NISAは年末調整が必要?確定申告との関係を解説

2024年から新NISA制度が始まり、旧NISAで保有している資産をいつ売却すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
非課税期間が終わると課税口座に自動移管されるため、タイミングを間違えると税負担が増える可能性があります。
この記事では、旧NISA資産の最適な売却タイミングと、値上がり・値下がり時それぞれの判断基準を詳しく解説します。
非課税期間終了前に知っておくべきポイントを押さえて、賢く資産を管理しましょう。
購入年別の終了スケジュールや、新NISAへの買い直し方法も具体的にご紹介します。
目次
旧NISAで保有している資産を売却する最適なタイミングは、大きく分けて2つあります。1つ目は非課税期間が終了する前、2つ目はライフイベントで資金が必要になったときです。
非課税期間が終了すると、旧NISA資産は自動的に課税口座(特定口座または一般口座)に移管されます。移管時の時価が新たな取得価格となるため、その後の値上がり益には通常どおり20.315%の税金がかかります。特に値下がりしている資産を移管すると、将来的に税負担が増えるリスクがあるため注意が必要です。
非課税期間終了前に売却することで、運用益を非課税のまま確定できます。その後、新NISAの非課税枠を使って同じ銘柄を買い直せば、再び非課税で運用を続けられます。
一方、住宅購入や教育費、退職後の生活資金など、具体的な資金需要がある場合は、非課税期間の残り期間に関わらず売却を検討すべきタイミングです。投資の目的は資産形成であり、必要なときに使えなければ意味がありません。ライフイベントに合わせた計画的な売却は、資産運用の基本です。
ただし、含み損を抱えている場合や、長期的な値上がりが期待できる銘柄の場合は、慎重な判断が求められます。次のセクションでは、旧NISA制度の基本を確認した上で、具体的な売却判断の方法を詳しく解説していきます。
旧NISAは2024年以降も非課税で保有を続けられますが、非課税期間には期限があります。一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間の非課税期間が設定されており、この期限を正確に把握することが重要です。
旧NISAには一般NISAとつみたてNISAの2種類があり、それぞれ非課税期間が異なります。2024年から新NISA制度が始まりましたが、旧NISAで保有している資産は引き続き非課税で運用できます。ただし、新NISAへのロールオーバー(繰り越し)はできないため、非課税期間終了後の対応を事前に考えておく必要があります。
一般NISAの非課税期間は購入した年から5年間です。例えば、2019年に購入した資産は2023年末まで非課税で保有でき、2024年以降は課税口座に移管されるか、非課税期間内に売却する必要があります。年間投資枠は120万円で、株式や投資信託など幅広い商品に投資できました。
つみたてNISAの非課税期間は購入した年から20年間と長期です。2018年に購入した資産は2037年末まで非課税で保有できます。年間投資枠は40万円で、金融庁が定めた長期・積立・分散投資に適した投資信託のみが対象です。長期的な資産形成を目的とした制度設計になっています。
どちらの制度も、非課税期間中に得た配当金や売却益には税金がかかりません。通常の課税口座では利益に対して20.315%の税金がかかるため、この非課税メリットは大きいと言えます。
2024年から始まった新NISA制度では、旧NISAからのロールオーバー(非課税期間終了後に新たな非課税枠に移管すること)ができません。以前の一般NISAでは5年間の非課税期間終了後、翌年の非課税枠を使ってロールオーバーすることが可能でしたが、新NISA制度では制度設計が異なるため、この仕組みは利用できなくなりました。
旧NISA資産と新NISA資産は完全に別枠で管理されます。旧NISAの非課税期間が終了したら、課税口座に移管されるか、非課税期間内に売却するかの2択になります。ただし、売却して得た資金で新NISAの投資枠を使って同じ銘柄を買い直すことは可能です(クロス取引)。
ロールオーバーができないことは一見デメリットに思えますが、新NISA制度は非課税保有期間が無期限化され、年間投資枠も大幅に拡大しています(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)。長期的には新NISA制度のほうが有利な設計になっているため、旧NISA資産を整理して新NISAに移行することを検討する価値があります。
新NISA制度が始まった2024年以降も、旧NISAで保有している資産は非課税期間が終了するまで非課税で保有し続けられます。新NISA制度への移行によって、旧NISA資産が強制的に売却されたり、課税対象になったりすることはありません。
一般NISAで2019年に購入した資産は2023年末まで、2020年に購入した資産は2024年末まで非課税期間が続きます。つみたてNISAで2018年に購入した資産は2037年末まで、2023年に購入した資産は2042年末まで非課税で保有できます。それぞれの購入年ごとに非課税期間の終了時期が異なるため、管理が必要です。
旧NISAと新NISAは併用可能です。旧NISA資産を非課税期間いっぱいまで保有しながら、新NISAで新たに投資を始めることもできます。ただし、旧NISAの非課税枠は既に終了しているため、追加で旧NISA口座に投資することはできません。
非課税期間が残っている旧NISA資産については、慌てて売却する必要はありません。値上がりが期待できる銘柄や、配当収入を得ている銘柄は、非課税期間いっぱいまで保有することで税制メリットを最大限に活用できます。非課税期間終了が近づいたタイミングで、改めて売却するか課税口座に移管するかを判断すればよいでしょう。
非課税期間が終わるとどうなる?3つの選択肢
旧NISAの非課税期間が終了すると、保有している資産をどうするか選択する必要があります。選択肢は大きく分けて3つあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の投資方針や資産状況に合わせて判断することが大切です。
1つ目の選択肢は、非課税期間が終了する前に資産を売却して現金化する方法です。売却益が出ている場合、非課税のまま利益を確定できるため、最も税制面で有利な選択肢と言えます。
例えば、一般NISAで100万円投資した資産が150万円に値上がりしている場合、非課税期間中に売却すれば50万円の利益に税金はかかりません。通常の課税口座であれば約10万円(50万円×20.315%)の税金がかかるため、非課税メリットは大きいです。
売却のタイミングは、非課税期間終了の数ヶ月前から検討し始めるとよいでしょう。市場の状況を見ながら、できるだけ高値で売却できるタイミングを見計らうことが重要です。ただし、タイミングを図りすぎて非課税期間を過ぎてしまわないよう注意が必要です。
2つ目の選択肢は、何も手続きをせずに課税口座に自動移管される方法です。非課税期間終了時に売却の手続きをしなければ、保有している資産は自動的に課税口座(特定口座または一般口座)に移管されます。
課税口座に移管される際、移管時の時価が新たな取得価格になります。これが重要なポイントです。例えば、100万円で購入した資産が80万円に値下がりした状態で移管されると、取得価格は80万円として記録されます。その後、株価が100万円に戻って売却した場合、実際には損益ゼロですが、税務上は20万円の利益(100万円-80万円)として扱われ、約4万円の税金がかかります。
逆に、100万円で購入した資産が150万円に値上がりした状態で移管されると、取得価格は150万円になります。その後、さらに値上がりした分にのみ税金がかかるため、移管前の50万円の含み益には課税されません。値上がりしている資産を移管する場合は、それほど不利ではありません。
課税口座への移管は手続き不要で自動的に行われるため、手間がかからないというメリットがあります。ただし、値下がりしている資産を移管すると将来的な税負担が増えるリスクがあるため、事前に含み損益を確認しておくことが大切です。
3つ目の選択肢は、旧NISA資産を売却して、新NISAの非課税枠を使って同じ銘柄を買い直す方法です。これは「クロス取引」とも呼ばれ、非課税メリットを最大限に活用できる戦略です。
例えば、旧NISAで保有している投資信託を非課税期間終了前に売却し、得た資金で新NISAの投資枠を使って同じ投資信託を購入します。こうすることで、実質的に保有を継続しながら、再び非課税期間を活用できます。新NISAは非課税保有期間が無期限なため、長期的に非課税メリットを享受できます。
クロス取引のメリットは、非課税枠を再活用できることです。旧NISAで得た利益を非課税で確定し、さらに新NISAでも非課税運用を続けられます。特に、長期的に値上がりが期待できる銘柄や、配当収入が見込める銘柄に適した方法です。
注意点として、売却から買い直しまでの間に株価が変動するリスクがあります。売却後、買い直すまでの数日間で株価が上昇すると、同じ口数を買い戻せない可能性があります。また、投資信託の場合は信託財産留保額(売却時の手数料)がかかる銘柄もあるため、事前に確認が必要です。
新NISAの年間投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)を考慮しながら、計画的にクロス取引を実行することが重要です。旧NISA資産の評価額が大きい場合は、複数年に分けて買い直すことも検討しましょう。
旧NISAを売却すべき4つのタイミング
旧NISA資産の売却を検討すべきタイミングは、投資家の状況によって異なります。ここでは、多くの投資家に当てはまる代表的な4つのタイミングを解説します。自分の状況に照らし合わせて、最適な売却時期を判断する参考にしてください。
非課税期間終了の6ヶ月~1年前は、売却を検討する最も重要なタイミングです。一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間の非課税期間があり、この期限を過ぎると課税口座に自動移管されます。
特に値上がりしている資産は、非課税期間内に売却することで利益を非課税のまま確定できます。課税口座に移管されてから売却すると、移管後の値上がり分に税金がかかるため、非課税メリットを最大限に活用できません。
非課税期間終了の3ヶ月前には、保有資産の含み損益を確認し、売却するか移管するかを決めておくことをおすすめします。市場の状況を見ながら、できるだけ有利なタイミングで売却できるよう、余裕を持って準備することが大切です。
証券会社からも非課税期間終了の案内が届きますが、自分でもマイページなどで各銘柄の購入年と非課税期間終了年を確認しておきましょう。複数の銘柄を保有している場合、購入年ごとに終了時期が異なるため、管理が必要です。
投資を始める際に設定した目標金額に達したときは、非課税期間の残り期間に関わらず売却を検討すべきタイミングです。例えば、「資産が1.5倍になったら売却する」「100万円の利益が出たら売却する」といった目標を事前に決めておくと、感情に流されず合理的な判断ができます。
株式市場は常に変動しており、今日の高値が明日も続く保証はありません。目標金額に達したら利益を確定することで、その後の下落リスクを回避できます。特に旧NISAは非課税で利益を確定できるため、税金を気にせず売却できるメリットがあります。
ただし、長期的にさらなる値上がりが期待できる優良銘柄の場合は、目標金額に達しても保有を継続する選択肢もあります。配当収入が安定している銘柄や、成長性の高い企業の株式は、非課税期間いっぱいまで保有することで、より大きなリターンを得られる可能性があります。
目標金額の設定は、自分のリスク許容度や投資方針に合わせて決めることが重要です。一般的には、元本の1.2倍~2倍程度を目標にする投資家が多いですが、個人の状況によって適切な水準は異なります。
住宅購入、子どもの教育費、退職後の生活資金など、まとまった資金が必要になるライフイベントは、売却を検討する重要なタイミングです。投資の目的は資産を増やすことですが、最終的には必要なときに使えなければ意味がありません。
ライフイベントの時期が事前に分かっている場合は、数年前から計画的に売却を進めることをおすすめします。例えば、5年後に住宅購入を予定している場合、3年前から少しずつ売却して現金化しておくことで、市場の急落リスクを分散できます。
旧NISAは非課税で売却できるため、ライフイベント資金の準備に適しています。課税口座で保有している資産を売却すると利益に20.315%の税金がかかりますが、NISA口座なら税金がかからないため、より多くの資金を確保できます。
ただし、必要な時期まで時間的余裕がある場合は、慌てて売却する必要はありません。市場の状況を見ながら、できるだけ有利なタイミングで売却できるよう、計画的に進めることが大切です。
新NISAの年間投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)を最大限に活用したい場合、旧NISA資産を売却して資金を確保することを検討するタイミングです。特に、旧NISAで大きな含み益が出ている場合、非課税で利益を確定し、その資金で新NISAに投資することで、非課税メリットを継続できます。
新NISAは非課税保有期間が無期限であり、生涯投資枠も1,800万円と大きいため、長期的な資産形成に適しています。旧NISAから新NISAへの移行を計画的に進めることで、より効率的に資産を増やせる可能性があります。
ただし、新NISAの投資枠は年間上限があるため、旧NISA資産の評価額が大きい場合は、複数年に分けて移行する必要があります。例えば、旧NISA資産が500万円ある場合、1年目に360万円、2年目に140万円を新NISAに移行するといった計画を立てることが重要です。
新NISAへの移行を優先するあまり、市場の状況を無視して不利なタイミングで売却することは避けるべきです。長期的な視点で、市場の状況と自分の投資計画のバランスを取りながら、最適なタイミングを見極めましょう。
値上がり・値下がり時の売却判断
旧NISA資産の売却判断で最も悩むのが、現在の含み損益の状況です。値上がりしている場合と値下がりしている場合では、最適な対応が異なります。ここでは、それぞれの状況に応じた具体的な判断基準を解説します。
購入時より値上がりして含み益が出ている場合は、非課税期間終了前に売却して利益を確定することをおすすめします。旧NISAの最大のメリットは利益が非課税になることであり、このメリットを最大限に活用できるのが値上がり時の売却です。
例えば、100万円で購入した投資信託が150万円に値上がりしている場合、非課税期間内に売却すれば50万円の利益に税金はかかりません。課税口座で同じ取引をした場合、約10万円(50万円×20.315%)の税金がかかるため、非課税メリットは非常に大きいと言えます。
売却後の資金は、新NISAの投資枠を使って同じ銘柄や別の銘柄に再投資することで、引き続き非課税で運用を続けられます。特に長期的な成長が期待できる銘柄の場合、新NISAで買い直すことで、さらなる値上がり益も非課税で享受できます。
ただし、配当利回りが高い銘柄や、さらなる値上がりが強く期待できる銘柄の場合は、非課税期間いっぱいまで保有を続けることも選択肢の一つです。配当金も非課税で受け取れるため、非課税期間が残っている間は保有を継続し、期限直前に売却するという戦略も有効です。
購入時より値下がりして含み損を抱えている場合は、慎重な判断が必要です。課税口座に移管すると、将来的に予想外の税負担が発生するリスクがあるため、移管のメカニズムを正確に理解しておくことが重要です。
課税口座への移管時には、移管時の時価が新たな取得価格として記録されます。これが値下がり時の大きな問題点です。例えば、100万円で購入した株式が70万円に値下がりした状態で課税口座に移管されると、税務上の取得価格は70万円になります。
その後、株価が購入時の100万円に戻って売却した場合、実際の損益はゼロ(±0円)ですが、税務上は30万円の利益(100万円-70万円)として扱われ、約6万円(30万円×20.315%)の税金がかかります。実質的に損失が出ているにもかかわらず、税金を支払わなければならないという不合理な状況が生じます。
この仕組みは、値下がりしている資産を課税口座に移管する最大のデメリットです。移管後に株価が回復すればするほど、税負担が増えることになります。
値下がりしている資産を課税口座に移管した場合、将来的に株価が回復すると、本来課税されるべきでない部分にまで税金がかかることになります。特に、長期的に成長が期待できる銘柄や、一時的な市場の下落で値下がりしている銘柄の場合、将来の税負担が大きくなるリスクがあります。
値下がりしている資産の扱いは、銘柄の将来性、損失の大きさ、自分のリスク許容度などを総合的に考慮して判断する必要があります。不安な場合は、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。
購入時とほぼ同じ価格で推移している場合(含み損益が±5%程度)は、長期保有を続けるか、新NISAで買い直すかの判断が必要です。どちらを選択するかは、銘柄の将来性と非課税期間の残り期間によって変わります。
非課税期間が1年以上残っている場合は、そのまま保有を続けることをおすすめします。配当金を受け取れる銘柄であれば、配当金も非課税で受け取れるため、保有を続けるメリットがあります。また、今後値上がりする可能性もあるため、慌てて売却する必要はありません。
一方、非課税期間終了まで6ヶ月以内の場合は、新NISAで買い直すことを検討する価値があります。新NISAは非課税保有期間が無期限なため、長期的に保有したい銘柄であれば、早めに新NISAに移行することで、より長く非課税メリットを享受できます。
買い直しの際は、売却と購入のタイミングで価格が変動するリスクを考慮する必要があります。特に、値動きの激しい銘柄の場合、売却から購入までの数日間で価格が大きく変動する可能性があるため、注意が必要です。
売却判断を迷ったときは、以下のチェックリストを参考にしてください。
これらのチェックポイントを確認し、自分の状況に最も合った選択肢を選びましょう。判断に迷う場合は、証券会社のサポートや専門家への相談も活用してください。
新NISAで買い直す方法
旧NISA資産を売却して新NISAで同じ銘柄を買い直すクロス取引は、非課税メリットを継続できる効果的な方法です。ここでは、投資信託と国内株式それぞれの具体的な手順を解説します。
クロス取引とは、旧NISA口座で保有している資産を売却し、その資金で新NISA口座を使って同じ銘柄を買い直す取引のことです。実質的に保有を継続しながら、非課税枠を旧NISAから新NISAに移行できるため、長期的な資産形成に有効な戦略です。
クロス取引の最大のメリットは、非課税メリットを継続できることです。旧NISAで得た利益を非課税で確定し、さらに新NISAでも非課税運用を続けられます。新NISAは非課税保有期間が無期限なため、一度買い直せば、その後の値上がり益や配当金をずっと非課税で受け取れます。
一方、デメリットとしては、売却から買い直しまでの間に価格が変動するリスクがあります。売却後、数日間で株価が上昇すると、同じ口数を買い戻せない可能性があります。また、投資信託の場合は信託財産留保額(売却時の手数料)がかかる銘柄もあるため、コストを考慮する必要があります。
クロス取引は、長期的に保有したい優良銘柄や、配当収入が安定している銘柄に適しています。一時的な値動きのリスクはありますが、長期的な視点で見れば、非課税メリットを継続できる価値は大きいと言えます。
投資信託のクロス取引は、比較的シンプルな手順で実行できます。以下の手順に従って進めてください。
投資信託は約定日と受渡日にタイムラグがあるため、売却から買い直しまでに数日かかります。この間に基準価額が変動するリスクがあることを理解しておきましょう。ただし、長期的に保有する前提であれば、短期的な価格変動は大きな問題にはなりません。
国内株式のクロス取引は、投資信託よりも価格変動のリスクが高いため、タイミングに注意が必要です。以下の手順で進めてください。
株式の場合、売却から買い直しまでの数日間で株価が大きく変動する可能性があります。特に、値動きの激しい銘柄や、市場全体が不安定な時期は注意が必要です。リスクを軽減するためには、売却と購入を同日に行うことも検討できますが、その場合は十分な資金を事前に用意しておく必要があります。
クロス取引は、長期的な資産形成において非課税メリットを最大限に活用できる有効な戦略です。手順を正確に理解し、計画的に実行することで、旧NISAから新NISAへのスムーズな移行が可能になります。
旧NISA資産を適切に管理するためには、購入年ごとの非課税期間終了時期を正確に把握することが重要です。ここでは、一般NISAとつみたてNISAそれぞれの終了スケジュールを一覧で示します。
一般NISAは購入した年から5年間が非課税期間です。以下の表で、購入年ごとの非課税期間終了時期を確認してください。
| 購入年 | 非課税期間終了年 | 終了時期 | 対応期限 |
| 2014年 | 2018年 | 2018年12月末 | 既に終了 |
| 2015年 | 2019年 | 2019年12月末 | 既に終了 |
| 2016年 | 2020年 | 2020年12月末 | 既に終了 |
| 2017年 | 2021年 | 2021年12月末 | 既に終了 |
| 2018年 | 2022年 | 2022年12月末 | 既に終了 |
| 2019年 | 2023年 | 2023年12月末 | 既に終了 |
| 2020年 | 2024年 | 2024年12月末 | 既に終了 |
| 2021年 | 2025年 | 2025年12月末 | 2025年9月までに判断 |
| 2022年 | 2026年 | 2026年12月末 | 2026年9月までに判断 |
| 2023年 | 2027年 | 2027年12月末 | 2027年9月までに判断 |
2021年以降に購入した一般NISA資産は、まだ非課税期間が残っています。非課税期間終了の6ヶ月~1年前には、売却するか課税口座に移管するかを判断することをおすすめします。
特に、2021年購入分は2025年末に非課税期間が終了するため、2025年中に対応を検討する必要があります。値上がりしている資産は早めに売却を検討し、値下がりしている資産は将来性を考慮して判断しましょう。
つみたてNISAは購入した年から20年間が非課税期間です。一般NISAに比べて非課税期間が長いため、慌てて対応する必要はありませんが、終了時期を把握しておくことは重要です。
| 購入年 | 非課税期間終了年 | 終了時期 | 対応開始目安 |
| 2018年 | 2037年 | 2037年12月末 | 2037年初頭から検討 |
| 2019年 | 2038年 | 2038年12月末 | 2038年初頭から検討 |
| 2020年 | 2039年 | 2039年12月末 | 2039年初頭から検討 |
| 2021年 | 2040年 | 2040年12月末 | 2040年初頭から検討 |
| 2022年 | 2041年 | 2041年12月末 | 2041年初頭から検討 |
| 2023年 | 2042年 | 2042年12月末 | 2042年初頭から検討 |
つみたてNISAは長期投資を前提とした制度であり、非課税期間も20年と長期です。現時点では終了時期が遠い将来のため、慌てて対応する必要はありませんが、定期的に資産状況を確認し、ライフプランに合わせた運用を心がけましょう。
つみたてNISAは毎月または毎年積み立てるため、同じ年に複数回購入している場合があります。厳密には購入月ごとに非課税期間が計算されますが、実務上は購入年単位で管理することが一般的です。証券会社のマイページで、各購入分の非課税期間終了時期を確認できます。
つみたてNISAの非課税期間終了時には、一般NISAと同様に、売却するか課税口座に移管するかを選択する必要があります。長期投資の成果を最大限に活かすため、終了時期が近づいたら計画的に対応を検討しましょう。
旧NISA売却時に気をつけたい5つの注意点
旧NISA資産を売却する際には、いくつかの注意点があります。これらを理解しておくことで、予期せぬトラブルや損失を避けることができます。
旧NISA口座で一度売却した資産の非課税枠は、再利用できません。例えば、2020年に一般NISAで100万円分の投資信託を購入し、2022年に売却した場合、2020年分の100万円の非課税枠は復活しません。これは新NISAとの大きな違いです。
新NISA制度では、売却した分の非課税枠が翌年以降に復活する仕組みになっていますが、旧NISAにはこの仕組みがありません。そのため、旧NISA資産を売却する際は、本当に売却が必要かどうか慎重に判断することが重要です。
一度売却すると、その年の非課税枠は使い切ったことになり、追加で投資することはできません。短期的な値動きに反応して頻繁に売買を繰り返すと、非課税枠を有効活用できなくなるため、長期的な視点で投資判断を行うことが大切です。
投資信託を売却する際、銘柄によっては信託財産留保額という手数料がかかる場合があります。信託財産留保額は、売却時に基準価額から差し引かれる費用で、通常0.1%~0.5%程度です。
例えば、100万円分の投資信託を売却する際、信託財産留保額が0.3%の場合、3,000円が差し引かれ、実際に受け取れる金額は99万7,000円になります。少額に見えますが、大きな金額を売却する場合は無視できないコストになります。
信託財産留保額がかかるかどうかは、投資信託の目論見書で確認できます。売却前に必ず確認し、コストを考慮した上で売却判断を行いましょう。信託財産留保額がかからない銘柄も多いため、複数の銘柄を保有している場合は、コストの低い銘柄から売却することも一つの戦略です。
また、株式の売却では売買手数料がかかる証券会社もあります。多くのネット証券では国内株式の売買手数料が無料になっていますが、一部の証券会社では手数料がかかる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
株式や投資信託を売却する際、約定日(注文が成立した日)と受渡日(代金が口座に入金される日)にタイムラグがあります。このタイムラグを理解しておかないと、資金繰りに困る可能性があります。
国内株式の場合、約定日の2営業日後(T+2)が受渡日です。例えば、月曜日に売却した場合、水曜日に代金が入金されます。投資信託の場合は、約定日の3~4営業日後が受渡日となることが一般的です。
クロス取引で旧NISA資産を売却して新NISAで買い直す場合、売却代金が入金されるまで買い直しができません。この間に株価や基準価額が変動するリスクがあることを理解しておきましょう。特に、非課税期間終了間際に売却する場合は、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
市場が急落したときに、パニックになって売却してしまうことは、投資で最もよくある失敗の一つです。旧NISA資産も例外ではなく、暴落時に感情的に売却すると、その後の回復による利益を逃してしまう可能性があります。
歴史的に見ると、株式市場は短期的には大きく変動しますが、長期的には成長する傾向があります。一時的な下落に動揺して売却すると、損失を確定させてしまい、その後の回復による利益を得られなくなります。
暴落時の感情的な売却を避けるためには、事前に売却ルールを決めておくことが有効です。例えば、「非課税期間終了の6ヶ月前に売却する」「含み益が50%を超えたら売却する」といった明確なルールを設定し、市場の状況に関わらずルールに従って行動することで、感情的な判断を避けられます。
ただし、明らかに企業の業績が悪化している場合や、投資判断が誤っていたと判断できる場合は、損切りも必要です。重要なのは、一時的な市場の変動に反応するのではなく、冷静に状況を分析して判断することです。
非課税期間終了時に何も手続きをしないと、保有している資産は自動的に課税口座に移管されます。この自動移管を放置すると、特に値下がりしている資産の場合、将来的に予想外の税負担が発生するリスクがあります。
証券会社から非課税期間終了の案内が届きますが、メールや郵送物を見落とすこともあります。自分で定期的にマイページを確認し、各銘柄の非課税期間終了時期を把握しておくことが重要です。
非課税期間終了の6ヶ月前には、各銘柄の含み損益を確認し、売却するか移管するかを判断しておきましょう。値上がりしている資産は売却して利益を確定し、値下がりしている資産は将来性を考慮して対応を決めることをおすすめします。
複数の銘柄を保有している場合、購入年ごとに終了時期が異なるため、管理が複雑になります。エクセルやスプレッドシートで管理表を作成し、銘柄ごとの購入年、非課税期間終了時期、現在の含み損益を記録しておくと、計画的に対応できます。
旧NISA口座内で売却した場合、確定申告は不要です。NISA口座は非課税口座であり、売却益や配当金に税金がかからないため、確定申告の必要もありません。これはNISA制度の大きなメリットの一つです。
ただし、課税口座(特定口座・一般口座)に移管した後に売却した場合は、通常の株式売却と同様に税金がかかります。特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、証券会社が自動的に税金を徴収するため、原則として確定申告は不要です。一般口座や特定口座(源泉徴収なし)を利用している場合は、確定申告が必要になります。
また、複数の証券会社で取引している場合や、損益通算を行う場合は、確定申告をすることで税金の還付を受けられる可能性があります。詳しくは税理士や税務署にご相談ください。
はい、旧NISAと新NISAは併用できます。旧NISA資産を非課税期間いっぱいまで保有しながら、新NISAで新たに投資を始めることが可能です。両方の非課税メリットを同時に享受できるため、資産形成の選択肢が広がります。
ただし、旧NISAの非課税枠は既に終了しているため、旧NISA口座に追加で投資することはできません。新たな投資は新NISA口座で行う必要があります。旧NISA資産は非課税期間が終了するまで保有を続け、新NISAでは新たな投資を行うという形で、両方を活用しましょう。
旧NISAと新NISAの非課税保有限度額は別枠で管理されます。旧NISA資産が新NISAの非課税保有限度額(1,800万円)に影響することはありません。そのため、旧NISA資産を保有していても、新NISAの投資枠を満額使うことができます。
証券会社を変更する場合、旧NISA資産は移管前の証券会社に残ります。NISA口座は年単位で金融機関を変更できますが、既に保有している旧NISA資産を他の証券会社に移管することはできません。
例えば、A証券で旧NISA資産を保有している状態で、B証券に新NISA口座を開設した場合、A証券の旧NISA資産はそのままA証券で管理されます。新NISAでの投資はB証券で行い、旧NISA資産はA証券で非課税期間が終了するまで保有を続けることになります。
複数の証券会社で資産を管理するのが面倒な場合は、旧NISA資産を売却してから証券会社を変更することも選択肢の一つです。売却して得た資金を、新しい証券会社の新NISA口座で再投資することで、資産を一つの証券会社にまとめられます。
複数の証券会社で旧NISA資産を保有している場合、非課税期間終了時期が早い順に対応することをおすすめします。一般NISAは購入年から5年間、つみたてNISAは20年間の非課税期間があるため、購入年が古い資産から優先的に対応しましょう。
また、含み益が大きい資産を優先的に売却することも有効な戦略です。含み益が大きい資産は、非課税で利益を確定できるメリットが大きいため、早めに売却して税制メリットを享受することをおすすめします。
複数の証券会社で資産を管理している場合、管理が煩雑になりがちです。エクセルやスプレッドシートで一覧表を作成し、証券会社ごと・銘柄ごとの購入年、非課税期間終了時期、含み損益を記録しておくと、計画的に対応できます。
相続が発生した場合、被相続人(亡くなった方)の旧NISA資産は、相続開始日時点の評価額で相続人に引き継がれます。ただし、NISA口座自体は相続できないため、旧NISA資産は相続人の課税口座(特定口座または一般口座)に移管されます。
相続により課税口座に移管された資産は、移管時の評価額が取得価格となります。その後の売却時には、移管時の評価額との差額に対して通常どおり税金がかかります。被相続人がNISA口座で得ていた非課税メリットは、相続時点で終了します。
相続税の計算では、旧NISA資産も他の財産と同様に相続財産として評価されます。株式や投資信託の評価方法は、相続開始日の終値や基準価額を基に計算されます。詳しい手続きや税務上の取り扱いについては、税理士にご相談ください。
旧NISA資産の売却タイミングは、非課税期間終了前かライフイベント時が基本です。非課税期間が終了すると課税口座に自動移管されるため、特に値下がりしている資産は将来的な税負担が増えるリスクがあります。
値上がりしている資産は、非課税期間内に売却して利益を確定することで、税制メリットを最大限に活用できます。売却後の資金を新NISAで再投資することで、引き続き非課税で運用を続けられます。
一方、値下がりしている資産は、課税口座移管時の取得価格変更により、将来的に税負担が増える可能性があるため慎重な判断が必要です。銘柄の将来性を考慮し、損切りするか長期保有を続けるかを決めましょう。
新NISAで買い直すクロス取引は、非課税メリットを継続できる有効な方法です。売却から買い直しまでの価格変動リスクはありますが、長期的な視点で見れば、非課税保有期間が無期限の新NISAに移行するメリットは大きいと言えます。
購入年別の非課税期間終了スケジュールを把握し、計画的に売却や移管の判断を行うことが重要です。複数の銘柄を保有している場合は、管理表を作成して終了時期を可視化しておくと、対応漏れを防げます。
売却時には、信託財産留保額などの手数料、約定日と受渡日のタイムラグ、暴落時の感情的な判断など、注意すべきポイントがいくつかあります。これらを理解した上で、冷静に判断することが大切です。
なお、投資には元本割れのリスクがあります。旧NISA資産の売却や新NISAへの移行は、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて、慎重にご検討ください。判断に迷う場合は、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家にご相談されることをおすすめします。
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