けてiDeCoを受け取れば、この調整は適用されず、iDeCoの加入年数をそのまま使って控除額を計算できます。退職金を受け取った後、すぐにiDeCoを受け取らず、19年待つことで控除枠を最大限活用できます。
10年ルールは、iDeCoを先に一時金で受け取り、その後退職金を受け取る場合に適用されます。iDeCoを受け取ってから10年以内に退職金を受け取ると、退職金の退職所得控除額が調整(減額)される仕組みです。
具体的には、iDeCo受け取り後10年以内に退職金を受け取る場合、退職金の勤続年数からiDeCoの加入年数と重複する期間を差し引いて控除額を計算します。例えば、iDeCo(加入20年)を受け取り、5年後に退職金(勤続30年)を受け取る場合、退職金の控除額計算では勤続年数が25年(30年-5年)とみなされます。
10年以上間隔を空けて退職金を受け取れば、この調整は適用されず、退職金の勤続年数をそのまま使って控除額を計算できます。ただし、iDeCoは60歳から受け取り開始できるのに対し、退職金は退職時に受け取るため、10年以上間隔を空けるのは現実的でないケースも多いです。
受け取り順序をどうするかは、退職金額・iDeCo残高・退職年齢によって最適解が変わります。一般的には、以下のような考え方ができます。
最も重要なのは、両方の金額を合算しても退職所得控除額以内に収まるかどうかです。収まる場合は受け取り順序を気にする必要はありませんが、超える場合は順序とタイミングを慎重に検討する必要があります。税理士やFPに相談して、具体的なシミュレーションをすることをおすすめします。
受け取り方別の税金シミュレーション
ここでは、具体的な金額を使って5つのパターンで税額をシミュレーションします。自分の状況に近いパターンを参考にして、最適な受け取り方を検討してください。
シミュレーションでは、所得税・住民税の合計税額を計算します。
前提条件:iDeCo加入25年、残高1,200万円、退職金なし、一時金で全額受け取り
計算:退職所得控除額は1,150万円[800万円+70万円×(25年-20年)]です。受取額1,200万円から控除額1,150万円を差し引くと、50万円が控除後の金額です。退職所得は控除後の金額の2分の1なので、課税対象額は25万円(50万円÷2)です。
税額:課税対象額25万円に対して、所得税は5%(税率)で約1.3万円、住民税は10%で2.5万円、合計約3.8万円の税負担となります。手取り額は約1,196万円です。退職金がない場合、一時金受け取りは非常に有利な選択肢です。
前提条件:iDeCo残高1,200万円、65歳から年間100万円ずつ12年間受け取り、公的年金は年間150万円
計算:年金収入は合計250万円(iDeCo100万円+公的年金150万円)です。公的年金等控除額は110万円(65歳以上、年金収入330万円以下)です。課税対象となる雑所得は140万円(250万円-110万円)です。基礎控除48万円を差し引くと、課税所得は92万円です。
税額:所得税は5%で約4.6万円、住民税は10%で約9.2万円、年間合計約13.8万円です。12年間で合計約166万円の税負担となります。手取り額は約1,034万円です。
さらに、国民健康保険料や介護保険料も上がる可能性があるため、実質的な負担はさらに大きくなります。
前提条件:iDeCo加入25年、残高1,200万円、一時金で500万円、残り700万円を65歳から年間70万円ずつ10年間受け取り、公的年金は年間150万円
一時金部分の計算:退職所得控除額は1,150万円ですが、一時金500万円は控除額以内なので税金はかかりません。
年金部分の計算:年金収入は合計220万円(iDeCo70万円+公的年金150万円)です。公的年金等控除額は110万円です。課税対象となる雑所得は110万円です。基礎控除48万円を差し引くと、課税所得は62万円です。所得税は5%で約3.1万円、住民税は10%で約6.2万円、年間合計約9.3万円です。10年間で合計約93万円の税負担となります。
合計税額:一時金0円+年金93万円=約93万円。手取り額は約1,107万円です。パターン2の年金のみと比べて、税負担が約73万円少なくなります。併用することで、控除枠を効率的に活用できることがわかります。
前提条件:退職金1,500万円(勤続30年)、iDeCo1,000万円(加入25年)、両方を60歳で一時金受け取り
計算:退職金とiDeCoを同じ年に受け取る場合、合算して退職所得として計算します。合計受取額は2,500万円です。退職所得控除額は、勤続年数とiDeCo加入年数のうち長い方(30年)で計算するため、1,500万円[800万円+70万円×(30年-20年)]です。
受取額2,500万円から控除額1,500万円を差し引くと、1,000万円が控除後の金額です。退職所得は控除後の金額の2分の1なので、課税対象額は500万円(1,000万円÷2)です。
税額:課税対象額500万円に対して、所得税は20%(税率)で約100万円、住民税は10%で50万円、合計約150万円の税負担となります。手取り額は約2,350万円です。同時受け取りは控除枠を共有するため、税負担が大きくなります。
前提条件:退職金1,500万円(勤続30年)を60歳で受け取り、iDeCo1,000万円(加入25年)を65歳で一時金受け取り
退職金の計算:退職所得控除額は1,500万円[800万円+70万円×(30年-20年)]です。受取額1,500万円は控除額以内なので税金はかかりません。
iDeCoの計算:退職金受け取りから5年後なので、19年ルールが適用されます。iDeCoの加入年数25年から、退職金受け取り後の経過年数5年を差し引いた20年が控除額計算の基礎となります。退職所得控除額は800万円[40万円×20年]です。受取額1,000万円から控除額800万円を差し引くと、200万円が控除後の金額です。退職所得は控除後の金額の2分の1なので、課税対象額は100万円(200万円÷2)です。
iDeCoの税額:課税対象額100万円に対して、所得税は5%で約5万円、住民税は10%で10万円、合計約15万円の税負担となります。
合計税額:退職金0円+iDeCo15万円=約15万円。手取り額は約2,485万円です。パターン4の同時受け取りと比べて、税負担が約135万円少なくなります。受け取り時期を分けることで、大きな節税効果が得られることがわかります。ただし、19年以上間隔を空ければさらに節税できます。
職業・状況別の最適な受け取り方
iDeCoの最適な受け取り方は、職業や退職金の有無によって異なります。ここでは、代表的な4つのケースについて、それぞれの最適な受け取り方を解説します。
退職金制度がある会社員の場合、退職金とiDeCoの受け取り順序とタイミングが重要です。19年ルールと10年ルールを理解して、控除枠を最大限活用する戦略を立てましょう。
おすすめの受け取り方
退職金を先に受け取り、iDeCoは19年以上後に受け取る方法が最も節税効果が高いです。
ただし、19年待つのが現実的でない場合は、併用(一時金+年金)を検討しましょう。
一時金で退職所得控除の枠内に収まる金額を受け取り、残りを年金で受け取ることで、税負担を分散できます。
退職金額とiDeCo残高を合算しても退職所得控除額以内に収まる場合は、受け取り順序を気にせず、同時に一時金で受け取っても問題ありません。事前にシミュレーションして、自分のケースに最適な方法を選びましょう。
退職金制度がない会社員の場合、iDeCoの退職所得控除を単独で活用できるため、一時金受け取りが非常に有利です。
おすすめの受け取り方
一時金で全額受け取る方法が最もシンプルで節税効果が高いです。
加入年数が長ければ長いほど退職所得控除額が大きくなるため、多くの場合、税負担はほとんどかかりません。例えば、加入30年で1,500万円を受け取る場合、退職所得控除額も1,500万円なので税金はゼロです。
ただし、一時金で受け取ると一度に大きな金額が入るため、資金管理が重要です。計画的に使わないと、老後資金が早期に枯渇するリスクがあります。資金管理に不安がある場合は、一部を年金で受け取る併用も検討しましょう。
自営業やフリーランスの場合、退職金がないため、iDeCoが老後資金の重要な柱となります。小規模企業共済や国民年金基金も併用している場合は、それらとの兼ね合いも考慮する必要があります。
おすすめの受け取り方
一時金で全額受け取る方法が基本です。退職所得控除を単独で活用できるため、税負担を最小限に抑えられます。
小規模企業共済の一時金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取る場合は、合算して退職所得として計算されるため、受け取り時期をずらすことも検討しましょう。
国民年金基金は年金形式でしか受け取れないため、iDeCoを一時金で受け取ることで、受け取り方法を分散できます。また、国民健康保険料への影響も考慮が必要です。年金受け取りにすると毎年所得が増えるため、国保料が上がります。一時金受け取りなら、受け取った年だけ所得が増えますが、翌年以降は影響しません。
公務員の場合、退職金制度が充実しているため、退職金とiDeCoの調整ルールが重要になります。公務員の退職金は一般的に高額なため、iDeCoとの受け取り順序を慎重に検討する必要があります。
おすすめの受け取り方
退職金を先に受け取り、iDeCoは19年以上後に受け取る方法が理想的です。
ただし、19年待つのが現実的でない場合は、併用(一時金+年金)を検討しましょう。
退職金で大きな控除枠を使い、iDeCoは一部を一時金、残りを年金で受け取ることで、税負担を分散できます。
公務員の場合、厚生年金に加えて年金払い退職給付もあるため、年金収入が多くなる傾向があります。iDeCoを年金で受け取ると、公的年金等控除の枠を超えやすくなるため、一時金の割合を多めにすることをおすすめします。具体的な金額でシミュレーションして、最適な配分を見つけましょう。
社会保険料への影響
iDeCoを年金で受け取る場合、税金だけでなく社会保険料への影響も考慮する必要があります。特に、国民健康保険や介護保険に加入している場合、年金収入が増えると保険料も上がります。
この影響を見落とすと、手取り額が想定より少なくなる可能性があります。
国民健康保険料は、前年の所得に応じて計算されます。iDeCoを年金で受け取ると、公的年金等の雑所得として所得が増えるため、国保料も上がります。
例えば、公的年金150万円に加えてiDeCoから年間100万円を受け取る場合、年金収入は合計250万円です。公的年金等控除110万円を差し引いた140万円が雑所得となり、この所得に基づいて国保料が計算されます。自治体によって料率は異なりますが、年間10万円程度保険料が上がる可能性があります。
一方、一時金で受け取る場合、受け取った年だけ所得が増えますが、翌年以降は影響しません。長期的に見ると、一時金受け取りの方が社会保険料の負担が少なくなります。
介護保険料も、前年の所得に応じて計算されます。65歳以上の場合、年金から天引き(特別徴収)されるため、年金収入が増えると介護保険料も上がります。
介護保険料の計算方法は自治体によって異なりますが、一般的には所得段階別の定額制です。所得が一定額を超えると、上位の段階に移行して保険料が上がります。iDeCoを年金で受け取ることで、所得段階が1つ上がると、年間数万円の負担増になることもあります。
特に、所得段階の境界線付近にいる場合は、年金受け取りによって上位段階に移行しないか、事前に確認することが重要です。自治体の介護保険担当窓口で、シミュレーションをお願いすることもできます。
社会保険料への影響を考慮すると、一時金受け取りが有利なケースが多いです。ただし、一時金で受け取ると一度に大きな金額が入るため、資金管理が重要です。
併用(一時金+年金)を選ぶ場合は、年金額を抑えめにして、所得段階が上がらないように調整する方法もあります。例えば、年間の年金収入が一定額以下になるように、受け取り期間を長めに設定することで、社会保険料の負担を抑えられます。
また、配偶者の扶養に入っている場合、年金収入が増えると扶養から外れる可能性があります。扶養から外れると、自分で国保に加入する必要があり、保険料負担が大きく増えます。扶養の所得基準(年間所得38万円以下など)を超えないように、受け取り方を調整することも検討しましょう。
確定申告が必要になるケースと手続き
iDeCoを受け取る際、確定申告が必要になるケースがあります。特に、年金で受け取る場合や併用する場合は、確定申告の要否を事前に確認しておくことが重要です。
確定申告を忘れると、無申告加算税が課される可能性があるため、注意が必要です。
iDeCoを年金で受け取る場合、公的年金等の雑所得として課税されます。公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等以外の所得が20万円以下の場合は、確定申告不要制度が適用されます。
ただし、以下のケースでは確定申告が必要です。公的年金等の収入金額が400万円を超える場合、公的年金等以外の所得(給与所得など)が20万円を超える場合、医療費控除や住宅ローン控除などを受けたい場合です。
iDeCoの年金は源泉徴収されますが、源泉徴収額は概算のため、確定申告することで還付を受けられる場合もあります。特に、各種控除を受ける場合は、確定申告することで税負担を軽減できます。
確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの期間に行います。必要な書類は、iDeCoの源泉徴収票、公的年金の源泉徴収票、その他の所得の証明書類、各種控除の証明書類です。
確定申告の方法は、税務署の窓口で申告、郵送で申告、e-Tax(電子申告)の3つがあります。e-Taxを利用すると、自宅から申告でき、還付金の振込も早くなるため便利です。マイナンバーカードとICカードリーダーがあれば、スマートフォンからも申告できます。
確定申告書の作成は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の指示に従って入力するだけで自動計算されるため、初めての方でも比較的簡単に作成できます。不明な点があれば、税務署の相談窓口や税理士に相談しましょう。
確定申告をすると、その情報が自動的に市区町村に送られ、住民税が計算されます。住民税は前年の所得に基づいて計算され、翌年6月から1年間かけて納付します。
iDeCoを年金で受け取ると、毎年所得が発生するため、毎年住民税が課税されます。住民税の税率は一律10%ですが、自治体によって均等割額が異なります。一般的には、所得割(10%)+均等割(5,000円程度)が住民税の合計額です。
一時金で受け取る場合、受け取った年の翌年に住民税が課税されますが、その後は課税されません。年金受け取りと比べて、長期的な住民税負担は少なくなります。住民税は年金から天引き(特別徴収)されることが多いため、手取り額が減ることを考慮しておきましょう。
iDeCoの受け取り時には、知らないと損をする注意点がいくつかあります。ここでは、よくある失敗例と、それを避けるための対策を解説します。
よくある失敗の1つ目は、退職金とiDeCoを同じ年に受け取ってしまい、税金が高くなったケースです。退職所得控除は合算して計算されるため、両方を同時に受け取ると控除枠を超えやすくなります。
対策
退職金とiDeCoの受け取り時期をずらすことで、それぞれの控除枠を活用できます。
19年以上間隔を空けるのが理想ですが、難しい場合は併用(一時金+年金)を検討しましょう。事前にシミュレーションして、最適な受け取り方を選ぶことが重要です。
よくある失敗の2つ目は、年金受け取りを選んだ結果、社会保険料が上がって手取りが減ったケースです。税金だけでなく、国民健康保険料や介護保険料も考慮しないと、実質的な手取り額が想定より少なくなります。
対策
年金受け取りを選ぶ前に、社会保険料への影響も含めてシミュレーションしましょう。自治体の窓口で保険料の試算をお願いすることもできます。社会保険料の負担が大きい場合は、一時金受け取りや併用を検討しましょう。
よくある失敗の3つ目は、19年ルールや10年ルールを知らずに受け取り、控除枠を十分に活用できなかったケースです。特に、退職金を受け取った直後にiDeCoを受け取ってしまい、iDeCoの控除額が減額されたケースが多いです。
対策
退職金を受け取る前に、iDeCoの受け取り時期を計画しましょう。19年以上間隔を空けることで、iDeCoの控除枠を最大限活用できます。難しい場合は、税理士やFPに相談して、最適な受け取り戦略を立てましょう。
よくある失敗の4つ目は、iDeCoの受け取り開始を遅らせすぎて、75歳までに受け取りが完了しなかったケースです。iDeCoは75歳までに受け取りを完了する必要があるため、受け取り開始時期を遅らせすぎると、年金受け取りの期間が短くなります。
対策
受け取り開始時期は60歳から75歳の間で選べますが、年金受け取りを希望する場合は、受け取り期間も考慮して開始時期を決めましょう。例えば、70歳から受け取りを開始する場合、5年間で受け取りを完了する必要があるため、年間の受け取り額が多くなり、税負担も増える可能性があります。
iDeCoの受け取り方法は、受け取り開始前に選択します。一度受け取りを開始すると、基本的に受け取り方法を変更することはできません。
例えば、年金受け取りを開始した後に、一時金に変更することはできません。また、年金の受け取り期間や金額も、開始後に変更できない場合が多いです。ただし、金融機関によっては、一定の条件下で変更を認めている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
対策
受け取り方法は慎重に決める必要があります。複数のシミュレーションを行い、税金・社会保険料・資金ニーズを総合的に考慮して、最適な方法を選びましょう。不安な場合は、税理士やFPに相談することをおすすめします。一度決めたら変更できないため、十分に検討してから決定しましょう。
iDeCoの受け取り開始年齢は、60歳から75歳の間で選べます。ただし、60歳時点で通算加入者等期間が10年以上ある場合に限ります。加入期間が10年未満の場合は、受け取り開始年齢が段階的に繰り下がります。
加入期間が8年以上10年未満の場合は61歳から、6年以上8年未満の場合は62歳から、4年以上6年未満の場合は63歳から、2年以上4年未満の場合は64歳から、1ヶ月以上2年未満の場合は65歳から受け取り開始できます。75歳までに受け取りを完了する必要があるため、受け取り開始時期を遅らせすぎないように注意しましょう。
受け取り方法は、受け取り開始前に加入している金融機関に申請します。60歳に到達する数ヶ月前に、金融機関から受け取り方法の選択に関する案内が届きます。
案内に従って、一時金・年金・併用のいずれかを選択し、必要書類を提出します。受け取り開始希望日の1〜2ヶ月前までには手続きを完了させる必要があるため、早めに準備しましょう。受け取り方法を決めるためには、事前にシミュレーションして、自分に最適な方法を検討しておくことが重要です。
併用する場合の割合は、基本的に自由に設定できます。例えば、一時金で500万円、年金で500万円というように、自分の希望に応じて配分できます。
ただし、金融機関によっては、一時金の最低額や年金の最低額が設定されている場合があります。また、年金受け取りの期間や回数にも制限がある場合があるため、加入している金融機関の規約を確認しましょう。併用の割合を決める際は、税金・社会保険料・資金ニーズを考慮して、最適な配分を見つけることが大切です。
企業型DCとiDeCoの両方に加入している場合、それぞれ別々に受け取り方法を選択できます。ただし、両方を一時金で受け取る場合、退職所得控除は合算して計算されるため、注意が必要です。
例えば、企業型DCを先に受け取り、その後iDeCoを受け取る場合、19年ルールが適用される可能性があります。受け取り順序とタイミングを慎重に検討して、控除枠を最大限活用しましょう。企業型DCとiDeCoの残高が合計で大きい場合は、税理士やFPに相談して、最適な受け取り戦略を立てることをおすすめします。
iDeCoの加入者が死亡した場合、遺族が死亡一時金として受け取ります。死亡一時金は、相続税の課税対象となりますが、「500万円×法定相続人の数」が非課税枠として設定されています。
受け取り順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順です。遺族が受け取る場合、受け取り方法は一時金のみで、年金形式では受け取れません。死亡一時金の受け取り手続きは、加入していた金融機関に連絡して、必要書類を提出します。相続税の申告が必要な場合は、税理士に相談しましょう。
海外に居住している場合でも、iDeCoの受け取りは可能です。ただし、受け取り手続きや税金の取り扱いが複雑になるため、事前に確認が必要です。
海外居住者が一時金で受け取る場合、日本の税制に基づいて源泉徴収されます。年金で受け取る場合も同様です。ただし、居住国との租税条約によっては、二重課税を避けるための手続きが必要な場合があります。海外居住者の受け取り手続きは、加入している金融機関に問い合わせて、必要な書類や手続きを確認しましょう。税務については、国際税務に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
iDeCoの受け取り方法は、一時金・年金・併用の3つから選べます。それぞれ適用される税制が異なるため、自分の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用され、大きな控除額により税負担を抑えやすいのが特徴です。年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されますが、公的年金と合算して課税されるため、税負担や社会保険料への影響を考慮する必要があります。併用する場合は、両方の控除を活用しながら、柔軟に受け取れるメリットがあります。
退職金がある場合は、19年ルールと10年ルールを理解して、受け取り順序とタイミングを慎重に検討しましょう。退職金とiDeCoを同時に受け取ると、控除枠を共有するため税負担が増える可能性があります。受け取り時期をずらすことで、それぞれの控除枠を最大限活用できます。
職業や退職金の有無によって、最適な受け取り方は異なります。会社員で退職金がある場合は受け取り順序が重要、退職金がない場合は一時金受け取りが有利、自営業・フリーランスの場合は小規模企業共済との兼ね合いを考慮、公務員の場合は高額な退職金との調整が必要です。
年金受け取りを選ぶ場合は、税金だけでなく社会保険料への影響も考慮しましょう。国民健康保険料や介護保険料が上がる可能性があるため、実質的な手取り額をシミュレーションすることが大切です。確定申告が必要になるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
受け取り方法は一度決めると変更できないため、慎重に決める必要があります。複数のシミュレーションを行い、税金・社会保険料・資金ニーズを総合的に考慮して、最適な方法を選びましょう。不安な場合は、税理士やFPに相談することをおすすめします。
なお、投資には元本割れのリスクがあります。iDeCoの受け取り方法についても、税制は改正される可能性があるため、最新情報を確認することが重要です。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。詳しくは税理士や加入している金融機関にご確認ください。
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