iDeCo(イデコ)の掛金上限額はいくら?職業別の限度額と決め方

iDeCo(イデコ)の掛金上限額はいくら?職業別の限度額と決め方

「iDeCoを始めたいけど、自分はいくらまで掛けられるの?」と疑問に思っていませんか。

iDeCoの掛金上限額は、職業や企業年金の加入状況によって異なります。

2024年12月には制度改正が行われ、公務員や企業年金加入者の上限額が引き上げられました。

さらに2025年度には、さらなる上限額の引き上げが予定されています。

この記事では、職業別の掛金上限額から、最適な掛金額の決め方、制度改正の内容まで、iDeCoの掛金に関する情報を網羅的に解説します。

自分に合った掛金額を設定して、効率的に老後資金を準備しましょう。

この記事の要約
  • iDeCoの掛金上限額は職業別に月5,000円~68,000円。2024年12月改正で公務員・企業年金加入者は最大20,000円に
  • 2025年度改正では会社員が最大62,000円、自営業が75,000円に引き上げ予定。加入年齢も70歳未満まで拡大
  • 掛金額は家計状況・ライフプラン・節税効果を考慮して決定。年1回変更可能で柔軟に調整できる
SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

目次

iDeCo(イデコ)の掛金上限額|職業別の限度額一覧

iDeCoの掛金上限額は、職業や企業年金の加入状況によって細かく設定されています。2024年12月の制度改正により、一部の上限額が変更されました。まずは自分がどの区分に該当するかを確認し、正確な上限額を把握しましょう。

以下の表は、2024年12月改正後の職業別掛金上限額の一覧です。自分の職業と企業年金の加入状況を照らし合わせて確認してください。

職業・加入区分 掛金上限額(月額) 掛金上限額(年額)
自営業・フリーランス(第1号被保険者) 68,000円 816,000円
会社員(企業年金なし) 23,000円 276,000円
会社員(企業型DCのみ) 20,000円 240,000円
会社員(DB等の企業年金あり) 20,000円 240,000円
公務員 20,000円 240,000円
専業主婦(夫)(第3号被保険者) 23,000円 276,000円

それでは、各職業別の上限額について詳しく見ていきましょう。

自営業・フリーランスの上限額

自営業やフリーランスの方(国民年金第1号被保険者)の掛金上限額は、月額68,000円(年額816,000円)です。これは全ての加入区分の中で最も高い上限額となっています。

この上限額は国民年金基金や国民年金付加保険料との合算である点に注意が必要です。例えば、国民年金基金に月額20,000円を拠出している場合、iDeCoには月額48,000円までしか拠出できません。

自営業・フリーランスの方は厚生年金がないため、公的年金が国民年金のみとなります。将来の年金額を増やすためにも、iDeCoの上限額が高く設定されているのです。

会社員(企業年金なし)の上限額

企業年金制度がない会社に勤める会社員の方の掛金上限額は、月額23,000円(年額276,000円)です。この上限額は2024年12月の改正でも変更されていません。

企業年金がない会社員の方は、公的年金に上乗せする私的年金が少ないため、比較的高めの上限額が設定されています。厚生年金に加えてiDeCoを活用することで、老後の年金額を充実させることができます。

会社員(企業年金あり)の上限額

企業型確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)などの企業年金に加入している会社員の方の上限額は、2024年12月の改正により月額20,000円(年額240,000円)に引き上げられました。改正前は月額12,000円でしたので、8,000円の増額となります。

ただし、実際の上限額は以下の計算式で決まります。

iDeCoの上限額の計算式

iDeCoの上限額 = 55,000円 −(企業型DCの事業主掛金額 + DB等の他制度掛金相当額)

例えば、企業型DCの事業主掛金が月額30,000円、DBの掛金相当額が月額10,000円の場合、iDeCoの上限額は「55,000円 − 30,000円 − 10,000円 = 15,000円」となります。この場合、20,000円を下回るため、実際の上限は15,000円です。

公務員の上限額

公務員の方の掛金上限額は、2024年12月の改正により月額20,000円(年額240,000円)に引き上げられました。改正前は月額12,000円でしたので、大幅な増額となります。

公務員の方は共済年金に加入しているため、企業年金加入者と同様の扱いとなります。改正により、より多くの掛金を拠出できるようになり、老後資金の準備がしやすくなりました。

共済掛金相当額との合算で月額55,000円を超えることはできません。共済掛金相当額が高い場合は、iDeCoの上限額が20,000円より低くなる可能性があります。

専業主婦(夫)の上限額

専業主婦(夫)の方(国民年金第3号被保険者)の掛金上限額は、月額23,000円(年額276,000円)です。配偶者の扶養に入っている方が該当します。

専業主婦(夫)の方は所得がないため、掛金の所得控除による節税効果は受けられません。しかし、運用益が非課税になるメリットや、受取時の控除は利用できます。将来の自分の年金を準備する手段として活用できます。

掛金の下限額は月5,000円から

iDeCoの掛金下限額は、職業に関わらず月額5,000円です。1,000円単位で自由に設定できるため、無理のない金額から始められます。

「まずは少額から始めて、慣れてきたら増額する」という方法も可能です。掛金額は年1回変更できるため、家計の状況に応じて柔軟に調整できます。

2024年12月の制度改正で上限額はどう変わった?

2024年12月1日から、iDeCoの制度改正が施行されました。この改正により、公務員や企業年金加入者の掛金上限額が引き上げられ、より多くの資金を老後に備えて積み立てられるようになりました。改正の主なポイントを詳しく見ていきましょう。

公務員の上限額が1.2万円→2万円に引上げ

公務員の方のiDeCo掛金上限額は、月額12,000円から月額20,000円に引き上げられました。これにより、年間で96,000円多く積み立てられるようになります。

例えば、年収500万円の公務員の方が月額20,000円を拠出すると、年間の節税効果は約48,000円になります(所得税率10%、住民税率10%として計算)。改正前の月額12,000円では年間約28,800円でしたので、節税額も大幅に増加します。

30歳から60歳まで30年間、月額20,000円を年利3%で運用した場合、約1,165万円の資産になります(年利3%で複利運用した場合の試算。実際の運用成果を保証するものではありません)。改正前の月額12,000円では約699万円でしたので、約466万円も多く準備できる計算です。

確定給付企業年金(DB)加入者も2万円に

確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金などに加入している会社員の方も、iDeCoの掛金上限額が月額20,000円に引き上げられました。改正前は月額12,000円でしたので、公務員と同様に8,000円の増額となります。

ただし、実際の上限額は「月額55,000円 −(企業型DCの事業主掛金額 + DB等の他制度掛金相当額)」で計算されます。DB等の掛金相当額が多い場合、iDeCoの上限額が20,000円を下回ることもあります。

企業年金の掛金合計 iDeCoの上限額 備考
35,000円以下 20,000円 上限額いっぱいまで拠出可能
35,001円~50,000円 5,000円~19,999円 残額に応じて変動
50,001円以上 拠出不可 最低額5,000円を下回るため

自分の企業年金の掛金額を確認し、実際のiDeCo上限額を把握することが重要です。

事業主証明書の提出が不要に

2024年12月の改正により、iDeCoの加入時や転職時に必要だった「事業主証明書」の提出が不要になりました。これにより、手続きが大幅に簡素化されました。

改正前は、会社員や公務員がiDeCoに加入する際、勤務先に事業主証明書を書いてもらう必要がありました。「会社に知られたくない」「書類の準備が面倒」という声も多く、加入のハードルとなっていました。

改正後は、個人口座から掛金を拠出する場合、勤務先への申請が不要になりました。ただし、給与天引き(事業主払込)を希望する場合は、別途「事業主払込に関する証明書」が必要です。

企業型DCとの合算上限は月5.5万円

企業型DCとiDeCoを併用する場合、両者の掛金合計は月額55,000円が上限です。DB等の他制度にも加入している場合は、その掛金相当額も含めて55,000円を超えることはできません。

例えば、企業型DCの事業主掛金が月額30,000円の場合、iDeCoには最大20,000円まで拠出できます(30,000円 + 20,000円 = 50,000円 ≤ 55,000円)。

一方、企業型DCの事業主掛金が月額40,000円の場合、iDeCoには15,000円までしか拠出できません(40,000円 + 15,000円 = 55,000円)。上限の20,000円を拠出すると合計が55,000円を超えてしまうためです。

企業型DCとiDeCoの併用を検討する際は、この合算上限を意識して掛金額を設定しましょう。

楽天証券:【2024年12月制度改正】iDeCoの掛金拠出限度額が変更に

iDeCo(イデコ)とは?|基本の仕組みとメリット

iDeCoの掛金上限額を理解する前に、iDeCoの基本的な仕組みを確認しておきましょう。iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称で、自分で掛金を拠出し、運用し、受け取る私的年金制度です。

iDeCoは自分で作る年金制度

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金に上乗せして、自分で老後資金を準備できる私的年金制度です。20歳以上65歳未満(一定の条件を満たせば70歳未満)の方が加入できます。

iDeCoの仕組みはシンプルです。毎月一定額の掛金を拠出し、その掛金で投資信託や定期預金などの運用商品を自分で選んで運用します。運用した資産は原則60歳以降に受け取ることができます。

受取額は運用成果によって決まるため、「確定拠出」年金と呼ばれます。掛金額は確定していますが、将来受け取る金額は運用次第で変動します。長期的な視点で資産形成を行うことが重要です。

3つの税制優遇メリット

iDeCoの最大の魅力は、「拠出時」「運用時」「受取時」の3つのタイミングで税制優遇が受けられることです。これらの優遇により、効率的に老後資金を準備できます。

掛金が全額所得控除

iDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象となります。これにより、所得税と住民税が軽減されます。

節税効果の例

年収500万円(課税所得300万円)の会社員が月額20,000円(年額240,000円)を拠出した場合

年間約48,000円の税金が軽減(所得税率10%、住民税率10%として計算)

30年間続けると、節税額の累計は約144万円

運用益が非課税

通常、投資信託や株式の運用で得た利益には20.315%の税金がかかります。しかし、iDeCoでは運用益が非課税となります。

例えば、運用で10万円の利益が出た場合、通常は約2万円の税金が引かれ、手元に残るのは約8万円です。しかし、iDeCoでは税金が引かれないため、10万円がそのまま再投資されます。この差が長期間積み重なることで、大きな違いを生み出します。

受取時も控除あり

iDeCoの資産を受け取る際も、税制優遇があります。一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されます。

退職所得控除は、加入期間に応じて控除額が決まります。20年以下の場合は「40万円 × 加入年数」、20年超の場合は「800万円 + 70万円 ×(加入年数 − 20年)」です。30年間加入した場合、1,500万円まで非課税で受け取れます。

受取時には一定の税金がかかる場合もあるため、受取方法は慎重に検討する必要があります。

60歳まで引き出せない点に注意

iDeCoには大きなメリットがある一方で、原則として60歳まで資産を引き出せないという制約があります。これはiDeCoの最も重要な注意点です。

途中で急な出費が必要になっても、iDeCoの資産を引き出すことはできません。住宅購入、子どもの教育費、病気やケガなど、どのような理由があっても原則として引き出し不可です。

そのため、掛金額は家計に無理のない範囲で設定することが重要です。生活費や緊急時の資金を確保した上で、余裕資金でiDeCoを活用しましょう。掛金額は年1回変更できますし、一時的に拠出を停止することも可能です。

60歳まで引き出せないという制約は、裏を返せば「強制的に老後資金を貯められる」というメリットでもあります。この制約があるからこそ、税制優遇が受けられるのです。

企業年金の種類を確認する方法

iDeCoの掛金上限額を正確に知るには、自分の会社の企業年金制度を確認する必要があります。「企業年金に加入しているかどうか分からない」「企業年金の種類が分からない」という方も多いでしょう。ここでは、企業年金の種類と確認方法を解説します。

確定給付企業年金(DB)とは

確定給付企業年金(DB:Defined Benefit)は、将来受け取る年金額があらかじめ決まっている企業年金です。会社が掛金を拠出し、運用リスクも会社が負います。

DBに加入している場合、iDeCoの掛金上限額は月額20,000円(ただし企業型DCとの合算で55,000円まで)となります。DBの掛金相当額によっては、iDeCoの上限額が20,000円を下回る場合もあります。

DBには、確定給付企業年金、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済などが含まれます。

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは

企業型確定拠出年金(企業型DC:Defined Contribution)は、会社が掛金を拠出し、従業員が自分で運用する企業年金です。将来受け取る金額は運用成果によって変動します。

企業型DCに加入している場合、iDeCoとの併用が可能です。ただし、両者の掛金合計は月額55,000円が上限となります。また、企業型DCでマッチング拠出(従業員が掛金を上乗せする制度)を利用している場合は、iDeCoに加入できません。

会社への確認方法と必要書類

自分の企業年金の種類を確認するには、以下の方法があります。

  • 就業規則や退職金規程を確認する
  • 人事部や総務部に問い合わせる
  • 給与明細の控除項目を確認する(企業型DCの場合、掛金が記載されていることがある)
  • 年1回送られてくる年金の通知書を確認する

人事部や総務部に問い合わせる際は、「iDeCoに加入したいので、企業年金の種類と掛金額を教えてください」と伝えるとスムーズです。特にDBの掛金相当額は、iDeCoの上限額を計算する上で重要な情報です。

企業型DCに加入している場合は、企業型DCの加入者専用サイトで掛金額を確認できます。主な記録関連運営管理機関(レコードキーパー)のサイトにログインして確認しましょう。

掛金額を決める3つのポイント

iDeCoの掛金上限額が分かったら、次は実際にいくら拠出するかを決めましょう。「上限額いっぱいまで拠出すべき?」「少額から始めるべき?」と迷う方も多いでしょう。ここでは、掛金額を決める際の3つのポイントを解説します。

家計の状況を考慮する

掛金額を決める際の最も重要なポイントは、家計に無理のない範囲で設定することです。iDeCoは60歳まで引き出せないため、生活費や緊急時の資金を圧迫しないよう注意が必要です。

まず、毎月の収入と支出を整理し、余裕資金がどれくらいあるかを確認しましょう。以下のような項目を考慮します。

  • 生活費(食費、光熱費、通信費など)
  • 住宅ローンや家賃
  • 子どもの教育費
  • 保険料
  • 緊急時の予備資金(生活費の3〜6ヶ月分が目安)

これらを差し引いた余裕資金の中から、iDeCoに回せる金額を決めます。「毎月5万円の余裕資金があるから、全額iDeCoに」というのは危険です。急な出費に備えて、余裕を持った設定が重要です。

最初は下限額の月5,000円から始めて、慣れてきたら増額するという方法もおすすめです。掛金額は年1回変更できるため、家計の状況に応じて柔軟に調整できます。

ライフプランを見据える

掛金額を決める際は、今後のライフイベントを考慮することも重要です。結婚、出産、住宅購入、子どもの進学など、大きな出費が予想される時期は、掛金を控えめに設定するのが賢明です。

例えば、20代独身で住宅購入の予定がない方は、比較的高めの掛金を設定できます。一方、30代で子どもが小さく、今後教育費が増える見込みの方は、控えめの掛金から始めるのが安全です。

20代独身
月10,000円〜15,000円
30代子育て世帯
月5,000円〜10,000円
40代子どもが中高生
月5,000円〜8,000円
50代子どもが独立
月15,000円〜上限額

これはあくまで目安ですが、ライフステージに応じて掛金額を調整することで、無理なく長期間継続できます。

節税効果を試算する

iDeCoの大きなメリットの一つが節税効果です。掛金額を決める際は、節税効果を試算してみましょう。年収が高い方ほど、所得税率が高くなるため、節税効果も大きくなります。

例えば、年収400万円(課税所得200万円)の方が月額10,000円(年額120,000円)を拠出した場合、所得税率5%、住民税率10%として、年間約18,000円の節税になります。

一方、年収700万円(課税所得450万円)の方が月額20,000円(年額240,000円)を拠出した場合、所得税率20%、住民税率10%として、年間約72,000円の節税になります。

iDeCo公式サイトには「かんたん税制優遇シミュレーション」があり、自分の年収と掛金額を入力すると、節税額を簡単に計算できます。節税効果を確認することで、掛金額を決める際の参考になります。

ただし、節税効果だけを重視して無理な掛金額を設定するのは避けましょう。家計の状況とライフプランを優先し、その上で節税効果を考慮するのが賢明です。

年収別・年齢別の最適掛金額シミュレーション

「実際にいくら拠出すればいいか分からない」という方のために、年収別・年齢別の掛金額モデルを紹介します。これらはあくまで参考例ですが、自分に合った掛金額を考える際のヒントになるでしょう。

年収300万円台の場合

年収300万円台の方は、手取り額も限られるため、月5,000円〜8,000円程度から始めるのがおすすめです。無理のない範囲で長期間継続することを優先しましょう。

月5,000円を30年間、年利3%で運用した場合、約291万円の資産になります。少額でも長期間継続することで、まとまった老後資金を準備できます。

年収300万円(課税所得150万円)の方が月5,000円(年額60,000円)を拠出した場合、所得税率5%、住民税率10%として、年間約9,000円の節税になります。30年間で約27万円の節税効果です。

年収500万円台の場合

年収500万円台の方は、月10,000円〜15,000円程度が目安です。家族構成やライフステージに応じて調整しましょう。

月12,000円を30年間、年利3%で運用した場合、約699万円の資産になります。老後資金の柱の一つとして十分な金額です。

年収500万円(課税所得300万円)の方が月12,000円(年額144,000円)を拠出した場合、所得税率10%、住民税率10%として、年間約28,800円の節税になります。30年間で約86万円の節税効果です。

年収700万円以上の場合

年収700万円以上の方は、所得税率が高くなるため節税効果も大きくなります。上限額いっぱいまで拠出することを検討しましょう。

会社員(企業年金なし)の場合、月23,000円が上限です。30年間、年利3%で運用した場合、約1,340万円の資産になります。

年収700万円(課税所得450万円)の方が月23,000円(年額276,000円)を拠出した場合、所得税率20%、住民税率10%として、年間約82,800円の節税になります。30年間で約248万円の節税効果です。

20代・30代・40代別の考え方

年齢によっても、最適な掛金額は異なります。

20代は、長期間運用できるため、複利効果を最大限活用できます。少額でも早く始めることが重要です。月5,000円〜10,000円程度から始め、収入が増えたら増額しましょう。

30代は、結婚や出産、住宅購入など、大きな出費が重なる時期です。無理のない範囲で継続することを優先し、月5,000円〜12,000円程度が目安です。

40代は、子どもの教育費がピークを迎える時期ですが、収入も増えている頃です。教育費の負担が落ち着いたら、掛金を増額して老後資金の準備を加速させましょう。月10,000円〜上限額が目安です。

掛金を変更する方法とタイミング

iDeCoの掛金額は、一度設定したら変更できないわけではありません。家計の状況やライフステージの変化に応じて、柔軟に調整できます。ここでは、掛金変更の方法とベストタイミングを解説します。

掛金は年1回変更できる

iDeCoの掛金額は、年1回(12月〜11月の間に1回)変更できます。変更は何度でも可能ですが、変更から次の変更までは1年間空ける必要があります。

掛金額の変更には、増額だけでなく減額も含まれます。家計が苦しくなった場合は、下限額の月5,000円まで減額することも可能です。また、一時的に掛金の拠出を停止することもできます(運用指図者への変更)。

掛金を停止しても、それまでに積み立てた資産は運用を継続できます。家計に余裕ができたら、再び掛金の拠出を再開できます。この柔軟性がiDeCoの魅力の一つです。

変更手続きの流れ

掛金額の変更手続きは、以下の流れで行います。

1.金融機関(運営管理機関)のウェブサイトにログインし、「掛金額変更」を選択
2.変更後の掛金額を入力(1,000円単位で設定)
3.必要に応じて届出書を請求し、記入・返送
4.変更手続き完了(申込から1〜2ヶ月程度かかる)

多くの金融機関では、ウェブサイト上で手続きが完結します。書類の郵送が必要な場合もありますが、以前に比べて手続きは簡素化されています。

掛金額の変更は、申込から反映まで1〜2ヶ月程度かかります。例えば、4月に変更申込をした場合、実際に変更されるのは5月または6月の引落分からとなります。変更を希望する場合は、早めに手続きを行いましょう。

増額・減額のベストタイミング

掛金を増額・減額するベストタイミングは、ライフイベントや家計の変化に応じて異なります。

増額を検討すべきタイミングは以下の通りです。

  • 昇給や昇進で収入が増えた時
  • 子どもが独立して教育費の負担が減った時
  • 住宅ローンを完済した時
  • 配偶者が働き始めて世帯収入が増えた時

減額を検討すべきタイミングは以下の通りです。

  • 子どもの進学で教育費が増えた時
  • 住宅を購入して住居費が増えた時
  • 病気やケガで医療費が増えた時
  • 収入が減少した時

特に、50代になって子どもが独立し、住宅ローンも完済に近づいた時期は、掛金を大幅に増額できるチャンスです。60歳まで残り10年でも、上限額まで拠出することで老後資金を大きく増やせます。

2025年度以降の制度改正予定

2024年12月の改正に続き、2025年度にもiDeCoのさらなる制度改正が予定されています。2024年12月に閣議決定された税制改正大綱に盛り込まれた内容を見ていきましょう。この改正は2027年1月からの実施が予定されています。

掛金上限額のさらなる引上げ

2025年度税制改正では、専業主婦(夫)を除く全ての加入者について、掛金上限額がさらに引き上げられます。特に会社員と公務員の引上げ幅が大きく、老後資金の準備がより充実します。

職業・加入区分 現行(2024年12月以降) 改正後(2027年1月予定) 増加額
自営業・フリーランス 月68,000円 月75,000円 月7,000円
会社員(企業年金なし) 月23,000円 月62,000円 月39,000円
会社員(企業年金あり) 月20,000円 月62,000円 月42,000円
公務員 月20,000円 月54,000円 月34,000円
専業主婦(夫) 月23,000円 変更なし

会社員(企業年金なし)の場合、月額が約2.7倍に増加します。企業年金ありの会社員は約3.1倍、公務員は2.7倍です。これにより、より多くの老後資金を準備できるようになります。

加入可能年齢の引上げ(70歳未満へ)

2025年度税制改正では、iDeCoの加入可能年齢が70歳未満まで引き上げられます。これにより、より長期間にわたって税制優遇を受けながら老後資金を積み立てられます。

現行制度では、iDeCoに加入できるのは原則60歳未満までです。厚生年金加入者(会社員・公務員)や国民年金の任意加入被保険者のみが65歳未満まで加入できました。

改正後は、60歳以上70歳未満で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない人であれば、iDeCoに加入・掛金拠出ができるようになります。

高齢者の就業確保措置が70歳まで拡大していることを踏まえた改正です。60歳以降も働き続ける方が増えている現状に合わせて、より長期間の資産形成が可能になります。

例えば、60歳から70歳まで月20,000円を拠出した場合、10年間で240万円(運用益を除く)を追加で積み立てられます。運用益を含めると、さらに大きな資産になります。

よくある質問(Q&A)

よくある質問(Q&A)
掛金上限を超えて拠出してしまったらどうなる?

iDeCoの掛金上限を超えて拠出することはできません。金融機関のシステムで上限額を超える拠出は自動的に制限されます。

ただし、企業型DCの掛金額やDB等の掛金相当額が増加した結果、合算で月55,000円を超えてしまう場合があります。この場合、iDeCoの掛金が自動的に減額または一時停止されます。国民年金基金連合会から通知が届くため、速やかに掛金額の変更手続きを行いましょう。

国民年金基金と併用する場合の上限は?

自営業・フリーランスの方(第1号被保険者)が国民年金基金とiDeCoを併用する場合、両者の掛金合計が月68,000円(2027年1月以降は月75,000円)が上限です。

例えば、国民年金基金に月30,000円を拠出している場合、iDeCoには月38,000円まで拠出できます(30,000円 + 38,000円 = 68,000円)。国民年金付加保険料(月400円)を納付している場合も、この合算に含まれます。

マッチング拠出とiDeCoはどちらが有利?

企業型DCでマッチング拠出ができる場合、マッチング拠出とiDeCoは併用できません。どちらか一方を選択する必要があります。

マッチング拠出の上限額は、事業主掛金と同額(合計で最大55,000円)です。一方、iDeCoの上限額は20,000円です。事業主掛金が20,000円を超えている場合、マッチング拠出の方が多く拠出できます。

ただし、マッチング拠出は運用商品が企業型DCの商品に限定されます。iDeCoでは自分で金融機関を選び、幅広い商品から選択できます。運用商品の選択肢を重視する場合は、iDeCoが有利です。

転職したら掛金上限は変わる?

転職によって企業年金の加入状況が変わる場合、iDeCoの掛金上限額も変わります。転職後は速やかに加入区分の変更手続きを行いましょう。

例えば、企業年金なしの会社から企業型DCがある会社に転職した場合、上限額が月23,000円から月20,000円に変わります。逆に、企業年金ありの会社から企業年金なしの会社に転職した場合、上限額が増える可能性があります。

掛金の拠出を一時停止できる?

iDeCoの掛金拠出は、一時的に停止することができます。家計が苦しい時期や、大きな出費が予定されている時期に活用できます。

掛金を停止する場合は、「運用指図者」への変更手続きを行います。運用指図者になると、新たな掛金の拠出は停止されますが、それまでに積み立てた資産は引き続き運用できます。

運用指図者になっても、口座管理手数料(月66円)は引き続きかかります。家計に余裕ができたら、再び掛金の拠出を再開できます。

まとめ

iDeCoの掛金上限額は、職業や企業年金の加入状況によって異なります。自営業・フリーランスは月68,000円、会社員(企業年金なし)は月23,000円、企業年金ありの会社員や公務員は月20,000円が上限です。掛金の下限は月5,000円で、1,000円単位で自由に設定できます。

2024年12月の制度改正により、公務員や企業年金加入者の上限額が月12,000円から月20,000円に引き上げられました。さらに、事業主証明書の提出が不要になり、手続きが簡素化されました。2025年度には、さらなる上限額の引き上げと加入年齢の70歳未満への拡大が予定されています。

掛金額を決める際は、家計の状況、ライフプラン、節税効果の3つのポイントを考慮しましょう。無理のない範囲で設定し、年1回の変更や一時停止を活用して柔軟に調整することが、長期間継続するコツです。年収や年齢に応じた掛金額の目安を参考に、自分に合った金額を設定してください。

企業年金の種類や掛金額を確認し、自分の正確な上限額を把握することも重要です。転職時には加入区分が変わる可能性があるため、速やかに変更手続きを行いましょう。マッチング拠出とiDeCoの選択、国民年金基金との併用など、自分の状況に応じた最適な組み合わせを検討してください。

iDeCoは60歳まで引き出せないという制約がありますが、その分、税制優遇が受けられる魅力的な制度です。掛金の所得控除、運用益の非課税、受取時の控除という3つのメリットを最大限活用して、効率的に老後資金を準備しましょう。

なお、投資には元本割れのリスクがあります。iDeCoで選択する運用商品によっては、運用成果がマイナスになる可能性もあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。詳しくは各金融機関や専門家にご相談ください。

SOICO株式会社 共同創業者・取締役COO 土岐彩花
共同創業者&取締役COO 土岐 彩花(どきあやか)
SOICO株式会社
慶應義塾大学在学中に19歳で起業し、2社のベンチャー創業を経験。大学在学中に米国UCバークレー校(Haas School of Business, University of California, Berkeley)に留学し、経営学、マーケティング、会計、コンピュータ・サイエンスを履修。新卒でゴールドマン・サックス証券の投資銀行本部に就職し、IPO含む事業会社の資金調達アドバイザリー業務・引受業務に従事。2018年よりSOICO株式会社の取締役COOに就任。

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